【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
アンシュラオンは、ひょいひょいとまるで猿のように身軽に大自然を闊歩する。
何の躊躇もなく崖を下りるし、渓谷があってもたやすく飛び越える。
しかも片手に盾の男を抱えて、である。
ちなみに男に触れるのは嫌なので、命気水槽を作ってその中に押し入れて引きずっている。
(すごい。閣下が評価なされるのも頷ける。騎士ではないせいもあるだろうが、動きが独特だ。淀みなく清廉で、まるで水が重力に逆らって上昇しているかのようだ。…強い。凄まじく強い。戦えば、万に一つも勝ち目はなかっただろう)
ゼイヴァーは、その動きに感嘆の念しか浮かばなかった。
立つ姿、歩く姿、走る姿、跳ねる姿、すべてが芸術品だ。
ただし、ゼイヴァーもアンシュラオンの動きに遜色なく付いてくる。
多少もたつくところはあるが脚力には自信があるようだ。
「ゼイヴァーさんはどれくらいの立場なの? 階級って言えばいいかな?」
暇なので、ゼイヴァーに話しかけてみる。
この世界に慣れたとはいえ、知っている地域はグラス・ギースと他人から聞いた周辺情報だけだ。
もっと広い世界に少なからず興味があるのは事実である。
「私は百光長の位を授かっております。一般的な軍属階級でいえば、中尉か大尉くらいでしょうか」
「同じくらいの階級の人はどれくらいいるの? みんな同レベルの武人?」
「得手不得手がありますので一概にはいえませんが、わが軍団は実力のみで位を授かります。現在こちら側に来ている百光長は五人。経験を除いた純粋な戦闘力では、ほぼ同程度だと思われます」
「その上の階級もあるんだよね?」
「千光長、輝光長と続きまして、軍部最高位に『聖剣長』がおられます。あなたがご存知の閣下は、聖剣長の座におられます」
「ふーん、あのおっさん、そんなに偉いんだね。キャンプには何人くらいいるの?」
「およそ二百人です。ただ、大半は新兵なので戦力としては末端となります」
「訊いておいてなんだけど、オレにそんな機密を教えちゃっていいの?」
「閣下からは口止めされておりません。出会ったら敬意を払い、丁重に対応するように命令を受けております」
「うーん、どういうつもりなのかな? まだ一回しか会っていないんだけどね。それで、ここから西方ってどんな感じ? ハローワークの地図は真っ赤で何もわからないんだよね」
「…過酷な地です。思っていたよりも、ずっと。ひたすら厳しい大自然が続いております。祖国も山が多い地域でしたので慣れていると思いましたが、規模がまったく違いました」
「戦った二人も、起伏のある場所での戦闘には若干不慣れな印象は受けたよ。軽く地盤を壊しただけで、大きくよろけたしね」
「お恥ずかしい限りです。長年平坦な場所での戦いが多かったものでして、対応できない者もおります」
「戦艦同士で戦うなら仕方ないか。でも、ゼイヴァーさんは大丈夫そうだ」
「遊撃が任務ですから局地戦を得意としております。これくらいならば問題ありません」
「適材適所がしっかりできているのは良い軍隊の証拠だね」
「ありがとうございます。ですが、【魔獣】には苦戦しております」
「多い?」
「はい。至る所に各種多様なものが千単位で存在しております。どう行動するのか予測できないことも多く、百メートル進むのにも苦慮する有様です。うっかり巣をつついてしまった際には撤退を余儀なくされます」
「人間相手と魔獣はまったく違う。慣れていないとつらいね。オレはどっちかというと魔獣相手のほうが楽だけどね。やつらは良くも悪くも本能的だ。食べる、寝る、生殖する、それだけが行動原理だ。行動は読みやすいよ」
「ぜひご教授いただきたいものです」
「何度か巣穴に放り込んでもみくちゃにされれば、誰でも慣れるんじゃない?」
「…一度目で死ぬのでは?」
「それで死んだら、その程度ってことさ。ははは。いいじゃないか。ストレートでシンプルだ。荒野も山も、力を欲している。そこに人間が決めた権威や権力を求めるものじゃない。自然界で唯一の権威があるとすれば、それこそ純粋なる力なんだ。魔獣との闘争を素直に楽しめばいいのさ。ここはそういう面白い場所だよ」
その言葉は、とても自然に紡がれた。
皮肉でもなく諭すわけでもない。ただあるがままに、爽やかな風のように発せられた真理だ。
一方で、とても厳しい現実から目を逸らさず、真っ直ぐに見据える芯の強さも感じさせる。
