※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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2話 「災厄の魔人」

 

 第一級、撃滅級魔獣。

 

 魔獣の中でも、一つの都市を軽々壊滅させるだけの戦闘力を持った、つまるところ一個師団の騎士団以上に相当する、普通の武人では近寄ることも困難な存在がいる。

 

 それを、ワンパンチ。

 

 発する超重力波動ですら、彼女の歩みを乱すことはできず、悠然と相手に近寄り、ぶん殴った。

 

 バズーカでも傷つかないであろう鱗を破壊し、筋肉をズタズタにし、骨を砕き、内臓をぐちゃぐちゃにした。

 

 そして―――消滅。

 

 拳圧から発せられる巨大な戦気(せんき)が衝撃波となり、粉々になった。その場には、最初からそんなものはいなかったと思えるほど、綺麗さっぱり消失である。

 

 

「こら、アーシュ! 逃げるんじゃない!」

 

「無理無理無理!! つーか姉ちゃん、いつから人間をやめたんだよ! グラビガーロン〈たゆたいし超重力の虚龍〉をワンパンじゃねえか!」

 

 

 グラビガーロン〈たゆたいし超重力の虚龍〉。

 

 巨龍種と呼ばれる、魔獣の中で最強レベルの種族である。

 

 捕食以外では攻撃しない温厚な魔獣だが、近寄るだけで超重力であらゆるものを潰していくので、こうした頑強な岩場にしか生息できない。

 

 何度か人界に出没した際は、歩いただけで都市を壊滅させたという。核爆発にも耐えられる防御性能を持っているので、誰も止められないのだ。

 

 が、姉のパミエルキの前では無力でしかない。

 

 

「おかしいって!! オレだって簡単に倒せないのに! やっぱりオレと姉ちゃんは違うって!」

 

「あれくらい普通よ。師匠だってやるじゃないの!」

 

「同じ強さになってどうするんだ! 師匠は覇王だろう! 最強の武人って聞いたぞ!!!」

 

 

 アンシュラオンと姉のパミエルキの師匠、陽禅公(ようぜんこう)。現在の覇王であり、最強の武人であると称される豪傑である。

 

 といっても、すでに年老いてしわくちゃなので、好々爺といった感じの温和な人物である。

 

 それでも覇王。

 

 実力は飛び抜けていて、当然アンシュラオンが勝てる相手ではない。しかし、姉のパミエルキは、もはやそのレベルに達しているのではないかと、アンシュラオンは疑っていた。

 

 それからも盾にする魔獣をことごとく一撃で倒し、アンシュラオンが逃げた場所には、まったく関係のない哀れな魔獣たちの死骸で溢れかえっている。

 

 

(撃滅級魔獣って、最強の魔獣たちじゃないのか!? 盾にすらならない!!)

 

 

「アーシュ、向かってきなさい!」

 

 

 パミエルキが覇王技、修殺(しゅさつ)を放った。

 

 戦気と拳圧を一緒に繰り出す基本の技だ。

 

 

―――それが、山を砕く

 

 

「嘘だろうっ!! 死んじゃう! あんなのくらったら死んじゃう!」

 

「大丈夫よ。アーシュは死なないから」

 

「げっ!」

 

 

 パミエルキは凄まじい速度で前に回り込むと、蹴りを放った。

 

 アンシュラオンのガード―――を打ち破る。

 

 

「ひぃいいい!!」

 

「ほぉら!! 撃滅級魔獣でも殺せる一撃を、あなたは受けるのよ!!!」

 

「違う、違う! 折れたから!! 今ので折れたから! ガード破れて、ボキッて音がしたから!!」

 

「治しなさい、すぐに。そうじゃないと、またいくわよ!」

 

「どうせ治してもくるじゃないかぁあああああ!」

 

「アーシュが可愛いからねぇええええええええええ!」

 

「可愛くなくていいよ!!!」

 

 

 アンシュラオンは、水の最上位属性である命気(めいき)を展開。急速に折れた腕が治っていく。

 

 姉の暴力(愛情表現)から助かるためだけに会得した、とても貴重な技の一つである。これがなかったら、もう何度も死んでいるに違いない。

 

 

(ただオレに甘いだけの姉ならば、我慢できたんだ! でも、愛情表現が過激すぎる!! 金属バットで殴って愛情表現する姉なんて、怖いだけだろうが!!)

 

 

 可愛いから、つい苛めたくなる。これが普通の関係ならば、まだ許せる。最後はイチャイチャする関係になってハッピーエンドだろう。

 

 が、命にかかわるとなれば話は違う。

 

 

(愛情表現で山を吹き飛ばす姉がどこにいるんだ! あっ、ここにいるや。って、ちがーう! ああ、またやった!! 自然破壊も甚だしいぞ! まったく、本当に師匠を超えたんじゃないだろうな。ちょっと調べてみよう)

 

 

 アンシュラオンが、ひっそりと【能力】を使う。

 

 すると、姉のデータが出てきた。

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前 :パミエルキ

 

レベル:255/255

HP :99999/99999

BP :9999/9999

 

統率:SSS  体力: SSS

知力:SSS  精神: SSS

魔力:SSS  攻撃: SSS

魅力:SSS  防御: SSS

工作:SSS  命中: SSS

隠密:SSS  回避: SSS

 

