※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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657話 「英雄、二人」

 

 互いが全力で剣を振る!!

 

 ガキンッ ガキンンンンンッ!!

 

 光と光が、ぶつかるたびに粒子が零れ、激しい火花と輝きを生む。

 

 双因剣によって術式の力を加えたロングソード。

 

 雷妖王の手によって雷が超圧縮された、光輝くトールガイア。

 

 この両者がまったくの同格として激突した結果―――

 

 

 パァアァァンッ!!

 パァアァァンッ!!

 パァアァァンッ!!

 

 

 甲高い金属音が、次第に破裂音のようになっていく。

 

 

 

――― 【ソードラップ〈剣の共鳴〉】

 

 

 

 両者の力がまったくの互角の時。

 

 戦いによってしかお互いを知ることができない武人たちが、剣を本気でぶつけ合う時。

 

 手が真っ赤になるほどの『ハイタッチ』を繰り広げる。

 

 戦気による打撃でも、剣気による斬撃でも同じような現象が起こる。理由はわからない。互いの魂が激突する音だといわれている。

 

 

(全力でぶっ叩いているのに応じてくる!! この感覚、懐かしい!! ガンプドルフ、あんたは面白いよ!!)

 

 

 アンシュラオンの全力に耐えられる武人など、今までは身内の三人しかいなかった。

 

 だが、ここにいる。

 

 新たに剣の道で本気で戦える相手が、ここにいる!!

 

 

(普通の剣を使って、完全武装した私と同じ力を引き出す!! アンシュラオン、君はなんてすごい男だ!!)

 

 

 出会った時の直感は、正しかった。

 

 彼こそ、この少年こそ、自分が求める、人々が求める輝きそのもの!

 

 目の前に太陽があるかの如く、魂の奥底が熱く揺さぶられるようだ。

 

 剣が衝突し、ラップが鳴るたびに熱き想いが湧き上がってくる。

 

 

 

 怖れるものなど―――何もない!!

 

 

 

 世界にはびこるネガティブな感情が、一瞬で蒸発する超温度!

 

 超加熱された両者の戦いが、ついにクライマックスに向けて動く!

 

 

 互いの剣撃は互角。

 

 これも『シャクティマズ・グラズム〈雷範の結合者〉』による身体強化が如実に出ており、命中と回避が劇的に向上していることが大きい。

 

 聖剣自体は強力な武具だが、相手に当てられなければ意味がない。それを補うためのものだからだ。

 

 しかし、戦士因子がより高いレベルにあるアンシュラオンのほうが、やはり有利。

 

 剣撃をすり抜け、一閃!

 

 ガシュンッ!!

 

 ガンプドルフの鎧が切り裂かれる。

 

 だが、さすがに聖剣長用の重装備。鎧に剣は入ったが、それでも強固な守りで最後まで抵抗する。

 

 ガンプドルフの反撃。

 

 今までよりも鋭い踏み込みで、高速で剣を振るう。

 

 アンシュラオンは剣で防御するが―――ズバッ!!

 

 剣圧を押さえきれず、左肩に裂傷を負う。

 

 剣士がなぜ怖れられるのかは、すでに述べた通り。その攻撃力が桁違いだからだ。

 

 今この両者は、互いに必殺の剣をもって対峙している。一撃でもまともに入れば、そこで勝負が決してしまう威力がある。

 

 

(攻撃力は互角にまで持ち込んだ。だが、防御面ではオレが不利だ。剣の踏み込みだと回避がどうしても遅れる。戦士とは間合いそのものが違いすぎるからな。そして、最後の最後まで、あの鎧が立ち塞がる。いいさ、それなら打ち破るだけだ! だが、オレのやり方でやらせてもらうよ)

 

 

 アンシュラオンの戦い方は、ガンプドルフとは違う。

 

 これだけの攻撃力を持っていても、本領は技とスピードなのだ。

 

 空間術式を使い、剣をもう一本出す。

 

 最後まで取っておいた予備の剣。

 

 これも単なる強化したロングソードだが、それでも頼りがいのある一本である。

 

 

(いいね、しっくり馴染む。右も左もない。オレにとっては、すべての身体の部位が武器だ)

 

 

