【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
戦艦が第十五階層の入り口に向かって移動を開始。
メインエンジンに点火したばかりなので、まだまだ速度は遅い。
「騎士は戦艦を護衛しつつ、順次乗り込んで離脱だ! 無理をするなよ! 置いていかれるぞ!」
ガンプドルフが殿を務めながら部隊の指揮を執る。
〈戦艦ナージェイミアとアンカー接続。予備バッテリーから充電開始〉
「これでしばらくもつか」
ゴールドナイトも消耗が激しいため戦艦の最後部と結合し、引っ張られる形で退却を開始。
「閣下、ご無事でしたか」
「メーネザーか。お前も無事で何よりだ」
「状況を報告します」
ここで戦艦側の状況がガンプドルフに伝わる。予想通りではあったが運が悪いとしか言えない内容だ。
ひとまずピンチは脱したものの、これで安全とは言いきれないのがつらいところだ。まだ魔獣たちが山のように残っており、群がるように戦艦に集まってくる。これだけ人間がいれば彼らの憎悪も強く刺激されるのだろう。
戦艦は副砲や機関砲を発射して対応するが、やはり数が多い。気づけば前からも魔獣がやってきて、一般街の売り子たちのごとく周囲を埋め尽くす。
「数が多すぎる! こんなにいたか!?」
「前の階層からもやってきているのだろう。バーゲンセールだな」
「こっちは安売りしてねぇよ! さっさと戻ろうぜ!」
デュークスとマルズレンたちも撤退を余儀なくされ、魔人甲冑も撤退を開始。
ほぼすべての騎士たちが戦艦の外壁に掴まると同時に、ジュエル・モーターが回転率を上げる。
「出力を上げろ! 蹴散らすぞ!」
メーネザーが強引に突破を試みる。
多くの魔獣はジュエル・モーターから噴き出る爆風で飛ばされるが、一部の蜘蛛たちは糸を張り巡らせて耐えているようだ。
ひとまず魔獣たちの動きは止めたので、そのまま戦艦は第十四階層との通路を移動する。
ただし、ここで脱出の難しさが露呈。
戦艦の速度は全速ならば時速百キロ以上は出るのだが、この巣穴は各階層の間に細い通路があり、ジグザグに曲がっていることもあって移動には細かい制御が必要になる。
それによってスピードが出しきれないのが一番の問題点だ。場所によっては時速三十キロも出せないところもある。
また、巣穴は最深部に向かえば向かうほど地下に傾いているため、行くときは勢いのままに下っていけばいいが、帰りはずっと坂道という地獄の行程となっていた。
といっても、その動きの遅さで助かった者もいる。
「ナージェイミアが動いているのか!?」
ここでリッタスとバルドロスが合流。
彼らが登ってきた亀裂は、十四階層と十五階層の間にできたものだったようだ。ちょうどよいタイミングで戦艦が通りがかる。
「ケサセリアはどうした? いないぞ?」
「殿下、急がないと巣穴に取り残されますぞ!」
「くっ、今は仕方ないか!」
「殿下! バルドロス様!」
「おお、エノス! お前も無事だったか! お互いに悪運が強いな」
「心配しましたよ! 早く乗ってください!」
リッタスたちを捜すため注意深く周囲を観察していたエノスが発見してくれた。二人は戦艦と併走しつつ、戦艦にしがみつく。
ゆっくり走っている電車に飛び乗る光景を発展途上国ではよく見かけるが、あれと同じ感覚だろうか。
「サナ様、こちらです!」
「…こくり」
