……戦争は終わりました。虚しさのみを残して終わりました。前回から続けてお送りします。署長さんの死を伝えられたみんなは……泣いています。当然ですね……
「彼が死ななきゃならなかったのか……?」
「こんなのってないよ……」
「彼のような善人が死ぬなんて……あんまりでござる……」
そりゃあ泣きますよね……私も泣きましたもん。
「……みんな、悲しいよね……もちろん私だって悲しいよ」
「……ねぇ。なんであなた……泣いてないの?」
>……え?
ホモくんだけは泣いてません。真っ先に泣いてそうなのに……
「なんで……一番真っ先に泣きそうなのに……」
「まさか、悲しくないってのか……? おい、守男!!」
>……違うんだ……悲しいんだ、凄く悲しいよ……でも、泣き方がわからない……昔、仲間が死んでその度に泣いてたのに……なんで今だけ泣けないんだよ……!?
……もう、泣くことすらできないか。戦争のし過ぎです。本当に涙が枯れてしまった。虚しい死を沢山見てきたから……その度泣いてたら、キリがないから。もう泣けないようになったんだ……残酷ですね。
「……泣けなくなったの? 戦いすぎて?」
>泣けない……涙が出ない……どうして……なんでだよ! こんなにも、こんなにも悲しいのに……
「戦争って、こんなに酷いの……? せっかく人は滅ばなかったのに……戦争に勝ったのに……誰も幸せになってないじゃん……!」
戦争なんてそんなものですよ、かなたん……仕方ないんです。ただ、あの光景を子供に見せるには、余りに虚しすぎただけで……
>……署長さん、ごめんなさい……悲しいよ、なんであの人が、死ななきゃならないんだよ……! 俺はなんで、泣けてないんだよ……畜生、畜生!!
「……なんで、こんな虚しい結果になったの? 誰が悪いの!? 魔王? 私? 他の誰か!?」
>……悪いのは人間だよ。人間が誹謗中傷をしたから、戦争を始めたから……誰か一人を裁くことは出来ない、人間は悪だからな……
余りに虚しい答え。19歳の男から飛び出してはいけない現実。幸福な嘘は、もうつけない。仮面は砕かれてしまったから……今あるのは、吐き気を催す真実のみ。あぁ、無情。
「そんなこと言わないでよ……昔みたいに、面白い冗談言ってよ……場を和ませてよ!! 真実しかないなんて……悲しすぎるよ……」
>……戦争に関しての嘘のつき方がわからない。他のことなら、幾らでもつけるんだがな……
「なんで……なんでなのら……!?」
目の前で見せられたから、嘘はつけない。今更正義の味方にはなれない……魔王の言葉を聞いたあとじゃ、とても……
>……頭を冷やす。じゃあな……
「待ってよ、まだ怪我が……消えた!?」
「そんなに速くは走れないはずなのに……どうして?」
ホモくんは……走ってますね。血の代わりに、オイルが出ています……ここにはいられないから。
>……ふぅ。ここまで来ればいいだろう……魔王を殺して、魔王軍を殲滅して……な~んにも、残らなかった。みんなは泣いてる、貴重な善性の人が死んだ……俺も、何一つ変わってない。この戦争は……『無』だ。何も変わらない、これからも人間は悪だし、誹謗中傷の被害者は増える。戦争だって……また、始まる。そうなったら……駆り出されるのは、実力のある奴だ……俺だな。彰人くんだって……みんなだって……きっと。
戦争自体が、そういうものなんです。参加した人間は何一つ変わらない。変わるとしても、それは『死』という変化だけだ。何の意味もない死を遂げるだけ。命の有意義な使い方なんて出来やしない。
そうでないなら……フィオル国と、ラミア国の兵士達は、民達は……あんな死に方はしなかったはずです。融爆だって、きっと使われなかったはずです。現実がそうなんだから……否定は絶対に……できない。これが現実で、真実だ。
>……これが現実ってわけか。戦争が終わって、帰ってきても……虚しいだけだ。勝利の喜びも、敗北の悔しさもない……あるのは、虚無感だけ。
悲しいけど……仕方のないことです。虚無感は戦争をしやすくする……人間はそれを理解しているんです。だから、戦争をし続けると何も感じなくなる。終わった後も虚しくなる……
>あの時と何にも変わらないな……融爆で戦争が終わった時もそうだった……こういう気持ちだったなぁ、俺だけが生き残ったんだ。
嫌でも、吐き気を催しても戦って、勝つために努力してきたのに……それが全て水泡に還して、守っていた国は消滅……虚しくないはずがありません。
『フィオルの猿共め……!!』
>……フィオル国も同じようなことを考えてたのか? きっとそうだな、そうじゃなきゃ、あんな兵器使えるはずないもの。ラミアの猿は絶滅しろ、ってか?