 長剣の二刀流。

 

 クロスライルのように短い剣ならばたまにいるが、長い剣を普通に二刀で扱う者は少ない。どうしてもこの状態では技が出しにくいのだ。

 

 それをこの男は、平然とやってのける。

 

 両剣を意思そのものに変え、全身を一つの生命体として統括する。

 

 手で振るのではなく、身体をバネのように使って振るのだ。

 

 であれば、それはもう剣の竜巻。

 

 踊り子の情熱的な舞の如く、剣の嵐が吹き荒れ、ガンプドルフを圧し込む。

 

 手数が倍になったのだから当然だが、それを成し得てしまう身体能力と感性の鋭さ、発想の柔軟さが際立っている。

 

 そして、そうやって相手が受身に回ったところに―――

 

 

「くらぇえええええええ!!」

 

 

 【両手で剛斬】を叩きつけた。

 

 

「っ!!」

 

 

 ガンプドルフはガードするも、角度を若干変えた左手の剛斬が突破。鎧を切り裂く。

 

 今、何が起きたのか。これを常人が理解することはできないだろう。

 

 なにせアンシュラオンは、剣王技を両手で同時に繰り出したのだ。いくら基礎技の剛斬とはいえ、両手でやるのは奇想天外。荒唐無稽。道場でならば「そんなの無理無理」と笑われるほどだ。

 

 だが、やってのけた。

 

 さらに続けて両手で『不知火(しらぬい)』を発動。

 

 火の四連撃がガンプドルフを襲い、これまた二回鎧が切られる。

 

 両側から襲いかかってくるので、どうしても対応が間に合わないのだ。

 

 

(理論上は可能だ!! 可能だが、完全に両方の力のバランスが釣り合っていなければ不可能だ! しかも双因剣を両手で発動しているではないか!! 信じられない! 泣きそうだ!!)

 

 

 これは感動で泣きそう、という意味である。

 

 武人にも他者よりも秀でていたいという狭量なプライドはあるが、この少年の前ではあっさりと潰される。

 

 理論上はできる。因子レベルをそれぞれ二つに分けて別々に発動できるはずだ。

 

 しかし、あくまで理論上。

 

 術式のような演算処理ならばいざ知らず、身体の動きが伴う剣王技を同時に繰り出すには、完璧な肉体と因子コントロールに加え、戦気と剣気を両立させる完全なバランス感覚が必要だ。

 

 

「打ち合いたい!! 君と!!」

 

 

 そんな輝きをまとう少年と戦えることが、何よりも幸せ。

 

 それによって自身の力も、さらに向上していくことがわかるからだ。

 

 上がる、上がる、引き上げる。

 

 アンシュラオンが凄いところは他者に影響を与える点である。

 

 意識していなくても光には周囲を導き、成長を促す性質がある。

 

 

 それこそ、光の女神マリスの輝き。

 

 

 人々の霊の中に宿った、進化への希望である。

 

 ガンプドルフもその光に導かれ、限界を超えた動きを引き出す。

 

 アンシュラオンが高速の連撃をお見舞いすれば、今度はガンプドルフは鎧で受けながらも強烈な一撃を叩き込む。

 

 もうダメージは気にしない。

 

 鎧が傷つき、破損し、崩れ落ちてもいい。少しずつ剣が食い込み、血が滲むが、それすらも気持ちいい!!!

 

 その分だけ、叩きつける!!

 

 アンシュラオンも両剣で防御しなければ、そのまま貫かれてしまいそうな一撃を受ける。

 

 時には防御が間に合わず、鮮血が舞うが、当人は笑っていた。

 

 武人など、ただの戦闘狂。その中で生命を噛み締める変人だ。

 

 

 だが、それがいい。

 

 

 大地が揺れ、大気が震える。

 

 

 互いの力を確かめるように両者が全力で剣を振る姿は、まさに【戦場の華】を彷彿とさせた。

 

 集団戦闘をやっていても突出した者同士がぶつかれば、おのずとその場は二人になることがある。力が強すぎて他者が近寄れないからだ。

 

 誰もが魅入る。

 

 ゼイヴァーもバルドロスも目を離せない。サナも食い入るように見ている。他の騎士たちもあまりのレベルの高さに魂が抜かれたような顔をしている。

 