他の騎士と一緒に戦っていたサナも戦艦の外壁に張り付き、ホロロの誘導で中に入ろうと登っていく。
しかしながら飛び移るのは人間だけではない。戦艦がスピードを緩めたタイミングで蜘蛛や鬼怒獣たちも乗り移ろうとしてくる。
そして最悪なことに、一頭の鬼怒獣がサナの足にしがみつく。
「っ…!」
「サナ様! 大丈夫ですか!」
「…こくり!」
サナは魔石を解放して感電させ、さらに刀で何度も斬りつけるが、鬼怒獣はまさに鬼の形相で掴んで離さない。
その握力はさすがのもの。サナの足が次第に内出血で紫色になっていく。
「…ふー、ふー」
息が上がっていることから、彼女もかなり消耗していることがわかる。魔石の輝きも全力の三割程度にまで落ち込んでいた。
特にガンプドルフが抜けてからの戦いが激しかったのだ。サリータもいない最悪の状況で、よくここまでもったと褒めるべきかもしれない。
「誰か! サナ様を助けてください!」
「私が参ります! 未練がましく女性にしがみつくとは許せぬ!」
ホロロが叫ぶと、イケメンしか許されない発言をしながらゼイヴァーがやってきた。
槍を使って宙を駆け、鬼怒獣の背後を取る。
「成敗!」
狙いをつけて―――槍一閃
正確無比な一撃が鬼怒獣の心臓を貫く。
が、まだ死なない。魔獣の目は赤く鋭いままである。
「なんという生命力だ!」
これはゼイヴァーが悪いのではない。彼の一撃は強力で致命的だった。
しかし戦艦の外壁という足場の悪さに加え、サナがいたため衝撃を抑えた一撃だったのが悔やまれる。
「もう一度だ!」
「ゼイヴァー様、後ろに蜘蛛が!」
「っ!」
そんなゼイヴァーの背後にカーエッジ・スパイダー。一匹ならばともかく、二匹、三匹と壁から跳んできて斬糸を放り投げてくる。
「ぐっ、こんなときに!」
ゼイヴァーは応戦するが、アンシュラオンの斬撃すら弾くような敵だ。三匹も相手となれば彼も自分の身を守ることで精一杯となる。
「ホロロさん、狙撃はできませんか!?」
「もう弾が…」
「すぐにもらってきます! 弾を! ライフルの弾をください! 早く! バズーカでもいいですから! 何でもいいから早く出してください!」
「わ、わかりました!」
小百合が近くにいた騎士の胸倉を掴んで急かす姿が見える。
この騎士が戦えばいいと思うかもしれないが、メーネザーが言っていた「百五十人の騎士が動ける」の言葉には、「非戦闘員以外で」という意味が含まれている。
戦艦には総勢三百人の騎士がいても、そのうち百名以下は戦闘以外の整備士や砲手、または鍛冶師であり、直接戦うことはない。
現在は死傷者を除いた戦闘要員が、ほぼすべて外に出ているため、中に残っているのはそういった非戦闘員ばかりなのだ。彼らが向かっていっても鬼怒獣ほどの強力な魔獣に対抗するすべがない。
その間にも攻防は続いており、鬼怒獣は強靭な腕を振り回す。
サナは必死にガードするが、受けた右腕がどんどん腫れていくのがわかる。彼女の耐久力では防御すらままならない。
「サナ様! 誰か、誰かいませんか!」
ホロロの声も虚しく響く。
他の騎士たちも必死で余裕がまったくない。
「ウ゛オ゛オ゛オ゛!」
「…!」
鬼怒獣の大きな腕がサナに迫る。
サナはもう右手が上がらない。ダメージが蓄積して、だらりと垂れ下がっている。
「サナ様ぁああああああああああ!」
ホロロがハッチから飛び降りて、身体ごとサナを庇おうと身を乗り出した瞬間であった。
『黒い盾』が飛んできて―――ブシャッ!!
