【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
念糸を使った精神操作を精神術式と呼ぶ。
精神操作にはいくつかやり方があり、もっとも強いものが今アンシュラオンがやっている『直接結合』だ。
直接結合はLAN接続と同じで、もっとも回線が安定し、なおかつ効果も強力なものが多い。
エメラーダが使った『百式悪鬼奈落』も、この原理を使って脳神経に幻覚を送り込むことで成立している。
因子レベルが高ければ高いほど、より相手の精神と強く結びつくことができ、その効果もより増していくことになる。
また、因子レベル6以上の精神術式となると、幽的半物質体を超えて霊体そのものに影響を与えるようになる。
エメラーダの『
もし抵抗できなければ、完全に彼女の傀儡人形にされていたことだろう。そうなれば、現在の記憶を操作して偽りの人生を過ごさせることも可能だ。
ただし、エメラーダが逆侵入で大損害を受けたように、やはり危険かつ高度なので使い手は少ない。術のエキスパートといわれる支配者の中でさえ、ごくごく一部の者に限られる。
これと比べてスレイブ・ギアスは、ジュエルを媒介して特定の命令を送り続けることで、潜在意識に一定のパターンを刻みつけるものである。
一度パターンを作ると『自発的』に行うようになるのが、前者の直接結合と圧倒的に異なる点である。そのため精神術式の中では、比較的穏便な手法といえるだろう。
しかし、人間の潜在意識は強力だ。一度パターン化してしまえば、こちらが何もしなくても従うようになる。
こうしたことを踏まえ、ラノアにはある種の期待を込めている。
(この才能を伸ばしていけば、大勢の人間を操ることができるかもしれない。もしくは魔獣や特殊な機械の操作もできる可能性がある。ギアスの側面と両方から探っていきたいものだな)
いちいちギアスを付けるのは手間だ。直接操作したほうが早いこともあるだろう。
マングラスが機械人形を操作しているのを見てから、こうした可能性についてはずっと考えてきた。
ラノア単体は弱くても、上手く神経装置を組み込めるのならば、人形の力だけで動くことができるはずだ。
それもまたマングラスを潰す目的の一つだ。こうした楽しみがあるのは実に嬉しいことである。
「さっそくウサギで練習してみよう。念糸を出して」
「あい」
「そうだな。最初は手足だよな。逃げられたときに捕まえることもできるしね。後ろ足に付けてごらん。できるかな?」
「んー、こう?」
「きゅ?」
夢兎も自分の身体の中に異物が侵入する違和感があるのだろう。首を傾げる。
これが人間ならば気持ち悪さで暴れそうなものだが、温和で眠そうなウサギはそれ以上の抵抗はしない。
ラノアの念糸が―――接続
「よし、いいぞ。自分の足を動かすように神経に命令を与えるんだ」
「んーー」
ビクククッ
ウサギの足が痙攣するように動く。
「もう少しゆっくり、大きく動かしてごらん」
「んーー」
バッタンバッタン
今度は大きく揺れ動きすぎて、ウサギが上下に揺さぶられる。
「うーん、まだ難しいかな? 自分の身体も意識して動かすことはあまりないからね」
人間の身体は精神によって動かされるが、その大半は(精神領域の)潜在意識が代理で動作を担当している。
たとえば目に物が入りそうになった時、反射で瞼が閉じられるだろう。食事をしている際、歩いている際、アスリート以外の素人がわざわざ神経そのものを意識することはあまりない。
それと同じで、他人の精神を操作することは、まさに操り糸を使って人形を動かすことに似ている。そのための練習が必要になるのだ。
「そのウサギはあげるから、念糸を使って定期的に遊んであげるんだよ。この子も喜ぶからね。食料は適当に草や野菜の残りでもあげていればいいかな?」
「うん、わかった! いーこ、いーこ!」
もともとヌイグルミ好きな少女だ。動物も好きなのだろう。すでに抱きかかえて可愛がっている。
とはいえ魔獣だ。やはり危ない。
と思うかもしれないが、このウサギにはすでに『スレイブ・ギアス』を施してある。
(付けたギアスは二つ。人間とは違って同意を得られないのが最大の短所だが、逆に思いきることができた。今回付けたギアスは、【脳に直接植え込んで】みた)
さらりととんでもないことを言ったが、事実である。
スレイブ・ギアスの長所は『同意を得る』点にこそある。
これは短所にもなりえるので、より強力な媒体を求めているわけだが、同意があることで効果が増すのは間違いない。施すほうも気分がいい。
がしかし、魔獣や敵対者となれば不可能だ。
