【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
アンシュラオンたちは、魔獣の狩場の最南西部に移動。
この大自然は人間が立ち入るのも困難な場所だ。当然ながら悪路であり、強引に通ったためにクルマもかなり傷ついて汚れてしまった。
ダビアが見たら泣きそうだが、こうなってはもう致し方ない。荒野に出る以上、これくらいの損傷は覚悟しなければならないだろう。
そして、森の中にぽっかり開いた盆地に、ひっそりとゼイヴァーたちのキャンプが存在した。
遠くから見ても森にしか見えず、近づいても盆地なので視認しづらい絶妙な場所である。
ならした地面の上には軍事用のコテージが数十と張られ、その周囲に鉄条網が張られている。これは地球にあるものとほぼ同じで、軍事基地の周囲に張られているものを想像すればよいだろう。
ただし、ここは魔獣が跋扈する大地。通常の鉄条網など役に立つはずもない。
そのために至る所には、数十センチ大の円形状の物体がぶら下がっていた。
「ゼイヴァーさん、あれは何? あの円盤みたいなの」
「あれは簡易衝撃爆弾の『
「爆弾か。大納魔射津とは違うの?」
「術具の大納魔射津は術式爆弾ですが、こちらは純粋な反応爆弾であることが大きな違いです」
「術式を使っていないってこと?」
「使っているのは薬品と火薬です。衝撃を加えると術式の有無にかかわらず爆発します」
大きく分類すれば、すべてのものが術式とも呼べるのだが、一般的に術具と呼ばれるものは「事象の保存と任意使用」を目的に作られている。
そのために発動には安全装置である「術者による起動命令」が必要なのに対し、こちらのDP1は衝撃を与えると否応なしに爆発してしまう。
つまりは普通の爆弾である。
特にDP1は小さな衝撃でも爆発してしまうので注意が必要だ。
「危険物だから管理は大変そうだね」
「その分だけ威力が高いのです。このあたりの魔獣は強固なので、これくらいの防備は最低限必要となります。また、術具よりも安く仕入れることができますし、調整は末端の兵士でも可能なので便利です。たまに事故はありますが、多くは不注意によるものです」
「さっきはオレの術に驚いていたけど、術者の数って軍隊でも少ないのかな?」
「ええ、少ないですね。そもそも彼らが戦場に出ることはありませんので、大半は医療部隊として参加します。それ以外となりますと術具の管理ですね。符術士ならば術符の生産もしますが、あくまで後方支援となります。そのため術士自体を必要としない部隊も多いのです」
「武人や術符、銃火器があれば事足りる、か」
(この世界では、普通のファンタジーのように魔法使いが活躍はしない。たとえばエメラーダは強力な術者だが、彼女が銃弾飛び交う戦場で役立つのは難しいだろう。局所的に戦況を打開することはできそうだが、おそらく彼女自身も無事では済まないはずだ。それならば兵士に術具を持たせたほうが建設的だろうな。そして、これだけ武器が進歩しているのならば、一般の軍隊ではそれすらも必要ない)
ゼイヴァーが持っているような優れた武具、強力な爆弾や迫撃砲のような武装。一般兵に至っても最低でも銃は持っているだろうから、まず術士の出番はない。
それを示すように、鉄条網の奥には『鋼鉄の塊』も見えた。
「戦車もけっこうあるね。あれで戦うの?」
「あれは単なる『壁』です。取引用に置いてあるだけですね」
「その言い方だと、戦車でも戦力にはならないってことだ。まあ、衛士隊の戦車を見た限りでは、武人相手にたいして役立っていなかったからね」
「はい。低級の魔獣には使えますが、それ以上となると壁にしかなりません。特にこのような歪な地形となりますと、ほぼ無力です。相手は人間ではありませんからね…」
戦車は鉄条網の裏側に、まさに壁の用途として配置されていた。
陸上戦では怖れられる鋼鉄の怪物であるものの、あくまで人間にとっての脅威でしかない。
このような起伏の激しい地形や大型魔獣が山ほどいる荒野では、あんな豆鉄砲に意味はないのだろう。
なぜならば戦車の砲弾は『戦気での強化ができない』からだ。これがもっとも重要な欠点である。
