※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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56話 「ファテロナ侍従長の性癖」

 

「人間、嘘はつけないもんだな。その子の首にあるのも精神術式のジュエルだろう?」

 

 クイナの首にあるリボン型チョーカーにも緑色の石がある。

 

 彼女もスレイブだ。それも相当可愛いので、あの場にいた白スレイブの中の一人だと思われる。

 

 

「白スレイブに友達の設定を刷り込んでいるんだな。その歳でたいしたもんだよ」

 

「な、何のことですか!」

 

「なあ、しらばっくれるなよ。オレにはわかっているんだぞ。お前が白スレイブに、どっぷりはまっていることなんてお見通しなんだ。オレもモヒカンの店に行っている。いまさら何を言っても弁解できないぞ。この子も二千万で買ったそうだな」

 

「っ!! どうしてそれを!?」

 

「モヒカンに全部聞いているんだよ。そろそろ諦めろ」

 

「あの店主…! 守秘義務があるはずなのに!」

 

「どう誤魔化しても事実は変わらない。お前がこの子を奪ったことも、スレイブを友達代わりにしていることもな」

 

「くっ…」

 

 

 その言葉にイタ嬢の顔が重く沈んだ。

 

 他人に自分の弱点を突かれると、これほどまでに痛いのかと、歯を食いしばって耐えている様子がうかがえる。

 

 

(ちょっとかわいそうだが、当然の罰だな。自分のやったことを悔い改めるがいい!!)

 

 

「あ、あなたに…! あなたには関係ないでしょう!」

 

 

 それでも抵抗してきた。そうでもしないと理性を保てないのだろう。

 

 案外まともな神経をしているようで、逆に意外に思えたくらいである。

 

 

「そんなお前にプレゼントだ。ほら、この子の代わりにこれでも抱いていろ」

 

 

 アイテム、【イタ嬢様の痛いお友達】を突きつける。

 

 

「なっ、それは…! どうしてあなたが持っているのですか!?」

 

「扉の前に投げ捨ててあったぞ?」

 

「そんな! ちゃんとわたくしのお友達部屋に入れておいたのに!!」

 

「だから、お前はみんなに嫌われているんだって」

 

「あなたには…」

 

「ああ、関係ないな。お前がオレに関わらなければ、何をしようと問題なかった。好きにすればいい。だが、この子はオレのものだ」

 

「その子は、わたくしが買いました!!!」

 

「買ったことは認めたな」

 

「先に買ったのは、わたくしです!」

 

「開き直りやがって。予約していたのはオレだ」

 

 

 両者ともサナを離さない。

 

 掴まれているサナは、至って無表情であるが。

 

 

「これじゃ泥沼だ。だから差額の八千万を示談金として用意した。文句はないだろう」

 

「ありありですわ!!」

 

「サインしただろう」

 

「受け取り拒否します!」

 

「ワガママお嬢様か。まあ、いい。勝手に出て行くさ」

 

「ぎゃあああ! 止まりなさいーーー! ずるずるずるーー」

 

 

 止まるわけがない。簡単に引っ張られる。

 

 そこでイタ嬢はさっそく援軍を呼ぶことにした。

 

 

 

「ファテロナ、ファテロナ、緊急事態よ! 賊よ! 助けて!」

 

 

 

(ファテロナ? ここに来る間に、何度かその名前を聞いたな。たしかマキさんくらい強いって話だが…)

 

 

 

 少し興味が湧いたところ、近くの部屋のドアが開き、一人の女性が出てきた。

 

 

 深緋色の髪をしたショートカットの女性で、癖毛なのかパーマをしたように強いウェーブがかかっている。

 

 顔はとても綺麗で、衛士たちが言っていたように紛れもなく美人だ。まったく足音を立てずに歩く姿から、一瞬で暗殺者か忍者だということもわかった。

 

 だが、アンシュラオンには、一つだけわからないことがあった。

 

 

 

(どうして―――【裸】なんだ?)