鬼怒獣の腕を吹き飛ばした。
「ウ゛オ゛!?」
突然腕が無くなって困惑する鬼怒獣だが、彼の災難はこれで終わらない。
「ウオオオオオオオオ!」
鬼怒獣よりも強く激しく吼えながら、猛烈な勢いで戦艦の外壁を登ってきた『黒い者』が鬼怒獣の顔面を殴りつける。
殴られた頭が、ボンッと破裂。
ものすごい生命力でいまだに身体はビクビクと動いていたが、脳という命令系統を失ったため、サナから手を離して下に落ちていった。
そして、その黒い者はサナを抱きかかえて一気に甲板にまで駆け上がると、静かに床に下ろした。
「フーー、フーーーーッ!!」
そこにいたのは、サリータ。
身体全身から黒いオーラを放ち、赤い目をした『魔人化した彼女』の姿であった。
「サナ……様……! はぁはぁ! サナ…さな……さま」
「…じー」
「あぐっ……ぐううっ……ああぁああああ!」
サリータの身体はボロボロの状態であった。
魔人化した彼女の能力はかなり高かったものの、あれだけの蜘蛛、しかもカーネジルたちと戦えば傷つくのは当然だ。
それを強引に黒いオーラが修復するが、そのたびに激しい痛みを感じて、のた打ち回る。
「サリータ、これはいったい…!」
「サリータさん!? どうしたんですか!?」
そこにホロロと大量の薬莢箱を抱えた小百合がやってきた。小百合に至っては本当にバズーカまで肩から下げているから怖ろしい。
しかし、そこで再会したサリータの違和感に言葉を失う。
明らかに異常。危険。暴走状態。それでも魔獣以外に危害を加えないのは、サナを守るという強い意思によって動いているからだ。
ドーーーンッ! グラグラグラッ
その時、戦艦が大きく揺れる。
「閣下、女王蜘蛛が追尾してきています」
メーネザーからガンプドルフに通信が入る。
「こちらも視認している。しつこいな」
「狙いは格納庫にある卵だと思われますが、破棄しますか? 止まるかもしれません」
「いや、そのままでいい。現状でのブロック廃棄は騎士たちの安全に関わるし、追ってきてくれるのならば逆にありがたい。どのみちこの場所を制圧するためには女王を倒す必要がある。正直、彼女とは仲良くなれそうもないからな。ならば、こちらの都合の良い場所で仕掛けて倒すほうがいいだろう。少年の考えはどうだ?」
「そうだね。女王はすでに術式に汚染されている。時間経過で戻るかもしれないけど、おっさんたちと魔獣がわかりあえるはずもない。倒すほうが安全だと思うよ。第八階層で迎え撃とう。あそこは出入り口は狭いけど中は広かったはずだ。戦艦は逃がして通路を塞ぎ、オレとおっさんで倒そう」
「わかった。メーネザー、まだヒヤヒヤさせるが頼むぞ」
「了解しました。相手の砲撃にはどう対処いたしますか?」
「引き続きオレが守るよ。クシャマーベ、車輪盾を全力展開だ」
クシャマーベから数多くの車輪が生まれ、戦艦の後部に展開される。
そこに―――砲弾の嵐!
なぜ戦艦が揺れたのかといえば、さきほどから女王蜘蛛が砲撃を行っているからだ。
女王から糸が放出されると、周囲にいた蜘蛛に張り付いて―――【吸収合体】
外殻に取り込まれて彼女の一部となる。その中には大型蜘蛛も多数おり、身体の至る所から『砲台』が出てきて全方位射撃を繰り返す。
撃ち出されるものは砲弾用の小型蜘蛛だったり、あるいは糸を固めて強化したものであったり、紅蜘蛛同様に岩だったりもする。
それは今しがた自分に撃たれた戦艦の砲撃に匹敵。
ドドドドドドンッ!! グラグラ
大地を揺るがす衝撃が巣穴の中で轟く。女王の砲撃に少しでも触れた鬼怒獣は、それだけで粉々に砕けた。
「私も信用してはおりますが、万一のために物理障壁を展開させておきます」
メーネザーも安全のために戦艦に搭載されている術式防御フィールドを展開。万一の被弾にそなえる。
が、そのほぼすべてはクシャマーベの車輪盾によって防がれているので問題はない。
「慎重な人だね。聞いていた通りだ」
「だからこそ信頼できる。それよりも、こんな闘人まで扱えるとは驚いたぞ。さすがだな」
