【旧版】「欠番覇王の異世界スレイブサーガ」※全話掲載完了 作:ぷるっと企画@園島義船
ナージェイミアは、追走する女王蜘蛛の攻撃を防ぎながら第八階層まで到達。
この階層は最深部に匹敵する大きさがありながらも、なぜか通路が狭い構造になっている。女王蜘蛛が獲物を担いでギリギリ通れる幅しかない。
それが今は好都合。最後の作戦が決行される。
「メーネザー、お前たちは第二階層にいる残りの部隊と合流し、一旦地上まで脱出しろ。私と少年は女王蜘蛛を倒してから脱出する」
「クシャマーベは護衛に残しておくけど、オレが近くにいないと細かい指示はできないから過信はしないでね」
「了解しました。御武運を」
メーネザーは何か言いたそうだったが、命令を受諾。ガンプドルフを残していくのが不安だったのかもしれない。
しかし戦艦救出のためにここまでの犠牲を払ったのだ。無理に残って万一沈められでもしたら、すべてが台無しとなる。それよりは『英雄二人』を信じたほうがよいという判断に至る。
戦艦は第八階層から第七階層への通路に向かう。女王蜘蛛もそれを追って第八階層に入ってくる。
そのタイミングでアンシュラオンが動いた。
ぴょんと戦艦から飛び降りると爆発集気。
「鬼ごっこはここまでだ」
膨大な戦気をまとった拳を大地に叩き付ける。
大地に放たれた戦気の波が移動するごとに地盤を巻き込み、さらに大きな波となって襲いかかった。
その波によって女王の足元の地盤が崩れると同時に、大地がいくつも隆起して女王を貫く。それはまるで地面から出現した土竜が獲物に喰らいつくようだった。
覇王技、『
因子レベル6で使える技で、因子レベル3の覇王土倒撃の上位版である。覇王土倒撃はソイドビッグ鍛錬の際にも使ったが、この極竜・覇王土倒撃はそれを攻撃特化させたもので、大型魔獣であっても動きを止めることが可能な強力な技だ。
当然、これだけで女王倒すことはできない。あくまで足止めが目的である。
「おっさん、界気を借りるよ」
アンシュラオンが両手から大量の命気を放出すると、ゴールドナイトの翼の界気を巻き込んで広がっていく。
それをさきほど戦艦が出て行った通路の入り口に張り付けた。見た目は大きなスライム状の液体がへばりついているだけだが、その内部には界気が走っているため強く光輝いていた。
「少年、これは?」
「最上位属性を組み合わせた『合体戦技』だよ。やったことない?」
「聖剣を使う時は、だいたい単独で戦うことが多い。経験はないな」
「じゃあ、覚えておくといいよ。これが水と雷の最上位結界戦技『
属性同士に相性があることはすでに述べているが、長い闘争の歴史の中で、それらを応用した合体技も開発されている。
たとえば下位属性の雷気と水気を組み合わせた高等戦技結界術『
それを最上位属性でやったものが『
「合体戦技はよく兄弟子とやったもんだよ。残念ながら姉ちゃんは火が得意だったから、オレとの相性はよくなかったけどね」
「君たちにとって最上位属性は日常的なのだな。怖ろしい世界だ」
「おっさんだって界気を使えるならすごいもんだよ。一応逃げられないように向こう側にも設置しておこうか。また鬼ごっこは勘弁だしね」
遠隔操作によって反対側の通路も雷水命界で封鎖。
これで第八階層に残っているのは、アンシュラオンとガンプドルフと女王蜘蛛、それと周囲にいる蜘蛛たちだけとなった。
女王蜘蛛は覇王土倒撃から復帰。再び糸を放ち、蜘蛛たちを次々と取り込んでいった。
「見れば見るほど不思議な生態の魔獣だな」
「群れ全体で一つの魔獣と考えたほうがよさそうだね。でも閉じ込めたから、もう援軍は来ないはずだよ。地面から来たら諦めるしかないけどね」
アンシュラオンの言う通り、両側の通路にいた蜘蛛たちが第八階層に来ようとしても、雷水命界に触れた瞬間に粉々に吹き飛ぶ。
命気が粘着するうえに、それ自体が界気の強大なエネルギーを秘めたものだ。普通の蜘蛛程度では、どうあがいても突破は不可能である。
「………」
女王蜘蛛が、アンシュラオンたちを凝視。
その眼はすでに憎悪に汚染されており、強い興奮状態にあるようだ。
「全力で来い。そのうえで叩き潰してやる。それがせめてものお前への供養だ」
アンシュラオンが意図的に『殺意』を放つ。
何十万といった魔獣を殺してきた男が放つ気質は、魔獣を刺激するには最適だ。
その波動を受けた女王が―――奮える!!
