※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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611話 「下克上 その2『初級最終試験、開始』」

 

 アンシュラオンの目的は、ソイドファミリーの壊滅。

 

 もともとシャイナの一件に首を突っ込むと決めた段階で、彼らは殺すつもりでいた。

 

 それがソブカと組んだことによって壊滅は先延ばしにされ、金儲けの道具として利用されることになった。

 

 

(思えば十二分に役立ってくれた。こいつらがいなければ何も始まらなかったし、今のような潤沢な資金も得られなかっただろう)

 

 

 各派閥の倉庫や輸送船を襲い現金や物資を奪いながら、ソイドファミリーに責任を押し付けてきた。

 

 ソイドファミリーが武闘派であったことと、弱小派閥とはいえ五英雄の一角相手では手荒な真似もしづらかったため他派閥の動きも鈍く、制裁に至るまで相当な時間を稼ぐことができた。

 

 その間にサナも鍛えられたし、今後の活動資金も得ることに成功。これでしばらくはゆっくり暮らすことができるだろう。ありがたいことである。

 

 何事も「タダ」とはいかない。もちろん見返りも与えている。

 

 最後はラングラス自身にホワイトを殺させることで【英雄を作り上げた】。

 

 

 英雄は二人生まれた。

 

 

 一人は、のほほんと何も知らずにハネムーンに飛び立った者。

 

 正直言って馬鹿で愚鈍な凡夫だが、なぜか人を惹きつける魅力があるようだ。(たまにミラクルも起こす)

 

 もう一人は誰が見ても才覚溢れる者だが、どうあがいても現状では上には行けなかった『翼をもがれた猛禽類』。

 

 その両者はホワイト商会という存在のおかげで、大いなる躍進を果たした。

 

 他派閥が疲弊した今、この二人を主軸にすればラングラスが成長するのは難しくはないだろう。

 

 だがしかし、ラングラスの旗頭はソイドファミリーではない。その必要性はもうないし、力不足である。

 

 とりあえず名目上の英雄がいればいいだけで、他の者は―――

 

 

 

―――不要

 

 

 

 シャイナの枷を外す意味でも消えてもらうのが一番だ。

 

 そして、どうせ殺すのならばサナの成長に役立ったほうがいいに決まっている。

 

 最後の最後まで彼らは利用される運命にある。哀れにも思えるが、彼らから手を出してきた以上は責任を取らねばならない。

 

 

 

 アンシュラオンとサナの二人は、闇に紛れつつ静かに移動を開始。

 

 しばらく進んでいくと、中央通路に一人の男を発見する。

 

 男はタバコを吹かしながら周囲を見回すようにして立っていた。

 

 ソイドファミリーの見張りだと思われるが、敵が来ることなど知る由もないので、ただ突っ立っている状態といえる。

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前 :ムド・サルカン

 

レベル:23/30

HP :320/320

BP :115/115

 

統率:F   体力: E

知力:F   精神: E

魔力:E   攻撃: E

魅力:F   防御: D

工作:E   命中: E

隠密:E   回避: E

 

【覚醒値】

戦士:0/1 剣士:0/0 術士:0/0

 

☆総合:第十階級 下扇(かせん)級 戦士

 

異名:ソイドファミリーの舎弟分、なごみのムド

種族:人間

属性:

異能:家族想い、なごませトーク、裏社会の心得

―――――――――――――――――――――――

 

 

(ムド・サルカン、顔写真とも一致だな)

 

 

 リンダからもらった構成員のデータと照合。

 

 ここで改めてソイドファミリーの構成を説明しよう。

 

 まずはソイドダディーを頂点とする『幹部四人』がいる。

 

 次に武闘派である『中級構成員』が十五人ほどおり、その中の三人がまとめ役をやっているので、区別すれば『上級構成員』と呼んでもよいかもしれない。

 

 最後にムドやリンダのような『下級構成員』が十二人おり、全体で計三十一人いることになる。

 

 詳細なリストがこれだ。

 

―――――――――――――――――――――――

幹部 四名

・ソイドダディー 組長

・ソイドマミー  流通責任者

・ソイドビッグ  若頭(組長補佐)

