※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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648話 「新たな武装 その1」

 

 ゼイヴァーには負けてしまったが、収穫もあった。

 

 

「サナ、すごかったな! まさか暗衝波と卑転まで使うとは思わなかったぞ!! ヤキチのを見ていたんだな」

 

「…こくり」

 

「使い方も悪くなかった。ほぼ完璧だ。ただ、今回は相手のほうが上手だった。それはわかるな? 詭道も重要だが、それだけじゃ勝てない。基本的な力でお前は圧倒的に負けていたんだ」

 

「…こくり」

 

「一対一の素の力では、お前はまだ百光長には及ばない。これを糧にしてもっと強くなるんだぞ。これからゼイヴァーたちと一緒に行動する機会も多いだろうから、あいつの動きをしっかりと見て覚えるんだよ」

 

「…こくり」

 

 

 地下闘技場で負けた時と比べると、負けても落ち着いているようだ。

 

 それもバルドロスとの戦いがあったからだろう。サリータ同様、すべてが力になると実感したのだ。

 

 

 そして、軍隊で学べるのは一対一の戦いだけではない。

 

 

 その後、複数対複数、十人対十人といったように人数を増やした『集団戦』の模擬戦もやっていた。

 

 軍隊が戦うときは、逆に一対一のほうが少ないからだ。集団戦で上手く連携して動くことが勝利の秘訣である。

 

 これにサリータとサナも参加。

 

 サナは大将役として配置され、サリータは前衛の盾として配置された。

 

 ラグビーのスクラムのような激しいぶつかり合いが続き、倒れてもかまわず突っ込み敵の陣形を崩そうとする。

 

 サリータも上手く立ち回っていたが、所々でミスが目立って『穴』となった。そこを付け込まれてサナのところまで抜かれてしまい、負けてしまった。

 

 その結果にサリータはひどく落ち込んでいたが、サナたちに慰められてなんとか立ち直る。

 

 まだまだ彼女にとっては試練が続くようである。

 

 

 

 

  ∞†∞†∞

 

 

 

 翌日。

 

 今日も朝から小百合やホロロが兵士や騎士たちに料理を振る舞い、キャンプでの生活が始まった。

 

 そして朝食後、訓練が始まる前に女性たちをキャンプ外の森に集める。

 

 

「DBDから物資を提供してもらったから、オレがいろいろいじって改造してみたよ」

 

 

 ガンプドルフに要求していた通り、DBDの武器庫から好きなものを拝借してきた。

 

 戦艦がいない状態では彼らも物資に余裕はないが、アンシュラオンを味方にできるほうが何億倍もお得なので躊躇はないようだ。

 

 ただし、あくまで軍隊で使うものであり、そのままでは扱いにくい。なにせこちらは女子供なのだ。すべてに微調整が必要である。

 

 昨日のアンシュラオンは、ほぼその作業にすべてをあてていたので影が薄かったというわけだ。(単に工作に没頭していただけ)

 

 

「まず、サリータ」

 

「はい!!」

 

「鎧と盾は、ひとまずそのままDBDのものを使えばいい。重さに慣れるためだし、無駄に目立たないためでもある。わかるな?」

 

「はい、自分は師匠を信じております!!」

 

「いい返事だ。オレも期待に応えられるようにがんばるよ。ただし、そのままではやはり不利だから、専用の武器をいくつか作ってみたぞ」

 

「ありがとうございます! 嬉しいです!」

 

「では、最初はこれだ」

 

 

 アンシュラオンが取り出したのは、ハンマーというより『槌(つち)』に近い形をした武器である。

 

 六十センチ大の四角い頭頂部に取っ手が付いている、といった様相だ。

 

 

「これは…ハンマーですか?」

 

「使い方は同じだが、それだけじゃないぞ。まだ名称は決めていないが…そうだな、『ボムハンマー〈爆破杭槌〉』とでも命名しておこうか。ここに穴があいているのが見えるな?」

 

「はい」

 

「そこに専用の【杭】をはめ込んで、相手に打ち付ける武器だ。その杭には大納魔射津を改良した爆破ジュエルを搭載しているのが特徴だな。打撃に加えて、刺突と爆破の追撃が可能となる」

 

 

 サリータの弱点は攻撃にある。もともと防御型の武人なので仕方ないが、そのままではやはり戦力不足は否めない。

 

 それを埋めるために特殊な武器に頼るのは悪いことではない。むしろ、そうしないと現状では役立たずになってしまう。

 

 

