コミュ力おばけと幼馴染(♀)がイチャコラするだけの話 裏 作:百合好きの獣
本編同様、こっちもスランプでした。
裏カルテ二人目です。
ちょっとしっとり、えっち少な目。ご了承ください。
坂柳有栖は、一人、自室のベッドの上で思案に暮れていた。
思い返すのは、今日の一幕。
突然胸に痛みを覚え蹲ってしまった坂柳は、顔を真っ青にした天白に引きずられるようにして保健室に連れ込まれ、そこからあれよあれよという間に、学内にある医療施設へと運ばれた。
坂柳は元々先天性の心疾患を抱えていた。それは一人の天才外科医によって取り除かれたのだが、それでも何があるか分からないのが病である。
緊急搬送された坂柳は精密検査を受け、問診を終えた後、現在の坂柳の主治医からこう言われた。
『これは恋の病でしょう』
『コイノヤマイ……? それは、何かそう呼ばれている心臓病などがあるのしょうか?』
『いや、普通に好きな人にドキドキする感情の事です』
『……え? へ?』
『お話を整理しましょうか。まず、学校の活動で特定の人物の事を考えると、鼓動が早くなると』
『は、はい』
『それで今日、頭を撫でられたタイミングで、胸に突然キュンキュンとした締め付けるような痛みが走り、苦しくなったと』
『はい』
『それはね……恋だよ』
『へ……?』
坂柳の心臓は何も異常が無かった。術後の経過も良く、健常者と何ら変わらない綺麗な心臓をしていたそうだ。
悪いのは心臓ではなく、そんなことで緊急搬送された坂柳の今後だった。これから先どんな顔をしてあの病院へ通えばいいというのか。これまでのハンデもあり、定期的に顔を出さなければいけないというのに。
いや、それはいい。良くはないが、まあヨシとする。
問題は、その恋の病とやらの相手である。
「百合……さん……」
名前を呼び、姿を脳裏に浮かばせるだけで、胸がとくんと高鳴る。
かゆくて、熱くって、疼くような気持ち。
なるほど、それは確かに恋なのだろう。
天白百合。
坂柳有栖の人生を救った恩人の、一人娘。
そして坂柳の親友。
聞いたらふわふわとする、はちみつのように甘い声も
ころころと変わる、愛らしい表情も
ふとした瞬間にみせる、慈愛に満ちた微笑みも
ここ最近見せるようになった、色気のある雰囲気も
何もかもが、坂柳の胸をときめかせた。
いつからというのは問題ではない。いつのまにか、坂柳は天白百合という少女の虜になってしまっていたのだ。
「ふふ……初恋、なのでしょうか……」
坂柳にとって、恋した相手が同性であることについては、驚きこそしたもののそこまで問題視することでもない。
なんせ、普通の恋愛ですら経験も知識もないので。この抱いた気持ちが恋だというのであれば、そうなのだろうと納得をしている。
ただし。
「初恋は実らないというジンクスは、本当だったようですね」
つう、と坂柳の瞳から透明な雫が尾を引いた。
天白百合の隣には、どう考えても付き合ってるとしか思えない幼馴染が居る。
困った事に、その幼馴染も坂柳の親友なのだ。
たとえお互い付き合っていないと否定していても、はたからみれば相思相愛にしか思えない。
そこに割り込むことなど、坂柳にはできなかった。
「……百合さん」
胸の疼きと同時、下腹部が熱を持ち出した。
恋と自覚した途端にこれだ、坂柳は浅ましいとは思いつつも、目を閉じて片手を胸に、そしてもう片方の手を股間へと伸ばした。
「ん……♡ はぁ……♡」
薄い胸の先端は敏感で、人差し指でひと掻きしてやれば甘い刺激が走る。
指の腹でカリ、カリと服の上で掻きながら、股間へと伸ばした手も動かした。
「あっ……♡ ふ……♡」
一人遊び――所謂自慰行為というものを坂柳はこれまでしたことがなかった。
したことはなかったが、興味はあった。
読書を好んでいたので、中学時代になんの気もなしに取ってみたものがそういった性描写をばっちり描写していたのだ。官能小説ではなかったので、事故なのだが。
その小説で自慰行為を知ったものの、当時は心臓に負担をかける行為は厳禁であった為、試したことはなかった。
そして今、その禁止は解かれ、坂柳は心の内から湧き上がる性欲――ムラムラとした気持ちに逆らわず、一般に性感帯である胸の先端と、大事な部分――秘所を覚束ない手付きでいじり始めた。
初めて自分の手で触れてみると、僅かにくすぐったいような、しかし背筋にぴりりとした電流が走る不思議な感覚だった。
明確に気持ちいいわけではないが、イケナイコトをしているという背徳感によってもたらされた興奮で、徐々に坂柳の吐く息が荒くなってくる。
「はぁ……♡ はぁ……♡ んっ……♡ 百合さん……♡」
興奮に身を任せ、目を閉じて自分の世界に籠もり、想い人の名を呼ぶ。
頭の中で生み出した想像上の天白に優しく囁かれ、自らの大事な部分を触れられていると想像しながら、坂柳は夢中になって指を動かし敏感な部分を刺激していく。
「あぁ……百合さん……♡ 百合さん……♡」
「……なぁに?」
ああ、ついには想像の中の天白が声を発してくれた。
想像だというのに、まるで本人かのようにそっくりな声音は坂柳を一層昂ぶらせた。
「すきっ……♡ 好きです……!♡ 百合さん……♡」
「……うれしい。わたしも、有栖ちゃんのこと、好きだよ」
「はぁっ……♡ あぁ……♡」
妄想の中の天白はこちらが望んだ声をかけてくれた。
たまらず、坂柳はある欲求を口にする。
「百合さん……っ♡ キス……♡ キスしてください……♡」
「……ん。わかった――ちゅ」
「んちゅ……♡ ん?」
自らの唇に触れた、柔らかくて甘い感覚に幸福感を覚え――違和感も同時に覚えた。
妄想の中の天白にキスされたにしては、やけに生々しい感覚というか、まるで現実で実際にしたかのような感触ではなかったか?
