※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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685話 「クルマと駆逐艇」

 

 アンシュラオンが第八階層を駆け抜けている頃、ガンプドルフたちは第一階層から第二階層へと進み、制圧戦を開始していた。

 

 今回の作戦は、いくつかの段階に分かれている。

 

 まず、アンシュラオンが先行して鬼怒獣たちが負けないように誘導援護しつつ、第十五階層にまで突入させる。

 

 これに続くことによってゼイヴァーも比較的安全に戦艦まで到着できるはずだ。実際にトラップの援護があったおかげで犠牲なく進めている。

 

 その後、ラノアと戦艦を救出して脱出するわけだが、退路を確保する必要がある。それを主力部隊が行っているのだ。

 

 第二階層の制圧も魔人機や爆薬を使うことで完了。かなりいいペースだが、ここからが本番である。

 

 

「これより先は、私のミーゼイアと一部の主力部隊だけで進む! 残りは退路の維持に務めろ!」

 

 

 完全制圧するのは第二階層までとなった。

 

 あわよくば第四階層くらいまで行けると思っていたが、あまりに広すぎるために、これ以上の制圧戦は物量的に不可能なのだ。

 

 すでにDBD隊は物資の大半を使ってしまっている。残りは維持に回さねば、一番大事な退路すら守れないからである。

 

 

「行くぞ! ミーゼイアで蹴散らす。打ちこぼしを的確に叩け!」

 

「第二突入部隊は、閣下に続け!」

 

 

 ガンプドルフと重装甲兵三十人が、第三階層に移動を開始する。

 

 残った騎士と兵士、およそ百二十人は、第一と第二階層の維持に回される。数だけはいるように見えるが、この大空洞内部ではこじんまりとした集団でしかない。

 

 残りの弾薬をすべて使っても制圧した階層を守りきるのが精一杯だろう。万一外から援軍がやってきたら全滅する可能性もある。

 

 

「サナ様、私たちも参りましょう」

 

「…こくり」

 

「運転は任せてくださいね!」

 

「準備できました! もし何か飛んできても盾で防ぎます」

 

「こっちも準備万端です。ラノアを助けるためなら何でもします!」

 

 

 今回は運転を小百合に任せ、サナとサリータ、ホロロが屋根の上に出ている。

 

 ホロロは主砲を撃つ役割と同時に、その目を生かして状況を把握する。彼女は剛徹守護の腕輪も持っているので、奇襲を受けても数秒なら攻撃を防げるのが強みだ。

 

 サリータは一番前に立ち、飛んでくるものからクルマ全体を守る役目だ。攻撃されずとも蜘蛛の死骸やら残骸が飛んでくるので、それを防ぐのである。

 

 サナは最大戦力なので、いつでも動けるように外にいるのがベストだろう。

 

 セノアは爆発矢をセットしたボウガンを持って車内にいる。窓から援護射撃するだけでも十分役立つし、物理障壁も使えるため比較的安全だ。

 

 ただし、あくまでガンプドルフのオマケ。主力は騎士団である。

 

 

「サナ様、今は我慢です。彼らの事情で巻き込まれているのですから、とことん彼らを利用すればよいのです。先陣は任せましょう」

 

「…こくり」

 

「小百合様、お願いします!」

 

「飛ばしますよ! しっかり掴まっていてくださいね!」

 

 

 クルマが移動開始。

 

 すでに出立したガンプドルフを追って、フルスロットルで突っ込む。

 

 

「おい! あいつら、行ってしまったぞ!」

 

 

 それを見ていたリッタスが叫ぶ。

 

 なぜならば彼らは、第二階層を維持する隊に入っていたからだ。

 

 

「エノス、我々は行かぬのか!?」

 

「仕方ありません。バルドロス様がいないと維持が難しいのです」

 

 

 リッタスがここにいるのは、単にお荷物ということもあるが、最大の目的はバルドロスにある。

 

 最初の制圧戦でも苦労したように、この大空洞には多数の横穴が存在している。そこから蜘蛛が這い出てくると奇襲される形になってしまうため、できうる限り埋めておかねばならない。

