※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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654話 「アンシュラオン VS ガンプドルフ その2」

 

 ガンプドルフが突進してからの斬撃を繰り出す。

 

 アンシュラオンは回避。華麗にかわす。

 

 ガンプドルフの斬撃、アンシュラオンは回避。

 

 斬撃、回避、斬撃、回避、斬撃、回避、斬撃、回避。

 

 ことごとく当たらない。

 

 

(これが少年の本気の動きか! まるで当たる気がしない!)

 

 

 ガンプドルフとの初対戦は、ヘブ・リング〈低次の腕輪〉を付けての戦いだった。つまりは低出力モードだ。

 

 その段階ならばガンプドルフも動きについていけたが、本来の戦気を放出したアンシュラオンの性能は格段に上昇。

 

 直線の速度に加えて、しなやかな左右の動きを可能にする敏捷性がそなわっている。

 

 常時『無限抱擁』も展開しているので、不意の一撃にも完全に対応できる。来ることがわかっていれば対応は簡単だ。

 

 三百六十度、死角無し。

 

 相変わらず防御に関しては鉄壁に近い。サリータたち重装甲兵とは真逆のタイプの防御型の武人である。

 

 ただし、回避だけに徹しているわけではない。

 

 ガシュンッ!!

 

 ガンプドルフが斬撃を放つと同時に、必ずカウンターの一撃を当ててくる。

 

 強固な鎧に守られているので無事だが、あの当時の鎧だったならば一発受けるごとに深手を負っていただろう。

 

 

(おっさんは強い。踏み込みの速度と一撃の重みは、今までの中で最強なのは間違いない。ただ、クロスライルのような変則的な動きはないし、変なスキルもないからかわすのは難しくない)

 

 

 ガンプドルフは直線の動きには優れているが、そこからの変化がない。そこがサナとの大きな違いだ。

 

 ただ、あれだけの重装備をしていれば、それも無理な話。一撃の重みを重視するのならば、あれが正解といえる。

 

 特に描写はしていないが、互いの攻防においては数多くの駆け引きが行われているため、目には見えないところで高等技術の応酬がある。

 

 踏み込む速度も一定ではないし、間合いもその都度変化させている。一瞬でも判断が遅れれば、一発でHP2000くらいは簡単に吹き飛ぶ戦いだ。

 

 この圧力に軽々対応するアンシュラオンのほうがおかしいのだ。

 

 

(それにしても、硬い。硬すぎる。装備の差はどうしようもないな。でも、これがおっさんの力だ。それに意味がある)

 

 

 装備の重要性を改めて認識する戦いである。

 

 だが、これは卑怯でもなんでもない。

 

 ガンプドルフの素の戦闘力はクロスライルとそう変わらないが、DBD艦隊の司令官かつ聖剣を与えられるという高い『身分』と『立場』がある。

 

 それも立派な力の一つだ。力を得るだけの手段があることが重要なのだ。

 

 残念ながらアンシュラオンには、これだけの立派な武具を手に入れることはできない。それが自分が求めたこととはいえ、まだ無名の人間なので、せいぜいB級の武器を手に入れるのがやっとだ。

 

 だから対等。だからいい。

 

 身分や才能、財力、人脈を含めて両者は互角にあった。

 

 そして、英雄であるガンプドルフと並び立つということは―――

 

 

 

 アンシュラオンも―――【英雄】

 

 

 

 英雄をわざわざ数値で選ぶ必要はない。誰かが作ったルールや法律で決められるものではないのだ。

 

 見れば、すぐにわかる。

 

 【英雄の波動】を、これでもかと垂れ流しているからだ。

 

 何かが違う。無性に惹き付けられる。目が離せなくなる。そこには時代を切り開く力が眠っている。

 

 人々は英雄に憧れる。

 

 それが騎士たちならば、より一層恋焦がれるのは自然なことだ。

 

 

「…はぁ」

 

 

 戦いを見ていた騎士から、吐息がこぼれる。

 

 乙女でもない中年男性が、ときめく胸を押さえているのだ。

 

 男女問わず、大人も子供も関係なく、本物を見る目がある人間を魅了する。

 

 

(そうだ、少年! 君の力を見せ付けてやれ!! 武人には言葉よりも戦いで教えるほうが早いのだ! 私が見た君の輝きを部下たち全員に見せてくれ!)

