「や、久しぶり……それで、まだドクターの役に立つつもりはあるかな?」
「ペッ」
「うん、潔くて好みだよ。じゃ、やろうか」
吐き捨てた唾をすげなく旗で払われる。ロドスに帰るつもりなど、毛頭ない……汚れの一つも付かぬ旗を構える彼女たちと、戦うことになったとしても。テンニンカの目の下の隈が懐かしい。だが、こちらとて退く気はない……!
「研修期間忘れちゃった? まさかあたしと戦う気があるとはねっ!」
「音楽性が違うのよ!
「ゼメンホフのバグパイプッ! 破城矛と共にッ!」
「角はどうしたのさッ! 折られたの? ははっ、もう骨の髄まで染められたんだねっ!」
飛び出したバグパイプの、戦装束が翻り……旗で破城矛を逸らされるという、絶技を見せつけられる。どう見ても相対的運動力から見るに彼女の分が悪いのだが……さすがはロドス過労死候補筆頭。熟練した旗捌きは、狂気の域に達している。
「テンニンカッ! その旗、何で出来てるんだべッ!?」
「あたしも知らないッ! パパに聞いてッ!」
「どこに居るんだべっ!?」
「そりゃ地底だよっ! 案内はしないよ、あたし家出中だしッ!」
連続して突きこむ破城矛の矛先が、ぶぅんと絡めとられて別の方向に。ドゥリン族の謎技術の集大成だとは思うが、なんで破れないのか不思議過ぎる。大将軍様は、今日も元気に矮躯を跳ね回らせて先鋒たる理想の動きを実現し続ける。……バグパイプのみだと、さすがに分が悪い。
「ジルッ!」
「私、戦闘業務は久しぶりだから期待しないで」
「二対一? あはは、燃えてきたねッ! おっと、マジで燃えてるッ!」
続いて放たれる焔も旗の旋回で逸らされた。大道芸どころか、ファンタジーじみた小説でしか見ないような現象。余裕綽綽に二人を捌くテンニンカ……だいぶ分が悪いが、
「二アールッ!」
「サリアッ! 出番だよッ!」
「やれやれ、まさかオペレーター同士で矛を交えることになるとは……ま、マリアは来てないよな?」
「副業先を失敗したな、二アール。規律から外れた者に、情けは無用……あの男のように、ブッ潰れてもらう」
お前の仕事を失敗させてやる……そう告げて人の将来に
「おいら、かなしい……破城矛と砲と盾、槍。おまけに剣槍……コレクションが増えるのはうれしい」
「ケーちゃんっ! ケーちゃんの巣はどこだべっ?」
「ドクターのベッドだよ。おいら、もう間違えないもん」
「ペッローはこれだからっ!」
「隊長の巣はどこだべっ!?」
「ご主人様のベッドよ、当たり前でしょ」
小粋なジョークを飛ばすバグパイプも、ちょっと頬に汗が滴っている。なんといっても彼女のアーツ、滅茶苦茶怖い。斧でもナイフでも槍でも、術だから逸らせぬ上にカタチが凶器そのもの。砲弾よりも兵士の恐怖を刺激する、近接オペレーターの天敵である。
「ちょ、ちょっと分が悪いけども。ゼメンホフのホルンッ! 砲と盾と共にッ!」
「無理はしないでくださいね、ホルン」
「お任せを。いざとなったらこのスイッチで」
「やめてください。何で貴女は僕の屋敷を爆破したがるんですか」
勇壮なるハルバードと共に前線に出る。ヤバくなったら全力で敵前逃亡をカマせばさすがに追ってくるまい……ド派手な花火をブチ上げれば、彼女たちの目を引けるはず。壮麗な館の破片の飛散範囲は、ざっと計算して半径百メートル……豪勢な砲弾として、私たちの未来に役だってもらう。
「真銀斬ッ!」
「嘘だろうっ!?」
「出るんだべっ!?」
「出ないよ、何言ってんの」
「真面目に避けたうちらがアホみたいだべっ!」
テンニンカならばありうる……二アールと共に全力で伏せたバグパイプが、苦情を申し立てるがどこ吹く風。ピンボールのような勢いで戦場をかく乱する彼女は、敵手の戦術の要である。そのとらえどころのなさは、ドクターと最も戦場を共にした戦歴の深さを示している。
「練習してたじゃないっ!」
「だってドクターが、テンニンカなら出来るって言ったしっ!」
「隊長、それで頭を抱えてたんだべっ!?」
私が出立前にドクターの部屋を訪れた時見たもの……ぶんぶんと、旗を鬼のような勢いで振るうテンニンカと後方師匠面で見守るシルバーアッシュ。二人があまりに必死コイて練習に励んでいたため、バグパイプに偽情報を渡してしまった。でも、私は多分悪くない。砲を構えて照準を合わせる。砲弾でデスヴォイスを上げさせてやる……!