 

 それに最適なのがバルドロスのジュエルだ。

 

 彼が魔石の力で岩盤を圧縮してずらし、こうした穴を塞ぐことで階層を安全に保つのである。

 

 こうして考えると、まさに適材適所。この作戦においてバルドロスが担う役割は極めて大きい。

 

 だが当然、リッタスは不満である。

 

 

「くっ! 足手まといになるために来たわけではないのだぞ!! そうであろう、バルドロス!」

 

「殿下、人にはそれぞれ役割がございます。目的のために連携して動くことが肝要です。聖剣長もその役割を果たそうとしております」

 

 

 ガンプドルフは場合によっては、ここから第十五階層まで突破しなくてはならない。

 

 最深部の作戦が上手くいき、戦艦が自ら動くことができれば、途中で合流して護衛しながら脱出も可能だろう。が、あの女王蜘蛛が戦艦を手放さないときは、ガンプドルフの魔人機の力が必要不可欠である。

 

 こうなると深部に向かった主力部隊は、ボスに置いていかれた鬼怒獣のように、身を挺してガンプドルフを先に送り出す必要がある。

 

 

「この数と圧力です。少しでも不測の事態が起きれば、魔人機に乗っている閣下以外はほぼ間違いなく死ぬでしょう。自ら死地に赴く騎士たちを想えば、ワガママを言っている場合ではありませんぞ。殿下もまた彼らの死を背負い、生き延びる責任があるのです。それが王室の役割ですぞ」

 

「ぐっ…そうだが……では、あいつらはいいのか!? 女たちが戦っているのに、我々だけ様子見でいいのか!?」

 

「彼女たちだけで生き延びられるとは思えません。ですが、彼がおります。あの少年の庇護があれば窮地も脱することができるのでしょう」

 

「くそっ! いつもいつも、あいつか! ずるいではないか、あいつばかり! なぜ我々には…私には力が無いのだ!」

 

「殿下…」

 

「バルドロス! 私は戦うために来たのだ! もう二度と女に任せてはいけない! そう思ったから決断したのだ! 違うのか! それとも『あいつ』に国を任せておくつもりなのか!」

 

「………」

 

「国を売り、媚びへつらう。そんな売国奴どものために我々は戦うのか! 違う。そうではない! 男がやらなければならないんだ。女では国は狂う! なんと言われようと聖剣王国は男が導くべきだ! 頼む、バルドロス! 俺に力を貸してくれ!」

 

「…エノス、わしは殿下の援護に回る。お前はここで待て」

 

「バルドロス様! 危険すぎます! ここは皆で待つべきです! それが一番良い方法ではありませんか! 行ってどうされます!」

 

「その通りだ。反論の余地もないほどの正論よ。しかし、道理だけでは人は動かぬ。もし道理だけで世界が動いているのならば、なぜ我らはルシアに負けた。あの少年と少女たちは誰が見ても馬鹿げたことをしておる。そうにもかかわらず、なぜこうも活力に満ち溢れておるのか」

 

 

 アンシュラオンだけではなく、サナやサリータを見ていても魅力と活力に満ちていた。端から見れば何の根拠もなく動いているのに、どうしても目が向いてしまう。

 

 合理的な判断は素晴らしいが、それだけで計れるほど人は小さくはない。その複雑な人と人が集まって社会と国家が生まれる以上、道理だけで成功したためしはない。

 

 

「わしは今にして気づいた。時代の変化が迫っているのだ。誰が見ても勝ち目のない戦いであっても、天が味方すれば勝ててしまうことがある。その一つの出来事からすべてが動き出し、大きな力となって歴史を生み出す。聖剣王国が戦争で負けたことは正しかったのだ。だが、ここで新しい力を生み出さねば、ただの無駄死にになってしまう」

 

「バルドロス様…」

 

 

 彼も戦争で戦い、敗北を喫した。この東大陸に渡るまでは、いや、渡ってからも絶望の中にいた。

 

 多くの屈辱を味わった彼だからこそ、「戦争で負けたことは正しかった」という言葉はあまりに重い。

 

