※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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653話 「アンシュラオン VS ガンプドルフ その1」

 

 

 ガヤガヤガヤ

 

 

 昼過ぎ、急に騒がしくなる。

 

 地下闘技場では当然だったが、ここは軍隊である。私語などは慎むべきであり、うるさくしていたら殴られる世界だ。

 

 そんな中で、兵士だけではなく集められた騎士も周囲の者たちと会話するほど、これから起きることに興味津々であった。

 

 なぜならば、これから行われるのは―――

 

 

 

 

「ガンプドルフ聖剣長、アンシュラオン輝光長、前へ!」

 

 

 

 

 アンシュラオンとガンプドルフの特別対戦である。

 

 これだけで他の雑念がすべて掻き消えるほどのインパクトだ。

 

 当然ながらガンプドルフは強い。

 

 鍛錬する時も相手をするのはだいたい手練れ数人、最低でも百光長レベルの武人が三人いないと務まらない。

 

 彼が本気になって鍛錬するのならば、もっと強い武人が必要になる。

 

 なにせ聖剣長はDBDを代表する存在。守り神に匹敵する扱いなのだ。

 

 そこにふらっとやってきた少年が立ち向かうのだから、騎士たちが興味を抱くのは当たり前だ。

 

 しかし、両者が出てきて数秒で、これが何か『おかしい』ことに気づいた。

 

 

「なっ…! 閣下の装備を見ろ!」

 

「フルプレートの完全装備!!? しかも強敵相手用の盾持ちだ!!」

 

「あの剣はトールガイアの剣! ここで使うおつもりなのか?」

 

「信じられない…戦場でもあそこまでの武具は滅多に装備しないのに…」

 

 

 ガンプドルフのいでたちは、重装甲兵が身にまとうゴリゴリのフルプレート。

 

 視界の保持のために目元は少し開いているが、頭全体を覆うフルフェイスの完全防備である。

 

 もちろん聖剣長が扱うものなので、素材からしても超一級品の【術式防具】だ。

 

 そこに加えて左手には盾も持っており、右手のロングソードも普通のものではなく銘入りの術式武器である。

 

 この装備を身に付ける時は、まさに強敵と合間見える決戦場。戦艦に飛び移り、相手の将を討ち取る場合にだけ装備するものである。

 

 ガンプドルフが東大陸にやってきてから、これだけの武装をしたことは一度たりともない。その必要性がなかったからだ。

 

 騎士たちが驚くのも無理はない。

 

 

「すごい格好だね。本当に騎士なんだなぁ」

 

 

 対するアンシュラオンは、いつもの普段着。

 

 特に錬成もしていない普通の白い武術服だ。

 

 服を含めて戦気で覆ってしまえば破れることも少ないので、あまり錬成する意味がないのである。

 

 といっても実際のところは、自分に見合うだけの防具が存在しないことが最大の要因だ。

 

 火怨山ではどうせ姉に壊されるので、防具を着る習慣が身に付かなかったのである。

 

 

「君が相手だ。これくらいはしないと失礼だろう」

 

「そんなこと言って、前の仕返しを考えていたりして」

 

「ふふ、そうかもしれんな。今回は一味違うぞ」

 

「でもさ、これでもう装備が整っていなかった、という言い訳はできないよね?」

 

「ああ、これが私の【通常時】の最強装備だ」

 

「今回も聖剣は使わないか。まあ、こんなところで使えるわけもないよね。じゃあ、オレもハンデをあげるよ。今回は【攻撃に体術は使わない】。攻撃に関して殴る蹴る、その他覇王技は一切使わないよ。防御や受身ではもちろん使うけどね。剣と術だけで戦うと誓うよ」

 

「それは助かる。これで少し勝機が出てきた」

 

 

 アンシュラオンが手に持っているのは、剣。

 

 そう、今回はせっかく覚えた剣技を使って戦おう、というコンセプトなのだ。

 

 もしすべての力を使って戦えば、ガンプドルフの負けは確定している。ゼロと言ったらゼロだ。万に一つもないと断言しよう。

 