ドクンドクンと心臓が鼓動すると同時に、彼女の大きな身体も揺れていき、気持ちが高ぶっていく。
自然界の魔獣に『生存本能』はあっても『闘争本能』は存在しない。闘争を生き甲斐にするのは霊を持つ人間だけだ。
しかし、霊は他者に力を伝播させる力を持っている。オーラを分け与え、強化する性質を持っている。
アンシュラオンが持つ激しい闘争本能は、かつて人間と深く関わった女王蜘蛛を闘争の渦の中に引きずり込む。
「ッッッ!!」
女王蜘蛛の八十を超える目が真っ赤に輝き、身体からドス黒いオーラが噴き出る。サリータが魔人化した時に出ていたものに似た、排他的で攻撃性の高いものだ。
これこそが大地にかけられた呪詛そのもの。あの影が生み出した『負の精神術式』の正体である。
大地にしみ込んだ数多くの血、その怨嗟を利用して魔獣たちを縛る鎖だ。鎖で縛った魔獣は人間と同じく全力を出せない。力は意思によって生まれるからだ。
「お前の怒りをすべて吐き出せ! 他人に支配される怒りを思い出せ! お前の戦う理由をオレに見せ付けてみろ!!」
魔獣に話しかけたところで、その意図が伝わるわけではない。しかも虫型の魔獣ならば、なおさらだろう。
だが、この男の熱量が、白い力が第八階層全体に広がり、強烈な輝きを放つ。
その輝きは黒いオーラに襲いかかり、瞬く間に『白』に転化させるだけではなく、真っ赤に燃え上がっていく。中に侵食していく。
ドガンドガンドガンッ! ドガンドガンドガンッ!
高まり荒ぶる気持ちのはけ口を探すように、女王蜘蛛が大地を脚で叩く。中に芽生えた『感情』をどう表現したらいいのかわからないのだ。
されど、答えは目の前にある。
「オレは―――ここだぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
アンシュラオンが戦気を解放。
凄まじい圧力で身体が浮き上がる。
「さあ、ぶつかってこい! どんとこい! こないなら、こっちからいくぞ!」
アンシュラオンが女王蜘蛛に突っ込み―――体当たり!
女王の頭部に身体ごとぶつかっていった。
さすがに体格に大きな差があるため、それだけでどうにかなるものではないが、いきなりのことに女王蜘蛛がたじろぐ。
「どうした? やられたらやり返せ! それでも『超越者の守護者』か!? お前らが不甲斐ないから負けたんじゃないのか!? あんな影みたいな連中に負けて悔しくないのかあああああああああ!!」
「ッ!!」
続けてアンシュラオンの拳が女王蜘蛛の顎にヒット。
無防備なところを受けたため、硬い顎にビシビシとヒビが入る。
「こい、こい、こい! どうした、こいよ!」
煽る。煽る。煽る。
プロレスラーが観客を盛り上がるために客席にアピールするかのように、両手を広げて女王蜘蛛を煽っていく。当然ながらここに客はいないので、煽っているのは女王当人である。
それに刺激されたのか、女王蜘蛛が触肢を薙ぎ払う。
アンシュラオンはガード。少し圧されたが、真正面から受け止める。
「どうした、こんなものか!」
アンシュラオンが女王の身体の下に潜り込むと、蹴りが炸裂。女王蜘蛛の巨体が衝撃で浮く。
そこからの蹴りの連打。
ドドドドドドドッ!!