「アルゴリズムの構築に手間がかかるし不便な点もあるけど、勝手に動いてくれるから楽だよ。まあ、簡単には突破されないから安心してよ」
「反撃はしたほうがいいか?」
「周囲に蜘蛛がいる限り無駄かな。また吸収されるだけだね。予定通り、第八階層で閉じ込めて潰したほうがいい。さて、サリータが戻ってきたみたいだ。少しここを任せるよ」
「了解した。といっても、やることは特になさそうだがな」
アンシュラオンは防御をクシャマーベに任せ、サリータがいる甲板に移動。
そこで変わり果てた彼女の姿を見ることになる。
この男からしても、その姿は異常。しかも【半裸】だ。
鎧は砕けているし、盾もない。武器すらない。あまり大きくは言えないが、アンダーシャツが破れて片方の乳房が普通に露出しているではないか。
いつもの彼女なら少しは恥じらいを見せるはずだが、まったくそんなそぶりも見せない。
「サリータ、無事か?」
「はぁはぁ……ハイ………ハイ……」
サリータに声をかけると返事はする。だが、どう見ても自分で制御できていない状態である。
改めて彼女に触れて内部を探る。肉体面もそうだが、特にその根幹を術式によってスキャンしてみる。
すると、予想通りに怪しい痕跡を発見。
(変な『精神の痕跡』が残っているな。…この感覚は覚えがあるぞ。さっきまで嫌というほど戦っていたしな。となると、あの『影』の仕業か? いろいろとやってくれるもんだよ。とはいえ、サリータには『その兆候』がたしかにあった。よりにもよって、ここで発現してしまったか)
アンシュラオンは、サリータの『魔人化』については少し前から予想していた。
そもそも魔人化したラブヘイアを見ているし、エメラーダからも因子の伝染については教えられていた。【本物の魔人】の影響を受けた人間は『魔人因子』が刺激され、その下僕になっていく現象のことだ。
サリータに関しても戦気が使えるようになった時から急速に『魔人因子』が目覚める気配があった。だから日々チェックを怠らなかったのだが、まさかのこのタイミングで覚醒だ。
ただし、サナとは状況が違うのが気になる。
(サナはこれだけオレの近くにいながら、あんな現象には陥っていない。一番最初に出会って一番多く接しているのだから、サナこそがそうなるべきじゃないのか? それとも感情の強さに影響されるのか? あるいはサナのスキルの影響か? ううむ、わからないな)
サナの場合は、すでに黒雷狼という存在が生まれているため、もしかしたらそちらのほうに吸われた可能性がなくもないが、順番としては彼女のほうが先に魔人化するのが筋だろう。
逆に言えば、それだけサリータがアンシュラオンの魂と感応してしまったことを物語ってもいる。
当然、このままでは問題だ。活を入れる必要があるだろう。
「サリータ、歯を食いしばれ!!」
「はぁはぁ……は?」
「歯だ! 歯を食いしばれ!!」
「は…歯……」
サリータが言われるがままに歯を強く噛んだ。
それを見計らって、アンシュラオンの平手が―――『尻』を打つ!
バッシーーーーーンッ!
「あひゃぁあああああああああ!!」
歯を食いしばれと言いつつ尻を打つ、安定のお約束スタイルだ。
実際、身長差があるので尻のほうが叩きやすいので仕方がない。
「もう一度だ!」
バッシーーーーーンッ!
「いぎぃいいいいいいいっ!!」
「なんだ、この尻は! だらしない尻め!! オレの目が届かないところで顔も知らない誰かにやられおって! お前もシャイナと大差ないぞ! この馬鹿犬が!」
バッシーーーーーンッ!
「アォオオオーーーーーンッ!」
「おい、尻が熱いぞ! こんなところで発情したのか、はしたない犬め! もう一度だ!」
バッシーーーーーンッ!
「あはあぁああああっ!」
なぜかアンシュラオンがサリータの尻を何度も叩く。何の説明もないので周囲は唖然としている。
しかし、熱い。
叩かれるたびに何か強いエネルギーが内部に注入されるようだ。身体を超えて魂の奥底にまで響く圧倒的なパワーで、サリータが打ち震える。
「いくぞおおお!! これが最後だ!」
そして、渾身の―――【一撃】!
