【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
「…なぜ、パンツが落ちているのか?」
通路に女性物の下着が落ちている。
明らかに犯罪の匂いがする。
「女性が襲われた? パンツだけ置いていくのもおかしいか。普通に考えれば洗濯物を落としたとかだろうけど…。とあるゲームで、屋根の上にブラジャーが落ちているとかいうやつがあったな。それを届けたら怒られるわけだが……一応拾っておくか。軽いしね」
パンツが落ちていたら拾うしかない。
これもまた白仮面の紳士の
だが、先に進むと『相方』もいた。
「嘘だろう? 今度はブラジャーが落ちてる…」
恐ろしいことに次はブラジャーが落ちていた。
薄紫色なので、さきほどのパンツとセットなのは明白だ。
「この領主城の中はどうなっているんだ? やっぱり破廉恥な場所だったようだな。けしからん! ボッシュートだ!!」
訳がわからないが、これもまたゲットである。
それにしても領主城のモラルが気になる。早くサナを捜さないと何をされるかわかったものではない。
そのままサナの捜索を続行。
すると、明らかに今までとは違うタイプの扉が存在した。
鉄かどうかは不明だが何かしらの金属で出来ており、しかもあからさまに南京錠のようなもので、がっしりと鍵がかけられている。
「中に人の気配はない。この雰囲気から察するに…物置、それも宝物庫的なものだろうな。ふむ、さぞや大切な物が入っているに違いない」
アンシュラオンが、ニヤリと笑う。
領主城にある大切なもの = 領主やイタ嬢にとって大切なもの
領主の物 = アンシュラオンのもの
「サナを奪った罪は重い。こうしている間もトイチどころではなく、一分で一割の利子がかさんでいるのだ。すでにお前たちの借金は数十億にもなっているぞ。よって、好きなだけボッシュートだな」
南京錠には、領主しか開けられないという術式がかけられていたが―――
バキンッ
あっさりと破壊して中に入る。
「こんなに簡単に壊れる鍵ってのも問題だな。もっと頑丈に作れないものか?」
自分の家のセキュリティは、これよりもっと強固にしようと誓うのであった。
中は、外周で見た倉庫とは違い、綺麗に整頓された場所であった。壁にもいろいろな術式が刻まれているので、まさに宝物庫と呼ぶに相応しい場所である。
「うーん、この術式は何だろう? 何か封じ込めているのかな? ここまで複雑だとよくわからないな。術の勉強もしておきたかったけど、姉ちゃんにまだ駄目って言われたんだよな…」
術を使える姉を見て自分もやりたいと申し出たのだが、意外なことにパミエルキは許可しなかった。
基本的にパミエルキはアンシュラオンに甘いが、その彼女でさえ理由は明かしてくれなかったので、その記憶が強く残っているのだ。
「たしかに術ってのは危険だからな…。それに本業であるはずの戦士でさえ、まだまだゼブ兄や師匠には及んでいなかったし…そのあたりなんだろうな。オレもまだまだ修行不足だな。…って、そんなに強くなってもしょうがないけどさ」
改めて物色を開始。
てっきり高価な武器や防具があると思っていたが、意外にもそういったものは一切なく、金塊といったものも存在しない。
あるのは【宝珠】のみ。
「宝珠? これってジュエルの中で最高級のものだったような気がするな。ただ、普通の媒体には使えないとか書いてあったような…」
ハローワークには、ハンターや傭兵用にさまざまな指南書が置かれている。
気になったのでジュエルの冊子を読んでみたが、その中で最高品質とされていたのが宝珠と呼ばれるものである。
大きさ自体が普通のジュエルとは違い、大きな原石でないと磨き出せないものである。
地球でも大きいほど価値があったので、その価値基準はこちらでも当てはまるようだ。
ただし、大きすぎると一般の術式を付与しづらくなる傾向にあるので、使われるとすれば大規模な儀式や、最上位の術式を組み込む際にしか使われない。
あまりに価値がありすぎると逆に使いづらいのは皮肉なものである。
「これは…おっ、城壁の上にあった術式に似ているぞ。もしかして防御結界の予備なのかな?」
野球のボールくらいの大きさの薄緑の宝珠があった。どうやら城壁に展開している防御結界の予備宝珠のようである。
