※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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667話 「戦艦捜索作戦、開始」

 

 あっという間に出立の日がやってきた。

 

 キャンプの大半が片付けられ、最低限の設備だけを残してトラクターに詰め込まれる。

 

 あとに残ったものは、ほとんど何もない平地である。

 

 そこでガンプドルフが残る者たちと別れの挨拶をしていた。

 

 

「閣下、御武運を」

 

「ああ、必ず戻ってくる。それまでここを頼むぞ」

 

「はっ!」

 

 

 残る隊はハンクスやグレツキ等、教練部隊のメンバーとまだ若い兵士たちを含めて三十名だ。

 

 もし捜索隊に何かあれば、彼らは孤立無援で取り残されることになる。

 

 そうなればもうDBDは終わり。苦労すれば本国に戻ることも可能だろうが、現実問題として、この東の大地で生きていくことになるはずだ。

 

 生活の糧を稼ぐためにハンターや傭兵になる者もいるだろう。そのために教練部隊が必要となるわけだ。

 

 当然、ソフィア王女がやってくる計画も同時に終わる。せいぜい王室はルシア帝国の『二等市民』、それ以下の人々は労働者の『三等市民』として厳しい現実を生きていくことになるだろう。

 

 だからこそ、この作戦は絶対に失敗できないのである。

 

 

 

―――出立

 

 

 

 総勢百七十名以上による移動が始まった。

 

 その全部隊の様相はこうなっている。

 

 まずは最前列に熟練した『偵察哨戒部隊』を配置。

 

 彼らは優れた騎士なので単純に索敵だけではなく、あらゆる状況に対応できる猛者たちが厳選されている。

 

 続いて左右に少し膨らむ形で、ゼイヴァーが率いる遊撃部隊を配置。

 

 偵察部隊だけで対応できない場合に援護したり、何かあった際は単独で行動できる機動力のある部隊だ。

 

 中央部分やや後ろには、ガンプドルフが率いる『主力部隊』がいる。

 

 多くが重装甲兵で構成されており、強敵が出現した際は前衛に躍り出て壁になる屈強な騎士たちである。

 

 その後ろにはキャンプ用の軍用トラクターが十台以上並ぶ『補給部隊』が続く。武器弾薬、生活物資等、行軍にはなくてはならない重要な存在だ。

 

 そのトラクターに囲まれるように、ガンプドルフの魔人機が積まれた専用トラクターもある。すでにエネルギーの充填は完了しているため、いざとなれば出撃することもあるだろう。

 

 補給部隊の後ろには、兵士たちが続く。

 

 彼らは予備兵力として順次投入されるが、まだ実力的には未熟なために補給部隊の護衛が最優先任務となる。

 

 そこに騎士であるバルドロスやリッタス、エノスも配置されている。

 

 リッタスの一連の行動はガンプドルフの予想外だったが、ちょうどよい口実が出来たため一番安全な場所に配置したというわけだ。

 

 兵士たちの後方には、傭兵団に扮した際に使っていた商用の中型輸送船がある。こちらも補給物資を載せているが、宿舎代わりにもなるので移動中の寝床として使うことが可能だ。

 

 最悪、部隊に何かしらの危機が迫ったときは、この輸送船だけで逃げることになるかもしれない。ただし武器は貧弱。改造して主砲を取り付けてあるが、戦艦のものと比べれば玩具のようなものだ。

 

 

 そしてアンシュラオンたちは、その輸送船よりも後ろの『最後尾』にいた。

 

 

 この隊列にまったく似合わぬ赤いクルマに乗り、悠然と荒野を走っている。

 

 すでに宣言していた通り、殿(しんがり)を買って出たのだ。退路を確保するのが役目である。

 

 しかし、たったそれだけで部隊全体に安心感を与えることになる。最後列に一番強い者がいるのだから安心して戦うことができるのだ。

 

 アンシュラオンとしても女性たちを連れているので、ここが一番落ち着ける場所だろうか。

 

 

「これがDBDの全戦力ですか。…少ないですね」

 

 

 小百合が最後尾から陣容を見て、素直な感想を述べる。

 

 こうして大きな荒野に出てみると、たかだか二百人弱程度など豆粒のようなもの。そこらの商隊と大差ない規模だ。

 

 

「その通りだね。おっさんたちの戦力は、はっきり言って少ない。普通に考えれば自殺行為だ。自分で言うのもなんだけど、オレがいなかったらと思うとぞっとする」

 

「最後尾を任されるということは、それだけ信頼されている証拠ですね!」

 

「もちろんそうだけど…逆に言えば、後ろの負担が全部オレにのしかかることになるんだよね。まあ、最前列よりましだけどさ」

 

「そういえば、あの殿下も来たんですね。てっきり残ると思っていました。キャンプのほうが安全ですよね?」

 

「何事もなければね。キャンプはキャンプで戦力が残っていないから、何か予想外のことがあったら対応できない可能性がある。あの近くにも強い魔獣はいるからね。それだったらおっさんやオレがいる本隊にいたほうが安全かもしれない」

 

