※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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601話 「無頼者、強襲 その1『キングの死』」

 

「さあ、どうしたよ。大の武人どもが雁首そろえて突っ立ってよ。いくらでも何人でもかまわないんだぜ。オレは一向に構わん!!ってやつかな。カカッ!!」

 

 

 クロスライルが挑発を続けるも、誰もが動けなかった。

 

 この場にいる者たちはレプラゴッコの力をよく知っているがゆえに、彼らを惨殺したクロスライルの力量がわかるのだ。

 

 ただ、こちらが黙っていれば相手は何もしない、などという甘い世界ではない。

 

 

「ノリの悪いやつらだね。それじゃ、こっちから火を付けてやるかな。手頃なやつはっと…ああ、いたいた。あれでいいか」

 

 

 クロスライルの視線が『観客席』に向けられる。

 

 ちょうどそこには試合観戦に来ていたブローザーがいた。

 

 すでにお忘れかと思うが、最初にレイオンと戦ったハングラス所属の戦士タイプの武人だ。

 

 彼は試合には出ていない予備人員として、選手の代わりにマングラスの情報を得ようとしていたサポーターの一人。

 

 スタメンから外れてもチームのために尽力する献身性は、実に見事である。

 

 こうした協調性こそハングラス最大の力であり、魅力であるといえるだろう。

 

 だが、ここではそれが最大の不運。

 

 クロスライルが跳躍し、一気に彼のもとまで到着。

 

 呆気に取られているブローザーの手を握る。

 

 

「初対面だからな。握手しようぜ」

 

「あ、あくしゅ―――ぐあっ!」

 

 

 クロスライルの手がぐぐぐと締まり、掌を圧迫していく。

 

 ブローザーはレイオンに惨敗したものの、黒拳の呼び名があるほどには腕力に定評があり、石くらいなら簡単に片手で握り潰せる男である。

 

 その右手が―――

 

 

 ぐぐぐっ バキボキッ

 

 

 いとも簡単に潰される。

 

 

「うぐうううっ!!」

 

「ちゃんと力を入れてたか? 油断しちゃいけないな」

 

「こいつ…!!」

 

「おっと」

 

 

 右手を潰されて激怒したブローザーが左手で殴りかかるが、クロスライルは簡単にかわし、逆に拳を叩き込む。

 

 拳は顎にクリーンヒット。

 

 沈みながら放ったアッパーカットだったので、あまり体重が乗っていない軽い一撃にもかかわらず―――

 

 

 ぼんっ

 

 

 ブローザーの頭部が消えた。

 

 これには何のトリックも仕掛けもない。

 

 文字通り、衝撃で頭が粉々に吹き飛んでしまったのだ。

 

 ただし、これにはクロスライルのほうが驚く。

 

 

「おおーーーい!! 死んじゃったよ!! これくらいで死ぬか、普通!? なんか罪の意識を感じるぜ!!」

 

 

 これだけのレベル差になると手加減も難しいらしい。

 

 アンシュラオンがいかに普段から過剰に手加減をしているかが、これによってわかるだろう。

 

 虫を殺さないように押さえつけることは、とても繊細な作業なのである。

 

 また、それができることが力のコントロールという意味合いでも重要なのだ。

 

 クロスライルに関しては、もともとそんな気が毛頭なかったことが大きな要因であろう。

 

 

 

「貴様、そこで何をしている!!」

 

 

 ハングラスの観客席側から、一人の男が飛び出てきた。

 

 長剣とカイトシールドを装備したニットローである。

 

 サナに敗戦したショックで試合には出ていないが、ハングラスを代表とする剣士の一人であり、今回は会場警備の任に就いていた。

 

 その彼が騒ぎを聞きつけてやってくるのは当然のことであろうか。

 

 そして、そこでブローザーの死体を発見。

 

 

「この服は…ブローザーか!? なんとむごいことを!! 試合にも出ていない者を襲うとは卑劣な輩め!」

 

「いやぁ、卑劣って言われてもなぁ。こういう場合、防げないほうが悪くね?」

 