「硬い皮膚を持つ魔獣相手では、大納魔射津とてそのままでは効果が薄い。直接体内で爆破させる必要がある。そのために爆発に指向性を与えて貫通力を増す調整を施している。簡単にいえば、直線方向に強く爆発するものだ。ほら、持ってみろ。片手で持つんだぞ」

 

「は、はい。…少しずっしりしますが、振る分には問題なさそうです」

 

「お前の腕力に合わせてあるからな。そのままメイスの代わりとしても使えるように設定してある。核剛金で何重にも保護してあるから強度は前のハンマーより何十倍も上だ。遠慮なくぶっ叩くといい。その代わり、盾は絶対に外すな。今後は片手武器を基本に戦うんだ」

 

 

 今回武器を新しくする理由は、今後の魔獣の強さに関係している。

 

 ハンクスも言っていたように魔獣が強くなれば、盾無しでは即死する可能性が高い。最低限の防御力を担保する代わりに、武器を片手で扱う必要がある。

 

 そうなると武器自体を特殊で強力なものにするしかない。

 

 

「しかし、私だけの力で魔獣の皮膚を貫けるでしょうか? その、私はあまり腕力が…」

 

 

 今まであまり弱音を吐かなかった彼女が、やや自信なさげにうつむく。

 

 DBDとの合同訓練によって、その点が良くも悪くもクローズアップされてしまったようだ。

 

 だが、そんなことは承知の上。

 

 

「それも問題ない。実際にこれで実験してみよう」

 

 

 アンシュラオンが、今回の改造で出た端材から作った練習用の的を用意する。

 

 鎧にも使われている素材をいくつも凝縮して固めたものなので、強度としては鱗型魔獣に匹敵するものだ。

 

 

「よく見ておけ。杭はこうしてセットする。根元に溝があって、押し込むだけで簡単に固定される仕組みだ。その反面、叩き付けた瞬間には衝撃で素早く外れるようになっている。このあたりも術式の接留止(せつりゅうし)を応用したものだ。まあ、とりあえず使ってみるといい」

 

「は、はい! では、まいります!」

 

 

 サリータもよくわからないまま、槌を振り上げ、下ろす。

 

 ジュボッ ブオオオッ!!

 

 その瞬間、槌の先端背部にあいていた穴から強力な風が噴出。

 

 一気に加速した槌が、爆破杭を的にぶっ刺した。

 

 

「よし、刺さったぞ。ハンマーを引き上げろ」

 

「っ!」

 

 

 慌てて槌を引き上げる。

 

 

 二秒後―――爆破

 

 

 ボンッ!という乾いた音とともに杭が破裂。刺さった箇所がさらに大きく抉れる。

 

 アンシュラオンが言ったように爆破は刺さった方向に強く作用するらしく、かなり深い穴が生まれていた。大納魔射津より規模は小さいものの、圧力を凝縮することで破壊力は増しているといえる。

 

 もしこれが魔獣だったならば部位破壊にも使えるし、人間だったら胴体そのものが消し飛んでいたはずだ。鎧や盾の破壊にも有効だろう。

 

 これ自体もすごいが、それよりまったく説明されていなかった『ジェット噴射』のほうに驚く。

 

 

「師匠、今の加速はいったい!?」

 

「風の術式の斧があっただろう? あれのジュエルをコピーしてみたんだ。まあ、ほとんどトロッコで使ったものと同じような造りだったが、より強くジェット噴射するように調整しているから出力はさらに大きいぞ」

 

「びっくりしました。危うく手放すところでした」

 

「そのうち慣れるさ。そのおかげで不利な体勢で力が入らない状態からも、強い一撃を繰り出すことができる。たとえば昨日みたいに転がされたとき、倒れながらも腕一本で相手を倒すことができるようになるんだ」

 

「…あれは無様でした。本当に申し訳ありません」

 

「気にするな。あれは訓練だし、最終的に生き残ればいいのさ。杭の残弾は盾を改造して、裏側横に収納できるようにしてある。ここだな。この横の部分だ。一発ごとに杭を補充する必要があるが、お前にとってはそのほうがわかりやすいだろう」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 

 機構をより複雑にすれば、リボルバーのように回転させて数発分の杭を搭載することもできたが、サリータでは残り何発かわからなくなり、戦闘中に気が散ってしまう可能性がある。

 

 だからこそ、あえて一発ずつ。

 

 そのほうが迷わないで済むし、すぐに盾の裏側に手を戻すため、誤って爆破の衝撃を受けないで済む目的もある。

 

 

「そのうち盾自体も改造する予定だ。楽しみに待っていろ。で、こっちは中距離用の武器だ」

 