あれだけの結界を維持しているのだから、宝珠を使うくらいしないと展開できないのだろう。
「でも、予備がありながらどうして使わないんだ? もうけっこうボロボロだろうに。まったく危機意識ってのが足りないな。領主失格だ! けしからん!」
とアンシュラオンは怒っているが、それが予備であることを領主は知らないのである。
実は、ここにあるものは数百年以上前の領主が管理していたもので、それ以来誰も触っていないという「開かずの宝物庫」なのだ。
一度だけ現領主であるアニルが入ったが、術士の素養があるわけでもないので、まったく用途がわからずに立ち去った過去がある。
大災厄から何代か経過して、領主の危機意識も完全に薄れてしまったのだろう。今では誰も近寄らない場所である。
が、価値がわかる者が見れば宝の山だ。
「そんなに大きくないし、一応もらっておこう。何かに使えるかもしれないしね。…ん? 一番奥に飾ってあるのは何だ?」
そして、極め付けを発見してしまう。
それは一番奥の台座に飾られているもの―――もとい、厳重に【封印】されているものである。
周囲にはいくつもの宝珠によって結界が施され、けっして外に持ち出さないようにとの願いが込められたものだった。
が、そんなことを知らないアンシュラオンは、あっさりと結界を破壊して宝珠を持った。
「妙に禍々しい色をしているな。こんな色の宝珠に値が付くのか? それとも宝珠なら何でも高く付くのかな?」
宝珠の大きさはサッカーボールくらいであるが、重さはあまり感じない。
それ以前に、取り出した瞬間から黒い波動が滲み出るという、妖しいギミック付き…と思っていたが、実はそれは【精神攻撃】であった。
もしアンシュラオンの精神がA以下なら、即座に宝珠の支配下に置かれてしまっていただろう。これはそういう【呪具】でもあるからだ。
が、アンシュラオンの精神はSSSである。常時姉の禍々しいオーラに晒されていた彼にとって、こんなものはたいした波動でもない。
単に趣味の悪い色としか思わず、そのまま無意識のうちに自分の支配下に治めてしまう。
その途端に、宝珠の色が落ち着いた白に変わった。
「あれ? 色が変わっちゃったけど…いいのか? でも、こっちのほうが真珠みたいで綺麗だな。よし、これもゲットだ」
革袋に乱雑に入れて、引きずることにする。
この宝珠がいずれ活躍することになるのだが、それはまたしばらく先の話だ。
こうして領主城を物色して歩いているが、本命がサナであることを忘れてはいけない。
そして、徐々にイタ嬢に近づいていることを証明するかのごとく、通路の中央に一人の男がいた。
今まで見た衛士とは違い、独特の鎧に身を包んでいる。
(あれは…魔獣の素材だな)
魔獣の中には金属質の鱗や皮膚を持つものがいるので、鉄鋼技術が完全ではない地域においては、そういった魔獣の素材を使って武具を作ることが多い。
あれはドノバ・トローム〈狂い咲く銅華〉と呼ばれる、全身が銅のような素材で出来ている植物系魔獣の素材を使って作られた鎧である。
ドノバ・トロームは第四級の根絶級魔獣なので、普通のハンターでは簡単に狩れる相手ではないし、その素材で作られた鎧の防御力は高い。
背中には斧を背負っており、身体つきもかなり頑強であることから素人ではないだろう。
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名前 :ペーグ・ザター
レベル:25/40
HP :720/720
BP :130/130
統率:F 体力: C
知力:F 精神: D
魔力:E 攻撃: E
魅力:F 防御: D
工作:F 命中: E
隠密:F 回避: F
【覚醒値】
戦士:1/1 剣士:0/0 術士:0/0
☆総合:第九階級
異名:イタ嬢様のスレイブ七騎士、忠犬ペーグ
種族:人間
属性:火
異能:忠実、身代わり、物理耐性、お嬢様への忠誠
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(忠犬ペーグ? ちょっと痛い異名だな。しかし、外の衛士たちとは比べ物にならない圧力だ。おそらく警備用のスレイブだろう。となれば、この先がイタ嬢の部屋があるエリアか?)