「なんたる言い草!! ルール違反は厳罰だ!! どうなるかわかっているだろうな!!」

 

「さあ、どうなるんだろうな? あんたが教えてくれるのかい?」

 

「痴れ者が!! 取り押さえてやる!!」

 

 

 ニットローが、クロスライルに盾を向けたまま突進。

 

 試合会場を荒らし、仲間を殺した者に対して手加減をするわけもなく、全力で突っ込む。

 

 彼はアンシュラオンによって治療されているので、肉体的な怪我はほぼ完治している。その点は問題ない。

 

 だがしかし、大きな勘違いをしている。

 

 これだけの相手に「取り押さえる」などと言ってしまうあたり、彼もまったく空気が読めていないことがうかがえる。

 

 もともとそういうタイプの人間だが、今回ばかりは相手が悪すぎた。

 

 

 結果―――ずずっ

 

 

 ニットローが構えた盾の裏側に何かが侵入してきた。

 

 盾を持つ者にとって、その裏側はこの世でもっとも安全な場所に感じるはずだ。何度見ていても飽きないに違いない。

 

 ならば、この違和感たるや相当なものであろう。

 

 

(…指?)

 

 

 それに気づいた瞬間には、もうすべてが遅かった。

 

 指が手となり、手が腕となり、そのまま腹を―――貫く!

 

 

「っ―――! がっ…がぁあぁぁ…!!! なっ…これ……は!?」

 

「なんだい、これ? ベニヤ板で出来ているわけじゃないよな? もうちょっと硬くしようぜ」

 

「ば、馬鹿…な…! た、たて…たてたて……たて!! これは盾だぞおおおおおおお!!」

 

「そんなに『縦』が好きなのかい? じゃあ、お望み通りにしてやろうかな」

 

「ま、まて…! まままっ…まって―――」

 

 

 クロスライルの突き刺さった手刀が、ゆっくりと真上に押し上げられる。

 

 戦刃となった腕は貫いた盾を切り裂きながら、同時にニットローの胸に到達し、喉、頭を突き進んで真上に突き抜けた。

 

 

 ブシャーーーッ ごとん

 

 

 上半身が真っ二つに裂けたニットローが倒れ、絶命。

 

 あの当時は魔石がなかったとはいえ、サナでさえ彼の盾を破壊することはできなかったのだ。

 

 それを簡単に破壊するクロスライルの力は、明らかに想像を絶したものであった。

 

 

 

 

「こりゃ困った。マジでウォーミングアップもできないのかよ! どんだけー!!」

 

 

 クロスライルが周囲を見回すが、彼の御眼鏡に適うような武人はいない。

 

 それも仕方がない。地下のレベルなんてそんなものだ。

 

 グラス・ギースの武人の実力など、一部を除いてその程度である。

 

 が、多少ましな連中もいるのは事実だ。

 

 

「ほいっと」

 

 

 クロスライルが身体を捻ると同時に、背後から迫ってきた水の刃が通り過ぎる。

 

 水刃砲の術符だ。

 

 振り返ると、そこにはセクトアンクの姿があった。

 

 このあたりは省略したが、カスオの試合が長引いたため、サナとの戦闘から一時間以上は経っている。

 

 彼の傷も完全に癒え、なおかつ命気によって身体の調子も全盛期に近いレベルにまで回復していた。

 

 そうして気分良く、ブローザーたちの様子を見にやってきたのだが―――

 

 

 

「馬鹿たれがぁあああああ!! 若いもんを殺しおって!!」

 

 

 

 彼の目には、怒りと悔恨の感情が宿っていた。

 

 この惨状を目の当たりにしたのならば、誰だってそう思うに違いない。

 

 特にセクトアンクは引退が近いと実感しているため、若い者たちの成長を楽しみにしている面が強かった。

 

 だからこそ若い武人たちを殺されたことが許せない。

 

 

「あんた、キングとか呼ばれていたやつだっけ? 試合、見てたぜ。『ショー』としてはなかなか面白かった―――よっと!!」

 

 

 パンパンッ!