「これは銃…ですか? こちらも変わった形ですが…」

 

 

 次に渡したのは、取っ手が付いた丸い筒のようなものだ。

 

 こちらもハンドサイズで取り回しが良いように設計されている。

 

 

「それは【グレネードランチャー】だな。DBDの倉庫にあったものを半分にぶった切ったものだから、ピストルグレネードランチャーと呼んだほうがいいかもしれない」

 

 

 グリップまでは普通の銃と同じだが、砲身は丸太く、グレネードを発射するため口径も大きなものである。

 

 某天空の城に出てくる空賊が使っていた武器、といえばわかりやすいか。だいたいあんな感じである。

 

 

「弾はDBDからもらってもいいんだが、この状態では普通のものでは性能を完全に発揮しない。だから弾は自作している。誤作動を防ぐために発射は火薬ではなく風の術式を利用し、しっかりと回転を加えて弾道を安定させている。弾頭も着弾時に周囲に散らばってダメージを与えるから、相手が複数いる場合にも有効だ」

 

「は、はい。なにかすごそうです」

 

「撃ってみればわかる。さあ、やってみろ」

 

「はい!」

 

 

 新しい的に向かって、サリータが爆破銃を発射。

 

 グレネード弾は大きいので普通の弾丸より速度は遅いものの、的に当たった瞬間に―――粉々

 

 跡形もなく吹っ飛び、弾けた弾頭が周囲の木々に突き刺さる。

 

 

「射程は五十メートル以内かな。弾を改造すればもっと長くできるが…まあ、その距離になるとどうせ当たらないだろう。メイン兵装じゃないから牽制で使えればいいさ」

 

 

 こちらの砲弾も盾の後ろに格納できるようにしておく。

 

 何やら盾が道具収納箱になりつつあるが、実際に一番安全で取り出しやすい場所なので仕方がない。

 

 仮に腰のベルトに弾を付けても、どうせもたついて武器を落としかねない。いや、落とすに決まっているのだ。

 

 

「今のところは、この二つの武器でいいだろう。お前がちまちまと普通の銃弾を撃つ意味はあまりない。それだったら盾で耐えていたほうが後ろが楽だ。それ以外の弱い相手は、盾技でねじ伏せられるようにしておけばいいだけのことだ」

 

「このような貴重ものを自分のために……ありがとうございます!」

 

「道具は消耗品だ。遠慮なく使い潰してかまわない。半分趣味だしね」

 

 

 アンシュラオンはあまり睡眠を必要としないため、夜は暇なのである。

 

 その間、せっせと女性たちのために作業を続けるのが、自分なりの密かな楽しみでもあるので苦痛ではない。

 

 

「いいか、お前の役割はまずは耐えることだ。それから隙があったら大きな一撃を叩き込む。その隙がなければ、またひたすら耐えるんだ。これからは『集団〈パーティー〉』で動くことも多くなる。お前はサナがやりやすいように敵の攻撃を受ける役割だ」

 

「はい! 心得ております!」

 

「よし! ここは防音にしておいたから、武器を使いこなせるまでいくらでも練習するように!」

 

「はい! 師匠!」

 

 

 先日ガンプドルフが使っていた術具を見せてもらい、防音の術式をコピーすることに成功した。

 

 物理結界もいくつか張り巡らせておいたので、ここは安全な訓練スペースとなっている。

 

 

 

「次はサナだ」

 

「…こくり」

 

「お前の刀を見たが、戦い方が荒いせいかけっこう傷が出来ていた。その補修がてらにいくつか改修を試みたぞ。オレは専門の鍛冶師じゃないから芯の部分には触れられないが、自己流でいろいろやってみた」

 

 

 サナの刀は、地下闘技場で折られて死んでいた無銘の刀。それをアンシュラオンが命気の力で強引に使えるようにしただけだ。

 

 素の能力で劣るサナにとっては、それでは心もとない。

 

 

(昨日のゼイヴァーとの戦いを見ていても、明らかに攻撃力では相手に劣っている。それを武具で埋める必要があるよな)

 

 

 そうして取り出したのは、柄のところに三つの青いジュエルが取り付けられたサナの刀である。

 

 基本的な構造はそのままだが、今までとは決定的に違う点がある。

 

 

「それを使って的を斬ってごらん。術符と同じように柄のジュエルを発動させる感覚でね」

 

「…こくり」

 

 

 サナが握った刀で躊躇なく的に斬りつける。

 

 ズパンッ ブシューーーッ!!

