※この作品はR-18です。

この世界はENCROACHという名前のエロゲ?らしい   作:PPB

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第四話 探索者たち +外伝、閑話休題②

 

 

 

 

 ───あなたの名前を教えてください。

 

 目の前の空間には、そのような文言が表示されている。つまりこの画面は、キャラクターメイクをするための画面というわけだ。始まってすぐにプレイヤーキャラを作らされるゲームは、さほど多くない。キャラメイク画面よりも先にオープニングムービーなどを見せてやることで、初見プレイヤーのゲームへ対する理解を深めさせるためだ。

 

 しかし、このゲームはそれが無い。どんなキャラクターだろうと、どんな名前だろうと、世界観に何ら違和感を抱かせないからだ。

 

 『ヴィルヘルム=グリム』

 

 それが、この世界に産まれる私の名前だ。

 

 ───あなたの系譜を教えてください。

 

 次に表示されたのは、系譜を決めろというもの。系譜とは、腐蝕の海から生還した四人の勇敢なる騎士たち、つまり四騎士のうち誰の特性を持つのかという質問だ。

 

 四騎士は名前とその役割だけが、プレイヤー側の知る情報だ。

 

 四騎士の筆頭、銀騎士アンタレス。

 その補佐を務めた、上級騎士グレンコル。

 彼らと独立して動いた老騎士ハーシュ。

 そして、彼らの頭脳たる魔法騎士ヴィオレッタ。

 

 それぞれ、アンタレスは《物理前衛型》を。グレンコルは《魔法前衛型》を。ハーシュは《物理後衛型》を。ヴィオレッタは《魔法後衛型》を担う存在である。

 剣士や戦士、騎士系のユニットを使いたいのならアンタレスを選び、聖職に就く戦士などになりたいのならグレンコルを選ぶ。

 遠距離攻撃でサポートする弓兵や盗賊などならハーシュで、強力な魔法を使いたいのならヴィオレッタを選ぶ、という具合である。

 

 【ENCROACH】に於いては、この系譜の選択が今後のそのプレイヤーのプレイスタイルに影響を与える形になる。それぞれの系譜には独立したスキルツリーがあり、それは互いに干渉しないため、魔法前衛型であるグレンコルのスキルツリーを持つ者は、物理後衛型であるハーシュのスキルを会得する事ができない。

 

 私は迷わず、アンタレスを選ぶ。物理前衛型で単純明快、ユーザーも特に多いためありふれているが、だからこそ戦術も研究が進んでいる。

 

 だが、私が目指すのはアンタレスではない。それは通過点に過ぎない。この世界の人類には、稀に特異進化と呼ばれる突然変異イベントが発生することがある。私はそれを目的に、何度も同じ名前で、同じ条件でやり直していた。所謂、リセマラだ。

 

 

 

 ───ヴィルヘルム=グリム。あなたは『女王を殺し、腐蝕を止める者』です。使(・)命(・)を果たしてください。

 

 ……来た。これを待つ為に、私は何千回もやり直していた。

 

 ハーシュとヴィオレッタに於ける『使命を持つ者』は既に発見報告───というよりは自発的な報告だが───がある。逆に言うと、このゲームがリリースされてから暫く経つというのに、グレンコルとアンタレスでは確認されていなかったということだ。

 そして今、アンタレスは私になった。グレンコルの系譜の中にその存在が現れ次第、パーティを組んで潜りたい。その為のリセマラだった。

 

 私は凡夫ではない。彼、あるいは彼女達と共に、女王を殺す。それが私の使命だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「───へえ、あんたも冒険者かい。好き者だなぁ、あんたも、あいつらも。どうせ生きて帰れやしないんだ」

 

 御者はそう言いながら馬車を走らせる。積荷はもちろん私と、そして私と同時にキャラメイクを終えた者たちだ。

 

「ハハ、まあ俺たちは冒険の為に来てるからな。だろ、サーシア」

「もちろん。お宝よりも、私は武器や装備の方に興味があるけどね。金銀財宝は男どもの浪漫でしょう?」

 

 皮と鉄で補強された鎧に身を包む戦士が、隣の魔法使いに言う。サーシアと呼ばれるその女は、どちらかと言うとロールプレイを主軸に置いているプレイスタイルのようだ。隣の戦士もノリ良く相手する。