坂柳はそっと目を開けた。
こちらを覗き込んでいた天白と目が合った。
「はぇ? ……へ?」
『なんで百合さんが目の前にいるのでしょう』と、坂柳の思考がフリーズした。
天白は固まってしまった坂柳を見て、こてんと首を傾げてこう言った。
「……あ、どうぞ。続けて?」
「………………………」
天白が目の前にいる。
視線を動かしてみれば、ここは自分の部屋の中。試しにほっぺたをつねってみれば、ちゃんと痛い。つまり現実。
なるほど。これは現実で、今目の前に居る天白はご本人様。
ということは、つまり。
「……………きゅぅ」
「有栖ちゃんっ!?」
坂柳は卒倒した。
◇
「……落ち着いた?」
「ええ、その……大変お見苦しい物をお見せしてしまい……」
坂柳は割とすぐに回復した。
正直そのまま記憶も失って欲しいところだったが、残念な事に坂柳の優秀な頭脳はばっちりと記憶をしていた。
オナニーしている姿を見られてしまった。しかも、想い人に。
気まずいなんてレベルじゃない。穴があったら入りたい、いや、無くても掘って埋まってしまいたいほど坂柳は羞恥を感じていた。
「えっと、その……あぅ」
言いたいことはたくさんあるのに、聞きたいこともいっぱいあるのに、恥ずかしくて口を開くことも出来ない。
それを察したのか、天白はゆっくりと立ち上がると、坂柳の背後へと回り優しく抱きしめた。
「……勝手に入ったのは、ごめんね。けど、心配だったから」
「えぅ……」
「……そしたら、有栖ちゃんがひとりえっちしてて、ちょっとびっくりしてたら、わたしの名前が聞こえたから」
「はぅ……っ」
「……わたしのこと、好き?」
「っ……!」
言いたいことはたくさんあったが、その一言ですべて吹き飛んでしまった。
「……好き、です。好きなんです……百合さん、貴女の事が……」
「……ん、嬉しい。わたしも」
「でもっ貴女には桔梗さんが――へ?」
待ってほしい。
天白は今なんと言っただろうか。
好きという言葉に対して、私もと答えた。それはつまり、告白が成功したということではないだろうか。
今にして思えば、あの妄想の中の天白だと思っていた存在は本物であるので、先程唇に触れた感触もまた、本物であるということ。
ということは、つまり。
「ゆ、百合さん……」
「なぁに?」
「その、今、えっと、私達は、その……恋人になったという認識で良いのですか……?」
「……うん。これから、よろしく」
そういうことらしい。
坂柳としては何が何やらという状況ではある。
「あ、あの……百合さんは桔梗さんとお付き合いされているのでは……?」
正直思いが叶うとは思っていなかった為、坂柳は結ばれた喜びよりも疑問が勝る。
以前坂柳が天白に対して同じ質問をしたところ「幼馴染である」との回答が返ってきた事があり、それによって坂柳の幼馴染という関係性の認識が歪められた経緯があった。
そのこともあって当初は櫛田と天白が恋仲ではないと思っていたのだが、ここ最近状況が変わってきたのだ。
これまで積極的にフレンズを増やしていた櫛田だが、その業務を――業務? を同クラスの橋本に引き継ぎ、フレンドネットワークの構築を一時引退したのだ。
それは葛城、坂柳にも既に相談されており、本人曰く一身上の都合とのことだったが葛城も坂柳も「やっと付き合ったか……」と事情を察していた。
はずだったのだが。
「……そのことで、言わなければいけないことがある」
天白は語った。
数か月前、天白と櫛田は結ばれた。恋人同士となった。
それは確かに、坂柳の予想通りではあったのだが、そこからちょっと困った事になった。
天白は一部では妖怪とも呼ばれるレベルで、奉仕することが脊髄に染み込むほどのお世話焼きだ。
人を喜ばせ――あるいは、悦ばせる事を至上の喜びとする奉仕の奴隷だ。
そんな天白に、これまで『恋人じゃないから』という理由で守っていた一線を踏み越えさせてしまったらどうなるか。