 

 斬った瞬間、刃から水が噴出。

 

 鉄製の的が簡単に真っ二つになる。

 

 

「どうだ。驚いたか? 『錬成』を試してみたんだ。その結果、こいつは【術式武器】になったんだよ。まあ、サリータのボムハンマーも術具だけどね」

 

 

 『錬成』は錬金術師のみが使える特殊技能であり、通常のアイテムや武具を『術具』に変化させることができる貴重なスキルだ。

 

 一流の錬金術師であるエメラーダに師事しているのだから、アンシュラオンも使えて当然、というわけではない。優れた術の才能と資質がなければ駄目だ。

 

 幸いながら『デルタ・ブライト〈完全なる光〉』には、すべての因子と才能が眠っている。その中には『錬成』も含まれているわけだ。

 

 出立する前にジュエルを製造していたように、エメラーダと出会ったことでその才能が開花。いくつかの練習を経て、ようやく自力で術具の製造が可能となったのだ。

 

 

「刀身を命気結晶で補修もしているから、命名するなら『水刃命気刀』ってところかな。元が普通の刀だからそこまで強くはないが、間に合わせで使うには十分だろう」

 

「…こくりこくり! ぎゅっぎゅっ」

 

「ははは、嬉しいか? よかったよ」

 

 

 サナも気に入ってくれたようで、ぶんぶんと刀を振り回している。意外と新しいものが好きな性格なのだ。

 

 

「その水刃は『水刃砲』としても発動が可能だ。術式武器の最大の特徴は、術による攻撃を同時に行えることだな。魔力依存になるが、敵の防御を無視できるのは大きい」

 

 

 サナはまだ戦気量が多くはないため、牽制の遠距離攻撃に割けるほどの余力はない。そのため術符も併用しているのだが、どうしても片手が塞がってしまう。

 

 しかし、この武器ならば刀を持ったまま両方の戦い方ができる。

 

 そして、これによってさらに武器が増える。

 

 

「今度は魔石を使ってから水刃を放ってごらん」

 

「…こくり」

 

 

 サナが魔石を発動し、身体が雷に覆われる。

 

 その状態で水刃を発動させると、水刃に雷がまとわり一緒になって飛んでいく。

 

 命中。

 

 切り裂くと同時に的が焼け焦げる。これが人体ならば感電していただろう。

 

 

「水と雷の複合術式、『水雷刃砲』だな。本来ならば因子レベル3の術式に相当するものだ。しかも水の力はジュエルでまかなうから半分の力で済む。これならゼイヴァーだって簡単には防げないぞ」

 

 

 昨日のゼイヴァー戦はあくまで模擬戦。こちらが武器と術を使えば、もっと良い勝負ができただろう。

 

 ただし、相手も優れた武器を使えば対等になるので、まだまだ差はあるといえる。これからも武器の確保と調整は必須であろう。

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前 :ボムハンマー〈爆破杭槌〉

 

種類 :槌

希少度:B

評価 :C

 

概要 :アンシュラオンが作った手作り金属槌。専用の爆破杭を打ち込むことで敵を内部から破壊できる。通常の鈍器としても使用が可能。

 

効果 :攻撃D+1.2倍+攻撃D(爆破杭の固定追加ダメージ)

 

 

【詳細】

 

耐久 :C/C

魔力 :D/D

伝導率:D/D

属性 :無

適合型:物質

硬度 :C

 

備考 :

―――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――

名前 :ピストルグレネードランチャー〈単発式爆破銃〉

 

種類 :銃

希少度:D

評価 :D

 

概要 :通常のグレネードランチャーを半分に切って改良したもの。命中率は高くないが、その分だけ取り回しが良くなっている。専用の拡散砲弾を使用する。

 

効果 :攻撃D+攻撃F(拡散時の追加ダメージ)

 

 

【詳細】

 

耐久 :D/D

魔力 :E/E

伝導率:E/E

属性 :無

適合型:物質

硬度 :D

 

備考 :

―――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――

名前 :水刃命気刀

 

種類 :刀

希少度:A

評価 :C

 

概要 :アンシュラオンが無銘の刀を命気で補修し、錬成強化した術式刀。切った瞬間に水刃の追加ダメージを与え、そのまま放出すれば『水刃砲』の効果もある。サナへの愛情がこもっている希少品。

 

効果 :攻撃D+1.4倍+攻撃F~(水の追加ダメージ、魔力依存)

 

 

【詳細】

 

耐久 :C/C

魔力 :D/D

伝導率:C/C

属性 :無、水

適合型:魔力

硬度 :C

 

備考 :サナ・パム使用時・性能強化

―――――――――――――――――――――――

 

 

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