蹴る、蹴る、蹴る!
風龍馬やクロスライルにも使った
今までの相手と比べると大きさが段違いなので、そこまで高く蹴り上げることはできなかったが、その代わりに拳に集めた戦気で―――ぶん殴る!!
集められた戦気は激突の瞬間に大きく膨らみ、激しい衝撃となって巨大な女王蜘蛛を吹き飛ばす。
女王は壁に激突。衝撃で壁が崩れる。
「まだまだまだ!」
アンシュラオンは戦気で巨大化した拳で何度も殴りつける。そのたびに女王が右に左に吹っ飛ばされていく。
赤覇・
ご大層な名前が付いているが、実際は拳に集めた戦気を肥大化させて殴るだけの脳筋技だ。とはいえ制御が難しいので、技になるためには戦士の因子レベルが5は必要になる。
名前から想像できる通り、アンシュラオンにはあまり似合わない戦い方であり、彼自身も人生の中で数回使ったかどうかの技だ。どちらかといえば姉やゼブラエスに向いている技といえる。
しかも拳が当たった部位にはダメージを与えているが、女王蜘蛛には『完全自己修復』スキルがあるため即座に傷は治っていく。
デアンカ・ギースしかり、もともと大型魔獣に体術は効きにくい傾向にある。明らかにこの攻撃は効果的ではなかった。
では、どうしてこんな技を使ったかといえば、やはり女王を煽るため。
何度も何度も殴っていくうちにアンシュラオンの『闘争心』が彼女に伝わっていく。赤い目も憎しみを帯びたものではなく、怒りのものに変わっていく。
そして、ついにぶち切れ―――殴る!
ブーーーーン! ドゴーーーンッ!
大きな触肢が持ち上がると、まるで台風でもやってきたかのような轟音を撒き散らしながら、アンシュラオンをぶっ飛ばす!!
アンシュラオンはガードしたが、あまりの威力に飛ばされて壁に激突。中にめり込む。
「少年!」
「大丈夫。これくらいは問題ないよ」
アンシュラオンは壁から這い出ると、女王蜘蛛を見て笑う。
「いい面構えになったじゃないか。どうせ戦うならそっちのほうがいい」
気づけば女王蜘蛛からは、あの黒いオーラが完全に消えていた。
代わりに白い蒸気のようなものが噴き出ている。
「少年、何をしたのだ」
「殴りながら精神に介入して術式を堰き止めたんだ。今のあいつは術式から解放されている状態だよ」
「では、術式を解除できたのか?」
「いや、そんな簡単にはいかないさ。本当に一時的な誤魔化しにすぎない。オレがやったのは術式の一部改変で、憎しみじゃなくて『闘争心』を与えるようにすり替えただけだ」
精神とは潜在意識の一部であるため案外単純な側面がある。
感情の発露は一つずつ行われ、怒ることと笑うことは同時にはできないようになっている。これを利用して、違う感情を強く与えることで負の感情を抑えることができる。
たとえば鬱病の患者にひたすら肉体労働をさせると、それ以外のことを考えられなくなり自然と病が治っていくことがあるが、アンシュラオンがやったことも同じことだ。
煽って煽って怒りに意識を集中させておいて、その間に術式に干渉。憎しみという感情を闘争心にすり替えたのだ。だからあえてこんな物理系の大技を使っていたわけだ。
ただし、これは一時的なこと。問題の解決ではない。ガンプドルフも困惑した表情を浮かべる。
「それに何か違いがあるのか?」
「倒すことには変わりない。結果だけを見れば同じさ。でも、それじゃつまらないだろう? なんでもかんでも『あの影』の思い通りになるのは癪だからね。こっちはこっちの土俵でやらせてもらうよ」
アンシュラオンとガンプドルフの両者にはさまざまな違いがあるが、その最たるものが『武闘者』であるかどうかだ。
アンシュラオン当人が否定していても、やはり闘争を好む武闘者である。闘うこと自体に意味を見いだし、楽しむ戦闘狂なのだ。
その気質を分け与えられた女王は、やる気満々!