「…なるほど。閣下のおっしゃる言葉の意味が、少しだけ理解できたような気がします」
「何て言われているのか心配だな」
「好意的な内容ですよ」
「だといいけどね」
ガンプドルフは、ゼイヴァーたちにこう語った。
「彼は【野性の太陽】の如き少年だ。その言葉も姿も眩しく輝いていて、夜の中にあっても誰一人として見失うことはないだろう。彼の中には強大な強さと危うさ、そして厳しさと甘さがある。あれは間違いなく【珠玉の聖剣】だ。ただし、【最凶の魔剣】になる可能性も秘めている。絶対に敵にしてはならない。太陽は東から昇る!! 何を犠牲にしても味方に引き入れるのだ!!」
これだけ見れば、もう完全に「首ったけ」。
アンシュラオンという人物に惚れ込んでやまないのだ。
しかし今のところ、そう思っているのはガンプドルフだけである。
(彼が我々の救世主になりえるのかどうか、しっかりと見定めねば。祖国の命運がかかっているのだから博打は打てない)
ゼイヴァーも実際にアンシュラオンに会うのは初めてだ。
まだガンプドルフほど入れ込めないのは当然であった。
アンシュラオンたちは、ホロロたちと分かれた場所にまで戻ってきた。
初めて見る地形でも迷わず戻ってこられたのは、所々に目印を付けておいたからだ。
素人にはわからずとも、自分が駆けた場所には意図的に癖を付けてある。こうした工夫も大自然で生きるための技術といえる。
(うん、いい隠れ場所だ。ホロロさんもよく周りが見えているな)
そしてホロロが隠れた場所も、周囲から見れば単なる岩場にしか見えない。
あの緊迫して選択肢が少ない状況でも、しっかりと正しい判断ができるのが彼女の長所だ。
それができるのも『信仰』があるからだろう。
主人に対する絶対的な忠誠心は、もはや信仰と同格である。
「サリータ、オレだ。出てきていいぞ」
アンシュラオンが声を出すと、岩場の奥で気配が揺らいだのがわかった。
周囲を警戒しながら、まずは大盾がにょろっと岩場から出て、それからサリータがそっと顔を出した。
その仕草が巣穴に隠れた小動物に似ていて、思わず吹き出しそうになる。
「師匠! よかった!!」
サリータは、アンシュラオンの顔を見てようやく安堵した表情を浮かべた。
彼女も不安を感じていたのだろう。たしかに一人で他の女性四人を守るのは難しい任務である。
そのあたりは単純に戦力不足を痛感するものだ。
「なさけない声を出すな。お客さんに笑われるぞ」
「お客…?」
サリータはようやくアンシュラオンが引っ張っている盾の男に気付き、それからさらに背後にいるゼイヴァーに気付いた。
「師匠、彼らは何者ですか?」
「オレが追っていた連中だ。ああ、安心しろ。もう敵じゃない」
「大丈夫なのですか? その…何やら武装しておりますが」
「荒野に出るんだ。これくらいの装備があってもいいだろう。しかし、もっと違うところにも気付けないと駄目だぞ」
「え?」
ゼイヴァーの戦闘服は、明らかに軍事用の特殊なものだ。
見た目的には、某有名RGPゲームの竜騎士に近い形状をしており、身体にフィットしながらも頑強な造りで、攻防力をしっかりと上げてくれる優秀な装備だ。
槍も持っているため、まさにそのものが具現化したようで格好いい。
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名前 :エナジーブラッククリスタルスーツ(軽装)
種類 :鎧
希少度:B
評価 :A
概要 :上質なクリスタルを錬成強化して生み出された鎧。主に軍隊で使用されるもので、高い防御力と耐性を持つ指揮官用装備。見た目より軽くて丈夫だがコストが高く、生産数は少ない。
効果 :魔力+1、体力+1、防御C(+1.5倍)、物理耐性、銃耐性、術耐性
必要値:魔力C、体力C、精神C
【詳細】
耐久 :A/A
魔力 :B/B
伝導率:A/A
属性 :無
適合型:物質
硬度 :A
備考 :
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(相当優れた防具だな。このあたりじゃ見ないわけだ。しかもこれ自体がジュエルで出来ている。つまりは魔石と同じだ。これはすごいぞ)
サナはペンダントに魔石を付けているが、彼らは武具そのものが魔石になっている。
彼が持っている槍も同様の造りで、特殊な能力が付与されていると思われる。