「それもそうですね。アンシュラオン様の傍が一番ですもんね」

 

「それにもし本隊が全滅した場合、自分だけで生きていかねばならない。あいつの性格上、それには耐えられないだろうね」

 

「適応障害でコミュ障だからですか? あの様子ではグラス・ギースで上手くやっていけるようには思えませんしね」

 

「…き、厳しいね。あいつもそれなりに背負っているものがあるってことだよ。戦争で負けた国なんてそんなもんさ。だから常に勝ち続けないといけないんだ」

 

 

 普段ならばリッタスのような相手には厳しいアンシュラオンだが、DBDの惨状を思えば理解できる面もある。

 

 また、彼自身はサリータの強化にも役立っている。戦気を解放できたのも彼がいたからこそだ。そういう意味で貴重な人材だ。

 

 使える人材には甘い。それもこの男の特徴である。

 

 

「それで、どこに向かっているんですか?」

 

「地図を見ながら説明するよ」

 

 

 アンシュラオンがDBD製の地図を広げる。

 

 

https://public.muragon.com/a0sluz78/o6437ykd/resize/640x640.jpg?1626851132000

※ブログ画像参照

 

 

「魔獣の狩場がここね。グラス・ギースから西に五百キロの位置にある。おっさんたちがどうしてここにいたかといえば、西方攻略の拠点だったからだ。当初、戦艦もこの周囲の岩陰に隠れていたんだ」

 

「アンシュラオン様がデアンカ・ギースを倒したあとのことですね」

 

「そうだ。もしオレが倒していなかったら、DBDはあいつとの戦闘に巻き込まれたかもしれない。おっさんがいれば倒せただろうけど、けっこう損害が出たと思うよ。それを怖れて違う場所を拠点にしたかもしれないけどね」

 

「それも不思議なんですよね。どうしてデアンカ・ギースが狩場付近にいたのでしょう。幾度か目撃例はありましたが、この周辺ではなかったはずです」

 

「うーん、今になって思えば、オレもそこは少し気になるね。というのも、雷の谷でバッデル・ギース〈雷谷の大猩亀(オオザルガメ)〉が確認されている。かなり離れた場所だよね? そこで思い出したんだけど、プライリーラが四大悪獣は東西南北に散っているようなことを言っていたんだ」

 

「目撃データからすれば、そうなりますね。ゼゼント・ギース〈火山悪獣の食蟻虎(アリクイトラ)〉はグラス・ギースから東で確認されることが多いそうですし」

 

「だからもともとデアンカ・ギースは、魔獣の狩場付近にはいなかったはずなんだ。狩場に生息していた魔獣のレベルとは違いすぎるからね。それが半年前に突如として出現した。オレは当初、餌場の問題と思ったんだけど、おっさんの地図を見て考えが変わった。たぶんデアンカ・ギースは【生存競争に負けたんだ】よ」

 

「え? 四大悪獣がですが?」

 

「オレの予想だとデアンカ・ギースの生息地は、ここより南にある『底無し砂漠』だったはずだ。あいつの地中移動には適した場所だし、砂の中を泳ぐ大型魚もいるみたいだから餌にも困らない。そんな快適な場所をわざわざ捨てる意味がない。だったら追い出されたと考えるほうが自然かな。あるいは突然、環境の大きな変化が起きたか。そのどちらかだね」

 

「つまりアンシュラオン様は、四大悪獣以上の存在がいる、とおっしゃりたいわけですか?」

 

「その通り。DBDの調査からすると危険な地域も多いようだ。あれ以上の魔獣がいてもおかしくはない」

 

「そんなところにこの程度の戦力で挑むのですね。…大丈夫でしょうか?」

 

「安心して。小百合さんたちはオレが守るよ。ただ、おっさんたち全員を守れるとは思えない。そこだけは覚悟してほしいんだ。顔見知りも死ぬかもしれない」

 

 

 小百合たちは、食事や家事で彼らと交流を図っていた。

 

 その中には好意を向けてくれる者も大勢いた。実際に話し、笑顔を向けられた相手が死んでしまう。そのショックは慣れていないと思ったより大きいものだ。

 

 それを心配しての発言だったが、小百合は笑う。

 

 

「わかりました。私たちが考えることは、まずは自分たちの安全ということですね。心得ております」

 

「呑み込みが早くて助かるよ」

 

「私もこの『家族』の一員ですからね!!」

 

「少し怖がらせちゃったけど、それが現状なんだ。で、話は戻って肝心の戦艦の行方だけど、消去法として南はない。底無し砂漠になんて行ったら、その段階でアウトだ。それ以前に戦艦は『とある作戦』を遂行中だったからね」

 

 

 DBDにとって戦艦は奥の手であり、貴重な戦力である。

 

 では、なぜその戦艦が単独行動をしていたかといえば、当然ながら理由があった。

 

 

「本国の状況を考えると、DBDはそろそろ本格的に動かないといけない時期なんだ。王女をこちらに連れてくる必要があるからだね。王女が暮らすのが魔獣の狩場では微妙だし、それだけではグラス・ギースに主導権を奪われる。だから『新しい拠点』を作る必要があったんだ。開拓するための資源も見つけないといけないしね。そのために移動していたのさ」

