※この作品はR-18です。

この世界はENCROACHという名前のエロゲ?らしい   作:PPB

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第一章 第1深度
第一話 腐蝕の海


 

 

 

 

 この世界がどういったものか、簡単に記しておかないといけない。私がこれを忘れるようなら、元の世界に帰るなんて不可能だから。

 

 大地の約一割が【腐蝕の海】と呼ばれるものに蝕まれ、腐蝕の海に呑まれた場所から魔(・)物(・)が這い出てくる世界。

 私達は魔物が出てくる世界をか(・)つ(・)て(・)【ENCROACH】と呼んでいた。Encroachとは侵食の意。つまりこの世界において腐蝕の海は正常な大地を侵食してゆくものである。それをみんなは、まだ知らない。私だけがその真実を知っている。

 

 ここまで書けばそれとなく察しはつくだろう。私は転生者と言うべき存在だ。曖昧な物言いになってしまうのは、私にその記憶がほとんどないからだ。保持するべき記憶だけを保持し、私はこの世界で生きてきた。覚えているのはふたつ。元の体が男であること。そして【ENCROACH】……すなわち、この世界についての大まかな記憶。

 だから、私はこうして日記を書いて残しておく。いつ重要な事を忘れ、思い出すことも出来ずに死んでしまうか分からないのだから。

 

 この日記が他者に渡るとき、私は生きているのだろうか? 死んでいるだろうか? 私は怖い。死ぬのが恐ろしいのではない。あの腐蝕の海の中で永遠を過ごすのが恐ろしいのだ。

 腐蝕の海の中は言うに及ばず、冒涜的な悪神の潜む世界だ。その世界の中で生きる事はつまり、奴らの仲間入りをする事に他ならない。私はそれが恐ろしい。だが私は今日も、海の中に潜っていく。

 

 私がこの世界を脱する手段があると信じる限り。

 

 

 

 ──兄が回収していたらしき日記の一部より抜粋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はカタリナ。家族を亡くした。五人家族であり、みんな冒険者だった。両親は腐蝕の海に姿を消し、兄は帰還するも錯乱して自殺。姉は両親の足跡を追うように消えていった。私だけは歳が離れた末っ子であったから、冒険者にはなれなかった。

 16歳の誕生日を迎えた今日この夜。私は冒険者になるべく、家族の遺品を手に決意を固めるのだ。

 

 最大の用意を終えて家を出る。既に深夜だ。食料といくつかの雑貨品。そして腰にショートソードを吊り下げ、いつでも戦える格好だ。私が戦うことができないということを除けばだが。

 

 家族を亡くした私はある場所に向かっていた。それは冒険者達が登録されている、いわゆるギルドと呼ばれる場所だ。私もそこで登録して、冒険者として腐蝕の海へと潜るつもりだ。

 酷く錆び付いた蝶番に支えられる扉を開き、建物の中へと入る。中は仄暗く、壁掛けのランタンが数少ない光源であった。その明かりに照らされるように数人の人々がテーブルへつき、酒をあおるように飲んでいる。一番奥のカウンターには、受付をやっているだろう男がちびちびと酒を飲んでいる。彼は私を一瞥すると、目的を尋ねた。

 

「……ん? 客かい。こんな夜にどうしたね?」

「腐蝕の海に潜りたくて」

 

 私が受付の男に言うと、その男は私の発言を聞いて笑う。コケにするような笑い方に私は神経を逆撫でされたような感覚を覚える。

 男は一頻り笑った後、グラスに注がれていたエールを飲み切り、自分の笑いを無理やり終わらせて真顔に戻り、私を指さして苦言を呈する。

 

「……あーあ、笑わせてもらったぜ。やめときな、お嬢さん。お前なんかが腐蝕の海に向かったところで、どうせ孕み袋になって終わりさ。わかるか?」

 

 言われなくともわかっていることに辟易としながらも、適当に相槌を打つ。私はこの男に対して純粋な苛立ちを覚えるものの、表面上は冷静に立ち振る舞う。冒険者になるにはトラブルがあってはいけないからだ。