 

 セクトアンクはクロスライルの言葉が終わる前に、すでに銃を抜いて撃ち放っていた。

 

 

「客たちの避難誘導を急げ! もう試合ができる状況ではない!」

 

「は、はい!!」

 

 

 セクトアンクが、ハングラス派閥の警備員に観客たちの避難を呼びかける。

 

 相手が凶暴な獣であることは一目瞭然。

 

 元ハンターとして、あるいは武人として、本能的に話し合いなどは通じないと理解していた。

 

 

「いいね。あんたはオレを楽しませてくれるのかな?」

 

 

 そんなセクトアンクたちを見て、クロスライルは笑っていた。

 

 彼からすれば蟻の巣に水を注入して、慌てふためく姿を観察しているようなものなのだろう。

 

 

「………」

 

 

 セクトアンクは余計な問答はしなかった。

 

 すでに戦闘モードに入り、思考を巡らせているからだ。

 

 経験豊かな彼だからこそ、対峙した瞬間に相手の実力がわかる。

 

 そうして導き出された結果が、これ。

 

 

(二秒すら、もたぬ!)

 

 

 まともに戦えば、自分も目の前で死んでいる二人と同じ末路を辿るだろう。

 

 さきほどクロスライルをサナと比べてしまったが、それは彼に対して極めて非礼である。

 

 次元が違いすぎた。

 

 行動からして性格が危ないのはわかるが、それ以上に単純に強すぎる。

 

 セクトアンク自身、これだけの力量を持った相手と対峙するのは初めてのことだ。

 

 本当ならば今すぐにでも逃げたいところだが、まだ観客の多くは完全に状況を把握しておらず、逃げ遅れるどころか呆然と突っ立っている者さえいる。

 

 地下でも派閥争いはあるので、他派閥の人間に余計な気遣いはできないが、ここで死んでいいとも思わない。

 

 同じ地下送りになった人間として、同胞としての愛情があるのだ。

 

 

 なればこそ、なりふりを構ってなどいられない。

 

 さきほど補充したばかりの術符を大量に取り出すと、周囲にばらまく。

 

 

 ボボボボボボンッ

 

 

 完全に計算されたタイミングで、術符がコンマ一秒ごとに起動を開始。

 

 その光景は、まるで爆竹。

 

 連なった術符がその中心部にいるクロスライルに向かって、水の刃やら風の刃やら、火の塊となって飛んでいく。

 

 『連結術符起動』とも呼ぶべきだろうか。

 

 繊細でデリケートな術符をこれだけ自在に操れるのは、極めて優れた技術である。

 

 サナ戦でも使わなかったことを見ると、おそらくはこれがセクトアンクの奥の手なのだろう。

 

 

「器用なことするね」

 

 

 クロスライルは見事な術符の扱いに感嘆しつつ、戦気壁を生み出しながら後方に跳躍。

 

 これだけの量だ。さすがに多少被弾したが、すべてを戦気壁で防いでしまった。

 

 『対術三倍防御の法則』でいえばあの戦気壁は、最低でもセクトアンクの魔力の三倍以上の防御力を誇っていることになる。

 

 

(相手も本気ではない。これで時間が稼げるか?)

 

 

 セクトアンクはサナとの試合でそうしたように距離を維持しながら、あらゆる武器を使ってクロスライルを牽制する。

 

 そのすべては軽々とかわされてしまうが、そんなことでいちいち驚きはしない。

 

 重要なことは一秒でも長く時間を稼ぐことなのだ。

 

 アンシュラオンも常々そうだが、あまりに実力差がありすぎるため、クロスライルは積極的に攻撃を仕掛けてこない。

 

 それによって、客が退避する時間を稼ぐことに成功する。

 

 

 

「おや、援軍が来たかな? 遅いお出ましだね」

 

 

 そうして時間を稼いでいると、ハングラス側から援軍がやってきた。

 

 選手として参加しているツァシャド(戦士タイプ)が、警備部隊を引き連れてやってきたのだ。

 

