※この作品はR-18です。

【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了   作:ぷるっと企画@園島義船

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696話 「聖剣発動 その3『界気の力』」

 

「相変わらず…刺激的だな。何度やっても慣れることはないか」

 

 

 精霊憑依、完了。

 

 ガンプドルフの全身が雷妖王と合体したため強く光り輝いている。

 

 もしコックピットが専用の絶縁体で覆われていなければ、即座にショートして魔人機がお陀仏になっていることだろう。

 

 

「待たせたな。シャクティマの癖が強いから、いつも手間取る」

 

 

〈問題ありません。こちらも不思議な光景にいつも驚かされています〉

 

 

「ここからは全力だ! ミーゼイア、フルパワー解放!」

 

 

 ガンプドルフが聖剣をコックピット内部にある専用の『鍵穴』にぶち込む!!

 

 このゴールドナイトが特殊なのは、聖剣専用に造られた機体であることだ。雷の聖剣の力を吸収し、力に変える機構が組み込まれている。

 

 魔人機それぞれには特定の目的があり、聖剣王国に与えられた魔人機は聖剣を使うことが前提に設計されていた。それだけ聖剣が珍しく、WGから見ても興味深い代物であることがうかがえる。

 

 

〈シャクティマズ・グラズム適合確認。バンシャム・グラムシャクトからエネルギー供給開始。還元率35…48…53…余剰エネルギーの排熱放電開始。エネルギー残量上昇、41…43…45…〉

 

 

 力が注がれるごとに展開された翼が光り輝いていく。

 

 翼が光り輝くのは聖剣が常に界気を放出するため、吸収しきれない分を常時放出しないと機体が焼け焦げてしまうからだ。

 

 仕様上のものとはいえ、まさに輝く『光の翼』。

 

 シャクティマに生えていた四枚の翼を再現したかのように神々しい姿として君臨する。

 

 

〈蜘蛛型魔獣、再起動。再生機能は健在です〉

 

 

 そうしている間にも蜘蛛が立ち直り、触肢を上げて威嚇していた。

 

 さきほどまでは獲物の一種としか見ていなかったようだが、今は外部からの侵入者として判断したようで、より強い敵愾心を感じる。

 

 

「やる気になったようだな。しかし、今までと一緒だと思うなよ。今の私は少々凶暴だぞ!」

 

 

 ゴールドナイトが突っ込む。

 

 翼からエネルギーを放出しているため、その加速力は通常の三倍を誇っている。

 

 さらに雷の残滓が大気中に残ることで輝く軌跡が、流星の如く美しい。

 

 一瞬で蜘蛛の懐に入り込むと、剣一閃。

 

 蜘蛛は触肢でガード。

 

 さきほどまでならば簡単にガードされたが―――

 

 

「うおおおおおおおお!」

 

 

 ズズズズズッ!

 

 強引に蜘蛛を―――圧す!

 

 百三十メートルもある大きな蜘蛛が、たった十二メートル程度の存在に力ずくで叩き伏せられたのだ。

 

 続けてゴールドナイトの斬撃。

 

 斬る、斬る、斬る!

 

 ガンプドルフには珍しい荒々しい剣を何度も叩きつける。

 

 以前彼自身も述べていたが、雷妖王と合体すると影響を受けて好戦的な性格になるようだ。相手を叩き潰すことが悦びに変わっていく。

 

 

「断て、界気の刃よ!」

 

 

 剣が触肢に食い込むと、界気の力が迸る!

 

 ズズズッ ドンッ!!

 

 そして直径五メートル以上もある蜘蛛の触肢を―――両断!

 

 

「…ッ!」

 

 

 蜘蛛はそれに驚いたのか糸を使って跳躍。

 

 天井に逃げてからのショットガン戦法に戻る。

 

 

〈界気シールド『雷妖王の銅鐸』展開〉

 

 

 しかし、降り注ぐ弾丸のすべてを展開した帯気の壁で弾く。

 

 『雷妖王の銅鐸』は、合体する前に彼が左手に持っていたものだが、こちらは強力な防御結界を張る能力があり、それを模倣したものだ。

 

 仕組みとしては翼から放出された『界気』を『帯気』の性質を使ってとどめることで、一時的なシールドとして使用している。

 