 しかし、剣と術だけならば、相手側にも勝機があるはずだ。

 

 

「………」

 

 

 そのアンシュラオンの台詞に対して、周囲は言葉が出ない。

 

 これをどう受け止めていいのかわからないのだ。

 

 普通ならば「うちの聖剣長をなめやがって!」とか言い出しそうなものだが、アンシュラオンの実力を当のガンプドルフが認めているため、文句や異論を挟む余地がないわけだ。

 

 ゼイヴァーやバルドロスも何も言わない。ただ黙って見ているだけだ。

 

 それゆえに最初は騒いでいた外野も、少しずつ静かになっていく。

 

 

 

 両者が、対峙。

 

 

 

 ガンプドルフは盾を前に、剣を少し引いた防御の構え。

 

 聖剣の形の違いのところでも述べたが、雷の聖剣は長剣、ロングソードである。

 

 長剣はこうやって盾と同時に扱うことができ、場合によっては両手で持つこともできる汎用性が強みだ。どの場面でも安定した力を発揮できる。

 

 ガンプドルフの戦闘スタイルが攻撃型剣士であることは間違いないが、やはりアンシュラオンの攻撃力を警戒して盾を持ち出した。

 

 彼は、本気。

 

 全力で挑む気なのは間違いない。

 

 アンシュラオンは、そんなガンプドルフを楽しそうに見つめる。

 

 

(これだけ上等な相手も久々だ。楽しみすぎるな。しかし、肝心のオレの剣を作るのを忘れていたとは…盲点だった。まったく気づかなかったよ)

 

 

 サナたちのことばかり考えていて、自分の武器を作っていなかったのだ。

 

 これも普段は剣を使わないので仕方ない。包丁をミャンメイにあげてから、すっかり持たないことに慣れてしまったのだ。

 

 対戦前に気付き、慌てて武器庫に置いてあったロングソードを錬成強化したのが、今持っている剣である。

 

 何の効果も付いていない少し丈夫なだけの剣にすぎない。

 

 とはいえ、これはこれで問題ない。

 

 

(変に癖がついていないほうが使いやすいこともある。特にガンプドルフが相手だと付け焼刃は通用しないからな。安定性に優れたほうがいいだろう)

 

 

 サナにただの強化剣を与えたのも、相手が特殊な属性や能力に対して対抗措置を持っている場合にそなえてである。

 

 何の変哲もない剣は、ただの鉄の塊。だからこそ、あらゆる状況で一定の力が出せるのだ。

 

 

「フレーー、フレーー!! アンシュラオン様!! レッツゴー、レッツゴー、アンシュラオン様!! イェーーーイッ!」

 

 

 小百合やホロロたちも、この戦いを見物している。

 

 ただ、一般人が近くにいると危ないので一角を防護結界で覆い、観客はやや上のほうから見下ろす形となっている。これならば多少遠くても、よく戦いが見えるだろう。

 

 

「それじゃ、やろうか」

 

「うむ」

 

 

 

 ここに審判はいない。

 

 

 

 両者の呼吸が合った瞬間―――立ち合う!!

 

 

 

 まず仕掛けたのは、意外にもアンシュラオンであった。

 

 いつもは防御しながら様子を見るが、ここぞとばかりに飛び出す。

 

 

(何も失うものはない。まずは挨拶代わりの一発だ!!)

 

 

 本気の戦気が展開され、一瞬で温度が上昇。

 

 激しい圧力で地面が焼け焦げると同時に、持っていた剣に力強い剣気が宿る。

 

 アンシュラオンの放つ剣気は、赤が少し混じった白い色合いである。鮮烈にして純真で、思わずため息が出そうなほどに美しい。

 

 剣を構え、一気に間合いを詰める。

 

 ガンプドルフもそれを正面から迎え撃つ。

 

 最初は盾を使うかと思いきや、彼も前に出て―――

 

 

 剣と剣が―――激突!