愚かですね……同じ人間なのに。悪人が相手の悪に過剰報復を行う。悪人同士の戦いに望まれるのは、『勝利』ではなく『同士討ち』なのに。大量殺戮兵器は、間違いなく間違った手段です。
>……あぁ、そうか。俺はラミア国の人間じゃ、なかったから……ラミア国の人間も、フィオル国の人間も、俺も……悪って点では変わらねぇのに随分とバカバカしい理由で生き残ったもんだな。生き残ったから嬉しい、家族の元に……なんて、俺にはできないのに。なんだ? カミサマはそんなに俺を流賛と干満の元に戻したかったのか? その方が面白いから? ……全く面白くない気がするんだがな。演技しかしてないし、途中から学校に行ってすらない。望んでたものが少しも提供されてない……これが映画ならぼったくりもいいところだな。ブーイングまみれで暴動が起こるぜ……
私も最初は驚きましたよ、ホモくんの様子がおかしいと思ったら……ホモくんが意味わからんスキル覚えて、詳細を知るために過去を見て……それで吐いて……どんどんホモくんは傷ついて、最後にもハッピーエンドはなかった。ホロメンには絶対見せられませんね、誹謗中傷の現実、あっちを見ても人間は悪、こっちを見ても悍ましい正義の凶器……なんだこれ。
>……そんなつまらない映画の主演の俺も、絶対地獄に行く。なんたって、正義の味方を殺しちまったからな……魔王も、勇者も、あいつらの方が主人公だ……俺はそれを阻む悪い敵。もしもプレイヤーがいるなら、何回も負けてコントローラー投げてるかな? それとも、もう俺を殺してクリアしたかな? 俺はどういう死に方をしたんだろう……死ぬ時って、人はあっさりしてるからな。普通に斬られる? ハンマーで潰される? ビームで消し飛ばされる? あそこで俺が銃を撃てない? そうなったら人間は絶滅するんだが……こんなに虚しくて、署長みたいな人ばかり死んでいくと……そういう考えが浮かんじゃうな。あーダメだ、今のでまた天国遠のいた……
また戦争の話を……最早、これは現実の話ですね。何ら現実と変わりがない。戦争が長引いて人が狂い、それを見せられた人が精神ダメージを負う。大量虐殺兵器で戦争が無理矢理終わらされて、虐待は止まらなくて……誰も助けてくれない。
演技で『普通の人間と同じように』美味しいと感じて、眠って、性欲を持って……心にもない笑顔を浮かべて。それも崩れて、悪いことは連鎖する……今度も誰も助けてくれないから、殺し合いをして……最後に正義は勝てずに死ぬ。そして、終わったあとはただ虚しい……現実と、なにも変わりません。
>そもそも、人間がハッピーエンドになる権利があるのかな? 何かを犠牲にしないとハッピーエンドはない。けど、ハッピーエンドではみんな不気味なくらい、ニコニコ笑ってる……現実と違いすぎるだろう……いや、現実じゃ絶対無理だから、ハッピーエンドを求めるのか? きっとそうだな、創作でまで現実見たくないもんな……だったらこれはクソゲーだ、現実見る以外ないもん。
裏付けの徹底された戦争の現実。目を背けていたものも、頭の中に無理矢理捩じ込まれる。人間は悪であること、自分も悪であること……誹謗中傷に戦争に、人間の汚さ……全部濃縮して、プレイヤーの脳内に直接注ぎ込む。インフィニティシステムは、それがやりたかったのか……
>人間のハッピーエンドには、絶対に犠牲が伴う。全員がハッピーエンドで幸せってことは、絶対に有り得ない……もしも仮にそれがあるなら、そこは人間のいない場所だ。一番ハッピーエンドから遠い生物は人間だからな……だって、一度ハッピーになったとしても、自分達人間の中の悪で、簡単に幸せが崩れてなくなる。人間自体が悪だから、悪から逃れられないんだ……
勇者が平和にした『魔王がいない世界』は、その勇者を巡って戦争を起こして、すぐ平和でなくなったわけですしね……いつ、戦争の火蓋が切られるかはわからない。明明後日かもしれない、明後日かもしれない、明日かもしれない、何なら今すぐかもしれないんです。
この世界の勇者は絶望して、魔王に手を貸したわけですし……もし今の現実に、『世界を救う勇者』がいたとして、本当に人間を守ってくれるでしょうか? 私は少なくとも……この世界と同じになるように思います。勇者を巡って戦争を起こすところまで、完全再現で。
>さてと……そろそろ、軍人としてお仕事するかな。出てこいよ……
……へ? どういうこと?
