【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
サナは首尾よく立ち回り、下級構成員十一名を殺害。
相手が雑魚とはいえ、ここまで一度も気づかれていない点は見事だ。
(思ったより隠密行動もできるんだな。もともと言葉を発しないから静かだし、無駄な緊張で身体が萎縮することもない。暗殺稼業に向いているかもしれないぞ)
ファテロナのような生粋のアサシンと比べるのは失礼だが、剣士の中では資質があるほうだろう。
髪の毛も肌も黒く、視覚的にも闇に溶け込めることも利点だ。
これくらいの能力があれば領主城くらいならば、ほぼ問題なく潜入が可能と思われる。
アンシュラオンたちがさらに奥に進むと、ひときわ大きな倉庫を発見した。
壁は鉄板のような魔獣素材で厳重に覆われ、戦車砲すら防ぎそうなほど強固な造りになっている。
それだけでも普通の倉庫ではないとわかるのだが、周囲には五人の男たちがたむろしていた。
(さっきの連中よりも強いな。中級構成員だろう。最低限の武装もしているようだし、明らかに他の倉庫とは警備体制が違う)
見た瞬間にわかる。彼らは紛れもない『武人』であった。
中級構成員はハンターや傭兵崩れがスカウトされてファミリーに加入するため、最低でもレッドハンター級の強さを誇っている。
レッドハンター級といっても各人の能力幅が大きいため一概に評価は難しいのだが、ライアジンズのメンバーと同程度と考えても問題ない。
彼らはチームで動けば、一般裏スレイブたちを蹴散らすくらいは簡単にできるし、個人の能力もけっして低いわけではない。
あくまでアンシュラオンから見れば雑魚なのであって、世間一般からすればレッドハンターは評価に値する存在である。なめてはいけない。
また、バッジョーのような上級構成員ともなれば、実力はブルーハンターに匹敵する。
バッジョーがどれほど強かったかといえば、地下闘技場では団体戦に出られるくらい、といったほうがわかりやすいだろうか。
さすがにキングには及ばないが、マングラスならば代表入りできるレベルにあったはずだ。
その配下の中級構成員たちも、サナが闘技場で戦った異名持ちの選手に匹敵するだろう。
目の前には、五人のニットローやブローザーがいると思えばいい。
「…じー」
サナは離れた位置から、じっと敵を観察。
敵意や殺気を出さない自然と同調した視線のため、相手はまだ気づいていない。
それからしばらく思案。彼我の戦力状況を計算しているのだろう。
(オレの見立てでは強引に突破も可能だとは思うが、どういう選択をするかな)
彼女が取れる選択肢はいくつかある。
まず一つ目は『強行突破』。
奇襲を仕掛ければ一人か二人は難なく倒せるだろうし、魔石を使えばさらに安全であろう。
初期のラブヘイアと同レベルである今のサナならば、それくらいのことは可能だ。
ただし、確実に相手に見つかってしまうマイナス面もある。
二つ目は最初と同じように、おびき出して一人ひとり排除することだ。
こちらの場合は安全ではあるも、どうやっておびき出すのかが問題となる。ああやってまとまっていられると分散は難しいだろう。
この作戦に厳密な時間制限はないが、今頃ソブカが会議を開いているはずなので、それが終わるまでには片付けたいところだ。
あまり長引かせると他派閥、特にマングラスの監視に引っかかる可能性もある。できれば、あと一時間以内には終わらせておくべきだろう。
どうするのかと思ってサナを見ていると、彼女はくるりと身体の向きを変え、来た道を戻り始めた。
そのままいくつもの倉庫を通り過ぎ、『とある倉庫』の前で止まり、中に入っていく。
「…ごそごそ」
サナが倉庫内にあった木箱を一箇所に集め、火痰煩の術符を取り出し、発動。
ボオオオオッ もくもくもく
木箱は勢いよく燃え始め、盛大な煙が発生する。
サナは外に出ると、近くにあったもう一つの倉庫内でも同じように木箱を燃やす。
そして再び外に出て、倉庫の影に身を潜めた。
およそ一分後。
煙に気づき、三人の男たちがやってきた。
「ちっ、火事かよ」
「下のやつらは何をやってやがった! ヘマしやがって!」
「くそ、商品が燃えちまう! 文句を言う前に消火するぞ!」
「おう! せっかくの若の記念日に出火なんて笑えないからな。さっさと消しちまおう!」
「あっちからも煙が出てるぞ」
「こっちは任せて、お前はあっちを消してこい」
「わかった」
「俺はほかに燃えてないか調べてくる」
サナが燃やしたのは、麻薬。
ここには大量の麻薬が保管されているので燃やす物には困らない。
精製して粉になった麻薬も燃えるし、工場に送る前の乾燥コシシケも保管されているので、なかなか盛大な煙を出してくれるものだ。
サナにとっては何の執着もないが、彼らにとっては大切な商品である。燃えているとわかれば消火しないわけにはいかない。
結果、一人ずつが二つの倉庫に入って鎮火を試み、もう一人が見回りに出ることになった。
全員がばらけた。まさに望んだ通りの結果だ。
すらり
サナが刀を抜いた。
最初に標的にしたのが、外の見回りに出た構成員だ。
静かに気配を消しながら待ち伏せし、近づくのを待ってから―――
ズバンッ!!