 それでもわかる。メイドだってわかる。子供だって理解する。

 

 

 

 今、歴史が紡がれているということを。

 

 

 

 誰かが著述する必要はない。人々の記憶に刻まれていく。

 

 記憶は伝播し、魂から魂へと引き継がれていく。親から子へ、子から孫へ伝えられる。

 

 憧れは永遠に消えない。だからこその英雄である。

 

 

 

「いくぞ! この瞬間のために編み出した必殺技を見せてやる!!」

 

 

※午前中に編み出した

 

 

 ここでアンシュラオンが仕掛ける。

 

 水連球と熱爆球が次々と襲いかかり、激しい爆発が起こる。属性反発を利用した大きな【目くらまし】だ。

 

 一時的に双因剣の威力を落としてでも、大技を出す隙を生み出したかったのだ。

 

 その爆発と同時にアンシュラオンの身体は宙にあり、すでに攻撃態勢。

 

 両手の剣を広げ、まるで『独楽(こま)』のように高速回転の斬撃。

 

 ガンプドルフが防御してもお構いなし。ガードの上からひたすら削っていく。

 

 多少型は違うが、これは『不知火』である。宙で放つようにカスタマイズしたバージョンと思えばいいだろう。これくらいならば技の範疇に入るわけだ。

 

 二回や三回くらいならば問題はない。それができる剣豪も多い。

 

 

 だが、なぜあえて予備の剣をここまで温存したのか、その理由がわかる。

 

 

 すでにその回数は十を超え、二十を超え、三十を超えて四十を超えて―――五十回を突破!!

 

 その間、アンシュラオンは一度も宙から降りていない。遠心力と身体の捻りと戦気の制御だけで回転を維持している。

 

 それどころか剣気を爆発させて加速力を増していき、もはや姿さえ目視できない超高速回転に入る。

 

 

(た、耐えられ……んっ!!)

 

 

 ガードを―――打ち破る!!

 

 

 絶え間なく繰り出される不知火の前に、トールガイアが弾かれ、鎧に剣が入っていく。

 

 ジュジュジュジュジュジュッ! バリンッ!

 

 あまりの熱量に耐え兼ねたヘビタイト・フルプレートアーマー改が、ついに悲鳴を上げて砕ける。

 

 徹底して手数。

 

 不知火は因子レベル3の中でも強力な技だ。それを何度も叩き込まれれば、この強靭な鎧とて耐えられるわけがない。

 

 

(これは…!! 何をしているのだ!! こんな技は知らないぞ!)

 

 

 それもそのはず。適当にアンシュラオンが作った技だからだ。

 

 なぜ『グランド・リズリーン〈偉大因子共鳴〉』が起きたのだろう。

 

 なぜ、わざわざ大海の女神がやってきたのだろう。

 

 ただアンシュラオンの因子を解放するためだけではない。

 

 

―――【新しい技】

 

 

 が生まれる瞬間を祝福しにきたからだ!!

 

 技があるのならば、以前に誰かが作ったものである。覇王技や剣王技が最初からあったわけではない。では、作れるということだ。

 

 しかしながら、それは簡単ではない。

 

 どんなに優れた型でも【世界から認められなければ】技には至らない。

 

 それに見合う才能と的確な技の流れを確立し、なおかつ【魅力】がなければ登録まではされない。

 

 

 それが今、至る。

 

 

 至高技、『不知火・空連美』。

 

 アンシュラオンが初めて作った技であり、しかも通常の技の粋を超えた【至高技】という奥義に認定される。

 

 かつてアンシュラオンも黒雷狼を封じた際に、天覇・天昇桜雪光帰(てんしょうおうせつこうき)という至高技を使ったが、自身で作ってしまうとは驚きだ。

 

 といってもアンシュラオン当人には、それが新しい技とはわからない。

 

 今後アンシュラオンの戦いを見た者たちが、後世に残すことで知られることになるだろう。

 

 

(このままでは…まずい!)

 

 

 不知火・空連美が、ガンプドルフを切り裂いていく。

 

 鎧はまだかろうじて生きている部分もあるが、それも攻撃を受け続ければ完全に破壊されてしまう。

 

 

(やったぞ! ついに鎧を打ち破った!! このまま格好よく決めてやる!!)

