※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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668話 「荒野の洗礼」

 

 捜索隊は荒野を進む。

 

 目的地は最後に連絡があった戦艦消失地点。そこで先行して調査を続けている部隊との合流だ。

 

 しかし、その道程は長い。

 

 直線距離ならば五百キロ程度だが、そのまま直進するほど愚かなことはない。

 

 場所によっては起伏が激しくて迂回しなくてはならないことも多く、無理して進めば事故の危険もある。そうなると時間のロスになってしまうため輸送船が十分通れそうな道を再度選ぶ必要がある。

 

 この程度ならば、さして問題はない。時間をかければよいだけだ。

 

 それよりも一層警戒すべきは、当然ながら【魔獣】である。

 

 移動中に何度か大きな魔獣の群れと遭遇したが、偵察部隊が優秀だったこともあり、その大半は先に発見することができた。

 

 現状では少しでも戦力を温存したい思惑もあるため、これらの群れとは極力接触を避けた。

 

 時間がかかっても迂回し、それができないときは数時間でも待つ。夜になれば人間の視野が狭くなるので移動を断念し、静かに音を立てずに日が昇るのを待った。

 

 このペースでは武人の足でも七日から十日はかかるかもしれない。

 

 

(慎重だな。しかし、これくらいでいい。おっさんは賢明だ)

 

 

 その様子を見ていたアンシュラオンも、ガンプドルフを称賛する。

 

 荒野では蛮勇は褒められない。そんなことをしたら一瞬ですべてを失うからだ。

 

 実際、時折『残骸』のようなものを見かける。

 

 ロマンを求めた冒険者か、お宝目当てのイクターか、より強い魔獣を求めたハンターかはわからない。死ねば誰もが骸になり、朽ち果てるしかない。

 

 死体は喰われ、残るのは壊れた武器防具、あるいは馬車やクルマの残骸だけだ。荒野にはそんなものがゴロゴロ落ちている。自分もいつこうなるかわからないのだ。

 

 それを知っているDBD一向は、常に緊張感に満ちていた。無駄口も叩かないし、ひたすら体力を温存させながら黙々と移動している。

 

 これと比べると、むしろグラス・ギースで暮らしている者たちのほうがお気楽だと思えてくる。

 

 アンシュラオンがグラス・ギースに来てから遭遇した魔獣は、デアンカ・ギースを除けば雑魚ばかり。食物連鎖の最下層にいるような低級魔獣である。

 

 その理由は、やはり遺跡の存在であろう。

 

 エメラーダがメラキとして管理人に着任してからは魔獣避けの結界を張っていたし、五英雄たちも積極的に周辺の治安維持に力を入れてきた。

 

 今現在アンシュラオンが暮らしている大樹も、元はといえば風龍馬の寝床の一つだったので、そうした【聖獣】の力も借りて、あの場所は人が住めるようになった。

 

 だがしかし、あれだけの時間をかけてもグラス・ギース周辺の整備が精一杯だったのだ。

 

 であれば、こんな辺鄙な荒野ではどうなるだろうか。

 

 順調に思えた行軍も、一瞬にして危機に陥ることがあるものだ。

 

 

 

「魔獣確認!! 数五十……七十……百を超えています!! 飛行型の群れです!」

 

 

 

 偵察哨戒部隊が、魔獣を発見。

 

 全長四メートル大、羽を広げれば倍以上はありそうな巨大な『鳥』の群れが近づいてくる。

 

 その数はおよそ百。かなりの多さである。

 

 

「行軍停止! 音を立てるなよ!」

 

 

 ガンプドルフは接触回避を選択。

 

 即座に止まり、魔獣をやり過ごそうとする。今まではこれで十分回避できていたからだ。

 

 しかし、それは相手の魔獣が好戦的ではなかったことと、数の多さでこちらが勝っていたことが要因だ。よほどの魔獣でなければ、いくら人間といってもこれだけの数の群れに向かってはこないだろう。

 

 では、相手が好戦的ならばどうだろうか。

 

 鳥の群れが動きを変え、こちらに向かってくる。さすがに空を飛んでいるだけあり、簡単に発見されてしまったようだ。

 

 

「このまま行ってくれよ…」

 

 

 そう考えたくもなるのが人情だが、現実は厳しい。

 

 鳥の群れが真上に来た直後、何かが落ちてきた。

 

 

「うわっ、汚ぇっ! 糞を落としやがった!」

 

 

 びちゃっと大きな水っぽい塊が、一人の兵士にぶっかかった。

 

 野鳥の糞をくらった経験がある人にはわかると思うが、少し水っぽいべちゃっとした糞である。なかなか落ちにくいので、服や帽子にかかると最悪の気分になる。

 

 この場合もそれくらいで済めばまだよかったのだが―――ボンッ!