>出てくる気はないか。なら……喰らえ!!
「がっ……」
「ぎゃっ……」
なんだお前!? どこの誰だ!?
>……お前らフィオルの兵士だろ? 俺を殺したいのか? 融爆のことがバレるかもしれないからか? 署長さんを殺したのもお前らだな?
「さぁ、な……?」
>……ビンゴらしい。俺が教えちまったから……知らない方がいいこともあるんだな。ごめんなさい、署長さん……
あの一般市民も、フィオルの差し金……? 騒動に紛れれば、特定は有耶無耶になるからか。流石は国だな、なんでも知ってやがる……本当に今すぐ戦争の火蓋が切られるとは。平和っていつ崩れるか、本当にわからないものですね。まだ、ホモくんはまったく幸せになってないのに……!!
>……まだいるな? まとめてかかってこい……!
銃弾が飛んできました、ですがホモくんはもうその場にいません。
「な……」
>……
「げぁ……」
豆腐のように切り裂かれ、その場に倒れていくフィオル国の軍人達……命が散って、代わりに赤い華が咲き乱れる。それは戦争の象徴にして始まりの合図。人間が作り出す悲しみと憎悪の造花……その名を『血』といいます。いつも通りそれを被り……なお、華が咲き続ける。
>……さっさと吐くんだな。嘘をついたら殺す。
「……ぐぅ、あ……フィオル国は……ネットで広まった事実により、世界的地位が落ちていっている……国連の調査により、無条件降伏は嘘であったことが判明。正義を得た国々が、さらに世界的地位を落とすために、触れることがタブーとされていた、戦争犯罪の裁判を行おうとしている……これは報復の準備だ、お前が反撃したことを戦争の火種にする気なんだよ……戦争に勝って多額の金と、国の土地を奪い取って見せしめにする気だ……こんなこと二度とするな、ってな」
>……また正義か、これ関係は本当にロクなことが起きないな。今まで無視しといて、白々しさここに極まるだ……
やはりネットか……誹謗中傷やネットリンチが横行する、身近なこの世の地獄。これじゃあ、
ジャスティーを殺した意味がない……ホモくんが火種にされるとは……満州事変と同じようなものですかね? いや、第一次世界大戦が近いか?
「終わりだ……お前は軍人を殺した。フィオルはでっち上げで戦争を起こす……お前も終わりだ、フィオル国には融爆がある……全部消えちまえ、祖国フィオルに栄光あれ!! ハッハッハッハ!!」
>……っ! そうか……! くそ!!
ドォォォォン!!
自爆した……証拠は掴ませないってか? 監視カメラがあるから、身の潔白は証明できますが……それにしても、酷いですね……人気のない公園とはいえ、血塗れです……ホモくんが歩くと、血に足が沈んで水音を立てています。
>また、戦争が始まる……ピンチになったら、奴らは十中八九、融爆を使うだろう……不本意だが使わせてもらおうか。俺の立場を……
ホモくん、どうする気だ?