 

 

 さて、この結果はどうなるだろうか。

 

 力と力の勝負の場合、当然ながらパワーに優れるほうが勝つ。

 

 それによって打ち勝ったのは―――

 

 

「ぬぐううっ!!」

 

 

 ガキィィイイインッ!!

 

 

 ガンプドルフの剣が弾かれ、右手に強い衝撃が走る。気を抜けば剣を放してしまいそうだ。

 

 

 打ち勝ったのは、アンシュラオン。

 

 

 勢いそのままに追撃。横薙ぎの一撃を繰り出す。

 

 ガンプドルフは盾でガード。成功。

 

 激しい衝撃に襲われるが、展開した全力の防御の戦気で防ぎきる。

 

 今度のガンプドルフは、ひたすら防御の構え。

 

 そこに無造作にアンシュラオンの剣が叩きつけられる。

 

 ガシュンッ!! ガジュンッ!!

 

 白い剣気が盾を襲い、戦気を切り裂き、盾自体に大きな傷を付けていく。

 

 

(『オルゴロンの盾』でも防げないか。ここは防御しないと削られるな)

 

 

 ガンプドルフは剣で放出していた剣気を戻し、盾に剣気をまとわせる。

 

 両方に剣気を出すのが一番だが、強敵相手では消耗も気がかりだ。こうやって常に調整するのも強者の戦い方である。

 

 それによって多少ましになったものの、状況は変わらない。

 

 防戦が続く。

 

 

(今になって少年の怖ろしさがわかる。戦士の力を持った人間が、これだけの剣気を振り回すのだ。パワー、技術、素早さ、どれもこちらを上回っている!!)

 

 

 剣士の因子は、剣を操る能力や剣気の質に直結する。

 

 アンシュラオンは剣士因子「6」の剣気と、戦士因子「8」の身体能力と戦気を持っている。

 

 それぞれがまったく劣化しないので出力が桁違い。生粋の戦士の動きをする純粋剣士など、まさにチートである。

 

 一方のガンプドルフは戦士因子が「4」、剣士因子が「6」であり、それだけでも第五階級の王竜級の武人なのだが、剣士であるため実質的な戦士因子は2が精一杯だ。

 

 体格の優劣を差し引いても、アンシュラオンのほうが三倍以上の身体能力を有していることになる。まともに打ち合えば負けるのは自然なことだ。

 

 ただし、そんな力量差は承知の上の戦い。

 

 だからこそ準備してきた。

 

 

 盾が輝き、アンシュラオンの剣を弾く。

 

 

 そこにガンプドルフの反撃の一撃が襲う。

 

 

「おっと!!」

 

 

 アンシュラオンは後方に回転して回避。

 

 これを契機にしてガンプドルフが攻撃に転じる。

 

 アンシュラオンも剣で応戦するが、盾によって完全に防がれる。

 

 今まで効いていた攻撃がまったく通じなくなった。

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前 :オルゴロンの盾

 

種類 :盾

希少度:A

評価 :A

 

概要 :希少金属オルゴジウムを加工し、名工ザンクルーシュが鍛えた丸盾。攻撃を受け流す効果に加え、任意で『物理無効』を付与できる。『自己修復』もあるのでメンテナンスも楽。

 

効果 :防御A+1.5倍、工作+1、受け流し、物理耐性、銃無効、自己修復

必要値:魔力C、工作C、体力B

 

 

【詳細】

 

耐久 :A/A

魔力 :A/A

伝導率:B/B

属性 :無

適合型:物質

硬度 :A

 

備考 :

―――――――――――――――――――――――

 

 

(ははは、そういう道具を持ち出してきたか。いいじゃん。これくらいしてもらわないとね)

 

 

 盾の異変は、戦っている当事者ならばすぐにわかる。

 

 今回は練習がてらに『情報公開』も使ったが、この感覚が『物理無効』であることは一瞬で見破っていた。

 

 なにせ火怨山では『物理無効』が当たり前だ。

 

 ただ一つ問題があるとすれば、いつもならば『水覇・波紋掌』や『打界震』等の覇王技で破壊するが、今はそれが使えない点だ。

 

 

(おっさんの剣技が鋭いから、まだ大技を出すタイミングじゃないな。なら、コツコツいくか)

 

 

 アンシュラオンが剣を引き、突きを放つ。

 

 

 剣先が盾に触れ―――共鳴

 

 

 からの、バリンッ!!