クロスライルを見てわかるように、普通の銃弾でも戦気で強化すればミサイル並みの破壊力を有することができる。それを高速で移動しながら小さな消費で発射できるのだ。
それと比べると戦車は圧倒的に見劣りする。かといって、一般兵が扱うのならば優れた武器であることには変わりない。
このことから戦車を仕入れているグラス・ギースの防衛戦略も垣間見える。
(領主はもう魔獣のことなんて考えていないんだな。怖いのは魔獣よりも人間か。他の都市からの防衛に専念しているのだろう。内部があれじゃ、それも仕方ない。他派閥の鎮圧すらままならないしな)
災厄魔獣用に生み出した城壁であるが、もう三百年以上も大きな被害が出ていない。そうなれば怖いのは同じ人間である。
特に衛士隊は戦力が整っていない。最弱と呼ばれたラングラスの工場制圧にも苦戦するくらいだ。まずは対人兵器を求めるのは自然の流れだろう。
グラス・ギースも侵略される危険性を常に感じている。ソブカが急いで改革を進めているのも危機感があるからにほかならない。
「では、案内します。どうぞこちらへ」
「クルマはどうすればいい?」
「私が先導いたしますので、そのまま一緒にお通りください」
ゼイヴァーが先頭を歩き、門番をしていた兵士たちに見えるように槍を大きく振った。
すると、しばらく前からこちらを警戒していた門兵が、安堵の表情を浮かべてやってくる。
「百光長、ご無事で!」
「客人を通す。聖剣の名において無礼は許されないと知れ。周知を徹底するのだ」
「はっ!!」
門番はゼイヴァーが教えてくれた騎士の敬礼をし、閉ざされていた門を開く。
クルマがゆっくりと中に入っていく。
窓越しにキャンプの中を覗くと武装した数十人の騎士たちの姿が見えた。誰もが重武装で、いつでも戦闘ができる準備が整っている。
その光景を見て、アンシュラオンは感心する。
「なかなか良い警備体制だ。気に入った」
「あの鉄条網ですか?」
「いいや、『覚悟』がだ」
「覚悟?」
アンシュラオンの言葉にサリータが首を傾げる。
「場合によっては、ゼイヴァーさんごと攻撃する準備があったってことさ。だからギリギリまで警戒していたんだ」
「え? 彼は味方…ですよね?」
「ああ、味方だ。だが、味方が今も味方とは限らない。こんな派手なクルマも一緒ならなおさらさ」
ゼイヴァーが合図をするまで周囲が警戒を解かなかったのは、最悪の事態を想定してのことだろう。
いや、今なお彼らは完全に警戒を解いていない。各々の武具をしっかりと握ってこちらを注視している。
敵に捕まって利用されることもあるのだ。そのために彼らにはいくつかの合図が決められているようだ。
今の合図は「安全」を示すもの。これが「危険」の場合は、躊躇なく一斉攻撃を仕掛けてきたことだろう。
「なんと…! 味方ごと殺すのですか」
「不思議か?」
「私が知っている傭兵団では、そのようなことはありませんでした」
「軍人と傭兵は存在そのものが違う。背負っているものが違うんだ。だから味方さえも殺せる覚悟がある。傭兵の場合は金や信頼で繋がることが多いし、よほどのミスがなければ同じことはできないだろう。国家の後ろ盾がないから、そんなことをすればすぐに瓦解してしまう」
「…軍人は厳しいのですね」
「時にはそういった判断も必要だ。それはオレたちでも変わらないよ。ここではグラス・ギースとは違った体験ができるかもしれないね。さて、そろそろ降りるとしようか」
アンシュラオンが最初にクルマから降り立ち、キャンプ内部を眺める。
小さくとも軍事拠点の一つであり隠密行動をする都合上、派手な色のものは一切存在しない。味気ないモスグリーンの軍事用コテージが並ぶだけだ。
コテージはトラクターに牽引されているようで、いざというときは即座に撤収できる準備があるように見える。
(即席の軍事キャンプといったところか。しかし、ここだけ見れば地球とほぼ技術レベルが変わらないな。設備の質も引けをとらない。まったくもって軍事に力が入っている星だよ)
ここの写真を地球人に見せても、まさか異世界とは思わないだろう。それだけ軍事技術に関しては進歩しているのだ。