 最上位属性は下位の属性すべてを支配する、という法則を利用したものだ。

 

 アンシュラオンも『命気』を『凍気』に自由に変化させたりしているので、水が雷に変わっただけと思えばいいだろう。

 

 では、命気があらゆる生命の源、あるいは進化の力になるのに対し、界気にはどんな力があるのだろうか。

 

 

「逃がさん。雷光砲で撃ち落とす!」

 

 

〈了解。背部ユニットにエネルギーチャージ。『ネーパリック・プログラム』、ローディング開始。チャージ率、30…40…50…〉

 

 

 光の翼に界気の力が集まっていく。

 

 それと同時に背部ユニットが大きく持ち上がり、翼の先を相手に向ける。

 

 

「逆流させて焦がすなよ!」

 

 

〈その心配は杞憂です。エネルギーチャージ完了。照準セット、ロックオン〉

 

 

「いくぞ! 雷光孔雀砲―――フォルテッシモ!」

 

 

 翼から凄まじい閃光、圧縮された界気が放出される。

 

 蜘蛛は多数の防御糸を展開していたが、それを簡単に焼き切り、牽制用に放った岩のショットガンも蒸発させ―――

 

 

―――貫く!

 

 

 それはまさに雷光がすべてを切り裂く光景であった。

 

 紅蜘蛛の硬質化した脚さえ破壊し、体表を焼き尽くし、肉や内臓を引き裂いた。

 

 この巨大蜘蛛が雷光砲の一撃で、見るも無残な有様に成り果てる。実に怖ろしいパワーである。

 

 

 なぜならば『界気』の力とは、【分断する力】だからだ。

 

 

 下位属性の『雷』は、放出する力。上位属性の『帯気』は、力を持ったままとどまる力であったが、最上位属性の『帯気』は引き裂く力であった。

 

 防御に使えば相手の攻撃を分断し、こちらに届く前に分けてしまう。

 

 攻撃に利用すれば、相手の防御ごと強引に引き裂いてしまう。

 

 アンシュラオンの性格診断において、雷属性の人間は人懐っこく他人を引きつける力を持つといわれるが、その最上位属性はまったくの正反対であることは興味深い。

 

 

「相変わらず凄いな、フルパワーは!」

 

 

〈出力対比、115%。『通常版のフォルテッシモ』に勝ちました〉

 

 

「なんだ、お前にも対抗心があったのだな」

 

 

〈厳然たる事実を述べたまでです。このデータはWGに送られ、後継機にフィードバックされるでしょう〉

 

 

「今度は【本家】ではなく、お前を参考にして造れとでも言ってやるか。それも悪くない。といっても、【本当の本家】は違う神機なのだろうがな」

 

 

〈ゴールドナイトのオリジナル神機は機密事項なので不明。比べるのは不可能です〉

 

 

「ともあれ、ハイテッシモには勝ったのだ。それで満足しよう」

 

 

 東大陸(荒野エリアではない全体部)のちょうど真ん中に「ガーネリア帝国」という古い国が存在し、そこにも金色の機体であるハイテッシモが存在する。

 

 ただし、そちらは同じゴールドナイトの中でも『ネーパリック〈祝福された奇跡〉』と呼ばれる特殊な機体で、すでにナイトの名を外されている超高性能機である。

 

 ミーゼイアの型番は「99-092」であり、九十二番目に製造された後期製造機体であるため、すでに存在していたハイテッシモの機構を参考にしたともいわれている。

 

 もともとハイテッシモの量産機開発も目的で、悪く言ってしまえば、あらゆる面でスペックを落とした下位互換機といえる。

 

 が、聖剣という特殊なキーアイテムを併用すれば、その能力は本家と同等以上にまで引き上げることが可能となるのだ。そこは誇っていい。

 

 しかし、デメリットもある。

 

 

〈雷光孔雀砲、オーバーヒート。再チャージは300秒後になります。エネルギー残量、28%。聖剣から再度エネルギー還元開始〉

 

 

(これは大きな欠点だと思うが…言ったら怒られるから指摘はしないでおくか)

 

 

 本家の威力は超えたが、聖剣の力が強すぎることもあって連発はできない。しかも燃費も悪いときている二重苦だ。

 

 ほんの少し強いが単発しか使えないミーゼイアと、安定した威力で数発以上は保証されているハイテッシモ。どちらが良いかは一概には言えない難しい問題である。

 

 どちらにせよ、まだ勝負はついていない。

 

 焼け焦げた身体を引きずりながらも蜘蛛が動き出す。

 

 

〈蜘蛛の再生を確認〉

 

 

「なんて生命力だ。これが魔獣のしぶとさか。しかし、ここで決める!」

 

 

 ゴールドナイトが弱っている蜘蛛の頭部に剣を突き刺す!