 しかし、それはけっして諦めではなく、新しい希望が見えたからだ。

 

 

「殿下はあの少年にも負けぬ光になる。少なくとも聖剣王国にとって無くてはならぬ存在となる。わしにはその確信がある。ならば、最後まで信じるのみよ」

 

「当然だ。任せておけ!」

 

「なんて…なんて……根拠のない自信ですか…殿下」

 

「エノス、お前もそろそろ気づけ。東大陸に渡った段階で、俺たちはもう大馬鹿者なんだぞ。本国にいる連中は、俺たちが成し遂げるなんて誰も本気で信じちゃいない。だが、それでいい。こちらも見返すつもりなんてない。ただ力をつけて、力づくで取り戻すだけだ!」

 

「殿下…」

 

「俺は行くぞ! とことん行く! ついてこい、エノス!」

 

「くうぅ……わ、わかりましたよ! もう腐れ縁です! 死んだって恨みはしません! わたくしも殿下を信じます!」

 

「よくぞ言った! それでこそ俺の兄弟だ!」

 

「ですが、走って行くのでしょうか? さすがにそれでは不安ですよ」

 

「む、むぅ、それは……」

 

 

 勢いよく宣言したものの、足がなくては追いつけない。

 

 バルドロスだけならばともかく、リッタスとエノスでは不安が残る。途中で打ちこぼした敵と遭遇したら危険である。

 

 そんなふうに騒いでいるものだから、兵士たちが集まってきた。

 

 

「ったく、お前はほんとに馬鹿殿下だな! こんなときでも命令違反かよ」

 

「な、なんだと!」

 

「退路を維持するのも大切な役割だろうが。ほんと、でしゃばりな野郎だぜ」

 

「そんなことはわかっている! だが、私は!」

 

「ここは俺たちがなんとかするから、さっさと行ってこい!」

 

「なっ…」

 

「こいつを使え。輸送船に付いていた『駆逐艇(くちくてい)』だ」

 

 

 そこにはクルマと同じような大きさの駆逐艇があった。

 

 駆逐艇とは、駆逐艦や巡洋艦に付属している揚陸艇、あるいは揚陸艦の一種で、敵の基地や戦艦に人員を運ぶために造られた船である。

 

 物によっては何の兵器も装備されていないこともあるが、敵戦艦に接舷(せつげん)することを想定しているため、非常に強固な装甲をしていることが多い。

 

 今回の駆逐艇は先端がドリルのようになっており、そのまま戦艦に突き刺して乗り込むこともできるタイプのものだ。

 

 戻ってこられるかはともかく、突き進むだけならば十分活躍することができるだろう。

 

 

「お前ら…どういう風の吹き回しだ?」

 

「べつにお前のことは好きじゃねえよ。好き勝手やってるし、それで怪我したやつもいるしよ。だが、それもすべては国のためだってことはわかる。まあ、一緒にボコボコにされた仲だ。今回だけは応援してやるよ」

 

「おう、お嬢ちゃんたちに負けるなよ! 俺たちだって本当は行きたいんだからよ! 仕方なく後方支援に回ってやるから絶対に失敗するんじゃねえぞ!」

 

「…礼は言わんぞ。俺はいつだって結果で示してみせる」

 

「お前、結果出したことあるのか?」

 

「ぬぐっ…こ、これから出すのだ!」

 

「皆さん…ありがとうございます! 殿下の代わりに御礼申し上げます!」

 

「あんたも大変だな。そいつに付き合っていたら命がいくつあっても足りないぞ」

 

「ふん、言っていろ。百光長、エノス、行くぞ! 運転は任せる! 私はできないからな!」

 

「やっぱりお前はポンコツ殿下だよ!」

 

 

 兵士たちの野次に囲まれながら、リッタスとエノスが駆逐艇に乗り込む。

 

 

「…いい人たちですね」

 

「国を想い、ここまで来た人間に悪者などいるものか。まあ、一緒に戦ったよしみだ。面白い土産話でも持って帰ってやろう。やつらが悔しがるほど活躍してな」

 

「そうですね。絶対に生きて戻りましょう」

 