躊躇なく振り抜かれた真横の一撃が通り過ぎ、サナと構成員の視線が交錯。
ここでようやく相手は気づいたが、その瞬間には首と胴体が離れていた。
「っ…てめ……」
首が飛んでもすぐに死なないのが武人。さすがにしぶとい。
が、サナに慢心はない。
すぐに次の動作に移っていた。
今度は縦に振り抜いた刀が、宙に浮いたままの頭部を真っ二つに切り裂く。
ごとんっ ぶちゃっ
完全に切断された二つの物体が地面に着地。鈍い音とともに血を撒き散らす。
中級構成員は絶命。
不意打ちのため戦気を放出する暇もなく、あっけなく死亡する。
(数値上では、相手の能力はサナと大差がない。だが、最初から臨戦態勢の相手から奇襲を受ければ、ほぼ即死だろう)
奇襲が成功すれば、相手は戦気を張る時間がないため防御力は激減する。逆に言えば、素の防御のまま対応しなくてはならない。
その状態で剣気を放出したサナの一撃には、到底耐えられない。ほぼ即死である。
現実のダメージ計算はRPGのように簡単にはいかない。不意打ちや当たる箇所によって複雑に変わっていくのだ。
サナは同じように倉庫で鎮火している構成員二人にも奇襲を仕掛け、ほぼ苦戦することなく排除に成功する。
彼女は見事に陽動による分断と各個撃破をやってのけたのだ。
(魔石を使えば強行突破もできたが、あえてそれをしなかった。まだ何が起こるかわからない状況下だからな。奥の手は残しておいたほうがいい。その我慢ができることが重要なんだ)
力に酔っている者に、これと同じことはできない。どうしても力を示したくなるのだ。
地下闘技場での初期のサナがその状態であったが、現在は「力」が何であるかを理解しつつある。
アンシュラオンが必死になって伝えた「死なないこと」「死ぬリスクを減らすこと」を重要視している。
こうして中級構成員を三人抹殺。
極めて順調である。順調すぎる結果だ。
ただし、ここまでやってしまえば、さすがに相手も警戒するものだ。
再び大きな倉庫に戻ったサナが見たものは、武装を整えた四人の男たちの姿である。
さきほどまでは五人おり、そのうちの三人が消えたのだから、残りは二人のはずだ。
それが四人になっているということは、おそらく中にいた二人が合流した形になったのだろう。
そのうちの一人は、他の者とは違う気配をまとっている。
(あれが上級構成員のマホトか。部隊のまとめ役なだけあって、少しは強そうだな)
まさに武闘派、というような無骨な顔つきをした男がいる。彼が最後に残った上級構成員のマホトだ。
バッジョーも強かったが、マホトのほうが個人戦闘能力は上のようだ。
彼は主にダディー不在時における、倉庫区内の警備と幹部の護衛を担当しているので、強いのは当然である。
実力的には、成長した今のビッグとほぼ同じ程度といえるだろうか。
ビッグもかなり成長したので武人としては悪くはない。たとえるならば、イタ嬢の七騎士、二人か三人分くらいの実力がある。(けっこうすごい)
そのマホトは全身を重鎧で包み、その鎧に見合った大剣を持っていた。大剣は年季が入っているので実際に普段から使っているものと思われる。
他の構成員も、制裁時にビッグが使用していたような戦闘用のプロテクターを身に付け、アームガードやハンマーを装備している者もいる。
見た目的には世紀末に出てきそうな悪党連中そのものなので、一般人が見たら恐怖で声も出ないかもしれない。
(敵の襲撃の可能性を考慮して、すぐに警戒態勢を取れるのは優秀な証拠だな。他のやつらもびびってはいないようだ。なるほど、たしかに武闘派だ。戦い慣れている雰囲気はあるな)