 

 

 

 イタ嬢が呼んだファテロナという女性は、服を着ていなかった。

 

 かろうじてブラジャーとパンティーは身につけているが、それ以外は生まれたままの姿だ。

 

 

「お嬢様、お呼びでしょうか(ビシッ)」

 

 

 眼鏡を上げる動作をするが、そこに眼鏡はないのでエア眼鏡上げである。

 

 だが、裸だ。

 

 

「敵よ、賊よ! 捕まえて!」

 

「お嬢様に仇なす者、けっして許しはしません!(ビシッ)」

 

 

 格好良くポーズを決める。

 

 だが、裸だ。

 

 

「って、ファテロナ、その格好はなんですの!? どうして裸なの!?」

 

「野党に襲われて身包みを剥がされました」

 

「一緒に帰ってきたじゃないの!」

 

「屋敷の中で襲われました」

 

「そんな馬鹿な!?」

 

「目の前に賊がいることが、その証拠です」

 

「そんな! ファテロナまで襲われたの!? なんて鬼畜なやつ!」

 

 

(初対面のはずだけどなぁ…)

 

 

「はっ、お嬢様! その手に持っているものは…まさか……」

 

「なに? どれのこと?」

 

「それです。その下着です」

 

 

 ファテロナがイタ嬢が持っている下着を見て驚く。アンシュラオンが拾った薄紫色のものだ。

 

 たしかに下着を持って歩くという状況は異常だが、その驚愕ぶりも異常だ。

 

 

「ああ、この下着はこの人が…」

 

「私が投げ捨てたはずなのに、なぜお持ちなのですか!!!」

 

「頭に被っ……え? 投げ捨てた?」

 

「はい。洗濯したお嬢様の下着を盗み出し、通路に投げ捨てました」

 

「…なぜ、そんなことを?」

 

「拾った男性の誰かが、それを使ってイヤラシイ液体をぶっかけ、また洗濯籠に戻すまで待っていたのです」

 

「イヤラシイ液体? なんですの、それ?」

 

「白くてどろっとしたものですが…ご存知なかったのですね。それならそれで、私としてもまた興奮…いや、心が痛むところです。あとはそれをこそっと持ち出し、お嬢様のタンスの中に仕舞い込む予定でした。それを見たお嬢様がどんな反応をするのか…はぁはぁ、楽しみでなりませんでした!」

 

「何を言っているのかわからないわ! どういうことなの!?」

 

「はっ、お嬢様! その手に持っているヌイグルミは…!」

 

「ああ、これね。これはこの人が…」

 

「私が投げ捨てたはずなのに、どうしてここに!」

 

「外に投げ捨てて……え?」

 

「お嬢様が大切にしているお友達のヌイグルミを、ニヤニヤしながら殴り飛ばし、蹴り飛ばし、扉に叩きつけても気づかない御姿に、私がどれだけ興奮したことか…!! はぁはぁ!! なんて鈍感な!!」

 

「な、何を言っているの? 意味がわからないわ!!」

 

「よいのです。それでよいのです。お嬢様はそれでよいのです!!!」

 

 

 ファテロナは、はぁはぁしながらヨダレを垂らしている。

 

 

(何か想像していたキャラと違うな)

 

 

 美人という情報しか聞いていなかったので、普通の侍従長をイメージしていたのだが、まったく違うキャラであった。

 

 

「はっ、あなたの持っているネックレスは…!」

 

「ん? これ? さっきあっちで拾ったよ」

 

 

 ファテロナが【緑のネックレス】を見つめる。さっきアンシュラオンが拾ったものだ。

 

 

「あっ、それはファテロナのスレイブ・ギアス!! どうしてあなたが持っているの?」

 

「だから拾ったんだけど…」

 

「それは私が投げ捨てたスレイブ・ギアス!! か、返してくださいませ!」

 

 

 やっぱりファテロナが自分で捨てたらしい。

 

 いらないので普通に返す。

 

 

「うん。はい」

 