 

 

 と思った瞬間、一つだけ誤算があった。

 

 

 バキィンッ!!

 

 

 剣が―――折れた

 

 

「あっ」

 

 

 直接剣を叩き付ける技のため、物理的な損耗が激しかったのだ。

 

 双因剣とはいえ、芯はただのロングソード。折れるのは仕方がない。

 

 

(嘘だろ! ここで折れるかよぉおおおおおおお!!)

 

 

 何事も調子に乗るのはよろしくない。いい見本である。

 

 新しい技に夢中になって双因剣の制御が甘くなったのだ。そこから亀裂が入り、一瞬にしてへし折れる。

 

 そこを見逃すほど、ガンプドルフは甘くない。

 

 強引に振りほどき、縦の一閃。

 

 

「ぬんっ!!!」

 

 

 このチャンスを見逃してはいけない。深手覚悟で剣を振る。

 

 アンシュラオンの剣は最初に使っていた一本だけが折れたので、残った剣が回転してガンプドルフの左肩を破壊。

 

 が、同時にガンプドルフの一撃もアンシュラオンを―――切り裂く!!

 

 ズバジャッ!! バチィイイインッ!!

 

 こちらも左の肩口から剣が入り、胸までざっくりもっていかれる。

 

 さらに雷の追加ダメージが襲い、アンシュラオンが感電。

 

 

(ちっ、やられた!! 雷の威力もやばい! これがおっさんの魔石の力か!! サナの魔石とは次元が違う!)

 

 

 クロスライルのように神経を保護すればいい、という枠組みを超えている。

 

 斬った相手を問答無用で行動不能にさせる危険なものだ。

 

 これが『雷妖王の手』。雷の精霊王の力。

 

 敵の『雷無効』や『雷吸収』スキルすら貫通する能力があった。

 

 傷はいい。回復できる。

 

 

 が、この隙が問題。

 

 

 ここからが剣豪の本領発揮。

 

 ガンプドルフは練気も非常に上手い。即座に雷王・麒戎剣(きじょうけん)の態勢に入ると、迷わず力を練り込んで必殺剣を放った。

 

 

(少年とて、これはよけられまい! 命気の動きも把握済みだ!)

 

 

 さきほどの一撃を見舞った際、アンシュラオンは命気を使って身体を後ろに引っ張っていた。

 

 だからこそ本来は両断に近いダメージを与えられたのが、あの程度で済んだのだ。

 

 今度も同じように下がって対応するに違いない。それを読んでいるガンプドルフは、さらに前に出る準備があった。

 

 麒麟に似た雷獣が、アンシュラオンに襲いかかる!!

 

 

 

 それをアンシュラオンは―――よけない

 

 

 

(なぜよけない!!)

 

 

 アンシュラオンでも大きなダメージを受けるはずの一撃だ。雷の必殺剣の威力は伊達ではない。

 

 そんなことはアンシュラオンもわかっているはず。であれば、何かしらの理由がある。

 

 ガンプドルフの視線がその理由を探し、見つける。

 

 アンシュラオンは動けないが、代わりに折れた剣をこちらに向けていた。

 

 

(折れた剣で何を……まさか―――)

 

 

 その時にはすでに遅かった。

 

 

 剣気が―――伸びる!!

 

 

 剣硬気。剣気を伸ばす技のため、刀身が折れていても使える技だ。

 

 ジュンユウもなんとか使えた技だが、アンシュラオンのものは次元が違う。剣気の威力が彼の数百倍は強い。

 

 

 ガンプドルフを―――貫く!

 

 

 さらにこれで終わらない。

 

 伸びた剣硬気が、そのまま生きているかのように蠢き、ガンプドルフを宙に押し上げ、今度は地面に叩きつける!!

 

 

「ごふっ!!」

 

 

 ガンプドルフが吐血。

 

 そして、このタイミングで感電が治り、反撃開始。

 

 シュシュンッ!!