 私が冒険者になりたいこと、そして腐蝕の海へ潜りたいこと。そのふたつを端的に、分かりやすく告げる。

 渋々だが承知してくれたらしい受付の男は、嫌そうに羊皮紙とインクに浸された羽根ペンを渡してきた。記入する部分が多い。

 

「そこに名前と年齢と住んでる場所、家族の名前、それと海に潜る目的を書きな。ホントは嬢ちゃんみたいのを登録するなんてのはやっちゃあダメだが、熱意は無下にはできねぇ。人手が足りんからな」

「……ありがとうございます」

 

 人手が足りないのは知っている。さっきこの男が言っていた【孕み袋】、それが関係している。女の私からこれを言うのははばかられるが……理由は知れないが、魔物の中には人間の女性の体を目当てにする存在がいるらしい。逆に男性はどうなるかといえば、当然の如く殺され、食事となるのだが。

 女性は生きていられるから助かっているかと聞かれれば、そうではない。むしろ人ならざるものに心身を穢され、正気を保つことなど間違いなく不可能だ。殺された方がマシだろう。

 

 羊皮紙に記入しながら思案する。私はあの腐蝕の海に潜って何をするのか。何が出来るのか。

 目的は明白だ。海(・)へ(・)潜(・)り(・)腐(・)蝕(・)を(・)止(・)め(・)る(・)。

 ただの噂に過ぎないが、一説では腐蝕の海の最奥部には、腐蝕を産み落とし続ける腐れの女王がいる。それを殺す事で、腐蝕の海の進行を止めることができるのではないか、という説だ。

 侵食するのであれば、それの根源がある。それを断ってしまおうという者が提唱する説だ。これを世間一般的には元凶女王説と呼び、そして最もポピュラーなものだ。

 もうふたつほど説がある。ひとつは、完全に侵食してから元に戻す事で世界を浄化するのが目的だという浄化目的説。もうひとつは、腐蝕の海の中にいる人々の肉体や遺骸から産み落とされているのではという死体増殖説。そのどれも有り得そうであるという事からか、現在この三つが説として有力視され、その為かは不明だが提唱者の派閥同士が頻繁に争っている。

 ちなみに私は元凶女王説の支持者だ。書き終えた羊皮紙を提出する。新聞を読んでいた受付の男は私と羊皮紙を見る。

 

「……できた? ん〜………お前、家族がいねえのか」

「両親も年の離れた兄姉も、2年前腐蝕に飲まれて消えました。私はそうならないつもりです」

「ふーん……あ、そう。 まぁ理由については聞かねぇよ。どうでもいいしな。だがこれだけは知っておけ。腐蝕はお前を歓迎しない。魔物に愛されようが、腐蝕だけはお前を殺そうとする。海は恐ろしい場所だ。まして目的が女王殺しとあれば、尚のことだ。使えるもの全部使って、利用できるもの全部利用して、その挙句死ぬ。そのぐらいの覚悟でいとけ」

 

「肝に銘じておきます」

「じゃあ、あばよ。二度と会うことはないだろうな」

 

 扉を開け、ギルドを出ていく。ギルドとは登録所でしかない。死ぬだろう冒険者も、活動を続けるだろう冒険者も、ここに戻ってくることはほとんどない。あそこで酒を飲み交わしていた冒険者達は、運良く生きて帰る事ができ、かつ心折れ、もう立ち上がることもできない者達だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 ギルドを出て、向かう先は腐蝕の海だ。海までは馬車が通っている。ギルド員を運ぶための馬車が、一日に二回走るのだ。私の来たこの時間帯は、ちょうど馬車が来る時間であったらしい。

 

「あいよ。18メル、丁度。はいやっ!!」

 

 私以外に乗ることの無い馬車を走らせて、御者は馬を操る。その間私は荷物の整理を進めていた。

 

 腐蝕の海という世界において食料は調達できないものと考えた方が良い。だから馬車には普段から大量の保存食が積載されているし、冒険者各位も食料品の残量に応じて帰還しては補充し、再度潜りに行くという方法でしか調査を行えない。

 

