※この作品はR-18です。

アークナイツマゾ雌ドスケベ嬌声曲   作:デイジー亭

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優しい夜のソネット

「ふぅ……お貴族様の集まりはどうも肌に馴染まねーべ。やっぱ土弄ってるほうが、うちには合ってるべなぁ」

 

「バグパイプ嬢。精が出ますな……ロドスのオペレーターというのは、農作業にも堪能なので?」

 

「いや、私は元々農民なんで……ありがとうございます、ディグさん。……んー! お水がおいしい!」

 

 担いでいた鍬を降ろし、気の利く執事さんが差し出してきた果実水で喉を潤す。この充実感が堪らない……人はお日様の下で、農作業に励むのが自然な姿なのだ。さすが大貴族様のお屋敷……駄目元で探索して、家庭菜園とは言い難い規模のここを見つけた時は歓声を抑えきれなかった。

 

「なるほど。……ああ、私には敬語を使わずとも結構ですよ? 元々、冷や飯食いの次男坊なのでね。畏まられると、逆に恐縮してしまいます」

 

「お貴族様には変わりないと思うんですが……では、お言葉に甘えて。ディグさんは何でこのお屋敷で働いてるんだべか?」

 

「ふふ、そちらの方が自然でよろしい。うら若いお嬢さんとお話させて頂くと、若返る気分ですな……そう。大旦那様と出会ったのは、砲弾にフッ飛ばされて目を回していた時のことです」

 

「こりゃぁ本腰据えて聞かねぇとならねぇべ」

 

 執事服を寛げて、見せびらかす戦傷の深さと来たら……その顔に刻まれた皺よりもよほどに深い。王立前衛学校でも、戦史の時間だけは真面目に聞いていたのだ……歴戦の益荒男にその心身に刻まれた戦訓を聞かせてもらえるなど、このようなチャンスは逃せない。レジャーシートを拡げて、講義の態勢を整える。

 

「大旦那様は、それはもう雄偉なお方で……その振り回すハルバードの鋭さと来たら、戦場の断頭台(サー・ギロチン)と呼ばれていたほどです」

 

「お貴族様なのに、前線で戦働きしてたんだべか?」

 

「ええ。この領地は、ご存じの通り飛び地です……中央からの援軍が遅れるのが、常態化しておりますので。当主自ら矛を取るのが、習わしと化しております」

 

「うちの故郷とは、えらい違いだべなぁ……隊長も元お貴族様だけんども、だいぶ特殊だって聞いたし……あっ。これ言っちゃまずかったべか?」

 

「腹芸が出来ないというのも、兵士としては美徳ですよ……存じております。社交界に明るい軍人など、士官でもそれほどおりません故」

 

 やはり自分には、お貴族様の相手は難しいらしい。テーブルの下でナイフを握り、笑顔で横っ面を張り飛ばす。それが貴族のルールだと隊長から聞いてはいたが……農民よりもよほどに野蛮ではないか。とっつきやすいこの爺さんにも、隊長の素性はバレていたらしい。

 

「食えねぇお人だべ。ループスなのに狸みたい」

 

「長く貴族にお仕えしていると、腹も黒くなるのですよ……それにほら。だいぶ色褪せましたが、私は元々黒狼なのでね」

 

「ループスにも白髪とかあるんだべか……」

 

「ありますとも。寄る年波に勝てるのは……まぁブラッドプルートぐらいなものですな。そうそう、ブラッドプルートと言えば」

 

「お爺ちゃん、どんぐらい経験豊富なんだべっ!?」

 

 先だけが黒いしっぽを振りつつお話してくれる、このお方はだいぶ侮れない。サルカズの中でもブラッドプルートとの交戦経験のある兵士など、お目に掛かったことがない……これを聞き逃せば、一生後悔する。わくわくとしっぽをぶんぶんしながら、うちは学生時代に戻ることにした。隊長には悪いけど、好奇心には勝てないのだ。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「うう、スカートがすうすうする……」

 