アンシュラオンのせいでソイドファミリーの評価が相当下がったが、腐っても武闘派だ。
もしソイドダディーが加われば、間違いなくラングラス最強の勢力となるのだろう。
そんな相手にどうするのか、サナの実力が試される。
サナは、じっと倉庫を観察。
いくら見ても彼らが移動を開始することはなかった。
倉庫に向かった仲間が戻ってこなくても、様子を見に行くそぶりはない。
だからこそ逆に中に幹部、ソイドマミーたちがいることを証明してもいる。仲間の命よりも優先すべきことがあるのだ。
サナもそれがわかったのだろう。
倉庫の屋根に登ると、一枚の術符を取り出した。
火鞭膨の術符を―――発動
大きな横凪ぎの炎が倉庫に襲いかかる。
「―――!」
マホトはそれを素早く察知すると、術式の前に出て大剣を構えた。
大剣にはしっかりと剣気が放出されており、勢いよく振り払う。
炎は剣に斬られ、倉庫に到達する前に霧散。
術式を破壊するには、その三倍以上の力によって粉砕するしかない。
この段階でマホトの剣気込みの攻撃力が、サナの魔力値よりも高いことがうかがえる。(火鞭膨の魔力倍率は等倍。範囲重視の術式)
その間にサナは倉庫から飛び降りると、入り口のほうに向かって逃げる。
「やはり敵襲か」
マホトが大剣を地面から引き抜きながら、サナが逃げていった方角を見つめる。
「ちっ、ふざけた真似をしやがって! ぶっ殺してやる!」
「慌てるな。三人で固まって追え。それなりの相手だぞ」
「はい! 任せてください!」
「罠には気をつけろ。倉庫に火を付けられても無視していい」
「了解でさ!」
三人をサナの追っ手に差し向ける。
武闘派組織はなめられたら終わりである。罠とわかっていても追うしかない弱みがあった。
マホト当人は、そのまま倉庫前に残って警備を続けている。
見つかったとはいえ、こうして両者を分断することに成功したので、サナは今頃三人と戦っている―――
「うちの組に喧嘩を売るとは、どこの馬鹿だ! さっさと出てこい!」
マホトが倉庫の上に向かって言い放つ。
すると、黒い小さな影が屋根から飛び降りてきた。
すとんっ
倉庫はそこそこの高さがあったが、衝撃をすべて吸収して音もなく着地。
そこには、刀を抜いたサナがいた。
「ふん、小細工をしやがる。見破れないとでも思ったのか」
そう、さきほど逃げていったサナは、分身符で生み出した『偽者』だ。
この分身符も扱いに慣れると、自身が動かずとも多少なりとも操作することができるので、こういった陽動には非常に重宝する。
それを見破るとはマホトはかなりの凄腕、と思いきや、彼の言葉には嘘が含まれていた。
(わかっているなら三人も移動させないだろうに)
アンシュラオンでも分身を見分けるのは難しいのだ。術式で生み出したものなので術士の因子が必要なのである。
しかもこの暗闇だ。普通の武人に見破るのは不可能だろう。
あくまでマホトの「駆け引き」であり、謎の襲撃者に対して少しでも圧力をかけるためのハッタリである。
ただし、この状況でハッタリをかますのも戦いにとっては重要なことだ。それだけでも場慣れしていることがわかる。
「………」
しかし黒い少女は一切動じず、刀を持って近寄っていく。
勘違いしてはいけない。彼女の狙いは最初からマホトなのだ。
彼がなんと弁明しようが、まんまとおびき出された【獲物】でしかない。
迷いなく、駆ける。
(ちっ、速い!)