「エノス、運転はできるな? わしは蜘蛛たちが出てきた場合にそなえて外に張り付く。道も綺麗ではないからな」

 

「わかりました。お願いいたします」

 

「では、行ってくれ」

 

 

 駆逐艇が発進。

 

 アンシュラオンのクルマも術式反発システムが組み込まれているが、こちらも軍事用だ。同じくブースターに点火して、猛スピードで移動開始。

 

 蜘蛛の死骸で埋もれている悪路や、岩盤が脆そうな場所は強引にドリルで突き破り、曲がり角やデコボコした道はバルドロスの魔石で舗装しながら進む。

 

 道幅も広く、視界も狭いために同じ道を進むのは難しいのだ。

 

 

 それでも飛ばした甲斐はあり、数分後にはサナたちのクルマに追いつく。

 

 

「あっ、後ろから何か黒いのが来ました! はぁはぁ、う、撃たないと!!」

 

「待て、こちらは敵ではない」

 

「セノア、撃っては駄目ですよ。バルドロス様です」

 

「は、はい!」

 

「やれやれ、またあのメイドか。相変わらず怖いな」

 

 

 リッタスもハッチを開け、外に出てきた。

 

 そんな彼にサリータが話しかける。

 

 

「なんだ、お前も来たのか。今回は本当に危険だぞ」

 

「お前に言われる筋合いはない。もともと我らの戦いだ。女に任せていられるか。それより聖剣長はどうした?」

 

「もっと先に進んでいるようだ。あの魔人機というものは凄まじい戦闘力だな」

 

「最大戦力の一つだからな。だが、あまり飛ばすとエネルギーがもたない。負担は少しでも減らしておくべきだ。我々も前に出るぞ」

 

「お前にやれるのか?」

 

「見くびるな。我が家も王室の末席だ。家宝くらいはある」

 

 

 リッタスが一振りの剣を取り出す。

 

 見た目は素朴で、特に装飾は施されていないが、その刀身はギラリと輝いていた。

 

 

「我が家に伝わる宝剣だ。といっても聖剣のような強力なものではない。せいぜい他の剣よりも少しは斬れる程度の代物だが、普通の剣よりはましだろう」

 

「そんなものがあるなら、もっと早く使えばよかったんじゃないか?」

 

「家宝の剣だぞ。最後の切り札に使うものだ」

 

「どのような優れた剣とて、使い手が悪ければ真価を発揮できぬもの。殿下は自らの剣技を鍛えるために、あえて普通の剣を使っていたのだ。貴殿と戦った時も使おうと思えば使えたが、プライドが許さなかったのであろう」

 

「百光長、余計なことは言わないでいい。ふん、どうせ『おこぼれ』だ。そんなものを大勢の前でひけらかしては、マッケンドー家がまた侮られるだけだからな」

 

 

 聖剣王国は、鍛冶の国でもある。多くの優れた鍛冶師が日々さまざまな剣を作っては、軍や王室に売り込んでくる。

 

 それはまさに玉石混交。買う側も試されているわけだ。

 

 これもその中の一つで、三代前のマッケンドー家の当主が買い上げたものだ。叩いた鍛冶師は有名な者ではなかったが、その刀身に宿った執念に惹かれて買ったという。

 

 リッタスもその逸話は印象的で覚えており、この剣だけは持ってきていたのだ。

 

 

(そう、執念しかない。気持ちしかない。あの男のように強い力もない。ならばせめて、気持ちでは負けるものか!)

 

 

「…っ!」

 

「サナ様?」

 

「敵です! 横穴から出てきますよ!」

 

 

 ゼイヴァーがかかったトラップが、ここにもあったようだ。

 

 術士の因子が1覚醒しているサナは、この場にいる誰よりも素早く感知したが、クルマで移動しているので避けることは難しい。

 

 聴こえない警報によって蜘蛛が集まってきた。

 

 

「このまま突っ走れ! 右側はわしが防ぐ! エノス、端に寄れ!」

 

「はい!」

 

「殿下はそちらに乗り移ってくだされ」

 

「なっ…こんなクルマに乗れというのか!?」

 