・ソイドリトル  生産責任者

 

上級構成員 三名

×バッジョー 生産補佐

×ジェイ   若頭補佐

・マホト   部隊責任者

 

中級構成員 十二名

×四名(マサゴロウ戦闘で死亡)

×二名(病院送りにした者)

 

下級構成員 十二名

・リンダその他、ムド等

―――――――――――――――――――――――

 

 となっている。

 

 これを見て、いくつか気になる点があっただろうか。

 

 バッジョーはファテロナに殺されたので「×印」が付いているが、ビッグの側近であるジェイにも「×」が付いている。

 

 ジェイは結婚式に少し出て祝福したあと、すぐに仕事に戻っている。

 

 現在のビッグの仕事は畑での収穫であるため、その補佐をする彼は第三城壁内部の管理のために早々と戻ったのだ。

 

 稲刈りは雇った労働者がやるので、彼らが不正を働かないか常に監視する必要があり、まれに野犬や魔獣が入り込んで荒らすこともあるから用心は怠れない。

 

 ジェイは結婚式で涙を流すほど、ビッグの成長を心から喜んでいた。自分の上司であり、若い頃から面倒を見てきた『家族』なのだから感慨深いのだろう。

 

 

 が、死んだ。

 

 

 帰り道にサナに待ち伏せされ、あっけなく死亡。

 

 若頭補佐をするほどだ。腕には多少自信があったが、警戒が緩んでいるときに奇襲されれば満足な抵抗はできない。

 

 彼の死体は馬車の御者たちと一緒に森に投げ捨てられたので、そのうち発見されるだろうが、損傷が激しくて人物特定には時間がかかるかもしれない。

 

 また、死んだのは彼だけではない。

 

 前に眉毛じいさんの飲み屋で絡まれて病院送りにした二人も殺害済みだ。

 

 彼らはアンシュラオンにこっぴどくやられたため、スラウキンが管理する精神病院に入院していた。

 

 そこで毒物を投与され、死亡。

 

 彼らもチンピラにしては上等だったが、薬で眠っている間に毒物を注入されれば抵抗はできない。

 

 ソイドファミリーは『家族想い』だ。ビッグも昼間に面会に行くなどの配慮を見せていたが、それが最期の対面になるとは思ってもいなかっただろう。

 

 制裁時にマサゴロウに殺された者もいるので、中級構成員は七人までに減っている。

 

 

 

(ふむ、中級に比べて下級構成員は雑魚だな。まあ、一般の人間からすればそれなりに脅威か。武装すれば衛士たちよりは強いし、ソブカの連れている傭兵くらいにはなるかな。だが、どちらにしても必要な人材ではない)

 

 

 仮にマングラスと戦争をした場合、ソイドファミリー程度では役に立たないだろう。

 

 彼らはあくまで一般人には脅威であっても、優れた武人や改造人間、あるいは人形には及ばないのだ。

 

 これくらいならばソブカが外部から連れてくる傭兵で代用可能だ。無理に生かす必要はない。

 

 

「組長のソイドダディーは会議に行っていて不在だから遭遇の心配はない。幹部二人は生け捕りにしてから考えよう。使えそうならば生かすし、駄目そうなら消せばいい。それ以外の人間は全員殺す。わかったかい?」

 

「…こくり」

 

「じゃ、まずはあいつからだ。一応は敵の本拠地だ。数はそこそこいるから注意してやるんだぞ。やり方はすべて任せる」

 

「…こくり」

 

 

 サナは『同心』を発動。

 

 周囲の状況に意識を向けながら、ムドの視線をしっかりと観察する。

 

 同心と波動円の違いは、戦気を放出するかどうかである。

 

 波動円のほうが探知能力は数段上だが、直接戦気に触れるため相手の感度が高いと、ガンプドルフやアーブスラットのように逆探知される可能性がある。

 

 その意味では、単純に周囲に気を配る同心のほうが役立つ場合も多い。

 

 今日の彼女の装備は、軽鎧に刀とナイフだけを身に付けた『軽装』である。

 