恋人は、言ってしまえば肉体の交わりが――言葉を選ばなければ、SEXは切っても切り離せない。手っ取り早く、かつ深く愛を確かめられる行為がそれなので。
もちろんそういった事をしない、または滅多にしないプラトニックな関係というのも大いにある。
しかし天白も櫛田も花も恥じらう思春期の女子高生。そういった事に興味を抱いていたし、当然の様に肌を重ねた。
その結果、産まれちゃったのだ。
性癖を植え付けてしまうレベルで人を悦ばせる事に関しては天賦の才を持つ天白に、性技を覚えさせ、悪魔合体させた結果――
恋人を喜ばせて悦ばせてアヘらせるサキュバスが。
産まれちゃったのである。
これには櫛田も苦笑い。連日連夜、息も絶え絶えになる程よがらせられてしまい、一時主導権を握るという快挙を成し遂げたが、それによる報復が意識を失うレベルの快楽を津波の如く与えられてしまえば堪らない。
そこで櫛田は天白に対してとある話をした。
今後、もしも天白を好きだと告白してきた人が居たら――そして、それが櫛田も認める人物であれば、交際する人数を増やしても構わないと。このままでは自分の身体が持たない……というわけではないが、学業に支障をきたしてしまうと。
櫛田は予想していた。
天白が恋人が出来、また性経験を積むことによって色気が出てきた事を。
そしてこれまでは良き友人だった人物が、その色気によって感じていた好感を友愛から恋愛対象へとベクトル変換してしまう可能性があると。
ちなみに第一候補は堀北で、次点で坂柳、そして一之瀬が櫛田の予想していた『サキュバスに魅了されてしまう候補』だ。今回、案の定坂柳がやられてしまった。
それを聞いた坂柳としては、何が何やらである。
やはり付き合っていたかと思えば、パートナーを枯らしてしまいそうであり、シェア出来る人を探していたという。
喜べばいいのか、それとも怒ればいいのか。坂柳は経験が無い為、その判断が付かなかった。なので、聞いてみる事にした。
「その……百合さんはそれでいいのですか……?」
「……それ、とは?」
「事情は、まあ……理解……えっと、ええ、理解……したとして。百合さんは、その、恋人が複数人というのは」
同性で恋人というだけでマイノリティである。そこからさらに複数人の恋人を囲うというのは、はたしてどうなのだろうか。坂柳には、分からなかった。
天白は少し考える素振りした後、口を開いた。
「……わたしは――」
そこで一度口を閉じ、まっすぐに坂柳を見る。
「……わたしは、有栖ちゃんの事が好き。有栖ちゃんがひとりえっちしてた時……それで、わたしの名前を呼んでたのを聞いた時、すごく……嬉しかった。でも、桔梗ちゃんも好き。ずっと昔から。二人の内どっちかなんて選べない」
「そう……ですか……」
坂柳はきゅっと目を瞑り、考えた。
はっきり言って、天白の言っている事は到底世間に認められる事ではない。
同性愛自体には若干寛容になりつつあるとしても、複数人の恋人を持つ事も含めてしまった場合、途端に理解を得られる事ではなくなってしまうだろう。
考えるのは、父親の事。そして、自分の気持ち。
相手は同性で、しかも、結ばれたとしても他にもパートナーがいる。
果たして、父親は悲しむだろうか。そう考えて――坂柳は決心した。
「……百合さん……好きです。私の、恋人になってください……」
朝露に濡れたスミレのような、艶やかな瞳が天白の姿を捉えた。
世間に認められない? 父親がどう思うか?
知った事か。
それらを天秤にかけた上で、尚自分が天白に向ける恋慕の感情が大きいと、坂柳は自覚した。
「……喜んで」
天白はふわりとした笑みを浮かべ、坂柳の唇に自身のそれを重ねた。
次回へ続く。
前置きが長すぎて本番が出来なかったので、次は全編ぐちょぐちょにしてやります。
天白が櫛田と一線を越えた世界線。
サキュバスと化した天白を櫛田一人では抑えきれず、潜在的に天白に恋しそうな気配を感じ取った櫛田が打った一手はまさかの蕩し御免状。
これでこころおきなく手籠めに出来るようになりました。