 

「では、戦艦はその作戦中にいなくなったんですか?」

 

「そうらしい。最低でも二日に一回定時連絡があるから、消息を絶つ四十八時間前までの位置はある程度わかっている。それはこの魔獣の狩場から西やや上、西北西に向かった地点だ。この先に魔獣の壁が薄い地点があるよね。そこの突破を狙ったのさ」

 

「この先には…森みたいなものがありますね。そこが目的地でしょうか?」

 

「以前調査隊が調べた際、その森は比較的安全な場所だったらしい。拠点にするには悪くない…というか、そこ以外にまともな拠点が作れないよね。ここから南西の方角はあまりに危険だし、それを攻略するための前哨基地は必要だ。先に安全な上のルートを確立しておきたい狙いもあったんだろう」

 

「戦艦を投入して、この付近にいる魔獣たちを排除し、安全な交通ルートを作る計画ですね」

 

「さすが小百合さん。戦艦の戦闘力をよく理解している」

 

「最強の兵器ですからね。巡洋艦でもかなりの戦力になるはずです」

 

「聞いた話だと巡洋艦ナージェイミアの主砲ならば、もし四大悪獣と遭遇しても撃退は可能みたいだね」

 

 

 この時代の戦艦は、戦争の主役として大型化されていることが多い。

 

 巡洋艦ナージェイミアも多分に漏れず、大型の『三連主砲』を搭載している。仮に装甲の厚い大型魔獣であっても、これ一発で2000、三発で6000くらいはHPを削れると想定していい。

 

 デアンカ・ギースにアンシュラオンの修殺・旋で300程度のダメージしか入らなかったことを思えば、いかに戦艦の主砲が強いかがわかるだろう。(低出力かつ物理耐性があったせいもある)

 

 

「戦艦は貴重だけど、戦力不足のDBDには遊ばせておく余裕はない。この地図の情報は以前のものだから、実際に西側に移動しつつ魔獣の様子を探って、その中で突破できそうな場所を探す。そのうえで可能ならば西の森を拠点として制圧するか、あるいは北西にある『食人森』の水場を押さえるのが目的だったんだ」

 

「西の森はともかく、食人森の間はけっこう距離がありますね。もしそこに何かいたら…」

 

「まだどちらに行ったかまではわからないんだ。最後の連絡があったのは魔獣の壁の手前あたりだったらしい。それからもう一週間以上経っているし、無事であるとは思えないな。問題は何かしらの事情で、大きく離れた場所に移動していた場合だ。こうなると捜索は容易じゃない」

 

「定時連絡は、こちらからは送れないのですか?」

 

「こっちにも長距離用の通信機はあるみたいだけど、送っても反応はないらしいよ」

 

「故障でしょうか?」

 

「楽観的に考えれば機器の故障。少し悪く考えれば不測の事態に陥っていて連絡できない。最悪はすでに戦艦ごと壊されている、かな。ただ、普通の故障ならばすでに戻ってきているはずだよね」

 

「では、私たちが向かっているのは、その連絡が途絶えた地点なのですね」

 

「そうだね。実際に行って捜索してみないとわからないことも多い。数日前に偵察部隊が先行して調査しているらしいから、まずは彼らとの合流が優先だね。まあ、気楽に行こう。考えていても仕方ないさ。それより道中はセノアたちの面倒を見てあげてね。子供だし、けっこう怖がりだからさ」

 

「はい、お任せください!」

 

 

 と、小百合にはそう言ったものの―――

 

 

(厳しい戦いになるかもしれないな。何人死ぬかな)

 

 

 モグマウスで周辺地域を調べた結果、予想通りに大量の魔獣が確認されている。

 

 アンシュラオン一人ならば問題はない。しかし、今回は『群れ全体』で動くのだ。そうなると被害をすべて抑えることは難しい。

 

 

(DBDは戦力の補充ができない。消耗をどれだけ抑えるかがポイントだな。それもまた戦艦がどうなっているかが重要だ。もしあっちが全滅していれば…この作戦自体が無意味になる。だけど放ってもおけない。難儀だなぁ)

 

 

 キャンプでの雰囲気は、アンシュラオンが来たことで少しばかり明るくなった。

 

 しかし、いざ荒野に出てみれば厳しい現実が突きつけられる。

 

 地図で見ればすぐ近くでも、その間には無限とも思える長い距離があるのだ。

 

 起伏も一定ではない。何も描かれていない場所にも山や谷がゴロゴロしている。魔獣の質も進めば進むほど上がっていく。

 

 そんな中、たかだか二百人にも満たない人間たちが移動している。

 

 肉食獣が跋扈する広大なサバンナで、無防備な『肉』が歩いているようなものだ。この大地において人間はその程度の存在でしかない。

 

https://public.muragon.com/a0sluz78/mg12uozo/resize/640x640.jpg?1626851132000

※ブログ画像参照

 

 

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