バッシイイイイイイイイイイイイイイイインッ!
「ああああああああああああ―――っっ!!!! イッくううウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!」
ついに衝撃が感覚を通り越し、魂が絶頂を迎えた。
もう言葉で表現することはできない。女性が物的に感じるオーガズムのレベルを遥かに超越している。
がくがくとサリータが痙攣し、口から泡を吹く。
「あひっ…はひっ……ひぅっ!」
「気をしっかり持て! お前は誰だ!」
「あっ……あんしゅら…おん……さまの…」
「もっとはっきり! お前は誰だ!」
「アンシュラオン様の忠実な犬であります!」
「では、お前の役割は何だ!」
「サナ様をお守りすることです!」
「そんなざまで守れるのか!」
「申し訳ありません!」
「謝っている暇があったら、気合を入れんかぁあああああ!!」
「はいぃいいいいいいいい―――あはっ!」
最後はついでに股間に手を突っ込むサービス付きだ。
そのせいではないだろうが、ジュオオオオッと黒いオーラが【白い光】に侵食されていく。
オセロでひっくり返るように一瞬ですべてが白に染まった。もともと白い肌がさらに白くなり、赤黒い目も完全に真っ赤に染まる。
それはさきほど魔人化した姿よりも、気高く美しい『白い魔人化』した姿であった。
今ならばわかる。アンシュラオンが傍にいる感覚。彼が常に自分に力を与えている実感が、そこにあった。
(はぁはぁ、わ、私はどうなっていたのだ!? いつの間にここに!? だ、だが…熱い! 身体が熱い! あの時の熱さとはまるで別物だ!)
黒いオーラは排他的で無機質な力だったが、アンシュラオンが放つ白いオーラは同じ痛みでも『活力』があった。
盛り上がり、成長し、駆け抜けていく爽快感が『快楽』となって魂が打ち震える。気持ちいい、心地好い、夢見心地。アンシュラオンが与える力は、(女性にとっては)どれも素晴らしいものなのだ。
「アンシュラオン様…その、私は……あなたの記憶を…」
「サリータ、ほかの一切の思念に囚われるな。お前はオレとサナだけを見ていればいい。他人の思惑に利用されるな。オレはここにいる。お前たちと一緒にいる。わかったな!」
「は、はい!」
「オレはオレだ。ほかの誰でもない!」
(あの記憶で見た人とは…違う。そうだ。この人は強くて温かい。とても熱い人で…愛のある人なのだ! それがこの御方の『本質』だ!)
記憶の欠片で見た、あの壮絶な人生。嘆き、苦しみ、血反吐を撒き散らすような強烈な憎悪と怒り。
アンシュラオンにも同じような性質はあるが、すでにそこを超えているように思える。愛がある。情熱がある。少なくとも女性に関しては熱量が半端ない。
「サリータ、ここは任せる。サナを守れ。オレは女王蜘蛛を叩く」
「はい! お任せください!」
アンシュラオンを見送る瞳はいまだ赤いが、そこにはしっかりとした理性が宿っていた。
(私はもう迷わない。悪だろうが関係ない! アンシュラオン様とともに生きる!)
もう誰に何を言われても動じることはない。心の奥底から白い少年の愛を受けているし、自分も愛している。
愛と愛が結び付けば、それはもう無敵だ!
「サリータさん! 待っていましたよ!」
「小百合先輩、遅くなりました!」
「なんてみっともない姿ですか! 早く着替えなさい! まったく、この鎧は…重すぎです! こんなものしかありませんでしたが、このハンマーも持っていきなさい!」
「ホロロ先輩、申し訳ありません! すぐに着替えます!」
いつの間にかホロロが鎧を持ってきていた。近くにいた騎士が裸になっているので強引に奪ったものだと思われるが、今回ばかりは災難だったと諦めてもらうしかないだろう。
そして、主と向かい合う。
「サナ様…!」
「…こくり」
視線が合う。言葉がなくても伝わる。
サナは今、自分の手元にあるべきものが戻ってきたと感じている。喜んでいる。実感している。熱く燃えているのだ!