※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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57話 「領主登場、深まる対立」

 

「じゃあ、そういうことで」

 

「ま、待ちなさい…待って……」

 

「最初より元気がないじゃないか。どうした、イタ嬢様」

 

「イタッ!? いたい、いたい、いたい!! どうしてなのか、その名前はすごく痛いですわ!!!」

 

「お前の素敵なニックネームだろう? 街じゃ、お前のことをみんなそう呼ぶ。しょうがない。スレイブを友達にして自己満足に浸っているやつだからな。そりゃ引くわ。ドン引きだ」

 

「ひいっ!!! 嘘、嘘よ!!! 知らない! そんなの知らない!」

 

「さよなら、イタ嬢様。クイナちゃんと仲良くな。その子は頭がいいから、ちゃんとお友達ごっこに付き合ってくれるだろうさ。二度と会うことはないだろうけど元気でな」

 

「ま、待ちなさい! あなたは、あなたはその子をどうするつもりなの!?」

 

「決まっている。オレのものだから好きなようにする。一緒に寝て、お風呂に入って、ご飯食べて、ちゅっちゅして、ナデナデして、抱っこするんだ」

 

「わたくしより最低ですわ!!! なんですか、それは! ただの姦淫ではありませんか!!!」

 

「お前と一緒にするな。愛情を確かめ合う共同作業だ」

 

「一方的でしょう!!」

 

「そんなことはない。お前のように一方的に人形にはしない」

 

「いいから、クロミを放しなさい!」

 

「はっ? クロミ?」

 

「その子の名前よ! わたくしが付けた、ね。黒いからクロミ。いい名前でしょう?」

 

「壊滅的なネーミングセンスだな」

 

「あなたには聞いていないわ! クロミ、こっちにおいで!」

 

 

(何を言っているんだ。こいつは…)

 

 

 と、アンシュラオンが思ったとき、腕の中にいたサナが、もぞもぞと動く。降りたそうにしている。

 

 

「なんで…ああ、そうか! スレイブ・ギアスか!」

 

「クロミは私と契約しているのよ! 命令には逆らえないわ!」

 

「お前、友達に絶対服従を強いているのか。本気で最低だな。だから白スレイブを探していたんだな。痛い女だ」

 

「あなただけには言われたくないわ!! ファテロナ、捕まえて!」

 

「嫌です」

 

「嫌!?」

 

「お友達同士のやり取りに、メイド風情が割って入るのは道理に合いません」

 

「と、友達ってそういうものなの?」

 

「そうです。思いきり感情をぶつけ合うのです!! 激しく! 燃えるように! あああああ!」

 

 

 思いきりオスカルを引き裂く。

 

 

「オスカルがー! ファテロナ、言うことを聞きなさい!」

 

「私はお嬢様のスレイブではありません。あくまで領主様のスレイブです」

 

「そ、そうだけど! 私のお付きでしょう!」

 

「ごらんの通り、裸です」

 

「脱いだのはファテロナじゃないの!」

 

「ナイフもなくしたので無防備です。そういうわけですので、私はここで見ております。はぁはぁ。もっとお嬢様が苦しんでくれれば最高なんですが……泣け、早く泣け! クカカカカ」

 

 

 涙ぐむイタ嬢を観察して興奮するファテロナ。相当歪んでいる。

 

 

「いいわ! あなたにはもう頼まないから! 出あえー、出あえー! 侵入者よ! 私の七騎士、出てきなさい!!」

 

 

 イタ嬢が廊下のスイッチを押すと警報が作動。

 

 その音を聞きつけて六人の騎士が走ってきた。どうやら通路の東側は彼らの待機室だったようだ。

 

 

(ああ、あそこにいたやつに似てるな)

 

 

 忠犬ペーグのような魔獣の鎧に身を包んだ男たちが、息を切らせながら整列する。

 

 

「お、お嬢様! お呼びでしょうか!」

 

「よく来たわね、私の七騎士! そうよ、曲者よ! ついにあなたたちの出番がやってきたのよ!」

 

「それは…はぁはぁ、ありがたいことで…ぜぇぜぇ」

 

「なんで息切れしているのよ!」

 

「何年も出番がなかったものでして…少し運動不足で…」

 

「何をやっているの! 毎日ぐーたらしているからでしょう!」

 

「申し訳ありません! タダ飯が美味くて、ついうっかり!!」

 

「ほら、さっさとあいつを捕まえて!」

 

「了解しました!!」

 

 

 ちなみにペーグがいないことには誰も気がついていない。

 

 

「よ、よし、みんな! ついに我々の出番だ! お嬢様のために戦うのだ!」

 

「お、おう! や、やろうぜ!」

 

「じゃあ、あれか? やるっていうなら、最初はあれだろう?」

 

「おっ、あれか? できるかな?」

 