「守男、探したよ!? って……なにこれ!?」
>……話すと長くなる。
「また殺し合い? 魔王軍……じゃあ、なさそうだけど」
それから、ホモくんは知った全てを話しました。フィオル国のことや、ネット情報のこと。報復しようとしていることも……
「そんな……せっかく、平和になったのに……」
「また戦争するの……? そんなことして、何になるの?」
>フィオル国は自分達の立場を戻せるぞ。あと、誰も自国を攻めなくなるな……羅譜殲滅戦争は、ラミア国側が仕掛けた戦争らしいが……今度は、フィオル側が仕掛けるわけか。世界はどこが戦争し出すかわからんな、本当に。
終わったばかりなのに……平和がもう崩れ落ちる。ハッピーエンドが砕かれる……人間の作ったものは、人間にしか砕けないんですね。平和の弱点は人間、命の弱点も人間です。
「始まったら、どうなるでござるか?」
>ホロライブ学園は軍事力増強の目的がある。間違いなく、全員が徴兵対象だろうな。学園でたっぷり訓練と学習をしてるんだ、言葉通りの即戦力さ。俺なんか、特に……伍長だってことがバレたから、戦争になったら前線に立たされるだろう。
「……ホロライブ学園に来たせいなのら……あいつらが、行けなんて言わなきゃ……!」
そうですね……全ての元凶は間違いなくアイツらです。全ての元凶すら、魔王ではなくただの人間。しかも『弱者』だ……魔王だって、奴らがホモくんにマスゴミの攻撃や、誹謗中傷を差し向けなければ、今頃幸せに暮らしていたはずです……人間の一番の敵はやはり人間。悪くて非道な魔王も、世界を滅ぼす化け物も現実にはいません。
敵は人間、自分も含めて敵なんです。周りの人間が今すぐ敵になり得る、ネットの誰かが敵になり得る、自分自身との戦いは終わらない。それを放棄した瞬間、浦下やルサンチマン夫妻のような人でなしに成り下がるのですね。
生まれてから1秒たりとも、私もホモくんも視聴者さんも、戦いをやめたことなどないのです。戦わなければ生き残れない! って、フィクションの話じゃないんですよ? そして、平和でいたいなら、いつでも殺し合える準備をしておかなければならないのです。殺し合いを止めるのはやはり『恐怖』しかありません。第19回でホモくんが言ってましたが……優しいだけじゃ、大人にはなれないし、生きてもいけない。この世界は残酷です……本当に。
「吾輩達は、徴兵令をしないための『犠牲』というわけか……」
>正解だ、伊達に何億年も生きてないな。これ魔王にも言ったんだがな……敵を止めるには恐怖しかない。あの国は強いから攻めないでおこう、あいつには勝てないから挑まないでおこう……それでしか人間は止められないのさ。まぁ稀にそれがない、俺みたいな奴がいると、厄介極まりないわけだが……とにかく、フィオル国に『戦争を仕掛けたことを後悔させる』以外に方法はない。俺達は結局、少数と多数、どっちもとることはできないんだ。フィオル国の人々という少数を切って、世界という多数を戦争の恐怖から守るしかないのさ。みんな、わかるだろ? 組同士の抗争だってそんなもんのはずさ。
「……そうだけどさ……」
今回、今のところ現実から離れてる要素が0なんですけど……大丈夫ですか? これ、本当にゲームですよね? 操作効かないし……
「……今度殺し合いをしちゃったら、守男がいなくなっちゃう気がする……死ぬんじゃないけど、そんな気がするんだ……そのままの、優しい守男でいて欲しい……もちろん、死んじゃったらやだし」
>……保証はできんな。俺は軍人だし、それ以前に人間だ……体は脆い。そうでなきゃ、俺の腕と足はこんなことになってない……俺はもう一回、人の心を捨てて、殺し合いをする……果たして、戻ってこれるかどうか……まぁ、努力するよ。
「それじゃダメ……ボク達が無理矢理にでも元に戻すから。ぶん殴ってでも戻してあげるから……だから、命だけは助かってね」
インフィニティシステムはなんでこれを学習したんだ……? 戦争と現実、誹謗中傷……そうか、インフィニティシステムが学習したのは、人間だったのか……人間の汚さを全部学習したんだ。それで人間はそういうものだ、と思って……世界をその通りに『補正』した。だから人間がとんでもなく汚いんだ……
「……守男はこれからどうするの? 今すぐ戦争が始まるわけじゃないんでしょ?」
>……俺は不本意だが、魔王を倒して世界を平和にした英雄……とか言われてる。あと暗い過去で同情を集めてるようだな……まぁ、十中八九『同情してあげる私って優しい!』の道具にされてるだけだとは思うが。ともかく、それを利用させてもらう……まぁ、見ててくれよ。俺はやれる事をやる。みんなも覚悟を決めておけ……じゃあな。
「……何をする気なのでござるか?」
その後……ホモくんは、テレビに出演していました。オファーが大量に来ていたようです……そして、ワイドショーにて。ホモくんが取り上げられていました……
『伝説の英雄、緊急会見!』
『大事な話があります、マスコミの皆様、お集まりください……との声明が昨日未明にあり、記者会見が開かれています……あ、堀川守男さんがいらっしゃいました! 熱狂的ファンがスーパーチャットを投げています!!』
『守男くん! 結婚して!! ¥50000』
凄まじいスパチャの量です、同じような内容のスパチャが大量に飛び交ってますよ。昔の私なら、一緒になって投げようとしていたかもしれませんが……もう、する気になれませんね。
>皆様、今日はお集まりいただきありがとうございます。今回は日本全ての人達にお話がありまして、こうして記者会見を開いている次第です。
『英雄さん、大事な話とは!?』
>……この国に、未曽有の危機が迫っています。インターネット掲示板などで話題になっている戦争の真実は本当です。それを知ったフィオル国の上層部が、日本に戦争を仕掛けようとしているのですよ。これは全て本当の話です!!