そこに武人や術式という要素が加わるため、さらに戦闘面では特化しているといえる。
アンシュラオンの容姿に関しても幾人が怪訝な表情を浮かべているものの、それだけの情報で侮ったりはしていない。
むしろ降り立った瞬間の気配や雰囲気を敏感に感じ取り、肝を冷やしている者さえいる。
その者たちは確実に『強者』を知っている証拠だ。武人の質も悪くないように見える。
そこまではいいだろう。
アンシュラオンから見ても評価に値する軍事施設だ。
しかしながらクルマからホロロたちが降りると、キャンプからの視線が異様な熱を帯びたのがわかった。
ある種の動揺と『衝動』を必死に抑えようとしていることがすぐにわかる。
「統制が取れた軍隊で安心したよ。ね、ゼイヴァーさん」
「ぐっ…お前たち! 恥をかかせるな!! あとで死ぬほど鍛錬させてやるからな!!」
「仕方ないよ。男だもの。美しい女性を見て何も感じないほうが怖いからね。あまり責めないであげてね」
「ぬぐうう……なさけない!!」
「かといって視姦も困るよ。注意してね」
「当然です!!」
女性に興味があるのは正常な男の証拠だ。
それによって図らずとも「ゲイはいない」というゼイヴァーの言葉が証明されることになってしまったのは皮肉だろうか。
そしてそれから数分後、アンシュラオンはガンプドルフと再会するのであった。
∞†∞†∞
「やあ、久しぶりだね」
「やはり君か…少年!!」
アンシュラオンがコテージ内で待っていると、ガンプドルフがやってきた。
こんな威風堂々とした武人を忘れるわけがない。久しぶりに会うにもかかわらず、記憶と完全に一致する姿で再会を果たす。
そして出会った早々、ガンプドルフはアンシュラオンに詰め寄った。
「なに? 近いって」
「少年、また会いたかったぞ!! よくぞ来てくれた!!」
「熱量がすごい! なんでいきなりそんな感じなのさ」
「ずっと君のことを考えていた。忘れたことなど一日たりともない!」
「えぇ…!? なんかおっさんにそう言われると最悪の気分なんだけど」
「つれないな。剣を交えた日から友ではないか!」
「いやいや、その理論はおかしいって。近い近い。まずは離れてよ」
「うむ、少し興奮してしまった。すまんな。君と話せる機会ができて嬉しいのだ」
ガンプドルフは一度離れて椅子に座りなおす。
「さて、何から話せばよいのか…多すぎて迷うくらいだ」
「じゃあ、先にオレの用件を言ってもいい?」
「かまわないぞ。何でも言ってくれ」
「地形データ、ちょうだい」
「…ん? 地形データ?」
「おっさんたちが調べ上げた全地形データだよ。ゼイヴァーさんと話はついているから安心して」
「そんな話は聞いていないが…」
「約束、守らないの? 約束は大切だよね。人としてさ」
「むっ…」
サナを真似て、相手をじっと見つめる。
が、彼女の純真無垢な瞳と違って穢れた色をしている。
責任者に会わせろと言いつつ、その前に既成事実を作って追い込む。まったくもって卑劣である。
執着心が強く、約束や契約事にはうるさいので粗末にできないのも問題だ。
「地形データを欲しがっているということは、ここから先の探索をするつもりか?」
「そうだよ」
「目的は?」
「スレイブ・ギアスの媒体となる石が欲しいのさ。魔石の部類だね」
「スレイブ・ギアス? …なるほど。だからか。ちなみにあのスレイブの少女だが…」
「もうスレイブじゃない。オレの妹のサナだよ。そこは重要だから間違えないでね」
「…そうだったな。君の女性への愛着はすごかったな。それで彼女の強さはいったい何事なのだ? 危うくうちの部将が一人討ち取られるところだった」
「ふふふ、驚いた? びっくりした?」
「それはもう驚愕だ。目玉が飛び出るかと思ったぞ。あの時は無力な少女だったはずだ」
「そうだね。本当に普通の子供だった。でも、オレが少しずつ鍛えたんだ」
「才能があったのか?」
「強くなったなら、そういうことじゃないのかな」
「ふむ…信じがたいが事実ならば受け入れるしかないか。それより彼女は『ジュエリスト』ではないのか? それも知っているのか?」