 私のバッグの中身は、調査を続けたとして10日は耐える量の食料の他に、様々な道具が入っている。父と母の支度部屋から持ち出してきた不要品たちだ。

 

 【遠眼鏡】【光り石】【抗毒薬】【手投げ壺】。この四つが、この先腐蝕の海で生き抜くのに必要な四つの道具なのだ。

 遠眼鏡はもちろん偵察の為に。光り石は暗闇の多い腐蝕の海にあって、光源を確保するための貴重な手段。抗毒薬は腐蝕が人体へ侵食するのを抑える為の薬。手投げ壺は用途が多い。ものを入れて投げたりするだけではなく、悪いものを封じ込めるのにも使える。

 手投げ壺以外は全て両親の部屋から借りたものだ。壺は兄と姉が使っていたものの余りを持ってきた。

 その他にも魔法道具だとかも混じってはいるが、用途があまりにもニッチすぎるため、正直使い時を見出せそうにないものばかりだ。

 

 そしてショートソード。

 私は残念な事にまともな訓練を積んでいないため戦いはできないが、私のショートソードにはある付呪が施されているらしい。父からのプレゼントで貰ったものだから使ったことはないのだが、曰く使用者が本当に危険な時、一度限り、自分の意志とは関係なく動いて相手を殺すのだとか。

 

 馬車が現地に到着するまでは相当に時間が掛かるそうだ。仮眠でも取るとしよう。私は荷物をしまって横になり、まぶたを閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 私が起きたのと馬車が腐蝕の境目に着いたのとは、ほぼ同時だったらしい。目を覚まして体を起こし、馬車の御者に礼を言って地面に降りる。あたりは人が沢山行き来し、食料保存庫が所狭しと立ち並び、老若男女問わず、ありとあらゆる人々が集まっている。この殆どが冒険者であるらしい。

 

 私が人の多さに呆気に取られていると、私に後ろから声をかける者がいた。歳若い男性の青年が、私の姿を見つけてなにか思うところがあったのだろうか。

 

「やあ、君も冒険者ギルドから?」

「え? ……ああ、はい。冒険者として」

「ふぅん、そうかい。生活費かな?」

 

 この青年はどうやら同じ冒険者のようだ。だからと言って、あまり根掘り葉掘り事情を聞かれたくはない。誰だって同じだろう。

 

「まあ、そこはご想像にお任せします」

「そう? ……なんでもいいけどさ。僕も冒険者なんだ。一攫千金を夢見てね! 腐蝕の海に飲み込まれた財産は、最後に手にした冒険者のもの、と言うじゃないか!」

 

 金目当てらしい。冒険者は多種多様だ。私のように女王殺しが目的の者、腐蝕の原因の調査が目的の者、あるいは…………これを言いたくはない。それと彼のように金銀財宝が目当ての者。

 ここにはあらゆる人々が集まる。それは、私たちの眼前に広がり、空を容易く覆い、城をも簡単に飲み込むような高さの腐蝕の海が広がっているからだった。

 

「健闘を祈ります」

「え〜! 来てくれないの!? こういう場所は一人でいちゃあ危険なんだぜ?」

「私はあなたとは違って、女王殺しの為に来ているので」

 

 そう言うと、どこかからか聞きつけたらしい。二人の冒険者が私に近づいてくる。金目当ての青年冒険者はその様子を見て巻き込まれたくないと感じたのか、足早にこの場を去っていく。

 

「君も女王殺しを?」

「奇遇ですね。私達は元凶女王説派の冒険者です。よろしければ私達と共に海へ潜りませんか?」

 

 誘いはありがたいが、生憎と私は戦いができない。共に行けば足を引っ張るだけだ、それよりも単独で動いた方が自由に活動できて良い。

 

「すみませんが、一人で行くつもりなのです。私が同行したところで、戦いはできませんから、役立たずでしょう」

「戦いが……? 君、死にに来たのかい?」

「いえ、女王を殺しに」

「ふっ……ふっはっはっはっ!! ……君、悪い事は言わない。やめておきたまえ。むざむざと殺されに行く理由もないだろう」

 