「……我慢して。じきに慣れる」

 

「貴女はスカート長いのにッ!」

 

「人には人の、事情というものがある」

 

「納得いかないわ……」

 

 陰気なメイドに窘められて、格差社会に対し異議を唱えるも無駄。些か自分より背の高い彼女は、それ以上口を開く様子が無い……部下が張り切って農作業に勤しむ中、自分だけが何もするわけにはいかない。だが……自分は兵士になる前はか弱いご令嬢。彼女ほどの働きをするのは無理だと一瞬で悟らされた。

 

『隊長、腰が入ってねぇべ』

 

『どうしてそんな勢いで耕せるのよッ!?』

 

『腰の遣い方がコツだべ』

 

 耕運機が如き勢いで、地面を掘り進める彼女。こちらをチラ見しながら、へっぴり腰を注意する余裕すらある……破城矛より、砲と盾の方が重いはずなのに。その細腕が見せる耕し性能は、常軌を逸していた。いかん、このままでは沽券にかかわる……そう思い他の仕事を打診したところ、求められたのはメイドだった。

 

『ホルン嬢は貴族社会について、知見を持っておられるようですからな。若様にアドバイスをして頂けることも、期待できましょう』

 

『おかしなことを吹き込むとか、考えないのかしら……』

 

『何、騙されたらそれまで。良い授業料と言えましょう……かわいい子は先陣で敵の首級を上げるまで戦場から返すな。家訓にもあります』

 

『ゼメンホフ家、厳しすぎないかしら……』

 

 適材適所ではあるのだろう。以前国の歴史で学んだ、野蛮なる獅子の王家の風習。それを遥かに上回る鬼畜難易度を押し付けられる、彼には確かに……硝煙の香りを漂わせる側付きが必要かもしれない。だがしかし、しかしながら……スカートが短すぎる。普段身に着けるタイトスカートと長さは変わらないが、ひらひらする分ひやひやする。

 

「文句を言っても始まらない。……ループスって、ディグのお爺さんみたいに潔い物だと思ってた」

 

「ぬぐっ……!」

 

「たまに狂ってるのが居るけど」

 

「ラップランドと一緒にしないでもらえる? アレはループスの中でも例外よ」

 

「……ごめん」

 

「わかってもらえればいいのよ……んん?」

 

 何か今、おかしくなかっただろうか……あのテキサスの胃を痛めるばかりか、ドクターにすら困ったちゃん認定される狂狼について共通認識を得なかっただろうか。問いただそうにも、すたすたと歩み去る彼女はばたんと扉を閉めてどこかに行ってしまった。まぁ……彼女の表情は読みにくい。覗き込もうとすると、灰髪がばさりと視線を遮るのだ。

 

「サブラって、あんなに気難しい……わね」

 

 レンジャーのお爺さんは例外だが……他はだいたい気難しい。真面目な兵士然とした12Fはともかく、同じ大盾使いとして交流を深めようとした探検家はコミュニケーションが壊滅的だし……そもそも人前に姿を現さないのまでいる。わりとアレが、標準なのかもしれない。

 

「仕方ない。切り替えていきましょ……バグパイプを見習って」

 

 何せ彼女、戦場に立っている時と普段では口調まで変わる。あの凛々しい姿はとても頼もしいのだが……日常生活では、だいたいだらしのない笑みを浮かべてこちらを嬉しそうに眺めている。ロドスで再会する前より、オフの時の甘え加減が増しているのは……多分、私が刻んだ傷痕故。

 

「……しっかりしないといけないわ、ホルン。二度と部下にあんな想いをさせるもんですか」

 

「ホルンさん。表情が厳しいようですが」

 

「ひゃぁっ!?」

 

「うわぁおっ!?」

 

 唸りを上げる剛腕を、ダッキングで避けられた。追撃のためステップインをしようとしたところで……自らのしでかそうとしていることのマズさに、態勢が崩れる。さらには鍛錬のため腕と脚に巻いたウェイトが、文字通り盛大に脚を引っ張った。小さな身体を押しつぶす、わりと友好関係に悪影響を与えそうな行いをする駄目な私。