友好的な魔獣ならば犬のように懐く可能性もあるが、意思疎通が難しい相手も多い。しかも魔獣になると霊体が存在しないものが大半だ。
これは死後の話になるのでややこしいが、動物の魂は基本的には大きな魂の群れに吸収され、全体として大きな意識体を構成する。人も同じだが、人間の場合は個々に霊体があり意識が残っているのが最大の違いである。
動物の人生は、まさに一回きり。転生はしない。
となれば幽的物質も希薄で、潜在意識に訴えかけるのも難しいことがある。
そうした場合は昔から人類が考えていたように、直接脳神経をいじるのがもっとも効率的な手法といえる。
幸いながらアンシュラオンには回復術式と命気があるので、傷はいくらでも治せる。開頭手術もそこまで難しくはない。
使っているのはスレイブ商用の汎用タイプのジュエルだが、この程度のウサギならば十分対応できるだろう。
(問題はどこに付けるかで多少迷った。にわか知識で前頭葉あたりに突き刺してみたが…今のところは大丈夫そうだな)
前頭葉は思考や感情、運動を司る生物にとって一番重要な部位である。人間と比べて動物はその部位が小さいため、感情表現や知力があまり発達しないのだ。だからこそ小さい力で操ることができる。
ひとまず人間に対しての攻撃性を抑える術式を構築してみた。攻撃性が高まったら強制的に鎮静作用のある魔素を注入し、おとなしくさせる仕組みだ。
これが上手くいけば、今度は特定の人物に対してだけ従うような術式を試してみたい。
(しかし、これは完全なる『魔獣支配』ではない。ジングラスの魔獣と比べると不安定だよな。うーん、生まれた時から洗脳するのが秘訣かも。刷り込みとジュエルの併用かな?)
ギロードも他の魔獣も産まれた時から一緒に生活しているようなので、当然ながら秘法も使っているだろうが、そういった『絆』も重要な要素だと思われる。
だが、絆などまったく気にしないこの男には、強制支配のほうが向いているのかもしれない。
そして、元素術式の才能がある彼女には、攻撃の術式も授けておく。
「ラノアは雷の属性を持っているから、まずはそっちも伸ばしていこう。練習技の『
アンシュラオンがお手本で雷玉を出す。
これは水玉とか風玉とかと一緒で、静電気の塊みたいなものだ。
「んと…こう?」
雷はバチバチと弾けるのでまとめるのが難しい類なのだが、ラノアが掌の上に意識を集中すると―――小さな玉が生まれた
(いい感受性だ。魔力珠がサポートしているとはいえ、完全に感覚を掴んでいる。サナほどじゃないが、この子も見たものを吸収する能力に優れているな)
セノアが努力を続けて成長する秀才型ならば、ラノアは感覚に優れた天才型である。
両者共に長短あるので姉妹で刺激し合ってくれれば最高だ。
「いいぞ! 小さいけど、ちゃんとできているな! これを続ければ術式の扱いにも慣れていくし、精神力も高まっていくはずだ」
「うん!」
「雷貫惇は…ちょっと激しいけど、オレがサポートして一回やってみよう。ラノアに接続して…っと、よし。掌を的に向けてみるんだよ」
「わかった」
ラノアが的に手を向け、アンシュラオンが専用回線で術を発動。
この専用回線もある種の神経操作であるが、当人同意のもとでやるから反動も少なく、当人への負担もない。
雷貫惇が―――発動
さきほどより強い雷が一点に集中し、指向性を与えられて的に突き刺さる。
ラノアの魔力を使っているので威力はあまりないものの、雷貫惇自体が強い術式なので的を見事に貫通する。
これだけ見るとセノアが習った魔力弾より元素術式のほうが強いように思えるが、その分だけ消耗が激しい。
「ふぃ…」
ラノアから一気に力が抜けていくのがわかる。
計算式は慣れれば惰性でもできるが、絵や精密な形を描く動作には集中力が必要なのだ。
集中力自体に大人や子供による差はないとされるものの、それまでに培った精神力や思考力、物事の判断力などが大きく影響を及ぼす。
強い欲求もその一つだ。何か目的や目標があれば人はがんばれるが、ラノア自体にはまだそういった我欲がない。これも成長するにつれて伸びていく要素であろうか。
「これは少し疲れちゃうな。いざというときにだけ使って、普段は無理しなくていいからね。その代わり、術符はいくらでも使っていいから、感覚を常に養っておくんだよ」
「うん、わかったー」
「あとは火の術式も少し登録しておいた。得意属性じゃないから難しいだろうけど、使えると便利だから練習しておくんだよ」
それ以外にも『
一般的に属性は一種類に絞るのが基本である。なぜかといえば、得意属性以外のものは因子の劣化のように全体的に力が落ちる。