【覚醒値】

戦士:10/10 剣士:10/10 術士:10/10

 

☆総合:第一階級 神狼(しんろう)級 魔人

 

異名:災厄の魔人

種族:人間

属性:光、闇、無、月、臨、命、圧、界、時、虚、実、滅

異能:デルタ・ブライト〈完全なる光〉、災厄招来、災厄障壁、災厄の加護、災厄魔人化、情報保存、情報復元、対(つい)属性修得、最上位属性限界突破、全属性攻撃無効化、物理反射、銃反射、術吸収、即死無効、毒吸収、精神支配、全種精神耐性、二十四時間無敵化、完全自己修復、完全自動充填、一騎当億、弟への愛情MAX、弟と結婚、弟の子を産みたい、弟とずっと一緒、弟と自分以外は死んでもいい

―――――――――――――――――――――――

 

 

(嘘だろっ!? 本当に人間やめたのかよ!!)

 

 

 能力数値は、SSS、SS、S、AA、A、B、C、D、E、Fの十段階評価で、Dもあれば立派な一人前といわれるレベルにある。

 

 Cは相当の熟練者、Bもあれば、その道の達人レベル。Aなら、もう国を代表して誇れるレベル。

 

 それ以上となると、もはや使い手を見つけるのが困難になり、Sまで到達した日には、歴史に名を残す英雄だと思ったほうがいい。

 

 それが、オールSSS(トリプルエス)。

 

 師匠の陽禅公でさえ、そこには到達していない。つまり姉は、すでに師匠を超えていることになる。強くて当然だ。

 

 しかも、覚醒値が半端ないことになっている。

 

 これらは武人の資質を示すもので、常人は0である。1でもあれば武人認定されるほどの覚醒値であり、騎士団なら正規騎士として重用されるだろう。

 

 2あれば、相当な達人。3もあれば、そこらの軍隊では太刀打ちできないレベルだ。

 

 それもまた、オール10。

 

 通常、武人の資質は、どれか一つに限定される。戦士なら、戦士に特化するのが普通だ。

 

 もちろん、例外もある。ハイブリッドと呼ばれる存在は、戦士と術士、剣士と術士といった二つの因子を持つことができるし、モザイクに至っては、戦士と剣士を両立することもできる。

 

 が、すべて10はおかしい。

 

 その正体は、彼女の異能スキルであるデルタ・ブライト〈完全なる光〉が関係している。

 

 このスキルは、全部の覚醒値が最大値まで解放されるというもの。

 

 否。それは逆説的である。全部の覚醒値の制限を取っ払った人間だけが、このスキルを獲得するのだ。

 

 弟であるアンシュラオンも持っているスキルだが、覚醒値は遠く及ばない。

 

 あくまで制限を取っ払い、最大値を10にするだけのスキルで、覚醒させるのは自分の努力次第だからだ。

 

 

(しかも、【災厄の魔人】ってなんだ!? こんなの前はなかったぞ! いつの間にか最上位属性も全部そろえているし、それ以外のスキルもやべえ! 称号も、すでに人間を超えて【魔人】になってるぅうううう!)

 

 

 この人がラスボスだったら、勇者レベル99でも秒殺するだろう。まあ、勇者などいないのだが。それにレベルの上限は255だ。

 

 それ以外のスキルも、何から説明すればよいのか迷うほど、正直危険だ。

 

 

(後半のスキルは、見なかったことにしよう。何もなかった。何もなかったんだ! オレは何も知らない!)

 

 

 

 そして、アンシュラオンは諦めた。

 

 

 

「姉ちゃん、好き! 大好き! もう遊びはいいから、戻ろうよ!」

 

「せっかく楽しくなってきたのに…」

 

「姉ちゃんをぎゅってしたいから、ねっ!? いいでしょ!?」

 

「あーくんったら…可愛い。私も大好きよ。ちゅっ」

 

 

 アンシュラオンの髪の毛にされた、その口付けは、まるで悪魔の唇にすら感じられる。

 

 

(くそっ…逆らえない。逆らったら殺される。いや、違う。オレ以外のものが犠牲になっちまう。あの魔獣たちのように…)

 

 

 何の関係もない魔獣たちが犠牲になった。

 

 べつに魔獣に対して同情するというわけではないが、まったく無意味な殺戮を平然とこなせるのが姉という存在である。

 

 それはまるで、蟻の行列に熱湯をかけて殺すようなもの。

 

 その行為に意味はない。たまたまいたから、というだけの理由。

 

 そして、それができてしまう圧倒的な力を持つ存在である。

 

 

(姉ちゃん…こんないい女なのに…。神様ってやつは残酷なもんだなぁ…)

 

 

 この人(姉)には、ひたすら従順でなくてはならない。

 

 命令されれば「イエッサー」以外は言わない。マッサージを強要されれば、そのスタイルの良さを賛美しながら奉仕に勤しむ。鍛錬になれば、ひたすら生存だけを望んで、相手のストレスが解消されるまで防御に徹するのだ。

 

 そして、そういった日々が、彼の中に大きな【トラウマ】を作ってしまうのだった。

 

 その極めつけは、次の日から起こることになる。

 

 

 恐怖の「姉のあまあま一週間」が始まるのだ。

 

 

 

 

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