※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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655話 「アンシュラオン VS ガンプドルフ その3」

 

(いい武器使ってるよなー! いいなー! オレもほしー! でも、ちょっとゴツいから似合わないか。オレはサナと同じ刀がいいな。元日本人だしね)

 

 

 普通ならばここでダメージを受けるのだが、この男の場合は違う。

 

 一瞬で周囲の温度が低下。

 

 雷が【氷】に覆われ、爆散。消失させる。

 

 帯気を見た瞬間には、すでに凍気の準備を終えていたのだ。同じ上位属性同士ならば力負けすることはない。

 

 帯気は下界では珍しいが、ゼブラエスが日常的に使うので見慣れたものだ。(だいたい彼は物理で殴るが)

 

 だが、ガンプドルフにとっても、これはまだ様子見。

 

 帯気であればアンシュラオン相手でも、それなりに通用するとわかればいい。

 

 

「トールガイア!! 怒(いか)れ!!」

 

 

 戦気をトールガイアに注ぐと、雷霊が本格的に目覚める。

 

 ジジジジジッ ドドドドンッ!!

 

 周囲に『帯気』が渦巻き、所々でうねり、炸裂していく。

 

 サナも魔石を解放すると周囲に雷が発生するが、それよりも遥かに強い力が大気を蹂躙する。

 

 雷気は常時力を発し続けなければ霧散してしまうが、帯気は一度放った力が空間に残り続けるのである。

 

 

 であれば、放出すればするほど―――雷が席巻!!

 

 

 ガンプドルフの半径二十メートルが帯気に覆われた。

 

 帯気自体が明滅し、静電気のようにバチバチと唸っているので、そこだけ太陽の光よりも煌々と強く輝いている。

 

 これで準備完了。

 

 

「いくぞ!! ここからが本番だ!!」

 

 

 ガンプドルフが再び、帯衝劉刃(たいしょうりゅうば)を放つ。

 

 今度は一発ではなく、三発放った。

 

 アンシュラオンは凍気で防御しながら、回避。

 

 そこにガンプドルフが一気に接近し、剣を振り下ろす!!

 

 アンシュラオンは回避。余裕をもってかわす。

 

 ガンプドルフの追撃、アンシュラオンの回避。追撃、回避。

 

 これはさきほど行われたやり取りだ。それ自体は何も変わっていない。

 

 だが、ガンプドルフが剣を振るえば振るうほど帯気は増え続け、気づけば戦いの場すべてが帯気に包まれていた。

 

 

 戦技結界術、【軌帯洸雷陣(きたいこうらいじん)】。

 

 

 帯気を周囲に展開することで相手の行動を封じる結界術である。

 

 ガンプドルフの戦術は、ただ鎧に防御を任せて突っ込むだけではない。

 

 それだけでは対応されてしまうため、以前も『張針円(ちょうしんえん)』という技を使っていたが、結界術も併用して敵の動きを制限するのだ。

 

 ここからがガンプドルフの本領発揮。

 

 すでに述べたように帯気はとどまり続け―――

 

 チッ バボンッ!!

 

 アンシュラオンが少しでもそれに触れると、帯気が爆発。

 

 激しい雷の力を放出してダメージを与えようとしてくる。

 

 

 まるで―――機雷

 

 

 その威力も雷気とは段違い。もし普通の武人がこの場に放り込まれたら、たった一発で爆散するほどの威力である。魔獣でもズタボロになるだろう。

 

 この中で無事なのは、同じ帯気を放出している技の使用者のみだ。(あるいは同じ帯気を出して対抗もできるが、元となった戦気が違うために反発する)

 

 さらに怖ろしいところは、それが【誘爆】する点。

 

 アンシュラオンが動くたびに、合わせるように帯気が爆発を続ける。

 

 いちいち防ぐだけでも大変だし、何よりも『動きの軌跡』が生まれてしまう。

 

 

(これならば少年の細かい動きも見える!)