 彼の言葉を無視する。どうせ彼は私がどう生き延びるのかを知らない。愚直に戦えば疲弊し、その隙を突かれて死ぬだけだ。私には特(・)別(・)な(・)知(・)恵(・)がある。それを駆使して生き延びる。むざむざと殺されてはたまらない。

 

「……ハッ、まあいいさ。君が死にたいというのなら、俺は止めはすまいよ。行こうか、エリシャ」

「はい。 ……あの、あなたも気を付けて。また生きて会いましょう」

「ありがとう、大丈夫」

 

 最後まで名乗らなかったあの男女も去ってゆく。

 

 大剣を担ぐ大男、流麗な曲刀を握る女剣士、弓の調整をする弓兵、杖を握り魔術書を読む魔法使い。ここには世界各地から様々な者達が集まる。私も、その一人になった。腐食の海に挑む、無謀な冒険者たち。その一人に。

 

 

 

 

 

 

 今生に思い残すこともない。早速海へ足を踏み入れるとしよう。

 

 ……海と大地の境目は非常に曖昧だ。腐蝕への耐性が全く無い者は入ろうとするだけで吐き気や頭痛、失神などの軽い症状に襲われ、入ったとしても活動すらままならない。逆に少しでも耐性があれば、腐蝕の海の深度にも拠るが、活動可能ではある。

 

 これまでの調査で、腐蝕の海には深度というものが存在すると判明している。深度とは、文字通り海の深さだ。深ければ深いほど冒険者を阻み、魔物は強く、瘴気は濃く、視界はより効かず、冒険者達を追い払おうとするか、あるいはより内側へ取り込もうとする。

 

「冒険者諸君! 我々は女王を殺すという意志の下、ここに集まっている! 我々で腐蝕を終わらせようじゃないか!!」

「《おおおぉぉぉぉーーーっ!!》」

 

 後ろで女王殺しの派閥の冒険者達が集まり、各々の武器を掲げている。あの数、ざっと300人はくだらないだろう。果たして何人が突破できるのだろうか、腐蝕の海の第1深度を。

 

 

 

 

 

 

 腐蝕の海へと足を踏み入れた。境目は既に超えているだろうから、第一の関門である腐蝕への耐性の有無は問題ない。

 

 その事実にホッと胸を撫で下ろしながら、カバンの中の光り石に手を伸ばし、瘴気の中へ向かって掲げる。瘴気に反応した光り石はひとりでにぼうっと鈍い輝きを放ち始め、それは次第に大きくなっていき、腐蝕の海を明るく照らす。

 明るくとは言うものの、その範囲は遠くまで及ばず、精々長槍が三本程度の範囲をしか、照らせない。それだけ瘴気は濃く、腐蝕の海は大地に根深く侵食しているのだ。実際、光り石やランタン、松明などを持たずに腐蝕の海へ入り込めば、出入口から少しも経たずに迷ってしまうだろう。

 

 腐蝕の海の外へ魔物が出ていく事は無い。あるならばそれは、人間という種族の危機であり、同時に滅びの日でもある。魔物は瘴気の中でしか活動できないという仮説が検証されているため、それが覆されれば人々は怯えて暮らし、魔物と人間の戦争が始まることになるだろうから。

 今のところそれは起きていないから、大丈夫なのかもしれない。あるいは向こうにその気が無いだけなのか。

 

「…………」

 

 暗闇の中、明かりを頼りに進む。どうしようもなく暗い世界がどういうものなのか、幼い時は想像もできなかった。今はわかる。この腐蝕の海の中こそが、人を歓迎しない世界だ。

 寂しさ、苦しさ、恐ろしさ。そういったものを全てひとつにひっくるめて大きな塊にし、それを海の内側へ踏み込む人々にまるで砲弾のように叩きつけてくるのだ。恐怖に飲まれた人は死に、生き延びた人は心折れ、ここはとにかく殺意と悪意に溢れている世界。

 

 手を伸ばした先に光が届く事が、どれほど有難いか。私はここに来てようやくそれを知った。

 暗闇は怖い。それを知った冒険者たちの殆どが死ぬのだろう、この第1深度で。

 