 

「も、申し訳ありません閣下!」

 

「いてて……ジルより重いとは……失礼、女性に対して無礼な物言いでした」

 

「いえ、私が全面的に悪いので……ッ!」

 

 悲鳴を堪える。紳士的な少年に、これ以上の無礼を働くわけにはいかない……例えおしりの下に非常に硬い感触を感じようとも。何と言っても思春期なのだ……それにしたってちょっと、大きすぎないかしらこれ。殿方のアレとか、一向に関わりなかったけどもちょっとサイズ感がおかしいというか……いかん、すぐに退かねば。

 

「あっ……す、すいません。あまりにホルンさんがその……魅力的だったもので」

 

「い、いえ……お年頃ですものね。私は気にしていません……改めて、謝罪させていただきます。申し訳ありません、閣下」

 

「お恥ずかしい……僕は少し、その……成長が些か、人より早いようで」

 

 お互いにぺこぺこ謝るが、顔が熱い……この無骨で硝煙臭い、戦傷だらけの身を魅力的に感じるなどと。そのようなこと、初めて言われた。しかも……ズボンを押し上げるそれが、明確にお世辞ではないと告げている。ここは、戦略的撤退するが吉……!

 

「つ、次の業務に向かわせて頂きますッ!」

 

「あ、ホルンさんっ!?」

 

 破城矛に乗ったバグパイプよりも、勢いよく逃走しようとして失敗。加重トレーニングは、これからちょっと軽くしよう……思いつつ私は顔面からコケた。頬に感じる感触が柔らかいことに安堵しながらも、恐る恐る背後を見ると……呆然とこちらを眺める少年の喉がごくりと鳴る。

 

「……白」

 

「……ッ!!!!」

 

 ぱぁんと、そのりんご色のほっぺたがさらに赤く色づいたことを誰が責められるだろうか。……実際責められなかった。むしろディグさんに、回避行動をとらなかったことを咎められてしょんぼりする辺境伯閣下を見せつけられ、私の罪悪感は加速した。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「バグパイプ……年頃の男の子って、みんなああなのかしら」

 

「閣下はだいぶ特殊だべ。うちの周りの男の子はみぃんな、鼻垂らしながら虫とか追いかけてたべ」

 

「そ、そうよね……あの方は特殊事例よね。……その。半ズボンの子とかは居たかしら」

 

「居たけんども……どうしたんだべ? 隊長。いつもよりだいぶおかしいべ」

 

「いつもおかしいみたいな言い方は、やめてくれるかしら」

 

 ……顔の火照りが収まらない。いぶかし気に見てくるバグパイプの視線が痛すぎる。まさか……あんな少年に、男を感じてしまったなどと。そして、それを隠すために雇い主をド突いたなどと。とても言えぬ失態である……バレたが最後、自分の頼れる隊長としての地位の失墜は間違いない。

 

「あー……そうだべ。そういや良い物をもらったんだった。隊長、アロマとか好き?」

 

「下水の香り以外なら、なんでも好きよ」

 

「完全にトラウマになってるべ……かわいそうな隊長。このフレグランスで癒されて欲しいべ」

 

「あら……いい香り」

 

 彼女が得意げに取り出した、キャンドルに火を灯すと……部屋に拡がる、微かな香り。すんと鼻を鳴らすと、鼻孔に優しく滑りこむ。どこかで嗅いだような……ひどく嬉しい気分になる香りである。何かの花だろうか……ループスの鼻には、強い香りは辛いけれど。このぐらいの、微かな香りならば心地よい。

 

「ディグさんから貰ったから、大丈夫だとは思ったけど……隊長にも合うようで、安心したべ」

 

「同じ種族だものね。嗜好は合うはずだわ……ありがとうバグパイプ。少しばかり落ち着いたわ」

 

「ついでにマッサージもしてあげるべ……隊長、そこに寝て」

 