 

 アンシュラオンが剣を振ると、伸びた剣硬気が鞭のようにしなって襲いかかる。

 

 ガンプドルフは慌てて緊急回避で逃げ、間合いを取った。

 

 まさか相手が逃げることを想定していたら、自分のほうが逃げる羽目になるとは因果なものである。

 

 だが、アンシュラオンもやや危ないシーンではあった。

 

 

(ふー、あぶねー!! ただの剣硬気だったら、そのまま突っ込んできたよね。姉ちゃんがやっていたのを思い出してよかった)

 

 

 よくパミエルキは、剣硬気を鞭にして使っていたものだ。

 

 やたら輝いていたのであれは剣硬気ではなかったのかもしれないが、とりあえず似たようなことはできるようだ。

 

 これも剣の因子が解放された結果なのだろう。

 

 

「そらそら、お返しだ!!」

 

 

 鞭と化した剣気が大気を切り裂き、ガンプドルフを滅多打ちにする。

 

 さすがにそのまま使うよりも威力は落ちるが、軌道が変化するので避けるのが難しい。

 

 

(剣硬気にあのような使い方があるとは…!! おそらく私にはできないだろう。彼のセンスがあってこそか。だが、一撃の威力は落ちた!! 次で決める!!)

 

 

 ガンプドルフはもう限界に近い。

 

 魔石の力で耐えていても雷妖王の力は消耗も激しい。いつかは先に潰れる。

 

 ならば再び全力で向かっていくしかない。泥臭い戦いしかできない自分には、こういう生き方しかないのだ。

 

 ガンプドルフが剣を引き絞りつつ、一気に突撃。

 

 鞭で切り刻まれながらも耐え抜き、強烈な突きを繰り出す。

 

 剣王技、『雅龍閃(がりゅうせん)』。

 

 因子レベル3で使える突進力と貫通力の高い突きだ。

 

 

「へぇ、いいな。オレも使おう」

 

 

 だが、これだけ距離があればアンシュラオンが見切るのは容易い。

 

 剣で迎撃。

 

 逆に雅龍閃(がりゅうせん)を使ってガンプドルフに叩き込む。

 

 

(今見た技を!!! こうも簡単に真似るのか!!)

 

 

 コピーはサナの専売特許ではない。普通の技ならば、因子レベルがあって型と戦気の流れを見れば誰でも扱える。

 

 もともとアンシュラオンは、グレツキから一回技を見せてもらっただけで習得できているのだ。あとはその技が好きか嫌いかの問題だ。

 

 今もたまたま雅龍閃が格好よかったので、コピーしたにすぎない。

 

 強烈な突きが炸裂し、ガンプドルフの腹に穴があいた。

 

 臓器が破壊され、血が溢れる。

 

 

(かまわん! 来てくれたのならば好都合!! 私の狙いは―――)

 

 

 ガンプドルフは自身の剣の柄で、刺さった剣の腹を思いきり叩く!!

 

 バキンッ!!

 

 これでアンシュラオンの予備の剣も折れる。

 

 それでも剣硬気があるのは知っている。だが、身体を犠牲にすれば耐えられるし、この間合いならば「コレ」がある。

 

 

 バチィーーーンッ!!

 

 

 不意の【雷】が、アンシュラオンを襲った。

 

 その発生源はガンプドルフの剣ではなく、【黄色い鎧】。

 

 いつの間にか現在の鎧の上に別の鎧が展開されていた。

 

 以前使った【鎧気(がいき)術】で生み出す『雷鵺公(らいやこう)の鎧』である。

 

 この鎧にはサナと同じ雷のカウンターを放つ力がある。しかもトールガイアと魔石によって雷の力がさらに強化されるため、前よりも強烈な一撃となった。

 

 アンシュラオンは再度感電。動けなくなる。

 

 

「はぁあああああああ!!」

 

 

 ガンプドルフが爆発集気。

 

 

 からの―――渾身の一撃!!!

 

 

 さきほど放った雷王・麒戎剣は、爆発集気なしの低出力攻撃だったが、今回は最高威力の一撃だ。

 

 現状でガンプドルフが出せる最強の武器を使った最強の一撃。

 

 それを剣が折れたアンシュラオンに繰り出した。おそらく剣硬気では防げない。戦硬気でも腕ごと切り落とし、頭を破壊できるだろう。

 

 これらもすべて布石。

 

 雷剣だけに意識を集中させてから、最後に特殊な鎧を使って不意をつく。

 

 ガンプドルフの戦術のすべてが、この戦いに集約されていた。

 

 

 ドオーーーーーーーンッ!!!