 ハングラスが実権を握る地下では、各派閥専用の地域を除き、彼らが治安を維持する責任があった。

 

 

「キング!! 無事か!!」

 

「迂闊に近寄るでないぞ! とんだ化け物よ!」

 

「人を化け物呼ばわりたぁ、酷いね。傷ついちゃうよ? こう見えてもまともな部類なんだぜ。まだ人型を保っている段階でな。カカッ!」

 

「なめおって!! 上のマングラスなどを信用するから、こうなるのだ!! 撃て!」

 

 

 警備隊が銃を発射。雨のように銃弾が注がれる。

 

 今回ハングラスはかなり本気で試合に臨んでいたようで、警備商隊レベルの武装を用意していたようだ。

 

 銃の型は木造式で古いが、中身はしっかりと貫通弾が装填されている。

 

 

「ほっと、よっと、ほほいっと」

 

 

 それをクロスライルはステップを踏みながら、ひょいひょいとかわしていった。

 

 彼の目には銃弾がスローモーションに見えているのかもしれない。

 

 それどころか、デコピンで跳ね返す。

 

 弾かれた弾丸は、撃った当人に真っ直ぐ向かっていき―――

 

 

「ぶへっ!?」

 

 

 見事顔面に命中。

 

 鼻に当たり、さらに貫通して後頭部を突き抜けて死亡。

 

 撃った時よりも強い威力で跳ね返る弾丸とは、なんとも皮肉なものである。

 

 その芸当を何度も行い、次々と警備隊は倒れていった。

 

 

「なっ!! 何者なのだ、こいつは!!」

 

「そんなんじゃ、いつまで経っても変わらないぜ。何か面白いことをしてくれよ」

 

「ツァシャド、通常弾でよい! 援護せい! こっちが合わせる!」

 

「はっ、はい!!」

 

 

 どうやらセクトアンクは、派閥内でかなり信頼されているようだ。

 

 自身に才能がないことがわかっているからこそ、キングになっても驕り高ぶらない姿勢が慕われるのだろう。

 

 ツァシャドたちが指示通り、通常弾を放つ。

 

 その間を縫うように走りながら、セクトアンクは煙玉と同時に大量のカプセルを放り投げた。

 

 

「ははは、忍者っぽいね」

 

 

 クロスライルは、見た瞬間にそれが大納魔射津であることを察知。

 

 さきほどやったようにステップを踏んで、銃弾をよけながら遠ざかる。

 

 だが、これだけで終わるのならば、セクトアンクはキングと呼ばれていない。

 

 セクトアンクは、足元に転がったカプセルを次々と蹴る。

 

 蹴られたカプセルは―――

 

 

 ガッ ゴンッ ガッ ごろんっ

 

 

 放たれた銃弾の側面に当たって弾かれ、右に左にと方向を変えながらクロスライルが逃げた方角に飛んで―――爆発!

 

 

 ドドーーーーンッ ドンドンッ!!

 

 

 これはまさに神業。

 

 誰がどのタイミングで銃を撃つかを把握していなければ、こんな芸当は絶対にできない。

 

 これも長年地下におり、周囲の人々を観察して特徴を把握している努力の賜物である。

 

 日々の生活の小さなことにも気を配る。それこそが正しい武人の在り方であろう

 

 がしかし、そんなものさえ簡単に凌駕してしまうものが、この世にはあった。

 

 

「ふー、やるねぇ。驚いたよ」

 

 

 煙の中からクロスライルの姿が浮かび上がる。

 

 服には汚れ一つない。咥えたタバコもそのままだ。

 

 大納魔射津の爆風を受けても、この男は無傷であった。

 

 

(なんという気質なのだ)

 

 

 セクトアンクは、クロスライルが身にまとっている戦気の質に驚く。

 

 今の奇策は、あえて意表をついて戦気を乱れさせる目的もあったが、一切影響を受けていない。

 

 こんなことがあってもまったくブレない。まったく動じない。

 

 この男は誰も頼っていない。自分しか信じていない。だからこそ強い。

 