 

 糞が膨張したと思った直後、兵士の肩が吹っ飛んだ。

 

 鎧を着ていたにもかかわらず、あっさりと肩の肉ごと弾け飛ぶ。

 

 

「ぐあぁあっ!! 肩が…!!」

 

「なんだこれは!! 爆発するぞ!!」

 

「うわっ! こっちにもかかって―――ぎゃぁあっ!!」

 

 

 糞が次々と爆発。

 

 兵士だけではなくトラクターにも降りかかり、あちこちで被害が出る。

 

 

「交戦に入る!! 砲撃で迎撃しつつ積荷を優先的に守れ! 重装甲兵は盾で防御だ!! 怪我を負った者たちは輸送船に担ぎ込め!!」

 

 

 こうなったら戦うしかない。ガンプドルフが指示を出す。

 

 重装甲兵たちは大盾を真上に構えて『拡盾』を展開。何人かは『陣盾』を使用し、より広範囲を守る。

 

 その間にも鳥たちは旋回して再び接近。糞爆撃を開始。

 

 今度は騎士たちによって多くの爆撃が防がれた。それなりの威力があるが、ひとまずは防げるようで一安心だ。

 

 などと思ってはいけない。

 

 今度は鳥が輸送船に狙いを付け、集中爆撃を開始。

 

 今しがた兵士が運ばれたように、輸送船は『病院船』にもなる貴重な存在だ。

 

 だが、その意識を感じ取った鳥たちが、そこを弱点だと見抜いたのだ。

 

 輸送船は騎士たちと距離が離れているうえに、大きいがゆえに守りにくい。戦艦のように防護障壁もないので爆撃が集中すると非常に危険だ。

 

 

「あいつら!! そんな知能があるのか!!」

 

 

 そう叫ぶ騎士の気持ちもわかる。

 

 しかしながら、これが厳しい生存競争を生き抜いている荒野の魔獣の本能である。

 

 肉食獣が狙うのは群れで一番弱い相手だ。そんな魔獣には人情も騎士道も存在しない。ただただ相手を喰らう衝動しかない。

 

 

「う、うわぁあ! 来る!!」

 

 

 輸送船の近くにいた兵士たちが、迫り来る鳥に恐れおののく。

 

 いきなりの奇襲にパニックに陥っているのだろう。彼らはまだ実戦経験に乏しい。それが空の上からの攻撃ならば無理もない。

 

 が、相手はそんなことはお構いなしに爆撃を開始。

 

 

 まさに白い死の雨。

 

 

 たとえるのも嫌になるほどの大量の糞が投下される。

 

 肩が吹き飛んだ兵士を見ていた者たちは、自分もそうなると思ったに違いない。

 

 だが直後、それらの糞は一瞬にして消し飛ぶ。

 

 放出された凄まじい戦気が次々と爆発して、数羽の鳥ごと糞を掻き消したのだ。

 

 覇王技、烈迫断掌である。

 

 

「ったく、いきなりこれか」

 

 

 輸送船の上には、いつの間にかアンシュラオンがいた。

 

 こんなものを放っておけば被害は拡大し、クルマもやられてしまう。

 

 クルマにとって一番の敵は鳥の糞だ。到底容認などはできない。

 

 水泥壁を張って輸送船ごと広域防御。糞爆撃を防ぐ。

 

 

「た、助かった…」

 

 

 兵士たちは、ほっと安堵。

 

 きっと生きた心地がしなかっただろう。

 

 だが、アンシュラオンの顔は渋い。

 

 

(騎士と兵士の力の差がありすぎる。前と後ろが別の部隊のようだ。反撃もまともにできないのか)

 

 

 旧サリータ相手ならば圧倒できた兵士たちも、魔獣が相手ではこのざまだ。

 

 一方のガンプドルフ率いる騎士たちは動きがいい。これくらいの戦いならば慣れているのだろう。

 

 ただ、それに当てはまらない者もいる。

 

 

「落ちてきたぞ!! とどめを刺してやる!!」

 

 

 ギリギリ範囲から逃れていた一匹が、ふらふらと落ちてきた。

 

 片翼がもげ、すでに半死半生といったところだ。

 

 それを見つけたリッタスが意気揚々と向かっていき、剣を突き刺す!