 

 オルゴロンの盾に付与されていた『物理無効』が破壊される。

 

 

(むっ、今のは『破防突(はぼうとつ)』か? だが、盾ではなく『物理無効』を破壊するとは…!)

 

 

 剣王技、破防突。

 

 この技には【盾破壊】効果があり、そこらで売っている盾ならば簡単に破壊できる便利な因子レベル2の技だ。

 

 それをさせないように盾使いは戦気を張ったり、攻撃を流したりする。新品の盾が壊された日には涙が止まらないからだ。

 

 が、アンシュラオンの一撃は盾を破壊するものではなかった。そもそも『物理無効』ならば盾自体にダメージを与えられない。

 

 ゆえに、狙いは別。

 

 盾に衝撃を与えることで、あえて術式を浮かび上がらせ、その間に【ハッキング】。術式を解体してしまう。

 

 物理無効は中位術式なので、アンシュラオンでも構築するのは大変だが、壊すことならばそこまで難しくはない。

 

 対術式二重防護輪に付与された『低位術式無効』のように、ちょっとした計算ミスを誘発させてやれば、術式は成立しなくなるからだ。

 

 されど、それをこの一瞬で成し得るのは、やはり驚異的。恐るべき演算速度である。

 

 そうなれば、再びアンシュラオンの攻勢。

 

 素早い動きで接近してから高速の斬撃。

 

 ガンプドルフは盾で防御する。が、次第に受け流すことも難しくなり、どんどん亀裂が入っていく。

 

 

「いいのか、おっさん。盾を壊しちゃうぞ。お高いんだろう?」

 

「それは困る。まだローンも終わっていないのだ。どうせ効かぬのならば、こうするだけだ」

 

 

 ガンプドルフは盾を投げ捨てる。

 

 オルゴロンの盾には『原常環』の術式が付与されているので、完全に破壊されなければ、そのうち蘇る。

 

 盾を捨てたガンプドルフは、両手で長剣を構え―――

 

 

 

「少年、剣で語り合おう!!」

 

 

 

 劣勢のまま突進。

 

 

「盾を持ち出したのはそっちのくせに。いいよ、受けて立つ!」

 

 

 ガンプドルフのやり方は、すでにわかっている。

 

 彼の従来の戦闘スタイルは、防御は鎧に任せ、ひたすら攻めるといった超攻撃的なものだ。

 

 だからこそ、あんなゴテゴテのフルプレートを着ている。

 

 初対戦時では普通の鎧しかなかったが、この全身鎧によって完全にガンプドルフの性能を引き出せるのだ。

 

 鋭い踏み込みから、剣閃が疾った。

 

 アンシュラオンは回避を選択。

 

 剣で受けてもいいが、さすがに普通の剣では心もとない。

 

 その証拠に

 

 

 大地が―――ズバァーーーーンッ!!

 

 

 両手持ちから放たれた上段斬りは、地面に激突。長い亀裂を生み出す。

 

 

 これで完全にガンプドルフが攻撃モードに移行。

 

 

 即座に追撃。

 

 鋭い踏み込みは雷気によって加速され、一瞬でアンシュラオンを間合いに入れる。

 

 雷光の突撃はサナが普段からやっているが、これくらいのことならばガンプドルフもできるのだ。

 

 しかも身体の強度も腕力も技量も、圧倒的にガンプドルフのほうが上。あっさりとサナを上回る速度を生み出す。

 

 当然そこから放たれる一撃は、すべてが一撃必殺だ。

 

 が、この高速戦闘は上位の武人にとっては、なんてことはない通常速度である。

 

 アンシュラオンは振り下ろされる剣の間合いを見切り、そこにカウンター。

 