「止まれ」
「ヒィィッ!?」
「おっと。これは恐ろしいお嬢さんですな」
「……何者?」
「悪い狼さんですよ」
翻る赤いコートに、反射的に悲鳴を上げてうずくまる。頭上で打ち合わされる金属音の響きが耳に痛い……おそるおそる顔を上げると、赤い死神と老執事がナイフとカトラリーを打ち合わせていた。ループスなのに、平気で彼女に対抗する姿……何でこの人、のほほんと当家の執事やってるんだろう。
「らちがあかねぇべっ! クローズドボルトッ!」
「無駄だ」
「フェイントだべ」
「何ィっ!?」
「うむ。烈陽よ、大地を照らせッ!」
戦線に穴を開けるため、バグパイプが薬莢を排出する。それに即応したサリアの全身が、カルシウムの甲殻に包まれるが……詐術の成功したバグパイプは、強襲したテンニンカの旗を弾き……さらに突き刺さる輝剣が、さらなる追撃を妨害する。彼女はわりと、悪辣な戦術を平気で使う……元は純朴であったはずなのに、誰に似たのだろうか。
「……三十秒。さ、死ぬべ」
「うおおっ!?」
「そのお綺麗な角付き首印を、ハンティングトロフィーとして寝室に飾ればきっとご主人様と隊長が悦んでくれるべっ……!」
「その調子よ、バグパイプ! いいリズム刻むじゃない!」
「やめてください、悪趣味です」
どががががんと、と重厚な盾をエイトビートで打ち鳴らすたびにサリアの長身が揺れる。短時間なら前衛並みの破壊力を誇る、我が自慢の部下が誇らしい。声援と共に、援護砲撃を加えることにする。砲を構えようとした瞬間に視界の端に映る、飛来する凶器の群れ。
「あついないふっ!」
「あの雌猫を思い出すわねッ! こっちはもっとヤバいけどッ!」
「なんですかあのペッロー! 滅茶苦茶怖いッ!」
「砲弾対処は慣れよッ! 私の後ろで40秒数えておいてっ!」
大盾使いで良かった……ガキンガキン叩きつけられる燃えるナイフの余熱は熱いが、守るべき者を守るのが重装オペレーターの真骨頂。このホルン、やせ我慢は大の得意である……でも40秒ってわりと長い。ケツに文字通り火が点いてきたが、まだ起爆には早い……! そして、旗が翻る。
「汝、おのが存在を……」
「ヤッバ……!」
「自らに問えッ!」
「やっぱり出るんじゃないのッ!」
「まだ一発だけね」
しゃりぃん、と鳴り響くどこまでも澄んだ音。がきんと弾かれる盾が、私たちの敗北を告げていた。未だ奮戦する他のペットどもには悪いが、もはやこれまで。起爆スイッチのケースを開き、いざ大爆破からの全力逃走と洒落こみ……
「そこまで。ご苦労様でした、皆さん」
「あっ、魔王様だべ。やべーべ、逆らったら獄中死させられるべ」
「お疲れ様でございますッ! 陛下ッ!」
「……へ?」
急に現れて耳をぴょこぴょこ揺らすCEOが告げた言葉に、破城矛を取りこぼすバグパイプと彼女の足元に滑りこんでドゲザをカマすご主人様。あっけにとられた私は、スイッチを押すことも忘れて唖然と立ちすくんだ。
◇◇◇◇◇
「つまりですね。全ては予定通りだったわけです」
「あの……アーミヤ? 怒ってないのかしら。私たち、だいぶ大胆に裏切りカマそうとしてたのだけれど」
「ええ、素晴らしい成果です……よくやりましたね、アステルくん。二アールさんは当初求めていませんでしたが……まぁ、加点対象でしょう」
「光栄の極みッ……!」
「ですが、事前報告が無かったのは頂けませんね……次から気をつけるように」
「申し訳ありませんっ! 仰せのままに致しますッ!」
応接間でソファーにゆったりと座るCEOと、その足元に跪き業務指示にはきはきとお返事をするご主人様。力関係が一目でわかる姿に、ちょっとこう……なんか納得できない。マジでどうなってるのこれ……何でヴィクトリアの辺境伯が、民間企業のCEOを陛下呼ばわりしてるんだろう。