イタ嬢のスレイブ七騎士という異名からしても、彼女の身辺警護を行っている者たちであると思われる。モヒカンが斡旋したスレイブで間違いなさそうだ。
たしかに外の衛士よりは強い。武人の因子も覚醒しているので、衛士たちでは束になっても敵わないだろう。
ただし、アンシュラオンから見れば子供同然。よちよち歩きもまだできない赤子を相手にするようなものだ。
(ラブヘイアよりも弱いやつを相手にしてもしょうがない。さっさと行くか。…と、あれも装備しておこう)
アンシュラオンが、さきほど拾った【例のブツ】を装備する。
そのままゆっくりかつ堂々と通路を歩いていくと、十メートルほど手前でペーグが気がついた。
が、ペーグはアンシュラオンを凝視したまま硬直している。
それは白仮面に変装しているからではない。それはそれで奇抜な姿だが、さらに奇抜な格好になっているのだ。
「こんにちは」
「…こ、こんにち…は」
「あっ、夜だから『こんばんは』だね。こんばんは」
「ど、どうも…こんばん…は……」
ペーグは近寄ってくるアンシュラオンに呆気に取られているようだ。
その理由は、頭に被った薄紫色のパンティーだろう。ついでにブラジャーも装備してみた。
ここまで来たら、もう迷う必要はない。男はどんと勝負である。
「申し遅れました。通りすがりの変態仮面です。これ、名刺ね」
「あっ…は、はい。ど、どうも。…え? 整体師さん? その顔…いや、そのマスクで?」
「はい。これは患者の皆さんをリラックスさせるための余興です。けっして趣味ではありません」
「そ、そうなんですか。よ、よかった。もし本当にそういう人なら、どうすればいいのかわからないし…よ、よかったです」
「仕事内容は、主にお姉さんの身体を触って楽しみながら、ついでに身体の異常を治したりします。幼女も受け付けています」
「それは大丈夫なんですか? その、わいせつ行為とか、そういったものは…世間の波という意味でも」
「合意の上ですから大丈夫です。あくまで治療ですし、バレませんよ」
「それは役得ですね!」
「そうでしょうとも。そうだ。あなたも診てあげますよ。ほら、背中向けて」
「いいんですか? お高いんでしょ?」
「いえいえ、せっかく出会った縁ですから。今回は無料ってことで」
「そ、そうですか? いやぁ、悪いなぁ。最近腰が痛くて…」
後ろを向いて腰を突き出すペーグ。
「じゃあ、いきますよ。そのままでいてくださいねー」
「いやー、ドキドキするなー。こういうの初めてだし。痛くしないでくださいよー」
「大丈夫です。任せておいてください。取っておきのがありますから。取っておきのが」
アンシュラオンは鉄のハンマーを取り出すと、ゴルフクラブのように大きく振りかぶった。
そして、狙いをつけて―――
「チャーーーシューーーーーーメーーーーーンッ!!」
ブゥンッ
バッコーーーーーーーーーン!!
「っっ!?!?!?―――――――――――!?!?!!?!!?」
思いきり振られたハンマーが、ペーグの尻にヒット。鎧を陥没させながら突き上げた。
衝撃は尻から腰に至り、容赦なく粉々に砕く。
人間、痛みが強すぎると声も出なくなるらしい。
口をパクパクさせて悶絶―――からの気絶。
泡を吹いて倒れてるペーグ。
哀れな姿だが、これで腰を思い煩うこともないだろう。もう壊れたのだから。
「ふー、これにて一件落着! 腰はお大事にね。まあ、尻のほうがヤバイかもしれないけどさ。あっ、この斧はもらっておこうっと。あとは何かないかな…」
ペーグの斧はもらう。
それ以外にも鍵を持っていたので、それも奪った。
こんな男がいるのだ。イタ嬢の部屋は近いと見ていい。