 溢れ出るエネルギーのすべてが、余すことなく力となり、自負となって身を守っているのだ。

 

 

 

(死ぬしかないか)

 

 

 ここでセクトアンクは、命を捨てることを覚悟した。

 

 

「ツァシャド、お前たちは逃げろ!」

 

 

 取り出した術符を身体に貼り付けると、一直線にクロスライルに接近。

 

 クロスライルは逃げない。逃げる意味がないからだ。

 

 それは彼が発する戦気の強さによってわかっていたことである。

 

 だからこそ、それが最初で最後の油断となる。

 

 セクトアンクが抱きつくようにクロスライルにタックルした瞬間、術符が発動。上下に大きな剣山が出現した。

 

 サナにも使った『対重刺縛陣(たいじゅうしばくじん)』である。

 

 ただし、これだと簡単に逃げられてしまうため、ここでまた工夫が必要となる。

 

 セクトアンクは移動する際に剛糸を放っており、自身とリングを固定していた。

 

 そして、自分ごと罠にかかる。

 

 

 ガッシャーンッ! ザクザクザクッ!!

 

 

 大きな針が二人を突き刺し、トラバサミのように挟み込む。

 

 サナは上半身の針を破壊することで致命傷を避けたが、普通にかかれば全身が串刺しとなる恐ろしい術式だ。

 

 強力な魔獣用の罠のため、武人であっても挟まれれば死ぬ可能性が極めて高い。

 

 彼は命を捨ててまでクロスライルを足止めしようとしたのだ。その心意気は立派である。

 

 

 しかし、ここでも二つの不運があった。

 

 

 一つはクロスライルが、通常の武人とは規格がまったく違うこと。

 

 もう一つは、この術式を一度見ていたことだ。

 

 

「罠ってのは、あくまで相手をはめるもんだ。自分から強引に仕掛けても効果は半減する。いつもとは違う戦場で焦っちまったようだね」

 

 

 クロスライルは罠にかかっておらず、リングの上に座りながら、タバコを吹かしていた。

 

 実力的に多大な余裕があったクロスライルは、セクトアンクの動きを冷静に観察することができていた。

 

 術式が発動した瞬間、身体から剛糸を切り離し、セクトアンクを蹴り飛ばした反動を使ってリングにまで退避。

 

 それがあまりに一瞬だったので、誰の目にも理解できなかっただけだ。

 

 よって、哀しいかな、セクトアンクは自爆しただけとなる。

 

 

「ぐう…ぐうう……あの間合いで…かわすとは……」

 

「悪いね。育ってきた環境が違ったのさ。それじゃこれ、返すよ」

 

 

 クロスライルは、ポケットからカプセルを二つ取り出し、罠にかかって動けないセクトアンクに放り投げた。

 

 いつくすねたのか、それはセクトアンク自身がさきほど投げた大納魔射津のうちの二つであった。

 

 

「な…ぜ―――」

 

 

 セクトアンクの言葉は、「なぜ爆発しなかった?」と続いたのかもしれないが、それが最後まで紡がれることはなかった。

 

 大納魔射津が至近距離で爆発。

 

 

 ドドーーーーーンッ!!

 

 

 セクトアンクの身体は吹っ飛び、頭部も半壊して絶命した。

 

 もともと身体能力の高い武人ではなく、罠にかかったことで十分な戦気を張ることもできなかったようだ。

 

 

「これがキングか。悪くはなかったが、こんなもんかね。事前に準備できる戦いが実戦でいくつあるよ? 国家間の大きな戦争なら作戦も練れるがよ、個人間じゃ突発的な戦闘のほうが多いんだぜ。所詮はお遊びだね」

 

 

 奇しくもクロスライルは、アンシュラオンと同じことを呟いた。

 

 いや、これが荒野に生きる人間の共通理解なのかもしれない。

 

 いつ襲われるかわからない敵だらけの状況で生き抜いてきた者たちの自負がある。

 

 常に戦闘態勢。常に臨戦態勢。

 

 クロスライルはここにいながら、ここではない『刻(とき)』を生きているのだ。

 

 

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