「あら、お願いしようかしら……あー、そこそこ。キクぅ……」

 

 ぐいぐいと背中を押されると、えも言われぬ心地よさ……彼女はやたらと人なつっこいためか、わりと多芸である。指圧についても、仲の良くなったほかのオペレーターから教わったのであろう……しばしその指遣いを楽しんでいると、指がするりと移動していく。

 

「んふー……満足してもらえて良かったべ。お客さん、ここはいかがでしょうか」

 

「最高……毎日やって欲しいぐらいだわ。なんて、ちょっと贅沢かしら」

 

「隊長にお願いされたら、なんでもしてあげたくなっちゃう……こうして触ってると、安心するよ」

 

「バグパイプ……」

 

 いつも明るい声が、わずかに暗さを帯びる。撫でさする指は、自分の存在を確かめているようで……あの時彼女が最後に見せた表情。歯を食いしばり、決して命令に反するものかと……何もかもをも飲み込んだ、兵士の表情。……もう二度とさせたくないけれど、多分同じ状況に置かれたら。

 

「側に居て、隊長。うちはもう……寂しいのは、いや。ロドスのみんなと居ても、音が足りなかったべ」

 

「バグパイプ……ケツを揉むなッ!」

 

「あひんっ」

 

 しおらしい声で同情を誘いながらの……丹念なレズセクハラ。気を逸らして下半身を執拗に揉み込むその陽動戦術に、この歴戦のホルンが気づかぬわけがない。この娘はまったく……気を抜くとすぐにボディタッチが激しくなる。頭をぱぁんと演奏して、さらにこやつを奏でてやることにした。

 

 ◇◇◇◇◇

 

「すぅ、すぅ……」

 

「…………………」

 

 ……寝られない。好きなだけ食べられる上質な料理に、広い浴場でののんびりとした入浴。さらに良い香りを嗅ぎながらの丹念なマッサージに、寝る前の適度なバグパイプシバき。臭く汚い下水道で、空腹と戦いながら固い地面に寝るのとは違い……これ以上望むべくもない環境。でも、目が冴えて眠れない。

 

「ふがっ……むにゃむにゃ。えへへ、たいちょぉ……」

 

「んっ……こら、バグパイプ……」

 

 原因はいくつかある。……まずはふにゃふにゃと、だらしない寝顔を見せながらそのボリュームたっぷりの肢体を擦り付けてくる部下。いつものように、にこにことベッドの中に潜り込んできた。そのはだけた寝間着の胸元から覗く、深い胸の谷間。私は一向にノーマルなのだが……そこに腕を挟まれると、変な気を起こしてしまいそうだ。

 

「ぜったい、離さないべ……んふー」

 

「そんな顔されると、引きはがせないじゃない……んっ」

 

 そして……二度とは離さぬとばかりにしがみついて来ているのは、上半身ばかりではない。むちむちとした太腿が絡みつき、私の身動きを封じて。みじろぎするたびに、悲しそうに眉をひそめる甘えんぼう。いつもなら構わないのだが……今日は、少々マズい。

 

「んふっ……んー。すぅすぅ」

 

「こ、こらぁ……♡」

 

 彼女が長い脚を動かすたびに、くちゅりと鳴ってしまう微かな水音。恥ずかしくて紅い髪に顔を埋めてしまう。同性の部下に、寝相で無邪気に股間を擦り合わされてショーツを濡らしてしまう我が身のはしたなさ。原因はきっと……久しぶりに、女として見られてしまったから。

 

「んぅー? ふふっ。すぅ……」

 

「ま、まったく。人の気も知らないで……すんすん」

 

 髪から感じる柑橘類の香りに、少しだけ落ち着きを得ていると……鼻からそっと逃げていって、あどけなく笑うその笑顔。この娘に縋りつかれている状況で、まさか自慰に興じるわけにもいかない……そして、あんまり嗅ぐと起こしてしまう。しかたなく、ぴすぴすと部屋を包むアロマの香りを楽しむ私なのであった。つらい。

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