「あの……ご主人様? 弊社のCEOと、どういったご関係で?」
「師匠と陛下は、末っ子で将来が暗かった僕に明るい道を開いてくださいました。うかつにも……安易に美人揃いのロドスに手を出した、父上と他の兄弟たち。彼らを過剰戦力で情け容赦なく蹂躙する姿……まさに魔王と呼ぶにふさわしい」
「やめておけと言ったのですがな……大旦那様と違い、先代様は相手の力量を計る力に欠けておりました。他のご兄弟もですが……初手ドゲザ屈服した若様以外は、雌ペット含めて根切りにされました」
この家の使用人が、やたらと少ない理由が判明してしまった。おかしいとは思ったのだ……辺境伯と言えば、その爵位は侯爵に次ぐ。畑仕事もメイド業務も、本来私たちが手を出す隙間などありはしない。きっと先代様とやらは、私たちと同じように雌ペットに業務を任せていたのだろう。そして彼女たちは当主ごと殺害された。
「やっぱり怖いべ……」
「おかげ様で当主となることが出来ました」
「あの……ご主人様? 肉親を皆殺しにされた恨みとかは?」
「弱い者が悪い。家訓にもあります……あとあいつら、少々低能に過ぎましたので」
一切悪びれず、家族を見捨てて自分だけ助かったことを誇るご主人様。うん……まぁそう。別に守る価値が無い相手なら、見捨ててもまぁいいだろう。大事な物だけ守れば良いのだ……私、もう軍人じゃないし。生き汚いのは親近感すら感じる。惚れ直しちゃいそう。
「若様の割り切りの良さも、素晴らしい美徳ですな」
「ディグが居てくれてよかったよ……僕一人だと、命乞いしても意味無かっただろうし」
「勝てぬ戦は嫌いではないですが……大旦那様に救われた命。無駄にするわけにはいきませんからな。このディガーナ、あと二代は仕えるつもりですとも」
残った使用人は、機を見るに敏だったこの老執事だけ。そして、それが大当たりだったのが彼の幸運である。先々代から仕える彼は、ご主人様を生かすメリットを一から十まで説明できた上に、当人の価値も素晴らしかった。たまにロドスで近代戦の心構えを講義したりしてるらしい。たまに居なくなると思ったのは、それか。あとこのジジイ、何年生きるつもりなのか。
「ディガーナさんは、戦闘経験が豊富ですから……サリアさんにも、後で教導をお願いします」
「ふむ。動きは悪くありませんでしたが……まぁ、バグパイプ嬢には色々仕込みましたからな。仕方なきことですが、陛下のお望みとあらば」
「道理で性格が悪いことをすると思ったら」
「隊長とディグさんが半々ってところだべ」
「そう。そこも貴女を評価しているところです、ホルンさん。ロドスには従軍経験のあるオペレーター……特に絡め手を自然にこなせる者は、希少なんです」
「そ、そう……」
お前は底意地が悪い。真正面から叩きつけられた賛辞の言葉に、ちょっと微妙な気持ちになる。軍人としては正しい姿なのだが……もっとうまい言い方は無かったのだろうか。しかし……当家がロドスの配下だということはわかったが、何故こんな迂遠なことを。
「だってホルンさん、貴女自身は気づいてなかったかもしれないですが……ショタコンですよね。ドクターの目は、オペレーターの全てを見抜きます」
「本人が知らなかった性癖までっ!?」
「ええ。当然でしょう? バグパイプさんのガチ百合だって、会った瞬間に分かったそうですよ。そのため貴女の救出を優先したんです。絶対に裏切らない配下、欲しかったですから」
「ドクター、マジでヤバいわね……」
「さすがは師匠……聞いてはいましたが、僕は最初半信半疑でしたよ」