 

 

「どうだ!! やったぞ! …ん? 何か膨らんで―――」

 

「っ…! 殿下!!」

 

 

 バルドロスがリッタスを押しのけた瞬間―――ボォオオンッ!

 

 糞爆撃以上の激しい爆発が起こり、鳥が粉々に砕ける。

 

 それと同時に高速で吹き飛んだ骨やら肉片やらが周囲に突き刺さり、巻き添えをくらった兵士たちが転げ回る。

 

 幸いながらリッタスはバルドロスに守られて無事であるが、くらった連中から野次が飛ぶ。

 

 

「クソ殿下!! 何してくれる!!」

 

「う、うるさい! 敵が目の前にいるのだから攻撃するのが当然だろう!」

 

「いきなり攻撃する馬鹿がいるか! ふざけんな!」

 

「お前たちこそ、ふざけるな! 戦いもせずに逃げるだけか!! 臆病者は下がっていろ!!」

 

「な、なんだと!?」

 

 

(あいつ、何やってんだ? また騒動を起こしてるぞ。だが、この状況で戦う意思を失わなかったのはたいしたもんだ)

 

 

 兵士たちの誰もが怖れる中、真っ先に攻撃を仕掛けたのだ。

 

 糞が爆発するのだから体内で爆破成分を分泌しているはずだ。誘爆する危険性に思い至らなかったのは問題だが、今回は勇気と褒め称えておくべきだろうか。

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前 :ボーミンシーファ〈糞爆禿鷲〉

 

レベル:70/85

HP :1780/1780

BP :700/700

 

統率:B   体力: D

知力:D   精神: D

魔力:D   攻撃: D

魅力:F   防御: D

工作:D   命中: B

隠密:F   回避: B

 

☆総合: 第三級 討滅級魔獣

 

異名:荒野の糞落とし

種族:魔獣

属性:飛行

異能:集団統率、長距離移動、広域探知、糞爆撃、自爆、捕食

―――――――――――――――――――――――

 

 

(飛行タイプか。能力値はそこまで高くはないが、それだけでも厄介な相手だな。なにせこっちは飛べないからな)

 

 

 この世界には『人間は飛行禁止』という【女神の規制】が存在する。

 

 そのため道具を使って飛ぼうとしても途中で推進力を失ってしまうのだ。一方、魔獣に関しては当てはまらないため、彼らは地上百五十メートル以上でも飛行が可能だ。

 

 今もアンシュラオンの攻撃を受けて警戒したのか、上空高く舞い上がっている。

 

 こうなると騎士たちも銃撃や砲撃で対応するしかないが、この距離となると射程上では有効範囲でも、相手が相手ゆえに満足にダメージを与えられない。

 

 どうやら彼らの腹は分厚い皮膚で覆われているようで、それが防壁になっているようである。

 

 当然、敵は爆撃を継続している。次々と落とされる糞爆撃の対処もしなければいけない。やはり空は人間に厳しい。

 

 しかし、その中で三人ばかり的確に対応している者がいた。

 

 

「うろたえるな!! 攻撃を続けろ!! 一匹ずつ狙って確実に落とすのだ!!」

 

 

 一人はガンプドルフ。

 

 彼は雷衝をいくつも放ってボーミンシーファを感電させ、落下させることに集中している。

 

 攻撃の威力よりも射程の長さ、持続力と感電力をより強化した雷衝なので、これだけ離れていても十分に対応できるのだ。

 

 落ちてきたボーミンシーファは騎士たちが砲撃で排除。しっかり盾も使って自爆の被害を防いでいる。

 

 もう一人は、ゼイヴァー。

 

 こちらはなかなか面白い方法だ。彼は他の遊撃部隊の騎士と一緒に跳び、空中でその騎士を踏み台にして二段跳躍。

 

 某ゲームの乗り物生物を彷彿とさせるが、高さを稼ぐには悪くない方法だ。

 

 そこから槍を投げつけ、比較的低空にいたボーミンシーファに突き刺す。槍には鎖が付いており、それを辿って登り相手に飛び乗る。

 