 

 

 ガンプドルフがこの技を使ったのは、単純に相手の行動を阻害するためだが、最大の理由は動きを読みやすくするためだ。

 

 ゴルフでも風向きが完璧に目で把握できたとしたら、自由自在にボールを操ることができるに違いない。

 

 軌跡を追いながら突撃。

 

 アンシュラオンは回避運動を取る。

 

 が、帯気の爆発は凍気で遮断できるものの、これによって無駄な手間が一つ増えることになる。

 

 全身を凍気で覆えば帯気は完全に通さないが、攻撃に転じにくい。一部分だけ展開して防御するのが最適だが、そうすると背後も警戒する必要がある。

 

 

(あの武器のせいで帯気の威力が妙に高い。ゼブ兄ほどじゃないけど、オレの防御を貫通するだけのパワーがある。戦気の爆発で一気に吹き飛ばしてやってもいいんだけど…どっちにしてもおっさんには攻撃されちゃうよなぁ。覇王技が使えないのはストレスだな。でも、こういう特訓はサナにずっとやらせていたことだし、オレも甘んじて受け入れるか)

 

 

 こうなると攻撃と防御、どちらも中途半端になる。

 

 そのわずかな一瞬を、これほどの剣豪が見逃すはずがない。

 

 一気に間合いを詰めたガンプドルフの剛剣が襲いかかる。

 

 アンシュラオンは回避を諦めて剣でガードするも、やや体勢が不利。

 

 周囲の帯気が動きを阻害して、完全な迎撃態勢は取れなかったのだ。

 

 

「もらった!!」

 

 

 強引に―――叩きつける!

 

 

 鋭く重い剣撃が、アンシュラオンを圧し込む。

 

 その衝撃で周囲の地盤が圧迫され、ボゴンッと陥没。そこだけ盆地になってしまったかのように凹んでしまう。

 

 剣王技、『剣神叩(けんじんこう)』。

 

 ジュンユウが使った剣応打の上位版といったところだろうか。剣に打撃属性の剣気を集め、相手をぶっ叩く技である。

 

 ただし、剣先ではなく剣全体に展開するので、大きな棍棒でぶっ叩くようなもの。

 

 これを使ったのは、アンシュラオンの紙一重の回避を妨害するためである。

 

 まったくもってアンシュラオン対策。すばしっこくて回避が上手く、防御も固い男を叩くためだけに用意された布陣であった。

 

 その重みで、アンシュラオンの剣が軋む。

 

 

(重っ!! 頼むから折れるなよ!!)

 

 

 左腕の戦硬気で受けてもいいのだが、今回は剣がテーマだ。あくまで剣で対抗したい。

 

 だが、その結果として剣を庇うような戦いになり、どうしても受身になることがある。若干もどかしいが、ハンデをつけたくせに武器を用意しなかった自分が悪いのだ。

 

 なんとか衝撃を受け流し、ギリギリでガードに成功。

 

 心なしか剣が悲鳴を上げたような気がしないでもないが、鞭打って働かせることにする。

 

 

「これも防ぐか、少年!! だが、もう離さないぞ!」

 

 

 密着した状態で、ガンプドルフが左腕をアンシュラオンの右上腕部に押し付ける。

 

 アンシュラオンは剣でガードしているので動けない。

 

 そこに―――ガブッ!!

 

 篭手から出ていた五つの『爪』が噛み付いてきた。

 

 爪も剣気で強化されているため、防御の戦気を貫いて右腕の肉に強く食い込む。

 

 抉り込み、服に血が滲んだ。

 

 

(妙に爪が長いと思ったんだよなぁ。仕込み腕か)

 

 

 ガンプドルフは、ヘビタイト・フルプレートアーマー改の上から、さらに別の武器篭手を身に付けていた。

 

 『ゼントリィ・ドラグーン〈竜熱の求愛〉』。敵に喰らいついて拘束することができる特殊武装である。

 

 爪だけでも剣と同じ硬度があるので、剣気で強化すればそのまま切り裂くこともできる。

 

 ただし、仕掛けはこれだけではない。

 

 そうして噛み付いた瞬間に、『竜口』が開き―――

 

 

―――爆炎砲撃

 

 

 至近距離からの爆破攻撃である。

 

 密着しているので、さすがにこれはどうしようもない。

 

 ドンッ ビシャシャッ

 

 アンシュラオンの右腕上腕部が、焼け焦げ、爆発によって欠損。

 

 肉が抉れ、わずかに骨が見えた。

 