この鎧を装備するだけで、魔力と体力が一段階上がり、素の防御力もCは確約されるのだから装備とは重要なものだと思い知る。
また、「+1.5倍」という数字は、戦気によって強化できる最大倍率を示しており、仮にCが最低値の300だとした場合でも「防御450」が確保できることを意味する。
防具の優れたところは、これが装備単体での防御力であることだ。
当たり前の話だが、当人の肉体は別の防御力と耐久力があるため、鎧が壊れるまでは鎧自身が攻撃を受け止めてくれるのだ。
壊れても新しいものに交換すれば、再び耐久値が復活するのもメリットであろう。
ただし、強い武具には装備するための『条件』が設定されている。それが【必要値】だ。
この鎧に関しては、魔力、体力、精神がC以上でないと装備ができないらしい。優れた道具は優れた能力がなければ使いこなせないのは道理であろうか。
(うむ、装備を含めればアーブスラットにも対抗できそうだ。おそらく経験の差でアーブスラットが勝つだろうが、このレベルの武人が五人いるならば、グラス・ギースの連中では対抗できないな。プライリーラの馬がいれば別だが…あれは街では使えないし、もう殺しちゃったしな)
控えめに言ってもDBDの戦力は、グラス・ギースを上回っている。
グマシカたちは別にしても、表面上の戦力では彼らと対等に渡り合うのは難しいだろう。
領主がガンプドルフたちの軍事力を当てにする気持ちはわかる。
だが、彼らの目的は違うところにあるのは間違いない。久しくグラス・ギースに関わってこなかったのが、その証拠である。
「アンシュラオン様、お帰りなさいませ」
ホロロも状況を察し、表に出て主を出迎える。
「うん、今戻ったよ。小百合さんとセノアとラノアも無事かな? 魔獣とかは大丈夫だった?」
「はい。こちらは問題ありません」
「それはよかった。…ん? どうしたの?」
「………」
「ゼイヴァーさん?」
「―――っ!? こ、これは失礼。つい呆けておりました」
「呆ける? なんで?」
「い、いえ……女性ばかりだな、と」
「ああ、なるほどね。サリータはともかく、荒野にメイドがいるのは奇妙だよね」
「え、ええ…まあ」
「おっと、サナも戻ってきたみたいだな」
アンシュラオンの目が、遠くから走ってくるサナを捉える。
彼女は道を覚えていたわけではないだろうが、嗅覚によってだいたいの場所がわかるのだろう。
これも荒野では便利な能力である。今後哨戒させるときは魔石を使わせたほうがよいかもしれない。
サナが合流。
見た瞬間にてこずったことがわかるほど、鎧もボロボロで髪の毛も土まみれになっていた。
顔にも切り傷が多数あり、目も土が入ったのか少し損傷している。
その中で特に目立つのが右胸だろう。
骨にヒビが入っているので右腕の動きがかなり悪い。首も動きがぎこちなく、少し心配だ。
「おー、けっこうやられたな。相手は三人がかりだったか?」
「…ぴん」
サナは人差し指で、相手が一人だと教える。
最近は頷くだけではなく、こうして少しジェスチャーを使うことを覚えたので、声は出ないが会話している感覚があって楽しいものだ。
「一人か。今のサナをこれだけ苦しめるとなれば、それなりの武人だな。あっちにもゼイヴァーさんくらいの相手がいたの?」
「おそらくはバルドロス百光長でしょう。一度退役なさいましたが、このたび軍属復帰した歴戦の勇士であります」
「百光長はサナと同格以上って感じか。こっちも装備を整えれば勝てるか?」
「…こくり」
「いい返事だ。今度新しい武具を見繕ってやるからな。そのときリベンジだな。ははは」
「………」
その会話を聞いて、ゼイヴァーはまじまじとサナを見つめる。
彼女の様子を見れば、ただ負けて逃げたのではないことは一目瞭然。優れた武人は、受けた傷からどのような戦いがあったかを推測できるのだ。
バルドロスは同じ百光長ではあるが、戦闘経験値はゼイヴァーを数段上回る。ジュエリストとしても高い適性を持っている。
その相手に互角の戦いを演じた。こんな子供が、だ。
実際は武具の性能差がありながらも敵三人を殲滅寸前にまで追い込んだので、サナの勝利といえるかもしれない。
アンシュラオンも、それを知っているからこそ笑っているのだ。
それだけでも驚愕に値するが、彼にとってさらに驚愕することが起こった。
アンシュラオンがサナの治療を始める。
最初は頭の様子を見ていたが、その治療が終わると次に衣服を脱がせ―――胸を触る