サナがいくつかのフェイントを交えながら迫り、刀を振る。
マホトは大剣で応戦。
素早い動きに見事対応し、大きな剣で刀を切り払う。
ガギィイインッ! ぶわっ
威力は向こうのほうが上。刀が大きく弾かれ、サナの身体が浮く。
が、それを見越していたサナは回転しながら着地すると同時に、今度は低い体勢で足元を狙った。
マホトは剣を地面に突き立てて防ぎつつ、拳を使って殴りかかってきた。
サナは足元にまとわりつくように動き、回避。
逆にタイミング良く跳ね飛んで、蹴りをマホトに叩き込む。
蹴りは腹に当たったが、相手は重鎧を着込んでいるのでダメージは浅い。
「うおおおおおお!」
マホトは地面に突き刺さった大剣を、力ずくで振り払う。
あまりに強い力が発生したため石畳が破砕。
石つぶてがサナの顔に向かってきたが、腕でガードしながら間合いを取った。
(すばしっこいやつだ。かなりいい動きする! あの背丈、子供の暗殺者なのか?)
マホトはこの一瞬の攻防で、サナが只者ではないことを見抜く。
どう見ても子供の体躯でありながら、さきほどの蹴りは異様に重かった。
もし重鎧を装備していなければ、内臓にまでダメージが通っていただろう。
斬撃も迷いがなく鋭い。それでいながらフェイントも交えてくる。
基本に忠実でありながら変則的で―――【怖い】
人を殺すことにまったく躊躇がない。すべての攻撃にそうした怖さが宿っているので、実際のダメージ以上に迫力がある。
だが、それに対応するマホトもいい腕をしている。
初めて見る動きにもかかわらず、こうして対応できることは優れた戦闘経験がある証拠だ。
さすが幹部の身辺警護をするだけあり、組織内部での実力はソイドダディーに次ぐナンバー2という話も頷ける。
しかしながら、サナの武器はこれだけではない。
術符を取り出すと、時間差起動。
マホトは最初に襲ってきた風鎌牙を耐えるも、次に放たれた水刃砲が鎧を貫通。
身体を庇った左腕にダメージを負う。
(水刃砲が貫通した!? さきほどの火鞭膨は出力を落としていたのか!)
火鞭膨を防いだマホトが水刃砲を防げない。
両者の魔力倍率は同じなので、ここでサナが「魔力の微調整」をしていたことが判明する。
最初に放った火鞭膨は相手を分断させるための布石。
あえて出力を低くしてマホトに防がせておいて、「これくらいの相手ならば単独でも倒せる」と思わせるための行動だ。
「なめるなよ! 死ね!!」
マホトが剣衝を放つ。
大剣から放たれた一撃は、さすがに強い。
大きな剣気が、石畳を抉りながら唸りを上げて突き進む。
サナは回避。
威力の高い剣衝だが、風衝ではないので速度は並。これだけ距離があれば避けるのは容易である。
「…じー」
サナは中距離の間合いを維持しながら、次々と術符を撃つ戦術に徹した。
これにマホトは苦戦を強いられる。
イケダに「まるでグランハムのようだ!」と絶賛された絶妙な動きに、まったく対応ができなかったのだ。
これにはサナの動きの良さのほかに、もう一つの理由がある。
(倉庫から離れられないのを知ってやがる!)
マホトは護衛が任務のため、倉庫から離れるわけにはいかない。
彼からすれば、敵があと何人いるかわからない状況なのだ。迂闊な行動には出られない。
それをサナは観察して知っているからこそ、こうしてチクチク攻めているわけだ。
(攻められないと思ってるのか!? 当たれば一撃で倒せるんだよ!!)
このままでは危ないと判断したマホトが、サナの思惑を逆手に取ろうと一気に接近を試みるが―――
先にサナが急接近。
「なっ!!」
「…しゅっ」
ガギィイイイ!! メキョッ
逆にサナの強烈な剛斬を受け、鎧の肩が破損する。
こちらも重鎧でなければ肩を砕かれていただろう衝撃である。
(まずい! 制された!!)
相手に先手を取られた以上、マホトは下がって防御を固めるしかない。
しかし、サナのいやらしいところは、そのままラッシュを仕掛けないことだ。
また中距離に戻ると、絶妙な間合いを維持しながら術符で攻撃してくる。
これにもマホトはまったく対応できず、傷がどんどん増えていった。
(なんてやつだ!! どこまで慎重に戦う!!)