 鳥は飛んでいるからこそ強い。なまじ大きな鳥だからこそ真上に乗れるわけだが、そうなればもう脅威ではない。

 

 翼を突き刺して地上に落とす。それと同時に跳躍し、他のボーミンシーファに飛び移り、また突き刺して落とすを繰り返す。

 

 その機動力は見事としか言いようがなかった。まさに宙を駆ける竜騎士の如くだ。

 

 三人目は、バルドロス。

 

 彼はジェメッカ・ジンカイト〈土宿の一擲(いってき)〉を発動。

 

 最初は土塊を投げていたが、だんだん面倒になってきたのか戦法を変更。

 

 大地に手を置くと、どんどん土が盛り上がって彼自身を押し上げ、あっという間にボーミンシーファに接近。

 

 ここまでくれば外しはしない。ボウリングの玉大に固めた土を渾身の投擲。戦気をまとっているので、いとも容易く翼を貫通。ゼイヴァー同様、次々と落とすことに成功。

 

 どうやら彼のジュエルは大地を固めるだけではなく、それを利用して地面を操作することも可能なようだ。

 

 一部分の地面が盛り上がった結果、逆に周りの土は減っているので、他の土を固めて強引に押し上げているのだろう。

 

 

(おっさんめ、絶対に土木工事用に連れてきただろう)

 

 

 バルドロスがいれば大きな土木工事で絶対役立つに違いない。リッタスのほうがオマケではないかと疑うレベルで有用だ。

 

 有能な騎士もいるので前は大丈夫だろう。問題は後衛部隊である。

 

 それに関してガンプドルフからの指示はない。後ろにアンシュラオンがいるので丸投げ…もとい一任してくれているようだ。

 

 

(自由にやらせてくれるのはいいけど、面倒なものを押し付けられたな)

 

 

 輸送船は水泥壁で防御していて無事だが、周りにいる戦力は兵士たちだけ。

 

 前方の騎士たちと比べると明らかに戦力不足だ。

 

 

「サリータ、拡盾でクルマを守れ! セノアも無限盾で援護だ。ホロロさんと小百合さんは落ちてきた敵を攻撃。必ずサリータの盾に隠れながらやるんだ。ラノアは二人が対応できない場合に雷貫惇で攻撃。サリータ、やれるな?」

 

「はい、師匠!」

 

 

 すでに因子が覚醒した彼女は盾技が使える。

 

 ハンクスとの練習には意味があった。すべての修行は未来のためにあるからだ。

 

 今の彼女の戦気量ならば爆撃から十分に車を守れるだろう。

 

 

「サナはこっちに来るんだ。まずは敵を落とすぞ」

 

「…こくり」

 

 

 サナが輸送船の上まで駆け上がってくる。

 

 

「ゼイヴァーが面白いことをやっていた。オレたちも真似しよう。オレが投げるからサナが攻撃するんだ」

 

「…こくり」

 

「じゃあ、いくぞ!!」

 

 

 アンシュラオンがサナを抱えて跳躍。

 

 さらに空中で魔力弾で足場を生み出し、魔素の破裂によって自身を押し上げる。

 

 普段は戦気の爆発を利用して空中を移動するが、今は術式も使えるので戦いのバリエーションが増えたのだ。

 

 

 そしてボーミンシーファの群れに向かって―――サナを投げる

 

 

 サナは一直線にボーミンシーファに飛んでいき、刀をぶっ刺す!

 

 続いてゼイヴァーのように身体の真上に移動し、今度は胴体に刀を刺して放電。

 

 ボーミンシーファは感電。痙攣して地面に落ちていく。

 

 

「サナ!」

 

 

 アンシュラオンは魔力弾で作った足場から『魔力鞭』を伸ばしてサナを掴まえ

 

 

 そのまま次の標的に―――投げる!!