 鎧は黒に染められ、隙間ができないように各所を黒布で覆った姿は、セクトアンクの忍者姿を彷彿させる。

 

 それも当然。

 

 

 今回の目的は―――【暗殺】

 

 

 真正面からぶつかる戦いを想定していないので、動きやすいほうが利点が多い。

 

 サナはポケット倉庫からクロスボウを取り出すと、ムドの背後から狙いをつける。

 

 

「………」

 

 

 意識を集中。

 

 それに伴って、矢にうっすらと赤い光が宿る。

 

 慎重に周囲を警戒しながら、発射。

 

 矢はまっすぐにムドに向かっていき―――

 

 ドスッ

 

 背中に突き刺さる。

 

 

「…え?」

 

 

 違和感に気づいたムドが、自身の胸から出ている何かに気づく。

 

 矢は背中から入り込み、見事に心臓を貫いていた。

 

 彼も皮鎧を着ただけの軽装に見えるが、鉄板を仕込んだ対刃・対銃仕様なので、通常の矢程度ならば心臓に到達することはない。

 

 だが、矢は【戦気】で覆われていた。

 

 戦気で強化されたものは、すべからく威力を増す。

 

 

「…こ…れ……は? え…?」

 

「…しゅっ」

 

 

 もう遅い。

 

 次の瞬間には素早く近寄ったサナが、ナイフで喉を掻っ切っていた。

 

 さらに切り払ったナイフを再度、顎から脳天に向けて突き刺し、叫ばれる可能性をゼロにする。

 

 この段階でほぼ即死に近かったが、最後にとどめとばかりに首をへし折る。

 

 ボギンッ がくっ

 

 崩れ落ちたムドの意識は闇に呑まれ、二度と浮上してくることはなかった。

 

 サナは死体を引きずり、素早く通路裏の闇の中に隠す。

 

 

 一人目、抹殺完了。

 

 

 

(いいぞ。周囲に気を配りながらも矢に戦気をまとわせることができた。『集中維持』も実戦で使えるほどになってきたな。…まあ、射程距離はまだ短いけどね)

 

 

 サナの弱点であった戦気の集中と維持は、ジュンユウによって鍛えられた。

 

 維持できる距離はせいぜい二十メートル程度であるも、遠隔操作系でないことを考えると十分な長さといえる。

 

 

(武器の選択も悪くない。銃はそれなりに発砲音がするし、相手を考えれば大きな刀を使う必要性もない。いきなり接近したら気づかれる可能性もあるから、妥当な判断といえるだろう)

 

 

 サナは刀だけにこだわらない。

 

 彼女の持っている能力すべてが力となることを知っている。

 

 相手をいかに効率的に倒すかの判断ができている証拠だ。

 

 

 

 ここから本格的な暗殺が始まった。

 

 

 

 次に犠牲になったのは倉庫の前にいた、ムドと同じような格好をしていた下級構成員の男だ。実力もほぼ同等だろう。

 

 その男は特に何をしているわけでもなく、酔い覚ましで外に出てきただけのようである。

 

 この倉庫区は彼らの居住区でもあるため、気軽な気持ちで出歩いてもおかしくはない。

 

 ただ、ムドの場合と異なるところがあるとすれば、背中を壁に押し付けてタバコを吸っている点だ。

 

 背後から矢で撃つ、といったことができないため、どうしても敵の視界に入ってしまう。

 

 アンシュラオンならば遠距離から一瞬で倒すことができるが、サナはその手段が乏しい。

 

 

 ただし、彼女には『身軽で小さい』という利点がある。

 

 

 サナは音を立てずに倉庫の屋根に登ると、静かに静かに忍び寄る。

 

 このあたりは収監砦に入ってから行っていた足運びの練習が生きている。

 

 相手が警戒しているのならばともかく、祝賀ムードで完全に油断しているマフィア程度ならば十二分に通用する。

 

 サナは男の近くまで忍び寄ると、懐から「ワタ」を取り出して放り投げる。

 

 このワタは文字通りの『綿』であり、ふわふわ宙を漂いながら雪のように男の視界に入る。

 