優れた剣技を持っているのに、けっして前一辺倒にはならない。
確実に、極めて堅実に「安全に殺すため」の攻撃を続けてくる。
その徹底した戦い方に寒気すら覚える。
そんな時である。
「兄貴!! すいやせん! 逃しちまった!!」
偽者のサナを追いかけていた構成員三人が戻ってきた。
彼らは仲間の死体も見つけたので、その報告にやってきたのだ。
「…じー」
「っ!! 逃げろ! 狙われているぞ!!」
「え?」
なぜマホトが三人一緒に行動させたかといえば、この三人は衛士隊との衝突の際に怪我を負っていたからだ。
衛士隊が最新型の武器を使っていたこともあり、中にはかなり重傷を負った構成員もいたのだ。
よって、彼らはすでに手負い。
そこに―――爆弾矢
矢が爆発し、三人が吹き飛ぶ。
サナはマホトと戦いながらも波動円を展開しており、すでに彼らの動きを把握。この無防備な決定的瞬間を狙っていたのだ。
とはいえ、それでも中級構成員。
一人は今の一撃で意識を失うほどのダメージを負ったが、二人は瞬時に戦気を放出して生き残っていた。
だがそれも一瞬だけ寿命が延びただけのこと。
サナが術符を取り出し、発動。
バジィイインッ
「っ!!」
「か…は!」
直後に雷貫惇の術符によって貫かれて、二人が絶命。
二人の位置が直線状に並ぶことも計算に入れていたサナの勝ちである。
「きさまあああああああああああ!! 絶対に許さん!!」
これにマホトが激怒。
ソイドファミリーは全員が『家族想い』を持っているため、さすがに怒りが頂点に達したのだろう。
燃え上がる戦気に包まれ、大剣を振り上げてサナに猛突進してきた。
ダメージを受けるのも覚悟の上で、必殺の一撃を入れようと思ったのだろう。
がしかし、それは悪手。
「…ぎろり」
バチバチバチッ!
ここでサナが魔石を発動。身体が雷気に包まれる。
―――雷が
雷光の速度で一瞬にしてマホトの眼前に出現。
「っ!!」
驚いたマホトが剣を振り下ろす。
このあたりは完全に反射。狙ったものではない。
彼の戦闘経験によって無意識のうちにカウンターを放ったのだ。
振り下ろされた剣の威力は凄まじく、地面が大きく割れるほどのものだった。
もし当たっていれば、サナといえど無事では済まなかっただろう。
もし当たるような奇跡が起こっていれば、の話であるが。
サナの姿はすでにそこにはなかった。
マホトの―――背後
サナの動きは一直線ではない。
雷のように一瞬にして角度を変えることができる。
ジュンユウ戦では初めてやったので加減できなかったが、この二週間の練習の成果もあり、これくらいならば使いこなせるようになっていた。
何よりもこの男は、ジュンユウほど強くない。
気の抜けたカウンターなど、今のサナなら軽いステップ程度でかわせるものだ。
完全に無防備な背後から、雷爪一閃。
ズバッ! バチィイイインッ
雷爪で腕を跳ね飛ばし、武器を奪い、感電させてから―――
ズパン!!
刀で首を刎ね飛ばす。
(馬鹿…な。俺は…夢でも……)
ドサッ
マホトが地面に崩れ落ち、絶命。
雷人となったサナにとって、真正面から向かってくる相手は獲物でしかないことが証明される。
ここまで一瞬で勝負がついたことには理由があった。
最初にサナが通常状態で戦っていたのは、相手の目を慣らすためである。
そして、十分慣らしたあとにジュエル解放。
圧倒的なスピード差に加え、剣士の間合いから突然戦士の間合いに変わったため、まったく対応できなかったのだ。
これによって無傷。
サナは一撃も相手の攻撃を受けることがなかった。
「…とことこ、ざくっ」
これでも彼女は油断しない。
爆発矢で気絶した相手だけではなく、すでに死んでいる相手にも刀を突き刺して、完全なるとどめを刺す。
「これで全員かな?」
戦いを見届けたアンシュラオンが、サナの隣に降り立つ。
リストにあった構成員は、全員殺したはずだ。
あくまでこのリストが正しいと仮定した場合なのだが、リンダが嘘をつくはずもない。
ただし、彼女が知らない存在がいるかもしれないので、あとで見回るつもりでいる。
ともあれ―――
「初級最終試験、合格!!」
おめでとうございます!!
ありがとうございます!!