たとえば水や火のように相反する属性の場合、そもそも発動しないこともあるのだ。
ただし、反発しない水や雷、火や雷といったものならば、効果が落ちても発動自体はできる。
アンシュラオンが炊事のために仕方なく火を使う、という理由から火属性を覚醒させたように、メイドの生活全般でも役立つ能力となるだろう。
こうしてセノアとラノアの強化も順調に進んでいく。
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名前 :強化魔力珠〈セノア専用〉
種類 :術具
希少度:C
評価 :D
概要 :一般的に使用される魔力ブースターをセノア用に改良したもの。演算処理を助けてくれ、精神を安定させる。『核剛金』『原常環』『接留止』『魔力弾』『無限盾』のサポートが可能。
効果 :魔力D、BP+200、因子拡張+2(覚醒限界値による制限あり)
【詳細】
耐久 :E/E
魔力 :D/D
伝導率:D/D
属性 :無
適合型:魔力
硬度 :E
備考 :セノア専用
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名前 :強化魔力珠〈ラノア専用〉
種類 :術具
希少度:C
評価 :D
概要 :一般的に使用される魔力ブースターをラノア用に改良したもの。感受性を高め、念糸の強化や精霊への干渉が容易になる。『雷玉』『雷貫惇』『火玉』『火痰煩』のサポートが可能。
効果 :魔力D、BP+200、因子拡張+2(覚醒限界値による制限あり)
【詳細】
耐久 :E/E
魔力 :D/D
伝導率:D/D
属性 :火、雷
適合型:魔力
硬度 :E
備考 :ラノア専用
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と、終わるのはまだ早い。
「ああ、そうそう。もう一つあるんだ。ちょっと待っててね」
少し待っていると、アンシュラオンがクルマを運んできた。
昨晩、クルマはキャンプ内のガレージに移動され、何やら改修を受けていたようだ。
そのため女性たちは野営することになったが、もともとキャンプ用品は積んであるので問題はない。(おっぱいの妖精の加護もある)
で、問題のクルマだ。
「迷ったんだけど、もういいかなと思ってこうしてみた」
そこにあったのは赤いクルマだが、明らかに今までとフォルムが変わっていた。
真っ先に目に付くのは―――【砲台】
クルマの屋根に台座と一緒に大きな砲が取り付けられている。
「戦車の主砲があったからさ。もらっちゃった」
もらっちゃった、てへっ♪
ではない。これではもう完全に某戦車RPGそのものだ。むしろそれに合わせた感がなくもない。
「ただし、実際の戦車の砲弾を使うのは補充の観点からも大変だし、運ぶのも手間だ。だから砲が撃ち出すのは『石弾』になっている。石ならそこらでいくらでも手に入るからね」
普通は砲弾を撃ち出すが、この『術式反発キャノン砲』が撃ち出すのは『石』。
しかし、たかが石と侮ることなかれ。撃ち出す原理はただの風力ではなく、雷も併用した【属性反発式】である。
これはトロッコの一件を思い出すとわかりやすい。あれに内蔵した実験用のジェットブースターがあっただろう。それを高出力のまま複数搭載しているのだ。
よって、砲身を通れるものならば、たいていのものを超加速して撃ち出すことができる。
また、地球の戦車の砲身と比べて、この世界の口径は二倍近くある。
戦艦や施設は術式で強化されているため、それをぶち抜くために大型化する必要があったのだろう。そういう理由もあって、すべてのサイズが大きいのだ。
「では、主砲を試してみよう。まずはそうだな。やっぱりホロロさんかな」
「かしこまりました」
「弾も一緒に置いてあるから、その蓋を開けて入れてみて。少し重いのが欠点だけどね」
「大丈夫です。転がせば普通に入れられそうです」
「できれば二人でやるのがいいかも。砲手と装填を別々にしたほうがよさそうだ」
「はいはいー、私がやります!」
「ありがとう、小百合さん。それじゃ、お願いね」
ホロロが台座に座り、小百合が石弾を入れる。
この石弾はアンシュラオンが掘り出して研磨したため、パチンコの弾のようにツルツルだ。
弾倉もパチンコの台のように角度を付けて吸い込む形にしており、中に入れてしまえばコロコロ勝手に転がっていき勝手に装填される。女性に優しい仕様である。
そして、ハンドルで狙いを付けてボタンを押せば、発射。
ジュルル バチンッ!!