「もちろん。魔石もオレが用意したものだからね」
「魔石を君が? どこで手に入れたのだ? 買ったのか?」
「あれは魔獣の心臓が結晶化したものだよ。ただ、サナとの相性が良かったんだろうね。力になってくれているよ」
「魔獣魔石か…。しかし、普通に結晶化しただけのものでは、ジュエルとして高い機能は発揮しない。あそこまで個性が出ている魔石は簡単には手に入らないはずだ」
「何か条件があるの?」
「通常、掘り出した鉱物は原石でしかない。その力を引き出すには適切な環境下でのカッティングと術式による保護、場合によっては同系統の魔石による強化措置が必要になる」
「グラス・ギースの職人にカッティングはしてもらったよ」
「魔石専門の職業があるのだ。普通の宝石とは異なるものだ。こちらの調査によれば、グラス・ギースに魔石の専門家はいなかったはずだが…」
「じゃあ、スレイブ・ギアスの媒体にしたから力が発揮されたのかな」
「可能性がありそうなのはそこだな。だが、少年は規格外だ。常識では考えられない事象が起こっても驚きはしない」
「なんだか、みんなオレを変人扱いするよね」
「それだけの力があるからだな。力ある者は磁石と同じだ。で、君が求めているのは同じような魔石なのか?」
「それもあるけど、今欲しいのは通常の鉱物かな。魔獣だと供給が安定しないし、いつまでも数の弱点が補えない。汎用的に使える質の良い媒体が欲しいのさ。このあたりに鉱山でもないかと調べに来たところに、おっさんたちと遭遇したってわけさ」
「納得した。そのために地形データが欲しいのだな。それならば力になれるだろう」
「即答していいの?」
「やはり私と君は出会う運命にあったのだ!!」
「どわっ! なんだよ、いきなり」
「今度は私が驚かせる番だな。何を隠そう、我々は『鉱夫』なのだ」
「こうふ?」
「ゼイヴァーの階級は聞いたか?」
「うん、なかなか珍しい階級だよね。
「外部の者がいるときは一般的なものを代用するが、我々の中ではそういう呼び方をしている。そして、当初は『光』ではなく『鉱』だったのだ。時代が進み、それでは格好が付かないので表記を変えたにすぎない」
「鉱は、石とか金属とかのこと?」
「うむ。我々の国の主産業は『鉱業』なのだ。一般的な鉱物も採掘できるが、良質かつ貴重なものが大量に採れる。そこでより多く、より質の良いものを手に入れた者に称号と階級を与えたのが始まりのようだ。ゼイヴァーの槍と鎧も自国で製造したものだ」
「大量の地下資源があるってことだね。それだけで勝ち組だ」
「…そうだな。それによって我々は力を得た。しかし、だからこそ狙われたのだ。君に隠しても仕方ない。最初に君が指摘したように我々は【西側の人間】だ。あの時、領主城には交渉のために赴いていたのだ」
「そのあたりの事情は裏社会の情報網で聞いたよ。衛士隊に武器を売っていたんでしょ」
「彼らに売ったのは旧型の戦車と銃だけだがな。たいしたものではないが、東大陸ではまだ使えるものだろう」
「領主との交渉はどうなったの? もう終わった?」
「継続停滞中だ。続けてはいるが、話はあまり進んでいない。領主としては我々に常駐して戦力になってほしいようだが、あまり公に動ける立場ではない。いくら最北部の外れとはいっても、人の出入りはあるからな。それに内紛に加担すれば泥沼になる。今は様子見だ」
「内部闘争の件は知っているんだね」
「あれだけ派手にやればな。都市から出ていく人間の口は軽い」
「そりゃそうか。それでえーと、何だっけ? おっさんの国の名前。DBなんとか……」
「『ディスオルメン=バイジャ・オークスメントソード〈称えよ、祖を守護せし聖なる六振りの剣を〉』。それが正式名称だ。が、長すぎるので『六奏聖剣王国』や『DBD』と呼ばれることも多い」
「その国は西側のどのへんにあるの?」
「西側大陸の北のほうだな。まさにこの場所から海を越えて西にずっと進んだ場所にある。山の割合のほうが多いが、平地もある自然豊かな美しい国だ」
「そんな遠くからわざわざ来たんだね。そっちの目的は入植?」
「その予定ではある」