 

「…ん?」

 

 

 男は宙から落ちてきた綿に意識を集中させる。

 

 だが、ただのワタだ。

 

 危険がないことがすぐにわかり、落ちてくる様子をぼんやりと見つめていた。

 

 

「…ふー」

 

 

 そんな他愛もない光景に、タバコの煙とともに息を吐き出した瞬間。

 

 

 とんっ ブスッ

 

 

 男の喉に、ナイフが突き刺さる。

 

 ワタに注意が向いている間に反対側から降り立ったサナが、躊躇なく攻撃を仕掛けたのだ。

 

 身体の小さな子供が地面すれすれに這ってきたので、まったく視界に入らなかったことも無防備だった原因であった。

 

 

「かっっ!! はっ―――」

 

 

 喉を潰されたため男は叫ぶこともできない。

 

 ようやく現状を把握し、自分を刺した子供を視認するが、時すでに遅し。

 

 サナはもう一本のナイフを取り出し、心臓に突き立てる。

 

 

「っ…っ!! …かっ…はっ!!」

 

 

 さすがソイドファミリーというべきか。

 

 まだ男は生きていたため、二度三度とナイフを突き刺して、ようやく絶命。

 

 崩れるように倒れた男を受け止め、ずるずると引きずって、こちらも倉庫の影に死体を隠す。

 

 

 二人目、抹殺完了。

 

 

 

(こんなゲーム、あったな)

 

 

 それを見ていたアンシュラオンは、こういう隠密ゲームが流行ったことを思い出す。

 

 相手に見つかってしまうと、さすがに多勢に無勢。完全武装されれば、今のサナでも多少厳しい戦いを強いられるだろう。

 

 だからこうして一人ひとり、安全に抹殺していくのだ。

 

 自分がやってもスリルを楽しめそうだが、サナがやるのを見るのも違う意味でドキドキする。

 

 こうして同じような手段をもちいて、その後も三人ばかり始末完了。

 

 

 

 これで下級構成員を五人殺したので、残りは六人となる(リンダを除くと全十一名)

 

 

 

 近場で外に出ている者はいないため、倉庫の屋根の上を移動しながら敵を探す。

 

 ここで人がいる倉庫を見つけるのは簡単だ。

 

 彼らは倉庫内で暮らしているため、誰かがいれば窓に明かりがついているのだ。仮に寝ているのでもなければ、それですぐにわかる。

 

 この界隈でソイドファミリーに喧嘩を売る者はいないため、防犯意識はあまり高くないようだ。これもまた油断といえる。

 

 サナは光が灯った倉庫にたどり着く。

 

 そこで聞き耳を立てると、中で話し声が聴こえた。どうやら何人かいるらしい。

 

 

「…すぅ」

 

 

 ここで初めて、サナは『波動円』を使用した。

 

 同心だけでは倉庫内部のことまではわからない。感覚が鋭敏すぎるアンシュラオンならばできるとしても、サナには難しいだろう。

 

 サナは地下闘技場の戦いで、およそ一メートルから二メートルまで波動円を展開することに成功している。セクトアンク戦では、さらに伸ばしていた節もある。

 

 それで才能が開花したのか、この二週間で二十メートル近くまで伸ばせるようになっていた。(物質への戦気の集中維持と同じ長さ)

 

 日々努力を重ねているラーバンサーで三十メートル程度だったことを思えば、この歳でこれだけ扱えれば合格といえるだろう。

 

 倉庫はあまり広くなく、波動円は無事成功。

 

 

 『三人の男』の気配を探知。

 

 

 アンシュラオンも探ってみたが、どれもあまり強そうではない。今まで倒した相手と同レベル帯だろうか。

 

 どうやら入り口付近の倉庫は、下級構成員が暮らす生活倉庫のようだ。

 

 

(まとまってくれていて楽でいいな。害虫駆除がはかどるよ)

 

 

 結婚式の日を襲撃日に選んだのは、相手が一箇所に集まるからだ。

 

 普段はジェイのように各担当エリアで仕事をしているため、全員が集まることは極めて稀である。

 