「こんなクルマとは失礼な! 師匠の愛車だぞ! いいから、さっさと来い!」

 

「ぐおっ!!」

 

 

 サリータがリッタスをクルマに引っ張り込む。

 

 次の瞬間には駆逐艇が離れ、壁側に寄っていくと、バルドロスが壁に両手を叩きつける。

 

 今も駆逐艇は走り続けているので、両手もまた凄まじい圧力にさらされるが、逆に圧縮されたのは壁のほう。

 

 前の階層でもやったように魔石の力で壁を強引に圧縮。横穴を塞ぎ、蜘蛛の出現を強制的に抑える。

 

 

「やった! さすが百光長だ!」

 

「感心している場合か! こちらも来るぞ!」

 

 

 右はバルドロスがなんとか防いでいるが、左側の横穴からぞろぞろと蜘蛛が這い出てきている。

 

 クルマは止まらない。止まっていたら囲まれるので突き進むしかない。

 

 しかし、真上からカーモスイットが降ってきた。横穴といっても大空洞だ。かなり高い場所にあいていることもある。

 

 

「サナ様、自分が防ぎます! 追撃を!」

 

「…こくり!」

 

 

 サリータが盾を使ってカーモスイットを弾く。

 

 そして吹き飛ばされて無防備な腹を、サナが横薙ぎの一閃。切り裂く。

 

 蜘蛛は転がっていったが切断までは至らなかった。まだ生きているはずだ。

 

 

「おい、中途半端に傷つけたら進化するのではないのか!?」

 

「倒していたらキリがない。それより時間を稼ぐほうが重要だ。お前も手伝え! その剣はナマクラか!」

 

「いちいち命令するな! 早くこちらにも飛ばしてこい!!」

 

「じゃあ、遠慮なく!!」

 

 

 サリータが今度はリッタスのほうに飛ばす。

 

 

「遠いぞ!! このっ!」

 

 

 やや遠めに飛ばされた蜘蛛に上段斬りを見舞う。

 

 ズパンッ!!

 

 微妙な出来の紙鉄砲でも鳴らしたような音が響き、蜘蛛が切り裂かれる。

 

 斬られた蜘蛛は地面に叩きつけられ、後方に転がっていき、すぐに見えなくなった。

 

 そのうちカーバラモになるかもしれないが、たしかにそんなことを言っている場合ではない。降りかかる火の粉は払わねば、今この瞬間を生きていけないのだ。

 

 

(ふぅ、一応は家宝といったところか。これならば少しはやれる)

 

 

 この剣には、間合いをわずかに伸ばす効果、剣気を強化する力がある。刀身自体も立派な出来なので、まさによく斬れる剣であろうか。

 

 一番の特徴は、けっして折れず、錆びない頑強さだ。倒れても何度でも起き上がるリッタスにはお似合いすぎる剣であった。

 

 

「悪くない剣じゃないか。お前にはもったいないな」

 

「うるさい。お前のほうこそ恵まれているのだ。泣き言は言うなよ」

 

「自分がいつ弱音を吐いた!?」

 

「工場で泣いていただろう!」

 

「なっ…昔のことを!」

 

「まだ十日くらい前だろうが!」

 

「二人とも、黙って集中しなさい! 一寸先は闇ですよ!」

 

「は、はい!」

 

「うっ…」

 

 

 ホロロに叱られ、二人とも背筋を正す。

 

 なぜかリッタスも反応していたので、やはり女性が苦手らしい。

 

 しかしながらサリータのことは女と思っていないのか、あるいは決闘をしたからか、近い距離にいても問題はないようだ。

 

 一応先に述べておくが、この二人の間に恋愛要素は絶対にないので安心してほしい。仮にあったとしてもリッタスの片思いに終わるだろう。

 

 DBDの殿下が出会った不思議な女騎士。彼女との出会いをきっかけに彼が成長していく物語なのだ。それはそれで歴史的に重要なお話であるが、今の二人には知る由もないことだ。

 

 彼女たちは、今を生きるだけで精一杯。その一瞬一瞬の輝きが歴史を作るのだから。

 

 

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