 枯れ果てた草を踏み、私は歩いている。魔物に襲われるかもしれないという恐怖感と戦うのだ。瘴気は音を喰う。だから周りになにかがあったとしても見えないし聞こえない。

 極端な大声をあげれば聞こえるかもしれないが、それすら瘴気という壁にかかれば歪んだ化け物の騒音にしか聞こえない。

 

 

 綺麗な悲鳴が聞こえた。女性が叫ぶような、甲高く、そして嫌になる声だ。それは罠である。どうしようも無くなった女冒険者が叫びを上げたとなれば、仲間意識を持つ冒険者達は命を助けるため、または対価の為に声の主を助けに向かうのだ。だがそれは、罠なのだ。魔物が人の悲鳴を真似て、新たな犠牲者を呼び込むだけの習性に過ぎない。

 私は悲鳴を無視して歩く。あの悲鳴はこれからもずっと鳴り続けるたろう。誰か、美味しい犠牲者が誕生するその時まで。

 

 

 

 

 

 建物を見つけた。侵食がひどく、倒壊間近というような状態だ。食料は腐蝕の海の中で補充する事ができないというが、ひとつ語弊がある。それは例外が存在することだ。例えば、仲間に分けてもらうだとか、あるいは食料を食べること無く死んだ者から拝借する事だ。何故かは分からないがこの腐蝕の海では、自らが侵食したものは腐敗させていくが外から持ち込まれたものに関しては不干渉、という性質が確認されている。

 だから食料が尽き、帰り道も分からないという冒険者が最後に縋り付く手段が、それこそ死体漁りなのである。

 

 建物の崩れた窓から中を覗く。 ……死体がある。

 可哀想に、恐らくは腐蝕の海の瘴気に蝕まれ、意識が混濁していたのだろう。荷物は散乱し、まばらに塩漬けの魚や干し肉などが散っている。錯乱し、そのまま正気を失って自死を決断したか。

 その首元に自ら突き立てるように、彼が握り締めている短刀は突き刺さっていた。皮鎧やレザーシールドのような、比較的製造が容易な装備で身を固めているところを見るに、腐蝕の海で一山当てる事を夢見た、哀れな犠牲者なのだろう。

 

 腐蝕の海で死ねば魂は瘴気を抜ける事を許されず、腐蝕によって冒涜されるのだという。願わくば彼女の魂が何者にも穢されない事をと、私は死体に祈り、家を後にする。

 

 できるなら、ああいう死者の魂も、腐蝕の海の消滅とともに昇天してほしいものだ。私はまた、歩き続けた。

 

 

 

 

 ひとつの深度にも段階というものがある。第一深度では大まかに、生前の人が変貌した姿、いわゆる亡者や、動物が瘴気に飲まれ元の姿を失った、ビースト、そういったものが出没する。しかしそれらは比較的対処が容易な存在である。元となる素体が人や動物などの、腐蝕の海で生まれ育った存在ではないからだ。

 だが、そんな比較的潜り易い第一深度でも、その中盤まで辿り着いたなら、そこは悪夢的な存在の跋扈する恐ろしい領域だ。その存在こそが魔物である。

 魔物には魂が存在しないと、そう噂されている。殺しても殺しても次々と沸いてくることから、魂が存在しない、つまり死んだ個体は魂が抜けず、海と同化し、そして蘇るのだと。

 

 それが本当なら、海を消さない限り魔物もまた消えない。女王が本当にいるのなら、女王殺しを達する事でまたこの世界は消滅するのだろうか?

 

 であるならば、女王を殺し、この悪夢的世界を取り除かなければいけない。これ以上、肉親を失う人を増やす訳にはいかない。私が死ぬのならそれはよい。もはや天涯孤独で友人もいない。悲しむ人も、もとよりないのだから。だが他の冒険者には家族がいる。友人もいる。私がこの世界を終わらせなければ。

 

 

 

 終わらせる。そうでなくては家族は報われない。

 兄の残した誰かの日記と共に、私は腐蝕の海を歩む。

 

 






 (まだR-18じゃない)R-18作品初投稿でした。
 これからモブエロみたいな感じで描写ぶっ込んでいきたいですね。

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