「あんなに練習したんだ。やれるさ」

 

「い、いくぞ! 隊列はいいな? いっせーのー!!」

 

 

 何やら七騎士、もとい六騎士が何かをやっている。どうやら隊列を組んでポーズを決めたいらしい。

 

 イタ嬢に雇われてから三年。侵入者などまったくやってこないので、日々肥えていき、衰え続ける自分たちに危機感を感じていた。

 

 何よりも、その存在意義に疑問を感じていた。

 

 そんな彼らにとってアンシュラオンの出現は大歓迎である。

 

 そして、ついに三年かかって修得した決めポーズが発動する。

 

 

「俺の名前は、韋駄天のグ―――」

 

 

 ドスッ

 

 

「私の名前は、強撃のゴ―――」

 

 

 ドスッ

 

 

「わたすの名前は、大壁のベ―――」

 

 

 ドスッ

 

 

「オラの名前は、震天のプ―――」

 

 

 ドスッ

 

 

「オイラの名前は、千軍のヌ―――」

 

 

 ドスッ

 

 

「ミーの名前は―――」

 

 

 ドスッ

 

 

 

 

「「「「「「 お嬢様…どうかお元気で―――がくっ 」」」」」」

 

 

 

 

「私の七騎士が―――!!!」

 

 

 

 彼らがポーズを決めている間、アンシュラオンが腹を殴って回ったのだ。

 

 七騎士、一度も戦闘せずに全滅である。

 

 

「ちょっと!! どうして待たないの!!」

 

「男の決めポーズなんて見て楽しいか? オレは楽しくない」

 

「なんなのよーーー! なんなの、なんなの、なんなのーーーー!! あなたは何なのよーーーー!!」

 

「だから白仮面だって。それじゃ―――」

 

 

 

「これは何事だ!」

 

 

 

「あっ、お父様!」

 

 

 アンシュラオンが帰ろうとしたとき、騒ぎを聞きつけたのか、一人の男性が護衛の騎士二人と一緒にやってきた。

 

 領主城内に響いているので、これだけ警報が鳴っていれば気がつくのは当然だろうか。

 

 

(お父様? …もしかして、あれが【領主】か?)

 

 

 目の前にはヒゲを生やした五十代くらいのおっさんがいた。

 

 西側の貴族を少し意識したような豪華な赤い服を着て、頭には羽付き帽子も被っている。それだけ見れば、たしかに貴族に見えなくもない。

 

 が、顔はどちらかというと普通以下なので、あまり似合っているとはいえない。

 

 

(家の中で着るには不便そうな服だな。まあ、おっさんの服の趣味なんてどうでもいいけどさ)

 

 

 領主はいつもこんな格好をしているわけではない。今日が特別な日だからだ。

 

 ただ、そんなことを知らないアンシュラオンにとっては、そういった趣味のおっさんとしか映らないし、同時にそれでもまったく問題ないことである。

 

 それより重要なことは、この男が領主であるということ。

 

 

(領主か。こいつも娘と同じく、オレの物に手を出したやつなんだよな。このまま出会わなければ見過ごしてやろうと思ったが…どうするか)

 

 

 サナを取り戻したので、もうここには用事はない。

 

 あるとすれば報復だが、イタ嬢はあまりに痛いので見逃してもいいとは思っていた。領主はすでに若干忘れていたが、今こうして出会うと少しばかりの怒りも湧いてくる。

 

 まずは相手の出方をうかがおうと、アンシュラオンはじっと立っていた。

 

 案の定、イタ嬢が助けを求める。

 

 

「お父様、この人が私のクロミを!」

 

「クロミ? 何だ、それは?」

 

「昼間買ったスレイブですわ! 彼女がクロミです!」

 

「ああ、そうだったな。…あれか」

 

 

 領主は、アンシュラオンに抱かれているサナに視線を移す。

 

 その目には、娘に買ってあげた【玩具】、という以上の感情は見られない。

 

 

「クロミがさらわれそうなの! 助けて!」

 

「あいつは誰だ?」

 

「知らない人よ! 賊だわ!」

 

「まったく、この忙しい時に…たかが玩具で…」

 

 

 領主にとっては、そんなことよりも大事なことがある。それを邪魔された怒りのほうが強かったようだ。

 

 加えて、イタ嬢は彼にとって大事な娘。唯一の跡取りである。そのため、こういった口調になる。

 

 

「なんだ、お前は! 娘の玩具をどうするつもりだ! あれはわしが買ったものだぞ! この盗人が! どうやって入った!」

 

「盗人…だと?」

 

「そうだ。他人の物を奪えば盗人だ。それ相応の罰が与えられるぞ。いくら子供とて罪は変わらない」

 

 

 わかってはいた。そうなると予想していた。

 