風と雷の術式が反発してレールガンのように滑らかに射出され、命中。
バゴーーンッ!!
的を破壊しつつ、固定していた鉄の棒もひん曲がる。
威力は見たまんま。小型の投石器よりも遥かに威力があり、命中率もかなりのものだ。
「この重さなら二百メートルくらいは射程範囲だと思うけど、魔獣相手だったらもっと近寄らないと駄目かも。それでも硬い相手には衝撃しか与えないから『通常弾』は注意が必要だよ」
アンシュラオンは今、通常弾は、と言った。
であれば、通常ではない弾があるということだ。
「次にその赤い弾を入れてみて」
新たに的をセットし、赤い弾丸を込める。
発射―――命中
ここまでの流れは同じだ。
が、見た目ですでにわかっていたかもしれないが、爆発。
ボォーーーンッ! ボォオオオ
着弾した的を破壊しつつ、燃やす。
「火のジュエルを使った【燃焼弾】だよ。いわゆる『焼夷弾』だね」
大納魔射津と違って爆風でダメージを与えるものというよりは、火の継続ダメージを目的とした術式の『火痰煩』に近いものだ。
着弾時に火が散らばるように、あえて壊れやすく作っている。そのせいもあって飛距離は多少落ちるが、火に弱い植物や獣系のモンスターには有効である。
「続いて黄色いやつをお願いね。ああ、着弾時は危ないから、至近距離の場合は直視しないかゴーグルを付けてね」
今度は黄色い弾丸を発射。
こちらは着弾時すると同時に、バチバチッと周囲に雷撃と強い光を放つ。
【雷撃閃光弾〈サンダースタン弾〉】。
雷の感電と閃光による強烈な刺激で相手をショック状態にするものだ。こちらは魔獣だけではなく対人用にも使える武装となる。
「近寄る敵がいたら、そこの『副砲』を使ってね」
取り付けた武装はまだある。
クルマの屋根にはもう一つ台座があり、そちらにも砲が設置されていた。
こちらは専用の木製の筒を入れて発射するようだ。筒は重くないので女性でも簡単に装填できる。
的に向かって撃ってみると、木製の筒は途中で破壊され、そこからいくつもの弾が飛び出て―――ドガガガガッ!
的の至る所が細かく破損。
「それは手作りの『ショットガン』だ。射程は三十メートル以内かな。エジルジャガー程度の魔獣なら十分倒せる威力があるけど、前方一帯に放射されるから味方がいるときは気をつけてね。この弾は木製銃でも使えるように調整中だ」
銃を女性や子供が扱うと、どうしても命中率が下がってしまう傾向にある。
それを改善するためには、手っ取り早く散弾にしてしまうほうが楽だ。
「あとはクルマに装甲タイルを張り付けて、少しくらいの銃撃にも耐えられるようにしてみた。魔獣相手だと気休めだけどね。うんまあ…不恰好になったけど仕方ないよね。身を守るためだ。我慢しよう」
こうしてダビアからもらったクルマを魔改造してしまう。譲ってもらった時の面影は、ほぼない。
こんなに改造するのならば戦車そのものでもよいと考えるかもしれないが、そこは機動性の問題である。
どうせ強い魔獣や優れた武人には通じないのだから、場合によっては武器を捨てて逃げてしまったほうが得策なことも多いだろう。
そのためにあくまでクルマの状態として強化したのだ。
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名前 :術式反発キャノン砲〈改造戦車砲〉
種類 :砲
希少度:B
評価 :C
概要 :風と雷の術式反発を利用して物質を放出する特殊砲。最大三発同時装填可能。戦車砲なので戦気強化は難しい(できなくはない)
効果 :攻撃B(通常石弾使用時)
【詳細】
耐久 :C/C
魔力 :F/F
伝導率:F/F
属性 :無
適合型:物質
硬度 :C
備考 :
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名前 :散弾砲〈単発式〉
種類 :砲
希少度:D
評価 :E
概要 :散弾を発射する副砲。単発式
効果 :攻撃E(通常石散弾)
【詳細】
耐久 :E/E
魔力 :F/F
伝導率:F/F
属性 :無
適合型:物質
硬度 :E
備考 :
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