ガチンガチンッと顎を鳴らし、触肢を持ち上げて万全の戦闘態勢に入る。憎しみに囚われていないため周囲もはっきり見えており、さきほどよりも手ごわい相手となっているだろう。
ああ、馬鹿だ。大馬鹿だ。意味がわからない。
しかし、それもまたアンシュラオンの性質であり、魅力の一つ。リアリストでありながらロマンチストで、合理的でありながら無計画な快楽主義者でもある。
今、そうしたいからそうしただけ。それだけのこと。
「いくよ、おっさん。ここからが本番だ。女王を倒して全部を奪うよ!」
「まったく、君と一緒にいると今までの人生が何だったのかと問いたくなる。いいだろう、とことん付き合おう」
∞†∞†∞
アンシュラオンたちと女王蜘蛛との最終決戦が始まっていた頃、巡洋艦ナージェイミアは脱出のために上の階層に向かっていた。
完全に制圧したのは第二階層までだ。それ以外の階層には蜘蛛たちが残っているので安全ではない。騎士たちも甲板や外壁で魔獣たちと戦っていた。
「このままいけそうだな」
デュークスが甲板の上から周囲を見回す。
たしかに蜘蛛は厄介な相手であるが、女王や紅蜘蛛のような大型種や、カーエッジ等の進化個体が少なければ戦艦の戦力でも十分対応可能な相手だ。
そうでなければガンプドルフも戦艦の単独行動を許さないだろう。やはり戦艦は現時点で最強戦力の一つなのである。
「そうだといいがな。いつだって上手い話には裏があるものだ」
楽観視するデュークスに対して、マルズレンは慎重に周囲を注視していた。
「おいおい、やめろよ。本当に何かあったらどうするんだ」
「それは我々が選べるものではなかろう。物事の本質は不条理だからな」
「不条理か…」
デュークスもその言葉は否定できない。
もし世の中が不条理でなければ、そもそも自分たちはこんな場所にはいない。戦争にだって負けていないだろう。
そして、これが振りだったわけではないが、その不条理は彼らに牙を向く。
ドカン!と爆発音が聴こえると、唸るような振動が甲板を襲った。
それは一度ではない。次々と同じような爆発音がするたびに甲板が揺れる。
「なんだ!? どうした?」
「あそこだ。火が上がっている」
戦艦の真ん中あたりから火の手が上がっていた。
火は次第に大きくなり、渦巻く火炎へと変貌。周囲を焼き尽くしていく。
「魔獣だ! 魔獣が乗り込んできたぞ!」
炎の周囲にいた騎士たちの叫び声が聴こえた。かなり切羽詰っているようだ。
「また蜘蛛か?」
「蜘蛛にこんな力はあるまい。行けばわかる」
火の手の方角に二人が向かうと、そこには―――
「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!」
烈火の如く怒り狂っていたナムタムオーガ・グァルタがいた。
その手には『例の通信機』を抱えているが、肝心の赤子は『頭部がなかった』。
最深部であれだけのゴタゴタがあったのだ。女王蜘蛛と紅蜘蛛の争いか、あるいは戦艦の砲撃の時か。いずれにせよ、どこかのタイミングで巻き込まれたのだろう。残念ながらもう息絶えている。
「オ゛オ゛ブ゛オ゛ブ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!」
泣き叫ぶグァルタは、怒りと哀しみ、それ以上に強い憎しみに支配されていた。
今の彼は術式効果半分、本来の精神半分といった複雑な状況下にあると思われる。そうでなければ亡骸を抱えて泣き叫ぶことはしないだろう。
が、どちらにせよ憎しみに染まった目の色は変わらない。その怒りを人間にぶつける!