「ああ、師匠ってそういう……」
謎の男の能力は、私の想像力の限界を遥かに突破していた。それも、なんかとんでもない方向に……首に手を回してくるバグパイプをあやしながら、さらに突っ込んだことを聞くことにする。こらこら、かわいいわねうふふ。
「でも、普通に紹介してくれれば良かったじゃない?」
「ロドスは婚活会場ではありませんので……ちゃんと意味はあったんですよ? ドクター♡」
『ああ、アーミヤ。我が弟子と四人は元気だな。安心したよ』
「一瞬で雌の声になったべ……CEOって、外面繕うのもうまくなきゃいけねーんだべな」
執事が運んできたプロジェクターに、投影された不審者の姿。ドクターは相変わらず、服装が妖しい。そして我らのCEOの、凛々しい声は一瞬で甘く溶ける……恋する彼女は、愛する不審者の前では形無しなのだ。この男、CEOを含め何人誑し込んでいるのか。
「四人って……私とバグパイプと、二アールと……そう言えばジルもそうだったわね。でもロドスで見たことないわ」
「ああ、角が無いと印象変わりますよね。リードさん」
「その名前で呼ばないで。今の私はジル……ジオルコフ。水辺の葦ではなく、ゼメンホフに生える葦」
「リード……?」
「まぁ彼女のことはいいでしょう。ドクター、見せてあげてください」
『ああ』
そして大写しのドクターがちょっと後ろに下がると……隠されていたものが明らかになる。白い二つの裸体が映し出されて、しばし私は言葉を失う。
『にゃぁんっ♡ にゃああんっ♡』
『どくたー♡ どくたーっ♡ ちんぽっ♡ ちんぽちょーだいっ♡』
『こらこら、待てだぞ……ほら、みんなに挨拶しなさい』
『『えへっ♡ ぴーすっ♡ ぴーすっ♡』』
黒髪の雌ペットと、金髪の雌ペット。二匹のにゃんこが四つん這いで嬉し気に画面を占領し、ドクターの股間に鼻を擦り寄せてちんぽねだりに興じていた。しかもすごく見覚えがある……一人は仇敵、もう一人は同僚。彼女たちは画面の中で誇らしげに鈴のついた首輪を見せびらかし、エロ蹲踞でチン目隠しWピースをキメていた。
「完全にキマった顔の猫が二匹いるべ」
「ま、マンドラゴラにシージッ!? シージはともかく、何であの雌猫がロドスにッ!? いやシージもなんで首輪が付いてるのっ!?」
「躾けるのに時間が掛かりまして……細かいことは省きますが、ダブリンの情報と、王室の情報。強情でしたので、ドクターに徹底的に堕としてもらいました」
「て、敵味方関係なく容赦が無さ過ぎる……!」
そしてベストから懐中時計を取り出す時間にうるさいウサギにして、
「だって……面倒じゃないですか。王位の正当性とか、大義とか。私、一刻も早くドクターとイチャイチャするだけの新婚生活に移りたいので……邪魔な者は容赦なく滅ぼします。味方も都合が悪ければ都合を良くします。ちゃんとロドスの本分を果たすまでは我慢するので、ご安心を」
「ま、魔王……!」
「ただの女の子ですよ。恋する雌ウサギと言い換えてもいいでしょう。それに……ちゃんと味方は都合を良くした上で利益を与えますよ? シージさんも、ドクターに媚びる幸せを与えてあげましたし……バグパイプさんも、目的をちゃんと達成しました」
「へっ?」
「ごめんね。隊長。うち隊長がどうしても欲しかったから……魔王様に相談したんだぁ♡」
「そ、それ……!?」
バグパイプが舌ペロしながら、取り出したのはアロマキャンドル。毎日私たちの寝室を包んでいた落ち着くフレグランス。そこに、何か仕込まれていた……!? まさか、マッサージの手つきがやたらとエロかったのも、寝相が悪かったのも……私は、部下の手の平の上で転がされていた?