 いつもの流れるような動きで放ったのは、力強い剣撃であった。

 

 

 剣王技、『不知火(しらぬい)』。

 

 

 グレツキに教えてもらったばかりの因子レベル3の技で、力強く強引な太刀筋の上下二連撃である。

 

 剣は火気で覆われており、普通ならば裂傷と火傷を負う危険な技だ。

 

 それをガンプドルフが一回剣を振り下ろす間に、胸に一撃、胴に一撃。二回切り裂く。

 

 だが、フルプレートは切り裂けない。

 

 完全に入った一撃だが、びくともしなかった。

 

 

(さっきの盾より硬いな。まったく剣が通らないぞ。ただの鎧じゃないってことか)

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前 :ヘビタイト・フルプレートアーマー改(重装)

 

種類 :鎧

希少度:S

評価 :S

 

概要 :特殊金属ヘビレトタイトを加工し、名工ザンクルーシュが鍛えた逸品。聖剣王国の聖剣長専用に六つだけ作られた希少品。優れた防御力や特殊防御機能に加えて、自己修復能力も持つ。

 

効果 :防御S+2.0倍、魔力+1、体力+2、精神+1、物理耐性、銃耐性、術耐性、即死無効、中型物理障壁、自己修復、HP+3000。

必要値:魔力A、体力A、精神A

 

 

【詳細】

 

耐久 :S/S

魔力 :S/S

伝導率:A/A

属性 :無

適合型:物質

硬度 :S

 

備考 :ガンプドルフ専用

―――――――――――――――――――――――

 

 

(なるほど、基礎防御が『S』か。どうりで硬いわけだ。おっさんの戦気も上質だから、この剣で切り裂くのは難しいな)

 

 

 ヘビタイト・フルプレートアーマー改。

 

 ガンプドルフ用に作られた聖剣長専用の鎧で、高い防御力に加えて各種耐性および、損耗を自動修復する機能も持っている。

 

 たとえば体力の数値だけ見ても二段階向上するため、現在のガンプドルフの体力は「A]から+2されて「S]になっている。

 

 魔力も+1されれば、「AA」だ。ただしこれは、あくまで鎧だけの効果である。

 

 盾は捨てたが、なぜ捨てたかといえば盾自体には「工作+1」しか付いていないため、あまり能力向上にはならないからだ。

 

 こうした武具によって、ガンプドルフの性能値はアンシュラオンに近づいている。

 

 

 ガキンッ! ガキンッ!!

 

 

 アンシュラオンも応戦するのだが、物理障壁は貫けるものの、素の性能が違いすぎて鎧に剣が弾かれる。

 

 

 そこにガンプドルフの剣士とは思えない―――全力のぶちかまし!!

 

 

 剣を振り払ったアンシュラオンの隙をつき、身体ごとぶつかる。

 

 フルプレートを装備しているうえ雷気で加速しているので、当然ながらサナの体当たりなどよりも何倍も強い一撃だ。

 

 龍化していないレイオン程度ならば、これだけで一撃KOだろう。即死である。(いつも彼ばかりがたとえにされるが、手頃な戦士がいないせいである。ソイドビッグではさすがに説得力が足りない)

 

 が、アンシュラオンは、それをまともにくらうほど鈍重ではない。

 

 ふわり すとん

 

 鎧にへばりつくように身体全体で衝撃を吸収しながら、足をかけて後方に跳躍して着地。

 

 これだけの体当たりにもかかわらず、まったくダメージを受けない。

 

 攻撃に体術は使わないと言ったが、こうした受身は好きにできるのだ。

 

 そうして何事もなかったかのように剣を持って佇んでいる。

 

 

 その姿が―――あまりに美麗

 

 

 戦いにおける美が存在するとしたら、まさにこのような瞬間なのだろう。

 

 鍛えられた身体、磨かれた技術、それらに裏打ちされた自信と度胸。

 

 今、大勢の人々がアンシュラオンに魅了されていた。

 

 

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