 

 

 なぜガンプドルフがこんな戦いをしているかといえば、今後を見据えてのことだ。

 

 これから厳しい戦いが始まる。戦艦捜索作戦だけではなく、人知を超えた荒野での戦いが待っている。厳しく長い、つらい戦いだ。

 

 そのためには、どうしても力を一つにしなければならない。

 

 まだこの『白き太陽』の輝きを知らぬ者たちに希望を与えたいのだ。

 

 そのためならば、これらの武具が壊れてもかまわない。安いくらいである。

 

 

 

 というのは、ガンプドルフの事情。

 

 

 

(今のオレの剣技じゃ、手数だけでおっさんの防御を貫けない。踏み込みが速くて間合いも広いから、こっちが大技を出すチャンスがないんだよな。こういうところが丁寧で、地味にいやらしいんだよ。ここがクロスライルとの違いかな。あいつはスキル頼みだったけど、おっさんは技術で勝負している。うん、楽しいや)

 

 

 アンシュラオンも対戦の意義はわかっているが、そんなことより新しい戦い方を模索するのが楽しくてしょうがない。

 

 もともとフリーダムな男だ。これくらいでいいのだろう。

 

 では、この状況をどうやって打開するかだ。その方法はいくつかある。

 

 

(まず第一にダメージ覚悟で突っ込むのは愚策だ。闘人は…体術じゃないけど、ここで使うのは何か違うよな。となると、やっぱり【術】かな。何を使おうか。どうせなら意味があるものがいい。セノアは…おお、見てる見てる。しかしまあ、なんでいつも不安そうにしているんだろうね、あの子は。小百合さんみたいに楽しく見ていればいいのに)

 

 

 セノアは、ハラハラしながらこの戦いを見ていた。

 

 そして、いまさらながらに気づく。

 

 

(あれ? セノアって…オレの戦いを見たことなかったっけ? …無いかも。最初はずっと影武者やっていたし、ホテルにずっといたし、クロスライルとは地下で戦ったし、遭遇戦も違う場所だった。だからか!!)

 

 

 ちなみに小百合もアンシュラオンの戦いを見ていないが、ホワイトハンターであることと、実際にデアンカ・ギースを倒したことで実力はまったく疑っていない。

 

 そこに大きな違いがあるのだ。

 

 

(決めた。これにしよう。セノア、見てろよ。君に教えたものが強いんだって証明してあげよう)

 

 

 ここで選択したのは、『魔力弾』。

 

 午前にセノアに教えた攻撃術式だ。

 

 これは単なる質量攻撃だが、アンシュラオンが使うとこうなる。

 

 左手に、巨大な塊。

 

 一瞬にして三十メートル大の立方形を生み出すと、細かく分離して次々と射出。

 

 それはまるで、マシンガン。いや、戦艦に搭載された機関砲だ。

 

 米軍等の機関砲を見ればわかるが、もはや音が聴き取れないレベル。昆虫の羽音にすら感じられるほどの高速射撃である。

 

 それとまったく同じものが、ガンプドルフに炸裂。

 

 カカカカカカカンッ!!

 

 甲高い音をさせながら、鎧から煙が上がる。

 

 これは魔素を包んでいる物質の殻が鎧の表面に当たり、摩擦によって音と煙が発生しているのだ。

 

 ただし、中身は魔素なので【防御無視】。

 

 防御Sという優れた鎧でも関係ない。これに対抗するには増幅させた戦気で防ぐしかない。

 

 この鎧は防御の戦気を二倍にする効果があるので極めて強力だが、アンシュラオンの魔力もSである。手数で攻めているのでそれだけでは防げず、鎧に小さな傷が入っていく。

 

 これが術の怖さである。

 

 何気なくアンシュラオンが使うのでついつい失念するが、これだけの術式を使う者など戦場では滅多にいない。

 

 戦士が剣を持っているからチート、などと言ってしまったが、その戦士がさらに術を使えばもっとチートである。

 