英雄という立場を使って、突拍子もない真実を信じさせる……こうでもしないと、世界の人は信じません。民意とはそれだけ揺らぎやすく、また強大な武器なのです。民意の掌握のため、如何なる手段でも使う……例えそれが、憎き親が行っていた行為と重なるとしても……手段を選んでなどいられない。
『な、なんと!? とんでもない事実が告げられました!! 英雄はそれを突き止めたというのでしょうか!?』
『それは一体どこで、どう知ったのですか!?』
>フィオル国が私に刺客を送ってきたのです。なんとか倒し、情報を聞き出したところ……この事実が判明しました。その後、軍人は自爆しましたが……これもフィオル国の命令だと思われます。戦争はもう始まっているも同然なのです!!
わざと不安を煽る。民意の反転を避けるために……どれだけ民意が傾きやすいかを知っているから、手段を選ばず民意を固定する。そこに綺麗事を挟む余地はありません……ホモくんはそれをよくわかっています。
『ど、どうすりゃいいんだぁ!?』
『俺達はおしまいなのか!?』
>ご安心ください、戦争が始まろうとも……この堀川守男が、命に変えても日本に手は出させません! 必ずやフィオル国を下し、世界に平和を取り戻してみせます!!
自分達は平和を取り戻す正義の味方である、それを英雄が言った……人を殺せる一番の凶器、『正義』に火をつけるには十分です……使えるものはなんでも使う、吐き気を催すほど邪悪でも使わなきゃ、みすみす消せるリスクを消さないことになる……
『う、うぉぉぉー! 守男! すごいぞ!!』
『英雄が、我々を守ると宣言しました! 勝利は確定したも同然です!! 英雄こそ世界を救う、唯一の希望です!!』
『守男! 守男! 守男!』
……正義の麻薬、配布完了。これで万が一にも民意が揺らぐことはなくなりました……脅威は取り去った。あとは、戦争が始まるだけです……ホモくん? 終わったあと、どこに……!?
>ごぉうぇぇぇっ!! ぐあっ、があ゙ぁぁぁっ!!
吐いてる……正義を使ったのが、余程精神にきたようですね……使わなきゃいけなかったんです、時間はかけてられない……こうするのが一番手っ取り早いんです。どこまでも現実を見たから、この手段を使った……英雄になりきることで。
>くっ……これで、いい……民意は、固定した……全面協力が得られるはずだ……民意が敵に回った時ほど、厄介なことはない……何度もやられたから、よくわかる……民意は国すら動かせるからな。
……大嫌いな民意でも、使わなければならない。使いたくないというのは、私情だから。ホモくんのあの言葉に嘘はない……
>……私情は二度と持ち込まん。俺は……使える物はなんでも使うし、殺せる時に殺す……それが軍人で……戦争なんだ……甘えるな!!
また、ホモくんの戦争が始まる。ホモくんは一生、戦争から……正義から解放されないでしょう。英雄として祭り上げられて、きっと死んだ後も盛大に祀られる……魔王のことは悪として、踏み躙って……自分達が何をしたのかは、すっぽり抜け落ちている。こんな邪悪そのもののような人間でも……使わなければならない。自分の心を殺して……
>たっぷり利用されてくれよ……世間様……!!