 各人がバラバラのほうが抹殺しやすいと思うかもしれないが、逆に他派閥の人間に悟られる可能性も大きくなるため、倉庫区といった小さな場所にまとまっていてくれたほうが狩りやすいのだ。

 

 当然、ソブカと連携してのことである。

 

 ビッグを見逃すこともソブカからの要請だ。それを受け入れる代わりに日程を呑んでもらったというわけだ。

 

 

(せっかく作った英雄君を殺すのも忍びないから、オレはかまわないが…高い値が付くようになったもんだね。育てた甲斐があったよ)

 

 

 ソブカからの要請は、ビッグとリンダへの不干渉のみ。

 

 ああ見えてもラングラス本家の嫡男であり、彼が子供を残すかどうかは派閥の存亡に関わるほどだ。

 

 たとえソブカが実権を握ったとしても血を遺すという意味では重要な存在だ。ソブカが庇うのは当然だろう。

 

 ただし、それ以外については何もなかったので、遠慮もなく組織を潰すことができるのだ。

 

 つまり、その段階で「ソイドファミリーは売られた」のである。

 

 

 さて、ここは少し難関だ。

 

 倉庫には木箱なども積まれているので、屋根の上から貫通射撃しても上手く当たるかどうかはわからない。

 

 仮に一人に当てたとしても、他の二人が生き残ってしまう状況は少し厄介だ。その間に仲間を呼ばれると面倒になる。

 

 改めて遠隔操作ができないことは不便だと知る。

 

 だがしかし、こういったことも『知恵』と『技術』によって克服できるのだ。

 

 サナは掌を屋根に当てると、ゆっくりと静かに戦気を放出。

 

 静かに静かに、それでいて集中を維持。

 

 ジュウウウッと屋根が溶け、掌サイズの穴が生まれる。

 

 時間をかけて溶かしたため、音はほとんどしない。よほど注意深く聴いていなければわからないだろう。

 

 

「…じー」

 

 

 その穴から中を観察。

 

 サナの目に、酒を飲みながらカードで賭け事をしている三人の姿が映る。

 

 やはり油断しているのでまったくの無防備だ。

 

 それを確認すると、サナは水刃砲の符を三枚取り出した。

 

 

(おっ、これはまさか…)

 

 

 サナは穴に入れた片手で、器用に三枚の術符を広げ、狙いを澄ましてから―――発動。

 

 

 ブシューッ ザクザクザクッ

 

 

 放たれた水鉄砲は、三人の頭を的確に捉えた。

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

 

 どさっ ガタンッ

 

 三人は言葉も発さず、机に突っ伏して絶命。

 

 手に持っていたカードが散らばり、頭から流れ出た血で赤く染まる。

 

 

(術符の同時起動か。出力を抑えれば三つ同時まで可能とは、やるじゃないか)

 

 

 術符は常に最高威力で放つわけではない。与える魔力を絞れば威力を低くすることができる。

 

 この場合、威力が低くなる代わりに命中率が上がる。術自体の命中率は変わらないのだが、術者が扱いやすくなるのだ。

 

 これもセクトアンクから学んだ技術が生きている。

 

 

 

 下級構成員を新たに三人殺したので、残りは三人。

 

 その三人も麻薬が貯蔵された各倉庫の番をしていたので、個別に排除して下級構成員は全員排除に成功。

 

 リンダの裏切りによる血の代償は、ますます増えていくばかりだ。

 

 だが、すでに彼女は罪の意識すら感じていないだろう。

 

 

 逆に魔人に逆らうこと自体が罪。

 

 

 それに気づいた瞬間、彼女の心は晴れ晴れとした。

 

 ソイドファミリーは罪を犯したのだ。だから罰せられるだけのこと。

 

 自分という矮小な存在には最初から決定権も拒否権もない。ならば何も考えずに従うことが幸せだと気づいた。

 

 だからビッグの隣にいる彼女は、花嫁らしい素敵な笑顔を浮かべている。

 

 その笑顔があまりに美しいので、ビッグは何一つ疑うことはなかった。

 

 

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