 

 

 周囲一帯ごと破壊する強烈な雷撃が迸る。

 

 その瞬間は世界のすべてが黄色に染まり、何も見えなくなる。

 

 砂埃と帯気の炸裂で、この場には異様な状況が生まれていた。

 

 煙が晴れ、人々の目がアンシュラオンを映し出した時。

 

 

 そこに新たな力の存在を知る。

 

 

 

「強いね、おっさん。オレも本気で戦えて楽しかったよ。でも、また腕を折られちゃったな」

 

 

 

 雷王・麒戎剣を受けたアンシュラオンの右腕は、またもや折られてしまった。前回は左腕。今回は右腕である。

 

 だが、その一撃は頭にまで到達してはいない。

 

 アンシュラオンは動けなかったので、間違いなく剣は直撃していた。戦硬気でも防げないはずだった。

 

 しかし、身体が輝いている。

 

 

 

―――命気結晶

 

 

 

 麒戎剣を受けた右腕から右半身を命気で覆い、結晶化させて固めた。それによってダメージを大幅に軽減させたのだ。

 

 命気結晶の硬度は極めて高い。それを破壊できるガンプドルフの一撃は、まさに必殺の一撃であった。

 

 では、なぜ右半身だけ覆ったのか。

 

 アンシュラオンの左手には、太陽の光を受けて輝く一本の剣。

 

 

 命気を固めて生み出した―――【命気剣】が握られていた。

 

 

 あの瞬間に右半身で防御しつつ、左手で命気結晶を生み出して反撃したのだ。

 

 これができた要因に、感電が完全でなかったことが挙げられるだろう。

 

 一度目の感電で反省したアンシュラオンは、すでに対策として命気を体内で練っていた。これほどの雷撃をすべては防げないが、右半身を捨て駒にして雷をすべて請け負い、左腕を守ったのだ。

 

 また、あえて命気を外に放出し、ガンプドルフの目を誘導するテクニックまで使っている。

 

 相手も高等戦術ならば、こちらも高等戦術によって対抗。見事出し抜く。

 

 

「がふっ……見事…だ。このような隠し玉が…あったとは。君にはいつも…驚かされる」

 

 

 命気剣は、ガンプドルフの心臓を貫いていた。

 

 この心臓への一撃も何度も何度も剣を叩き付けて、ようやくにしてたどり着いた道筋だ。今までがあるから、今この瞬間も存在する。

 

 これが上位の武人同士の戦い。

 

 すべてに無駄はなく、より強い者だけが生き残る厳しい世界である。

 

 

「思い出したんだ。姉ちゃんがやっていたのを。あーあ、頼ってばかりだ。オレはずっと姉ちゃんの後ろを追いかけているんだな…」

 

 

 剣が無いのならば、作ればいい。

 

 パミエルキは普段剣を持っていないが、たまに剣技を使ったりもしていた。

 

 あれはどこから持ってきているのか不思議だったが、今思えば簡単な原理だったのだ。

 

 非常に硬く、伝導率も極めて高く、折れても何度でも再生させられ、武器にも防具にもなる最高の道具。

 

 それこそが命気剣であった。

 

 たしかにガンプドルフは戦術も多彩で強かったが、新しいものを生み出す力には勝てなかった。

 

 

「私の…負けだな。治療はして…くれるのだろう?」

 

「まあね。心臓にぶっ刺したのに死なないなら、そのままでも大丈夫だと思うけどね」

 

「いや…もう限界だ。今すぐにでも…倒れそうだ。歳は取りたくない…ものだ」

 

「まだまだ現役だよ。あと五十年はがんばってね」

 

「人使いが…荒いな。…善処しよう」

 

 

 

 

 こうして、勝負あり!!

 

 

 アンシュラオンの勝ちが決まる。

 

 人々の目は、もう彼しか映していなかった。

 

 それも当然。

 

 今ここに、DBDを導く新たな【英雄】が生まれたのである。

 

 

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