 だが、魔力弾の凄さは、ここからだ。

 

 あまりの高速射撃に移動回避しようとしたガンプドルフを捉える。

 

 

「逃がさないよ!」

 

 

 アンシュラオンが、今度は魔力弾で『鞭』を生み出す。

 

 シュルルと不規則な動きで迫り、ガンプドルフの足に絡みつく。外郭の物質性を高めたのでまだ破裂はさせず、単なる鞭として使用。

 

 そうやって動きを制限させておいてから、破裂。地面も同時に吹き飛ばし、動きを一瞬とめる。

 

 そこに今度は、魔力弾で作った巨大ハンマーでぶん殴る!!

 

 このハンマー状の魔力弾は、直径が五十メートル以上あるので、もはや何かの巨大な塊としか言いようがない。

 

 そもそもの問題として、これを『弾』と呼んでいいのかは熟考の余地があるが、やっていることは魔力弾と同じ。その応用にすぎない。

 

 直撃。

 

 真上から押し潰すように叩きつける。

 

 そして、当たれば魔素による術式ダメージが発生。

 

 結局ダメージになるのは当たった部分周辺なので、大きくした分だけ無駄が多いが、これはあくまで牽制。

 

 爆散した魔素が大量だったため、ガンプドルフがよろける。

 

 そこに突進、ついにこの技を出す。

 

 

「いっけえぇええええええええ!!」

 

 

 ドバーーーンッ! バリバリバリッ!!

 

 アンシュラオンの剣雷震が炸裂。

 

 ずっとこれをやりたかったので感無量だ。

 

 ただし、ガンプドルフのダメージは軽微。感電もしていない。

 

 

(あー、やっぱり同じ属性だと打ち消しあっちゃうのか。雷耐性もあるし、しょうがない。何事も使いどころだな)

 

 

 その去り際に、異様に細いピアノ線のような魔力弾を『千本』作り、半分ずつ角度を変え、十字にして撃ち出す。

 

 その姿は、まるで『網戸』。

 

 しかし、普通の武人がこれを受けてしまえば、某映画のワンシーンのように細切れになってしまうに違いない。

 

 ガンプドルフは、剣で切り裂いて粉砕。事無きを得る。

 

 と安堵するのは早い。

 

 再び突進してきたアンシュラオンが左手に持っていたのは、【魔素で作った剣】。

 

 これも魔力弾であり、射出しないで手に持った状態である。

 

 

 その魔素剣、マジックソードで―――切り裂く!!

 

 

 バシュッ! ボンッ

 

 斬撃と一緒に剣が砕け、魔素の爆発によってガンプドルフに衝撃。

 

 防御が遅れ、かなりいいタイミングで入ってしまっため、鎧にもダメージが入る。

 

 

「最後にこれだぁああああああ!!」

 

 

 離れたアンシュラオンが、六発の長い物体を生み出す。

 

 そこには大量の魔素が込められており、自らの魔素を使って噴射移動!!

 

 バショォオオオオオオッーーンッ!

 

 六発の【ミサイル】がガンプドルフに向かっていく。

 

 ガンプドルフはぎょっとした目で視認したあと、回避運動を取る。

 

 が、なぜこの魔力ミサイル弾が『噴射式』なのかといえば、誘導するためである。

 

 六発がそれぞれ違う動きでガンプドルフを追尾し、三発は雷衝で破壊され、一発が外れたが、二発が至近距離で爆発。

 

 これにはさすがのガンプドルフも吹っ飛ぶ。

 

 魔力弾は純粋な防御無視の質量攻撃だ。こうして大量の魔素を注入してやれば、威力は大納魔射津の五倍以上にもなる。

 

 

(見ているか、セノア。基本の技は、使い方次第でいくらでも化けるんだよ。といっても、相手が悪いんだよな)

 

 

 吹っ飛ばされたガンプドルフは、すぐさま体勢を整えて受身。

 

 鎧に傷や小さな破損の痕跡はあるが、大きなダメージを与えるには至っていない。

 

 装備以前にガンプドルフが強いのが問題だ。爆発の瞬間に緊急回避を使ってダメージを軽減したのである。

 

 攻撃一辺倒ではない熟練した武人の凄みを感じさせる。

 

 

(これが違う相手だったら、今のでとっくに死んでるよ。これじゃあまり効いてないように見えるじゃないか。うちのメイドが自信を持てなかったら、どうしてくれるんだ!)