甲板に乗り込んだグァルタが豪腕を振り回し、手当たり次第に破壊を開始。止めようとした騎士たちもあっけなく吹き飛ばされる。
「あんなでかいの、どこから来たんだ? 第八階層は封鎖したんだよな?」
「そんなことは知らん。底にへばりついていたか、地下から迂回した可能性もある。それより甲板を壊されるだけでも最悪だ。潰すぞ」
マルズレンがグァルタに接近。素早い動きで相手の死角に回り込み、鋭い双剣の一撃で腕を突き刺す。
狙ったのは肩の付け根。豪腕が武器なのは見てすぐわかるため、相手の最大の特徴を奪おうとしたのだ。こんな混乱の中でも極めて冷静な判断である。
がしかし、人間ならば急所の一つであっても魔獣もそうとは限らない。
鬼怒獣の筋繊維、腱は極めて頑強で、そこらの鋼で造られたワイヤーロープなど及びもしないほどの強度を誇るため、あっさりと刃を受け止める。
「なにっ!」
マルズレンは対人戦闘は優れているが魔獣との戦闘経験は少ない。DBD騎士全般にいえることだが、ここでその弱点が出てしまう。
無防備なところに反撃の一撃。
「オ゛オ゛オ゛!」
グァルタの振り払った拳がマルズレンの顔面に直撃。吹き飛ばされ、甲板を転がる。
「マルズレン!」
「ごぼっ……くそっ……馬鹿力…め。だから脳筋は…嫌いなんだ」
マルズレンの左頬は砕け、
頭部を殴られたために足がふらつく。速さが売りのマルズレンにとっては致命的だ。
「てめぇ、よくもやりやがったな!」
お返しとばかりに、デュークスが大剣でグァルタを斬りつける。
グァルタは腕で剣を弾く。鬼怒天獣は皮膚も鋼鉄並みに硬いのだ。
ただしデュークスも大剣を軽々振り回す腕力の持ち主だ。圧し負けずに攻防が繰り広げられる。
「俺はマルズレンほどヤワじゃねえぜ!」
デュークスがグァルタの攻撃をいなすと、剣先が背中の床にまで触れるほど大きく振り上げ、一気に振り下ろす!
剣王技、
剣気を集中させた刃を渾身の力で放つ剛斬の上位技だ。特段属性は付与されていないが、因子レベル3で使える技の中では『物理耐性破壊』効果もある強力な技である。
その一撃はグァルタの肌を切り裂き、筋肉にまで到達する。
がしかし、やはり硬い。刃は骨に当たったところで止まってしまう。
「かってぇ! なんだこりゃ―――ぐぁぁああ!」
動きが止まったところにグァルタの左手から爆炎が噴き出し、デュークスを丸呑みにした。グァルタの『炎嵐招来』スキルである。
この炎は術式の一種でもあるため防御を貫通してダメージが入る。彼の全身鎧も数秒も経たずに真っ黒に焼け焦げてしまった。
そこにグァルタのパンチが迫る。
グァルタの身長は六メートル近くもあり、真上から叩きつけるようにデュークスの頭部にヒット。バゴンッと鈍くも甲高い音がして、デュークスの兜が破壊された。
「てめぇ……やってくれる…じゃねえか」
デュークスは頭から血を流しているものの、かろうじて踏みとどまる。グァルタの一撃に耐えるとは、さすが百光長である。
が、続けて放たれた蹴りには対応できず、鬼の強靭な足裏が腹に直撃。衝撃で鎧が壊れて吹っ飛び、マルズレンと同様に甲板に転がる羽目になる。
「げほっ…ごぼっ! なんてパワーだ…!」
「脳筋のくせに簡単にやられるな…馬鹿が」
「うるせぇ……お前だってフラフラだろうが。ちくしょう、なんだあいつは。普通のやつじゃないぞ」
「見ればわかる。しかもお怒りのようだ」
怒髪天を衝く、の言葉通り、グァルタの怒りは最高潮。その頭部の毛も見事に逆立っていた。
こうなった彼は敵を殲滅するまで止まらない。