 

 剣にも界気をまとっており―――分断!

 

 頭を切り裂き、大きな眼を一つ破壊。

 

 

「このまま体内に界気を流してやる!」

 

 

 激しい力の奔流が紅蜘蛛を内部から切り裂く。

 

 さすが聖剣である。その力も段違いだ。

 

 しかし、これで仕留めたかと思ったが、紅蜘蛛が激しく暴れ出した。

 

 鋏角でゴールドナイトに噛み付くと、そのまま壁に叩きつける。

 

 

「ぐっ…まだ死なないのか!」

 

 

 ドガンドガン! ドガンドガンッ!

 

 火事場の馬鹿力とでもいえばいいのか、聖剣で出力が上がっているゴールドナイトでさえ振り回される。

 

 こうして岩盤に何度も叩きつけられ、そのたびに光の翼から界気も放出されるものだから、ついに壁が破壊されて一部崩落を開始。

 

 

「このままでは生き埋めだぞ!」

 

 

〈壁の奥に空洞を発見。真上に続いています〉

 

 

「なぜこんなところに空間がある?」

 

 

〈不明ですが、そこへの退避を提案します〉

 

 

「今は逃げ込むしかないか。ブースターで加速して振り切る!」

 

 

 翼のエネルギーを移動力に回し、ブースターに点火。

 

 噛まれていた腹回りが少し抉れてしまったものの、紅蜘蛛の顎から逃げることに成功。岩盤に隠れるように存在していた穴に逃げ込む。

 

 が、紅蜘蛛も追ってくる。それも鬼気迫る勢いで。

 

 

「気のせいか…怒っていないか?」

 

 

〈魔獣の精神は理解不能ですが、明らかに興奮している様子はうかがえます〉

 

 

 実はこの穴は、紅蜘蛛が女王蜘蛛との生殖の際に使うものだ。

 

 いわゆる『愛の道』とも呼べる場所なので、そこに他者が入り込んだことに激高していると思われた。

 

 だが、そんなことを知らないガンプドルフたちは、異様に猛る紅蜘蛛に気圧され、ついに追いつかれる。

 

 下から体当たりされ、ガンガン押されてどんどん上昇していく。

 

 

「この蜘蛛、止まらないぞ!」

 

 

〈すでに頭部を破壊しています。脳神経が破壊され、身体の制御が利かない可能性があります。つまりは暴走です〉

 

 

「これは厄介……いや、このまま押し上げてくれるなら好都合か。エネルギーの節約になる」

 

 

〈最深部まで350メートル〉

 

 

「上に出たら仕掛ける。準備をしておけ!」

 

 

〈了解〉

 

 

 

 

  ∞†∞†∞

 

 

 

 

「お、終わった!!」

 

 

 ちょうどその頃、アンシュラオンが術式の解除を終えていた。

 

 巨大ジュエルから禍々しい紫の光が消え、今はぼんやりとした淡い白い光を放っている。

 

 かかった時間は、およそ983秒であった。

 

 

(1200秒やるだと? 偉そうに言いやがって。いったい何者だ? あいつも地球の記憶を持っていたな…しかし、普通の転生者って感じじゃない。クロスライルとはまったく違うぞ)

 

 

 一般的に転生者は『異邦人』とも呼ばれ、単一の精神を持って再生を果たす。

 

 しかしあの影は、明らかにそれとは違う。複数の意思が交錯した不思議な存在であった。

 

 

(インディビジュアリティー…か。普段は知覚できない霊的意識の本質だったな。オレもそこまでは到達していないから詳しくは知らないが、あいつは何が言いたかったんだ?)