 

 

 なぜか非難されるガンプドルフ。

 

 だが実際、彼でなければすでに終わっている戦いである。

 

 

 

 当然、それを受けている当人は冷や汗の連続だ。

 

 

(なんだこれは…? 術でこのようなことができるのか!? これほどの術の使い手は見たことがない。素晴らしい、実に素晴らしい才能だ!!)

 

 

 正直、アンシュラオンが何をやっているのかすらわからない。

 

 物質性が高いので術式自体を見ることはできるが、今までこのような術を使う者はいなかった。

 

 そのアイデアや柔軟性が抜群。誰も考えないようなことを平然とやってのける。それこそ時代を切り開く英雄の力といえるだろう。

 

 

(…このままでは勝ち目はない。出し惜しみをしている場合ではないな)

 

 

 ガンプドルフが剣を構えると、刀身が激しく明滅。

 

 バチンバチンッと大気が弾ける【痛い音】が響く。

 

 

「はぁあ!!」

 

 

 多少距離はあるが、かまわずにガンプドルフが剣を振る。

 

 雷衝である。

 

 が、その雷の様子がだいぶ違う。雷気の性質である周囲への放電が少なく、より集約して光り輝いている。

 

 これは雷気ではない。

 

 

―――『帯気(たいき)』

 

 

 雷の上位属性である『帯気(たいき)』を使った因子レベル4の『帯衝劉刃(たいしょうりゅうば)』という技だ。

 

 雷衝の上位版だと思ってかまわないが、その威力は最低でも数倍に跳ね上がっているはずだ。

 

 アンシュラオンは水気を使って防御。放出された帯気の刃を受け流す。

 

 されど『雷気』は迸るだけの性質だが、上位属性の『帯気』はさらに【とどまる性質】を持っている。

 

 

 剣圧をかわしたあとも残った帯気が―――拡散

 

 

 迸り、アンシュラオンを追撃する。

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前 :トールガイアの剣〈雷霊の怒り〉

 

種類 :剣

希少度:S

評価 :AA

 

概要 :伝説の名工十師が一人、セレテューヌス作。中位精霊を宿した剣で、雷の上位属性である『帯気』を扱うことができる。切れ味もよく、耐久性も高い名品。

 

効果 :攻撃力AA+1.8倍、帯気付与、雷攻撃威力向上、雷耐性、精霊の加護

必要値:魔力A、体力A、精神AA

 

 

【詳細】

 

耐久 :AA/AA

魔力 :AA/AA

伝導率:A/A

属性 :雷

適合型:魔力

硬度 :A

 

備考 :

―――――――――――――――――――――――

 

 

 ガンプドルフ自体は単体では雷気しか使えないが、術式武器である『トールガイアの剣〈雷霊の怒り〉』の力によって帯気を操ることができる。

 

 しかも武器が力を貸してくれるので、ほぼ消耗なしに使うことが可能だ。

 

 気軽に聖剣を使えない聖剣長のために通常時の装備として、こういった武器が与えられているというわけだ。

 

 この剣は、セレテューヌスが聖剣を作る前に練習として作った武具の一つである。

 

 聖剣と違うのは、剣人格が存在しないこと。

 

 中位精霊から力だけをもらい剣に注入したので、暴走する危険性もないが、逆に飛び抜けた性能もない汎用性の高い武器となった。

 

 作った当人としては出来損ないの失敗作だったようだが、誰がどう見ても一級品の剣だ。使わない手はない。

 

 グラス・ギースに赴いた際は、万一紛失でもしたら大問題なので携帯を躊躇うほどの逸品である。売れば軽く数十億の値が付くだろう。

 

 そして、それに見合う価値はある。

 

 帯気の刃がアンシュラオンの水気を貫き、身体に到達しようとする。

 

 

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