「おかしいと思わなかったんですか? 幾ら貴女がチョロいショタコンで年増処女と言っても、限度というものがある。ロドスの薬学、舐めてはいけません……犬科にキマる発情キャンドル。効果は抜群だったようですね」
「も、もしかして二アールに盛ったクスリも……!」
「ロドス製だべ。事前に効果テストもばっちり。だべな、アーミヤ?」
「まぁラップランドさんもテキサスさんも、ブレミシャインさんも……臨床試験のせいでドクターのちんぽ狂いになりましたが。細かい問題ですよね。むしろ大好き♡ なドクターに捧げる、雌ペットが増えたので収支としてはプラスと言えるでしょう」
そして彼女は、ロドスと密接に通じていた。あんなにてきめんにキくはずだ……何といっても、ロドスはモルモットに事欠かない。執拗に、入念に配合したのだろう……魔王が愛する雄に貢ぐための、マゾ雌ペットたちの犠牲を通じて。これ、二アールが知ったらガチ泣きするんじゃないかしら。
「さて、私は忙しいのでお暇することにしましょう。ドクターが瓦礫の中でハメ潰してからというもの、白ウサギちゃんはちんぽねだりが激しすぎてドクターを凍傷にしかねませんし……頑丈なデカブツはマラソンの状況を見守る必要もある。遅いんですよね、あの人……まぁ娘がいる以上、逆らうことはないでしょうが」
「あ、アーミヤ? いったい何人犠牲にしてるの……?」
「さぁ? 数えていません。そうそう、ケルシー先生も媚薬樽の中から引きあげてあげないと。そろそろ過去のことは忘れて、ドクターにチン媚びしてくれないですかね」
「あ、貴女は……ガチで暴君ね。ちょっと疑問があるのだけど……ドクターを独り占めとか、する気ないの?」
彼女が立ちあがりながらぶつぶつと呟く言葉には、ドクターに対する狂気的な愛情が込められていた。誰も彼をも自分の都合だけで振り回し、愛する雄に貢ごうと試みるその姿は……どんなに狂っていても、恋する少女で。でもそれだけに疑問が残る。
「できませんよ。私だけだとすぐにハメ潰されちゃいます。それに……私は寂しがり屋なもので。私はね、ホルンさん。ドクターが最優先ですが、みんなにも幸せになって欲しいんです。幸せの形は私が決めますが……バグパイプさんをちょっと贔屓しちゃいました。なんたって似てますから、私たち」
「へっ?」
似ている? かわいいバグパイプと、このド鬼畜魔王が? そういえば、彼女は私をハメたのだった。あまりの闇のオーラに失念していた私の顎を、ぐいと掴む愛しい部下が顔を寄せて来る。その力強さと、瞳の色に私は一瞬で囚われる。
「隊長が悪いんだよ? 本当はうちだけの物になってくれるのが理想だったんだけど……駄目なら予備プラン。何を犠牲にしても目的を達成しろ。全部隊長が教えてくれたことだべ」
「演技派ですよね、バグパイプ……角と尊厳を犠牲にして、僕の物になってまでホルンが欲しかったんですねぇ」
「当然。なんたってうちは、もう角が無いけどヴィーヴルだもの。知ってる? ヴィーヴルの女は、泣かない、負けない、諦めない。欲しい物は絶対に手に入れるんだべ。言ったべ? もう二度と離してやらねーからな、隊長♡」
「あ、あはは……愛され過ぎて、辛い………んっ♡」
私を覗き込む、彼女の瞳に宿る色は……魔王に負けず劣らず狂った愛情に満ち満ちていた。私たちの奏でる
おわり