 

 

 引っ張った際に鞭を破裂させて推進力に変えている。これも魔力弾の射出を利用したテクニックだ。

 

 勢いよく飛んでいったサナは、また別の個体に刀を刺して感電させて落とし、再びアンシュラオンが空中で拾って投げるを繰り返す。空が飛べないのならば、こうして工夫して戦えばよいだけだ。

 

 時々変な動きをする個体がいたらアンシュラオンが魔力ミサイル弾で迎撃。

 

 激しい衝撃に誘爆してその場で即死する個体もいれば、落下するものもいる。

 

 落ちればそれをホロロたちが攻撃。さっそくクルマに取り付けた術式反発キャノン砲が炸裂。

 

 彼らが強いのは腹部のみ。頭部に命中させれば、骨が砕けて死んでいく。

 

 当然、爆発する個体もあるが―――

 

 

「はあぁあああああ!!」

 

 

 サリータが拡盾で防御。

 

 盾にまとわせた『剣気』がビームシールドのように広がり、禿鷲の肉や骨をすべて防御しつつ同時に粉砕する。

 

 

「サリータさん、上からも来ますよ!!」

 

「わかりました! 防御します!」

 

 

 今度は空から降ってきた爆撃を『強盾』で防御。

 

 糞は爆発するが、強化された盾はびくともしない。

 

 

(いい感じだ。サリータは体力があるし戦気量もサナより多い。鍛錬は嘘をつかないな。立派な戦力だ)

 

 

 サリータの戦気量は、サナのおよそ二倍である。

 

 これは単純に彼女のほうが肉体的に完成しているため、それだけ生体磁気が多いことを意味する。それを防御だけに割り当てているのだから硬くて当然だ。

 

 また、剣士因子も1になっているため剣気が放出できることも大きい。

 

 

―――――――――――――――――――――――

名前 :サリータ・ケサセリア

 

レベル:30/75

HP :750/750

BP :380/380

 

統率:E   体力: D

知力:E   精神: D

魔力:E   攻撃: E

魅力:D   防御: D

工作:E   命中: E

隠密:E   回避: F

 

【覚醒値】

戦士:1/2 剣士:1/2 術士:0/0

 

☆総合:第八階級 上堵(じょうど)級 戦士

 

異名:アーパム商会の大盾

種族:人間

属性:

異能:炎の体育会系、絶対忠誠心、熱血、護衛、覚悟完了、中級盾技術、物理耐性、即死無効

―――――――――――――――――――――――

 

 

(オレが感じていたサリータへの期待感は正しかった。能力もそうだがスキルも強化されている)

 

 

 まず目に付くのが『炎の体育会系』だ。一番最初に来ていることからも今までとは様相が異なる。

 

 おそらく体育会系のデメリットが取り除かれた純粋なパワーアップスキルだと思われる。

 

 詳細は不明だが、相手が強ければ強いほど能力を発揮する『天才』スキルに近いものだろう。無条件で発動しないことから天才のほうが格が上だろうが、デメリットがなくなっただけでも十分ありがたい。

 

 それ以外にも『覚悟完了』、『即死無効』が追加され、低級盾技術が『中級盾技術』になった。

 

 能力数値が一気に上昇したように見えるが、これが本来のサリータの数値だったということだ。

 

 アンシュラオンが今まで与え続けた賦気が芽を出し、戦気の解放を契機に表に噴き出したのである。これこそが【選ばれた者】の証だ。

 

 そして一番気になるのは―――

 

 

(レベル上限と因子限界が上昇している。サナと同じ現象だ)

 

 

 サリータにもサナと同じ現象が見られた。予想はしていたが、実際にそうなるといろいろと考えることも出てくる。

 

 しかし、力は力だ。あって困ることはない。

 

 今では黒鮭(こっかい)傭兵団のゲイルと同等以上の力を持つに至ったことは、素直に喜ぶべきだろう。

 

 アンシュラオンならば、落ちこぼれだって強くすることができる。それがわかっただけでも大きな価値がある。

 

 

 こうしてさりげなくアンシュラオンとサナの初連携攻撃を披露しつつ、魔獣を撃退することに成功。

 

 それ自体は良かったのだが、残ったのは魔獣の死骸と負傷した兵士たち、破壊された数台のトラクターの残骸だけ。

 

 まだ存在を明るみにできないDBDにとって、魔獣素材は利用しづらい微妙な資源だ。

 

 ハローワークでは買い取ってもらえるだろうが、いきなり大量の素材を持っていけば周囲に怪しまれる。せいぜい硬質化した心臓をアンシュラオンが引き取るくらいが関の山だろう。

 

 それより今は少しでも損害を減らしたいのが本音。まったくもってマイナスでしかない交戦である。

 

 これが洗礼。

 

 出立してすぐに荒野の怖ろしさを痛感することになった。

 

 

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