「予定…ね。何やら事情がありそうなのは気付いているけど、巻き込まれそうな気がするからあえて訊かないよ」
「そう言うな、少年! 我らと共に歩いていこうではないか!」
「どうしてそうなるのさ! なんの縁もゆかりもないじゃんか」
「縁がなければそもそも出会わないとは思わないか。私は君と出会った。そして、君は私と出会った。これこそ運命だ!!」
「いや、まったく思わないけど…」
「今ここで二人は再会した! それが証拠だ!」
(まずいな、情熱タイプだ)
ガンプドルフとゆっくり話すのは初めてだが、最初の段階で妙に熱い。
こういう言い回しをする連中は情熱家で直進的で、だいたい失敗する者が多いのだ。そのわりに人望はあり、何かと人を巻き込むタイプでもある。
「私と君はお互いに協力関係にあったほうがよい。そうではないか? メリットはあるはずだ」
「そっちが地形データを持っていて、鉱物にも詳しいならありがたいけど…領主はどうするのさ? オレは領主が嫌いだよ」
「あまり良い出会いではなかったからな…」
「むしろ最悪だったけどね。あれで好きになるほうがおかしいでしょ」
「そのわりに領主には危害を加えていないのだな。君の性格なら殺すこともありえたと思うが」
「どんな馬鹿でも領主は領主だ。あいつがいなくなればすっきりするけど、血統主義の強いグラス・ギースは揺れるだろうね。それで拠点としての力を失うほうがまずい。やるなら勝手に内ゲバでもしてすげ替えればいいのさ。手を引いているおっさんと同じ理由だね」
「なるほど、賢い選択だ。領主と和解するつもりはあるのか?」
「無理だね。イタ嬢も好きじゃないしね」
「そうか。ならばこちらも答えをはっきりさせよう。領主とは良好な関係を築きたいが、どちらを選択するかと問われれば、迷わず君をとるぞ」
「へぇ、その理由は?」
「比べるまでもない。私は君の力を知っている。優れた武力だけではなく『王の資質』がある者を軽視することは絶対にできない」
「王? 何の話?」
「君は自分のことを何も知らないのだな」
「…そのことは最近、強く感じているよ」
「私にはわかるぞ。君が『王』であること。王だからこそ、あの少女…君の妹を導けていることをな。あの時、君の【
「王気? 知らない気質だ。何それ?」
「王だけが放つことができる最上位の気質だ。その力は場所も空間も、時間すら越えて影響力を与えるという伝説の力だ」
「さすがに無理がない?」
「実在するのだから仕方ない。実際、君から放出されていたのを私が見ている」
「見間違いじゃないの?」
「それはありえない。私にはわかるのだ。君が選ばれた人間だということがね」
「うーん、そうだとしても今のオレにはあまり興味がない話だね。意識して使えないんじゃ勝手が悪い」
「力ある者は、それを自由にする権利も持っているものだ。我々にとっては、君が資質ある者であることが何よりも重要だ」
「だから協力関係を結びたい、か。理屈は通るけど、絶対厄介なことに巻き込まれるよね。まずはおっさんたちの目的を教えてもらわないと交渉もできない。こっちも守るものがあるからね」
「少年が連れていた女性たちのことか?」
「そうだ。全部オレのものだ。だからこそ守る義務がある」
「彼女たちは幸運だな。まさに選ばれた従者たちだ」
「ははは、『普通の少女』にはまだわかってもらえてないけどね」
「無理もない。少年は一般人の理解を超えているからな。産まれたばかりの赤子が親の職業や生計まで考えないのと一緒だ。いずれ成長すれば、その大きさを理解できるようになるものだ。わからぬのも子供の特権だと思えば焦ることもない」
(なんだろう。安心する。この居心地の良さは何だ?)
アンシュラオンもまた、ガンプドルフに対して妙な親近感を抱いていた。
どんな言葉を発しても、すんなりと理解してもらえることが心地よい。
相性の良さに加えて、ガンプドルフが放つ『強者の態度』が安心感を与えるのかもしれない。
なぜならば彼もまた同じ土俵におり、強者の悩みや苦労も手に取るようにわかるからだ。
少なくとも今まで出会った者たちとは格が違う。得てきた経験も誓った覚悟も違う。
まさに将軍の器といえる。