 だが、実際にそう言われるとイラッとするものだろう。

 

 

「そうだったな…。そういうやつだっていう可能性も十分あったな。オレも大人になったつもりだったが、ムカつくものはムカつくな。いや、相当ムカつくな、こいつは」

 

 

 ぶつぶつと独り言のように呟きながら、改めて怒りが湧き上がるのを感じた。

 

 領主に興味はなかったが、これによってアンシュラオンは、ただで帰るわけにはいかなくなった。

 

 

「お前が領主か。人の物を奪っておきながら、その言い方はムカつくな」

 

「奪ったのはお前だろう!」

 

「この子はオレが予約していたものだ。それを奪ったのはお前だ」

 

「お前だと? 領主に向かって、その口の利き方はなんだ!?」

 

「おい、論点をすり替えるなよ。お前が奪った話をしているんだぞ」

 

「わしは何一つ奪ってはいない」

 

「スレイブ館で白スレイブを、この子を買っただろう。先に予約していたのはオレだ」

 

「それがどうした。先に金を払ったのはこちらだ。それ以前に、この都市はディングラスの個人都市だ。嫌なら出て行けばいい」

 

「出て行くという点に関しては、オレもそれでまったく問題ないが…所有権に関しては譲れないな。それにそこまで言われたら、詫びを入れてもらわないと収まりがつかないぞ」

 

 

 サナを抱きながら領主に一歩一歩近寄る。

 

 その気配を察して、護衛の騎士二人が前に出る。首にジュエルがあるところを見ると、彼らもスレイブのようだ。

 

 

「おい、そのスレイブは市民権を持っているのか?」

 

「スレイブに市民権など必要なかろう! 早くそいつを捕らえろ!」

 

「はっ! ただちに!」

 

「そうか。それを聞いて安心した」

 

 

 アンシュラオンの手が―――伸びる。

 

 高速で放たれた一撃は誰の目にも捉えられることなく、護衛の騎士の腹に突き刺さった。

 

 鎧を壊し、皮膚と筋肉を抉り、さらに貫く。

 

 覇王技、羅刹(らせつ)。

 

 手に鋭尖の戦気をまとわせ、貫手(ぬきて)で相手の肉体を抉る技である。非常に速度が早い技であり、初速では最速ともいわれている。

 

 騎士も、気がついた時には、すでに腹に穴があいていたという状況だ。

 

 

「なっ…が……これは…!?」

 

「どうした? ほら、引き抜いてみせろよ」

 

「ぐううっ、くうっ!! ぐぐあああ、手が! 手が焼ける!!」

 

 

 アンシュラオンが戦気を放出し、腕の周囲をガードする。

 

 それだけで騎士は、アンシュラオンの腕に触れることができず、それどころか近寄っただけで自分の手が焼け崩れていく。

 

 両手の指が完全に消失。もはや武器すら持てない状態に陥る。

 

 ガタンッと持っていた剣が落ちた。

 

 

「ははは。それじゃ鼻くそもほじれないな。そんなやつを守るからだぞ。では、もう一つ罰を与えてやろう」

 

 

 アンシュラオンが軽く蹴った瞬間―――男の両足が吹っ飛ぶ。

 

 ほとんど触れてもいないのに、戦気の余波だけで足が消え去った。支えるものが失われ、がくんと男は通路に崩れ落ちる。

 

 

「ぐっ、ひっ、ひぃいい! あ、足がぁあああ!」

 

「あはははは! まるで虫けらだな! どうしたんだ、おい。オレを捕まえるんじゃないのか? なあ、おい」

 

 

 倒れた騎士の頭を、足でぐいっと押す。

 

 だが、騎士はそれどころではないようで、ただただショックを受けて悶えている。

 

 その様子にアンシュラオンは興醒め。

 

 

「つまらんな。もう終わりか。安心しろ、命までは奪わないさ。これからも這いずって、こいつに媚を売って生きるんだな。まあ、使えなくなったスレイブがどうなるかは知らないけどさ。…ほら、早く治療しないとお仲間が死ぬぞ」

 

 

 その言葉に、慌ててもう一人の騎士が駆け寄って応急手当を行う。

 

 抉られた腹は焼かれており、出血は止まっている。だが、ショックのほうが酷くて、スレイブはすでに失神してしまっているようだ。

 

 まだ生きているのは、強靭な生命力を持つ武人の因子があるからだろう。そうでなければ、すでに死んでいたはずだ。

 

 

「なっ…!! これはいったい!!」

 

 

 領主は、何が起こったのか理解できていないようである。

 

 娘よりも若く見える背の小さな男が、簡単に護衛のスレイブを倒したのだ。驚くのが普通である。

 

 

「さて、次はお前だな」

 

 

 それから領主に向かう。そもそものターゲットは領主だからだ。

 

 

 

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