 ゼントリィ・ドラグーンは、使用者の戦気を火薬と化合し、特殊な爆炎に変える術式爆破武器でもある。接近しないと使えない分、威力が高い。

 

 

「ちっ、放せって」

 

 

 アンシュラオンは身体を捻って、強引に引き剥がそうとする。

 

 が―――ガコンッ

 

 先に外れたのは爪のほう。しかし、右腕から離れたのではなく、篭手から外れたのだ。

 

 そこにはワイヤーが伸びており、爪と繋がっていた。

 

 この爪はワイヤー式であり、最大で十メートルまで伸ばすことが可能となっている。一度捕まえた相手は絶対に逃がさないという、強い歪んだ愛を感じさせる。

 

 そして、これだけの間合いがあれば、互いに剣を振ることができる。

 

 

 どちらも対応するが―――制したのは、ガンプドルフ

 

 

 素早く切り払って突き飛ばし、自分の間合いを作った。

 

 アンシュラオンの右腕が欠損していたこともあるが、このあたりは熟練した剣士のほうが技術が上。卓越した技が光る。

 

 そのために日々、何十万回と切り返す鍛錬をしているのだ。そこの差が出たといえる。

 

 

「はぁあっ!!」

 

 

 そして、帯気をまとわせて威力も抜群の一撃。

 

 アンシュラオンは軌帯洸雷陣(きたいこうらいじん)とワイヤークローによって、またもや動きが阻害され―――

 

 ズバッッ!!

 

 ガンプドルフの一撃は、重く鋭い。アンシュラオンの防御でも簡単には防げない。

 

 腹が横一文字に切り裂かれ、大量の血が噴き出す。

 

 剣先は腹の中ほどまで食い込んでいるので、かなりの深手といえる。

 

 だが、これはアンシュラオンがあえて回避運動を取らず、前に出たからだ。

 

 その理由は、顔に掌。

 

 

 

―――爆風

 

 

 

 直後、ガンプドルフの顔面が爆炎に包まれる。

 

 放ったのは、特大の熱爆球。それによって視界を完全に塞ぐ。

 

 その間にアンシュラオンはワイヤークローを引きちぎり、拘束から逃れた。

 

 かなりしっかりと絡み付いており、簡単には外せなかったので、引きちぎったのは自分の肉のほうになってしまったが、今は抜け出すほうが優先。あえて腹を切らせたのもそのためである。

 

 あのまま接近されていたら体術が攻撃に使えない今、かなりの劣勢に陥っていただろう。

 

 

 

 一旦、離れて思案。

 

 

 

 もちろん傷は命気で即座に修復。綺麗に戻る。

 

 しかし、思った以上に手痛い一撃をくらったのは事実だ。

 

 

(なかなかやってくれるじゃないか。ああいう武器もあるんだな。いい勉強になったよ。しかし、剣技ではおっさんのほうが上か。ちょっとしたところで差が出るんだよな。やっぱり付け焼刃じゃ通じないところがある。そりゃそうだ。死に物狂いで戦ってきた武人なんだ。本気度が違う)

 

 

 ガンプドルフは、子供の頃から命がけで鍛錬を続けてきた。

 

 自身では才能がないと思っているが、仮にそれが事実だったとしても、あれだけの因子が覚醒しているのだ。血反吐を撒き散らす毎日を送っていたに違いない。

 

 すべては聖剣に認められるために。

 

 そして聖剣を手に入れたら、今度は強国ルシアとの戦争。自分よりも強い雪の国の武人と戦うのだ。毎日が命をかけた真剣勝負である。

 

 戦争が終わっても、今度は国を守るために未開の東大陸に乗り込む。彼の日々は常時、闘争によって彩られている。

 

 そんな男が、強くないわけがない。

 

 

 ガンプドルフの目に、【覚悟の色】が見える。

 

 

 ハンクスやグレツキ程度でさえ、あれだけの性能向上が見られたのだ。

 

 彼が一度覚悟を決めたら、とんでもなく強くなるのは当たり前だろう。

 

 

(やはり強い。背負っているものが違いすぎるからな。…悔しいなぁ。でも、嬉しくも感じるんだ。それだけ学ぶものがあるってことだからな)

 

 

 剣を学ぶためにあえて剣で戦っている。

 