どこまでも、無慈悲に。
>……待たせたな。
「あ、守男さん! こんにちは!! 今日はよろしくお願いしますね!! 今月のバトルロワイヤル、ゴタゴタしてるせいで中止になっちゃったけど……来月に向けて!」
>……あぁ。
彰人くんがこっちを見ています……約束のトレーニングですね。
「始めましょうか!!」
>じゃあ、これつけて……
「うっ、ぐ……ま、負けないぞ……!!」
そこから、ホモくん流人間卒業訓練が始まりました……
>……休憩しようか。
「まだ、いけます……!」
>すごいな、彰人くん……
彰人くん、凄まじい根性があるようですね。それは立派な武器です……
「うぅ……まだ、まだぁ……!」
>あとちょっとだ、頑張ろう。
「はいっ!!」
走り終わり、筋トレを終えたあと……模擬戦の時間です。バトルロワイヤルと同じシステムを借りて、戦闘訓練を行います。
>……どこからでもかかってきていいぞ。
「……っ!!」
>やるな……筋がいい。早いし正確だ……
使っている武器は、拳につけた硬いグローブ。装飾がついていて、強そうです……地面が割れてるので、強そうじゃなくて強いですね。
「アイスナックル!!」
>……殴った部分が凍った? 魔法が使えるのか?
「はい、でもすごく弱いのしか使えなくて……でも! こうやって纏わせて使えば、威力の増強になるので……必殺技なんです!!」
いつも太陽みたいにニコニコ笑って、向上心があって……彰人くんが主人公であるべきな気がしてならないです。ホモくんはどこポジションだ? 師匠か?
>……すごいな。俺には真似出来ない強さだ。
「そんなことありませんって!!」
>……甘い。
後隙を狙ってメガトンパンチ、これは決まったか。
「……ふっ!!」
>なに……読まれていたのか?
「でぇいっ!!」
なんと、彰人くんは体を捻って避けました。炎を纏った拳がホモくんの顔に炸裂……
>……強いんだな。尊敬するし……その明るさが羨ましい。
「え……」
>悪いな……俺の勝ちだ。
効いていないようです……まぁ、苦痛無視入ってますからね……彰人くんの胸に、剣が深々と刺さってます。勝者、堀川守男。そう出て、仮想空間が消えました。
「……まだまだダメだな。ダメージすら入らないとは……」
>十分すごいさ。これから強くなっていけば、きっと俺だってすぐ超えられる……次の世界最強は君だ。
「言い過ぎですよ、守男さん……!」
彰人くんは照れています……どうしてこんなに強いんでしょうかね?
>……君はどうして、そんなに強いんだ? 俺は知っての通りだが。
「……守男さんみたいに、特殊な生まれってわけじゃないです。家庭がすごいわけでもなく、混血ってわけでもない……最初は弱いまであったんですよ? あの時虐められてたでしょ? そこを助けてもらったんですから」
>覚えてる。あの時から君は強かった……事実、あいつに勝ったじゃないか。
殴り合いでは、絶対に彰人くんの勝ちでしたもんね。
「でも、その後は守男さんに任せきりで……それが情けなくって。俺、猛特訓したんです……なんとかここまで追いついたけど、壁は高いですね……」
>……君ならすぐ登れるさ。だから……俺みたいになるな。普通に生きて、いい人がいたら彼女も作って……普通に死んで欲しい。俺はとても、まともな死に方をしそうにないからな。
そう言って、諦めたように笑うホモくん……反転する民意。それが死因だと思っているようです。ホモくんは有名人になり過ぎた……アンチが殺しに来ることだって考えられる。
「……ねぇ、守男さん。魔王と勇者は人間なんて絶滅しろ、って言ってたんですよね? それを否定できないって……走りながら聞きました」
>……あぁ。つまり、俺は正義の味方を殺した。だから、ロクな死に方はしない……それだけさ。
「……言っていいのか、わかんないですけど。俺も一回、虐められてた時……心の底からそう思った時があったんです。人間なんて消えちゃえ、自分含めて……人間がいるから誹謗中傷も戦争も止まないんだって」
……驚いた。こんな子が、そんなことを。
>……魔王と同じ考えに至ってたのか。
「はい……お恥ずかしながら。でも思い直したんです、それだったら……自分の大好きな父さんや母さん、おじいちゃんにおばあちゃんも死ななきゃならないのか……って思うと、それはやだなって思ってね。不公平でしょ、自分の家族だけ生きてていいだなんて……だから、やめました。自分勝手ですよね……だから俺もその考えは否定しませんし、できません。でも……自分の家族が死んだら嫌だから、戦います。そういう時に、大事なものを守りたいから、強くなりたいんです……身勝手な理由ですよね? すいません」