「ああ、私の大切なスレイブ・ギアス…」

 

 

 ファテロナが大切そうにネックレスを握り締め、頬ずりしたあとに―――

 

 

 

「ああああああああああ! こんなもの!!」

 

 

 

 投げ捨てた。

 

 しかもこの世でもっとも憎いものを相手にしたかのように、思いきり叩きつけた。

 

 

「ええええええ!?」

 

 

 それに驚いたのがイタ嬢である。驚くのも無理はない。行動が謎すぎる。

 

 だが、裸のファテロナは、さらに顔を紅潮させて悶える。

 

 

「ああああ! お嬢様の驚く声! それが私にとっては…あああ!」

 

 

(このお姉さん、乳首が立ってるな。興奮しているのか?)

 

 

 気のせいでなければパンティーも若干濡れている気がしたが、そこはもう触れないことにした。

 

 

「というか、スレイブ・ギアスって取っていいの?」

 

 

 せっかくなので、一番気になっていたことを訊いてみた。

 

 

「はい、お客様。このスレイブ・ギアスというものは、精神が一定値以下でないと効かないのです。よって、私にはまったく意味がありません」

 

「全部のギアスがそうなの?」

 

「スレイブ・ギアスの質が問題なのです。この都市で取り扱っているジュエルは質が並なので、私には使えないということです。もっと上質のものならば効果は発揮されますし、自分で取り外せません」

 

 

(そういえばロリ子ちゃんにかかっていた術式も、あまり強いものじゃなかったな)

 

 

 ロリコン妻のジュエルを思い出す。質ももちろん、かかっていた術式も弱かった。

 

 単純に精神術式が難しく、機械で扱えるものには限界があることと、ジュエルそのものの質に問題があるのだろう。これは貴重な情報であった。

 

 

「お姉さんは、スレイブなんでしょ?」

 

「その通りでございます」

 

「それで成立するものなの?」

 

「ギアスがあろうとなかろうと、スレイブであることには変わりありません!(ビシッ)」

 

 

 ビシッと教えてくれた。

 

 だが、裸だ。

 

 

「どうして裸なの?」

 

「さっき服を脱ぎ捨てました」

 

「もしかして、このメイド服とかナイフもそう?」

 

「ああ、そうです! お嬢様からいただいた大切な物!! それが無造作に投げ捨てられ、大勢の人間に踏みつけられる!! なんて、なんて…」

 

 

 ぐっと身を縮込ませてから―――

 

 

 

「―――カイカン!!」

 

 

 

 ぐわっと両手を広げて高ぶる感情を表現。

 

 

 そして、アンシュラオンが一言。

 

 

(うん、変態だな)

 

 

 この世界には変態ばかりいる。

 

 変態が変態を呼ぶように、至る所に変態ネットワークが生まれているようだ。

 

 せっかくラブヘイアと別れたばかりなのに、また新しい変態との出会いが生まれてしまった。

 

 

(美人のお姉さんだからいいか。胸も大きいしね。というかイタ嬢のやつ、自分のメイドに好き勝手遊ばれているな。なんだか本当に哀れに思えてきたよ)

 

 

 ファテロナは完全にイタ嬢で遊んでいる。

 

 今も困惑している少女の顔を見て、ニンマリとした下卑た表情を浮かべているので、真性のSの可能性もある。

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前  :ファテロナ

 

レベル:42/50

HP :840/840

BP :480/480

 

統率:C   体力: E

知力:C   精神: C

魔力:E   攻撃: D

魅力:C   防御: F

工作:B   命中: B

隠密:A   回避: B

 

【覚醒値】

戦士:0/0 剣士:2/2 術士:1/1

 

☆総合: 第七階級 達験(たつげん)級 暗殺者

 

異名:イタ嬢様の侍女長、毒殺のファテロナ

種族:人間

属性:風、虚

異能:ハイブリッド〈混血因子〉、護衛、毒殺、分身、物理カウンター、毒無効、お嬢様への忠誠、お嬢様のトラウマを抉る趣味、お嬢様への歪んだ愛情表現、お嬢様の泣き顔は最高に快感