 そして、ガンプドルフが強ければ強いほど、自分の剣技もまだまだ伸びることを示していた。それが嬉しいのだ。

 

 ただし、逆に剣だけでは勝てないことも証明されてしまう。

 

 自分が覚えている剣技は、すべてガンプドルフも知っているものだ。強烈な一撃を与えるためには相手の虚をつかねばならない。

 

 

(こうなると術メインで戦ったほうが効果的なのかな? でも、普通の術式だとダメージを与えられないんだよな…。あの鎧のせいだけじゃない。このレベル帯になると低位の術式は通用しないんだ。最低でも因子レベル4で勝負しないと駄目だ)

 

 

 ガンプドルフたちの防具には、だいたい『術耐性』が付与されている。

 

 これが地味にダメージカットしてくるので、術式でも効果的にダメージが与えられない状況にある。

 

 現に今しがた使った熱爆球を受けても、ガンプドルフは目元に軽い火傷を負った程度だ。かなりの魔素を込めたはずだが、術そのものの倍率が弱いのだ。

 

 発動が早い魔力弾も使い勝手はよいものの、結局のところ倍率が等倍なので効率が悪い。

 

 かといって大きな術の組み立てに入ると、相手はそうはさせまいと突進してくる。これではせっかくの術を生かしきれない。

 

 ちなみに、なぜ優れた防具の多くに術耐性が付与されているのかといえば、かつての【聖戦】の名残だといわれている。

 

 その聖戦には支配者〈マスター〉や眷属たちも大勢参戦しており、戦場では巨大な術が日常的に吹き荒れたという。そこで大勢の犠牲者が出たことで、防具に術耐性を付与することが義務付けられた。

 

 という話が一部で有力だが、この聖戦についてはどの公開記録にも残されていないので、本当にあったかはわからない。あくまで噂である。

 

 

(とりあえず試してみるかな。やれる範囲でやってみよう)

 

 

 大量の熱爆球を生み出すと、ガンプドルフに向かって放つ。

 

 思っていた通り、ガンプドルフは熱爆球を物ともせずに接近してくる。

 

 直撃しそうなものは軽く払うくらいで、あとは鎧の耐久力に任せて無視だ。帯気も邪魔してくるので熱爆球も威力が軽減されてしまっているようだ。

 

 そうして接近されれば、不利な状況で打ち合うしかない。

 

 剣で幾度か斬り合ってから再び間合いを取る。

 

 

(うーむ、駄目だな。使うにしても、さっきみたいにもっと至近距離じゃないと難しそうだ。だが、この状況で接近すると剣の勝負になっちゃうよな。また同じことの繰り返しだ。なら、どうすればいいんだろう。……ん? あれ? なんでオレは剣と術を別々に考えているんだ? そんな必要あるか?)

 

 

 今ここで、一つの『閃き』があった。

 

 考えてみればとても簡単な話なので、なぜ気づかなかったのか自分で自分が恥ずかしいレベルだ。

 

 

「おっさん、実験台になってもらうよ!」

 

 

 思いついたら即行動。

 

 アンシュラオンは剣を構え、ガンプドルフに突進。

 

 ガンプドルフも真正面から突っ込み、互いの剣が衝突!!

 

 相手の剣が重い強撃ならば、こちらは手数で勝負。

 

 猛烈な剣撃の嵐を見舞い、この剣豪と対等に渡り合う。

 

 やはり帯気が邪魔だが、もう無視でいい。自分の行動を邪魔する危ないものだけ凍気でカットして、あとはそのまま。戦気を貫くものはダメージを受け入れる。

 

 それよりは剣気を強化する必要がある。両者の剣士の因子レベルは同格なので、そうしないとトールガイアという一級品の剣には対抗できないからだ。

 

 剣の耐久度に関してはサナの刀を改造したのを思い出し、表面を命気で覆って補強することで強度を高めた。応急処置にすぎないが、一時的に渡り合えるのならば十分だろう。

 

 そして、アンシュラオンが剣で挑んだことには、当然ながら理由がある。

 

 

 背後に―――炎の塊

 

 

 剣で斬り合っている間に、アンシュラオンは自分の後ろで術式の演算処理を行っていた。炎は徐々に肥大化し、巨大になっていく。

 

 あえて背中にしたのは、せっかく組んでいる術式を破壊されないためである。

 