何の遠慮もない。少し膨らみかけた少女の胸を、手の平で包み込むように何度も触っている。
モミモミ モミモミ
「―――っ!! な、なにを!」
「へ? 何って…治療だけど?」
「あ、ああ…そうでしたね。あなたは術士で回復術式が使えましたね。…治療。あくまで治療ですよね」
「うーむ、カウンター気味に重い攻撃を受けたんだな。ふむ、モミモミ。危なかったな、モミモミ。次は気をつけるんだぞ、モミモミ」
「い、いや、それにしても触りすぎでは…!? むう、これも治療の範疇なのか…だがしかし…いいのか!?」
「あのさ、さっきからブツブツと何を言ってるの? もしかしてロリコンなの?」
「ぶっ!? な、何をおっしゃるのか!?」
「だって、少女の裸を凝視するなんて、はっきり言って変態だよ? サナが可愛くて魅力的なのは仕方ないけど、変な気を起こしたら殺すからね」
「い、いえ、けっしてそういうわけではなく……単純に女性なのですから、もっと丁重に扱わねばと思いまして…」
「じゃあ、丁重に扱おう。ぺろん」
手で触るだけではなく、愛らしい胸を舐めてみる。
うん、美味だ。サナ特有の深い甘味を感じる。
ちゃんと口から出した命気を滲ませているので、れっきとした治療である。
が、ゼイヴァーは目が飛び出んばかりに驚愕する。
「ええええええ!? な、舐めたのですか!?」
「サナはオレの妹だよ? 舐めて何が悪いの? うん、こうやって舐めて治すのもいいな」
「い、妹…ですか。な、なるほど……いもうと……」
「ところで、キャンプには女性もいるの?」
「いえ、女性はおりません」
「性欲処理のほうはどうしてるの? まさか男同士…」
「いえいえいえいえ!! そんなことは絶対ありえませんから!!」
「本当に大丈夫だろうね? 嘘だったら即座に交渉決裂だよ。これ以上、ゲイの知り合いを増やしたくないんだ。そこは信じるからね。頼むよ?」
トットが大量生産されているキャンプなど、まさに地獄。
百害あって一利なし。その場合は滅ぼすしかない。徹底的に焼却処分である。
ここは重要な問題なので、もっと問い詰めてみる。
「強い武人じゃないと性欲は完全に抑えきれないよね。スレイブとか使ってるの?」
「スレイブ…契約奴隷ですか? 東大陸にはまだそのような劣悪な文化が残っているようですが、我々は統制された部隊です。死ぬほど鍛錬すれば性欲など抱く暇はありません!」
「本当?」
「もちろんです!」
「ホロロさん、ちょっと来て」
「はい」
「股を開いて」
「はい」
「スカートの裾を上げて」
「はい」
ホロロが言われた通りにスカートの裾を上げると、パンティストッキングが丸見えになる。
余談だが、これもリレア商会から仕入れた最高級品で、グラス・ギースで買える一番良い物である。
その股間に―――手をぐいっと押し込む
「んふっ」
ホロロは我慢したが、主人に触られる悦びに思わず声を出してしまった。
そう、悦びだ。
彼女にとって神であるアンシュラオンに触れられることは【ご褒美】なのである。
「そのまま動かないでね。ぐにぐに、モミモミ」
「んふっ…ふっ……ふー、ふー」
「次は一番弱いところを差し出して」
「はい。どうぞご堪能くださいませ」
「さわさわ」
「あ―――はっ!」
「ぐいぐいぐい、くりくりくり」
「くうう…くふぅううう。ふーーー、ふふぅん」
自ら腰を突き出し手に押し当て、弱いところを好きなだけ触らせる。
これぞメイド。
アンシュラオンが求めた何でも言うことを聞くスレイブと同等の存在である。
当然ながら、こんな場所で何かをするつもりはない。特段性欲を感じたわけでもない。
目的はゼイヴァーに見せ付けるためだ。
その効果は覿面。
「………」
よほどショックだったのか、彼は口をあんぐり開けて硬直していた。
たしかに彼自身は欲情していないようだが、それはそれで若干の不安を感じさせる。
(最初にホロロさんたちを見て様子が変だったのは、女慣れしていないからっぽいな。もしくは単純にフェミニスト気取りか? というか本当にキャンプのほうは大丈夫かな? だんだん不安になってきたぞ。…まあ、メリットもあるし、とりあえず行ってみるかな。地形データが手に入れば探索もはかどるからね)
その後、ホロロを軽く達せさせたのち、アンシュラオン一向はDBDのキャンプに移動するのであった。
その間もずっとゼイヴァーは困惑していたが、逆に今までどう生きてきたのか問いただしたいくらいだ。