 

 

 霊の本質はあまり一般人には知れ渡っていない。その理由は、はっきり言えば「わからない」からだ。

 

 たとえば死んで肉体を捨てれば、すぐに全部がわかるものではない。霊的意識のすべてを知るには、そこから何千年、何万年、あるいは何億年以上もかかるといわれている。

 

 少なくともアンシュラオンが霊界で修行したのは数百年程度。その先にある巨大な意識体のことまでは知る由もない。

 

 

(【オレが転生前のオレではない】ということは理解している。転生ってのはややこしい手順が必要らしいからな。だが、そんなものは誰だって一緒だ。『オレに混ざった者』が誰であれ、オレの生き方が変わることはない。いつだってオレはオレだ)

 

 

 アンシュラオンの中には、強い意思があった。

 

 力や能力は誰かから貸し与えられたものかもしれないが、魂の本質だけは変わらない。いつだって自分は自分だ。

 

 それはいいのだが、だからこそ謎の影の存在は気になる。

 

 

(あいつはむかつくやつだったが、『術の天才』だったのは間違いない。久々に冷や汗を掻いた。まだ慣れていない科目のテストを受けていた気分だよ。エメラーダに出会っていなければ本当に危なかった)

 

 

 仮に術式を学ばず大地に出ていればどうなったか。想像するだけで怖ろしい。

 

 他人のことは言えないので影の性格はいいとしても、才能だけはピカイチ。エメラーダはもちろん、姉すら超える才能を持っているかもしれない。そうでなければ、このような巨大な術式を自由自在に操れはしないはずだ。

 

 そんな術式を制御できたことは、少しだけ嬉しい。ひとまず崩壊だけは防ぐことができたので、これで爆発といったことはまずありえないだろう。

 

 がしかし、現状は何も変わっていなかった。

 

 魔獣たちの目は依然として赤い光を宿したまま、憎悪の感情を向けていた。

 

 

(元栓は止めたが、一度発動した術式までは時間経過でしか解除できない。こいつらはもう駄目だな)

 

 

 この術式は、発動している間だけ効果を発揮するものではない。あくまで上書きを繰り返すものであり、一回発動しただけでも精神を一定期間奪われる。

 

 人間が近くにいない通常の状態ならば、術式は潜んでいるだけなので精神に負担をかけないが、こうして対象が目の前にいると解除はほぼ不可能だ。

 

 女王蜘蛛の抵抗も少しずつ弱まっている。彼女が暴走するのも時間の問題である。

 

 そう思って戦艦のほうを見ると、甲板で旗を振っている者がいた。ゼイヴァーである。

 

 

(無事到着したのか、さすがだな)

 

 

 アンシュラオンも、それに応えるように手を軽く振る。お互いに準備ができていることを示すサインである。

 

 そして、このタイミングでサナたちも最深部に到着。

 

 前衛の騎士たちはボロボロ。今にも倒れそうな様子を見れば、彼らがいかに勇敢に戦ったかがわかる。きっとサナたちを命がけで守ってくれたのだろう。

 

 

「マルズレン隊は救助を急げ! デュークス隊は援護だ! まだ魔獣たちには攻撃するなよ! 向かってきた相手だけ排除だ!」

 

「よっしゃ、行ってくらぁ!」

 

「任務了解」

 

 

 戦艦からデュークスたちが出てきて、彼らを迎え入れていた。

 

 これで戦艦側の準備はほぼ整った。サナたちのクルマも戦艦にいつでも格納できるだろう。

 

 

「………」

 

 

 まだかなり距離があるが、サナと視線が合う。

 

 彼女はラノアを見つけると走り出そうとしたものの、突然思いとどまったように止まった。

 

 あれだけラノア救出に固執していたのだから、それだけの理由があったのだ。

 

 

 動け―――ない

 

 

 今、ここでは奇妙な時間の空白が生まれていた。

 

 戦艦はいまだ女王蜘蛛に張り付かれており、まだ脱出できない状態にある。

 

 アンシュラオンが群がる魔獣たちを倒してもいいのだが、それに刺激されて女王がどう動くかわからない。それで戦艦を潰されたら今までの苦労が台無しだ。

 

 かといって、まだ巣穴内部には多くの蜘蛛が残っており、ぐずぐずしていたら敵の増援がやってくる可能性もある。

 

 さまざまな思惑が渦巻く中、その不穏な空気を感じ取ったからこそ動けないのだ。

 

 

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