 だが、目の前で見ているガンプドルフはたまらない。

 

 剣で対等に戦っている間に、その後ろでとんでもないものが作られていくのだ。気が気ではない。

 

 

 炎の術式が、完成。

 

 

 見るからに猛々しく燃え盛る火炎が、アンシュラオンの後ろで輝いている。

 

 ガンプドルフは回避したいのだが、剣で斬り合っているので動けない。

 

 今アンシュラオンが放出している剣気はかなり強いので、大技を出すタイミングを与えると危険なのだ。この鎧もだいぶ傷んできている。直撃は避けたかった。

 

 しかし、術にも対応しなければいけない。あれは明らかに今までの術式とはレベルが違うからだ。

 

 結局どうすることもできず、動けない。

 

 

「はい、プレゼント。オマケ付きだよ」

 

 

 さらにオマケとして、剣撃の合間に水刃砲を放って目潰しも狙う。

 

 ガンプドルフは首を引っ込めてかわしたが、そのタイミングで炎の塊が頭上から降ってきた。

 

 

「ぐっ!!」

 

「隙を見せたら奪っちゃうよ」

 

 

 ガンプドルフは回避を選択しようとするが、その隙にアンシュラオンの剣が炸裂。

 

 剣硬気で伸ばされた剣気が、剣を持っている側の手、ガンプドルフの右腕を払う。

 

 たいしたダメージは与えないとわかっているが、あえてここを狙ったのは剣に注意を向かせるためである。トールガイアは強いが、武器を失うと帯気が使えなくなるため、どうしても剣を守りに入るのだ。

 

 予想通り、剣を落とすまいと力を入れたせいで回避が遅れる。

 

 一方のアンシュラオンは、剣硬気を伸ばしてギリギリのタイミングで脱出に成功。

 

 

 直後―――爆炎

 

 

 高さ十メートルにも吹き上がる巨大な火柱が出現した。

 

 術士因子4で使える『炎柱陣(えんちゅうじん)』という火の中位術式である。

 

 効果は見ての通り。炎の柱を生み出して敵を焼き尽くす技だ。この火に包まれたら討滅級魔獣でも丸焦げになるレベルの火力である。

 

 因子レベル4になると、さすがのアンシュラオンもまだ慣れてはおらず、術式を組む時間が必要になる。だが、待っていては相手に潰されてしまうので、戦いながら時間を稼いだのである。

 

 これはハンクスとの戦いで出た課題、『水刃砲を効率的に当てるにはどうすればいいか』を考えて得た答えの一つでもある。

 

 水刃砲は直線の動きが持ち味なので、曲げてしまうと威力が低くなる。かといって正面から使うと防御されてしまう。

 

 では、どうするか。

 

 あっ、そうか。

 

 

―――それなら接近して死角から放てばいいんだ

 

 

―――術も剣を扱いながら使えば妨害されないよね

 

 

 と気づいてしまった。

 

 結果は見事成功。

 

 強い術も使えたし、水刃砲も死角から放って威力十分だった。

 

 仮に術が防がれても、今のように剣で斬ればいい。どっちか当たればいいや戦法である。

 

 だが、これには大きな【矛盾】が存在している。

 

 

(普通はできんぞ、そんなことは!! それに今、同時に二種類の術を起動しただろう! 普通は一つずつだぞ! ルールはどこにいった!? 無いのか!? そんなルールは無かったのか!? 勝手にそう思った私が悪いのか!?)

 

 

 ガンプドルフも軽いパニックだ。しかし、これが常識である。

 

 まず普通の術者は術式の展開中は動けない。演算処理に集中しなければならないからだ。

 

 身体能力も低いため、相手に接近するなんてこともご法度。だからこそ術符や術式武具が流行ったのに、それを全否定してしまう。

 

 技は決められた動作が必要なので二種類同時発動は難しいが、術式は演算処理ができればいくつでも同時起動が可能だ。ガンプドルフも勉強になったに違いない。

 

 といっても、属性の異なる術を同時に操れる者は少ないので、対応は難しいだろう。しかも剣を使いながらなので、この攻撃は初見では防げない。

 

 まるで春の訪れのように、ここから一気にアンシュラオンの才能が覚醒していく。

 

 

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