―――――――――――――――――――――――

 

 

(…まずい。姉ちゃん寄りの人だ)

 

 

 いろいろと女性を見てきたが、ここにきてパミエルキ側の人間に直面する。相当歪んでいそうだ。

 

 ただ、その対象が他人ならば特に問題はない。

 

 

(毒殺のファテロナ、か。なかなか怖い異名だな。オレには毒は効かないからいいけどね。ただ、この人はハイブリッドなんだな。術士の因子もあるから、なかなかの手練れだ)

 

 

 ハイブリッド〈混血因子〉は、剣士が生まれながらに同時に術士の因子を持つ場合を指す。

 

 この場合、通常の因子とは異なり劣化があまりないのが特徴で、修練すれば剣も術も相当なレベルまで使いこなすことができる。

 

 いろいろできるので便利だが、場合によっては器用貧乏で終わることもあるので、ハイブリッドだから強いというわけではない。

 

 マキとはだいぶHPや能力が違うが、同レベル帯の武人であることは明白だ。これらの違いは戦士と暗殺者の耐久力の差である。

 

 がしかし、ファテロナはイタ嬢に夢中のようだ。

 

 

「盛り上がっているようだから、オレは帰るよ。部外者がいたら邪魔だろうし」

 

「あっ、お待ちなさい!! ファテロナ、ファテロナ! この変態を止めて!!」

 

「………」

 

「ファテロナ、聞いているの!?」

 

「ううっ!!」

 

 

 ファテロナが突如、ぶわっと涙を流す。

 

 

「な、なんで泣くの!?」

 

「実はさきほどから、ずっと会話を聞いておりました」

 

「聞いていたなら話が早いわ! あいつを倒しなさい!!」

 

「わかっております。わかっております。ついに、ついにお嬢様にも【本当のお友達】ができたのですね!!」

 

「えーーー!? 何を聞いてたの!?」

 

「お友達と喧嘩をするまでになるなんて。ようやく、ようやく、普通の友達が!! フ・ツ・ウの! ノーマルの!! 極めて普通のお友達が!! できたのですねえええええ!」

 

「やめてぇええええ! 普通よ! ずっと普通だったもの!!!」

 

「いいえ、違います!」

 

「っ!!」

 

「こんなものは友達じゃないのです! こんなものは!!」

 

 

 ヌイグルミを引ったくり、床に叩きつけ、何度も足蹴にする。

 

 哀れ、ヌイグルミはズタボロになって中から綿が飛び出る。ついでに目玉も飛び出る。

 

 

「オスカルーーーーー! わたくしの友達がーー!」

 

「こんなものは友達じゃないのです!」

 

「わたくしのオスカルに何をするの!?」

 

「こんなものに毎晩話しかけ、『明日は一緒に遊びに行こうね』とぎゅっとしたりして、お嬢様はいったい何歳なのですか!!」

 

「やめてーーー!! 言わないでーーーー!」

 

「本当の友達とは、もっとこう、お互いをわかり合うために時間をかけるもの!! スレイブなど所詮は友達ではないのです!! ほら、この通り、スレイブ・ギアスなんて何の意味もない!」

 

 

 床に落ちているネックレスを踏みにじる。

 

 ガシガシと何度も足蹴にした。

 

 

「…うっ、うう…うう……ファテロナの馬鹿あぁああああ! うあぁああああ~~~~ん!!」

 

「ああああ! かわいそうなお嬢様!! もっと、もっと泣いてください!!!! やっはぁぁああぁぁぁっぁああああ!! さ、最高!!」

 

 

 身悶えるファテロナ。

 

 

(…帰ろう。こいつはもう終わりだ)

 

 

 助けを求めた侍女長に攻撃され、イタ嬢様の心はズタズタだ。

 

 当然の罰であるが、アンシュラオンはもう飽きたので、さっさと帰ろうと思った。

 

 

 

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