>そんなことはない……最高にいい理由じゃないか。自分の家族が大事なら、きっと優しい人達なんだろ? 大切にするんだぞ……俺は、そんなの1人もいなかったから。大事なものがあるなら、何に変えても絶対無くすな……もしかしたら増えるかもしれないから、その時はそれも無くさないようにしろ。もし、ひとつでも無くしたら……立ち直るのは難しいぞ。
彰人くんは、かっこいいですね……人間って結局そういう理由でしか戦えないんですよ。英雄は、そういうものです……やっぱり、ホモくんは英雄の器じゃないんですね。悲しいけど……
「俺、頑張ります……みんなを守るために! 俺は友達も大事ですから! もちろん、守男さんも! きっと守男さんより強くなって守りますよ、男ってそういうものでしょ?」
>……そうだな。かっこいいよ、彰人くんは……彼女とか、できるといいな。絶対できると思うよ、俺は。
「は、はい……できれば欲しいなぁ、本当にできればでいいけど……」
年頃の男の子らしく、顔を赤らめてますね……まるで演技してた頃のホモくんを見ているようです。きっとできますよ……なんならホロメンと付き合うかもしれません……それから時は経ち。戦争の時が来た……ホロメンのみんなもいます。
「総員、準備はいいな。フィオル国の宣戦布告が行われた……目指すは勝利のみ! 行くぞ!!」
「……正義に基づいて、ってか?」
>……仕方ないことだよな。士気は大事だもの。
戦争が始まり……きっとまた、これが終わってもまた戦争は始まります。それが人間ですからね。彰人くんは最下位だったので、戦争に来ても殺されるだけだと判断されて、弾かれたようです。でも、その方がいいですよね……ルーナ姫も、お菓子の国は戦争に関わらないということで、非干渉を貫いています。当たり前ですね……
「……わかってたけど、気分のいいもんじゃないね」
>躊躇うな、やるしかないんだ。
「うん……」
これからも戦争の連鎖は続く……永久に。英雄として、ホモくんは苦しみ続ける。状況は変わらない、人間が人間である限り。
>……なっ、やめろ!! 捕虜に何してやがる!?
「正義の鉄槌ですよ、いいでしょ!?」
「え、あ……」
>見るな! 帰ったら軍事裁判だぞ、お前ら!!
虐殺も、終わりはしない。人間は悪だから。そして、戦争が終わったあとも。
「……虚しいでござるな」
>……わかったろ?
「また、これは起きるんだよね……本当に嫌になる」
ただ、虚しい。だって、人間が起こした戦争だから。
『正義の勝利! 日本は勝利した!!』
「……なんでパレードなんかやるの?」
>また戦争するための下準備だよ。
祭り上げられる対象が、また増える。民意に命を握られた対象が……
「……おかえりなさい、守男さん!!」
>……あぁ。
「俺、守男さんがいない間に強くなりましたよ! お願いします、勝負してください!」
希少な善性が、眩しい。善性は希少すぎる、だから魔王は人間絶滅を掲げたのだ。きっと、どこかで今も第2の勇者が、魔王が生まれている。第2のホモくんだって、どこかにいるかもしれない。だって人間は、悪だから。
>……もう感情もなくなってきた。もう、怒りも悲しみもない……最早あるように振る舞うのも、難しい。俺は死ぬのか? ……怖い? 怖いって、どんな感じ方だっけ?
「守男さん、早く!!」
>……わかった。今行くよ……
また、被害者が増える。ホモくんの感情が、消えていく……希少すぎる善性に、それを見せぬように。せめて、君だけはそのまま善性の人でいてくれるように。あの世の署長に恥ずかしくないように……
『臨時ニュースです、突如エルダ国のライフラインが破壊されました。エルダ国はこれを隣国ユーラン国のせいだと発言しており……』
>……また戦争か。
『続報です、事実であることが判明しました。戦争状態になることが予想されます』
終わることは有り得ない、人間が人間である限り……
>トロフィー『人間の悪』を獲得しました。
またプラチナトロフィー……このデータでは、無理ですね。ホモくんにこんなことは、絶対に
できません……それに、私の精神的にももう……悔しいですけど、トロフィーは諦めますかね……皆様、ここまでご視聴ありがとうございました。機会があれば次の機会にお会いしましょう……では。
ハッピーエンドはありません。ご愛読ありがとうございました。