 

「くだらねー。所詮すぐ死ぬんだ。今を楽しむべきじゃねえのか。え? そうだろ、騎士さんよ」

 

 そしてその戦士の対面に座っていた盗賊の格好の男が私に言ってくる。私はこくりと頷きつつ、だが全てを肯定はしなかった。

 

「確かに、短い命であればそうしても良い。だが私は死ぬつもりは無い。アンタレスの名にかけてもな」

「……フン、アンタレスねぇ。脳筋が、この世界で生きていけるとでも? 賢くやらなきゃ死ぬのさ。わかるだろう?」

 

 盗賊の男はそれ以上続けようとはしなかった。馬車の中の空気は良くなかった。

 

 さて、本来であればもうそろそろ御者の言葉と同時に、海と正常な空間の境界線である『境目』にたどり着く頃合いであるのだが……。

 

 そこも、想定通りだった。

 

「な、なんだお前たち!? グッ、ギャアッ!!」

 

 御者の悲鳴が馬車を包んだ。馬を繋いでいた手綱が切られたのだろう。馬が逃げていく。辺りをかなりの数の足音に囲まれる。

 

「なんなんだ…! こんなイベントあったか!?」

「知るか! とにかく気を付けろ、なんかおかしい!」

 

 戦士と盗賊が得物を構える。バトルアックスと、標準的なショートソードとダガーナイフの組み合わせだ。魔法使いである女は、混乱から立ち直れていないらしかった。待ちの姿勢でいれば殺されると踏んで、私は馬車を飛び出した。

 

 腰のブロードソードを引き抜きつつ馬車を飛び出し、開けようと近づいていたらしい一人の人影に容赦なく切りかかる。

 

「なっ!? ──ぉえ゛っ」

 

 まずは、一人。周囲を囲まれている。数はざっと数えても21。一人で相手するには少し厳しい数だ。だがそれでも、このヴィルヘルム=グリムは折れない。私は女王を殺すのだから。

 

「騎士崩れが……遠慮は要らねえ、やっちまえ!」

「おおっ!!」

 

 さらに二人の山賊が斬りかかってくる。片方はハンドアックスを装備している。データ上では斧カテゴリー最弱の武器だが、それでもまともに喰らえば致命傷になりかねない威力を持っている。

 

 それをカイトシールドでいなしつつ、まだ斬りかかろうとしていた山賊の腹にブロードソードを刺し込み、タックルして剣を引き抜くために押し出すと、そのまま回転斬りの要領で振り向き、パリィによって体勢を崩していたもう一人の首を掻っ切る。

 二人。

 

「し、信じられねぇ。あんな動きを……甲冑を着たやつができるのか……!?」

「どうした、来ないのか?」

 

 挑発に易々と乗ってくれるのが山賊だ。賢ければ賊になどならないだろう。

 

「テメェェェッ!!」

「オラ、死ねぇッ!!」

 

 安い挑発に乗った二人がやってくる。盾によるパリィは先程見せた為に警戒されるだろう。安直に体術を織り交ぜての格闘戦に移るとしよう。ブロードソードで斬り、カイトシールドで受けるのではなく、盾で殴り、剣で弾く。足を使って蹴る。体を使って吹き飛ばす。

 前(・)の(・)デ(・)ー(・)タ(・)で(・)の(・)経(・)験(・)を活用した戦いができるのだから。それを活かすに越したことはない。

 

 立て続けに五人目がやってくるが、その時には既に三人目の喉元にカイトシールドのふ(・)ち(・)を打ち込んで窒息死させ、四人目を殺そうと足を斬ったところだった。ちょうど後ろががら空きで、そこに入り込んで斧を叩きつけようとしているのだろう。

 だが、私には死なない確信があった。

 

「死ねぇぇぇぇっ!!」

「───お前がな」

 

 その山賊の更に後ろから、冷たい声が聞こえる。盗賊が敵の首をダガーナイフで切り捌くと、乱雑に放り捨てる。

 

「油断したのか? がら空きだったぞ」

「信じていたのだ。おかげで助かったろう?」

 

 盗賊は鼻で笑いながら私と肩を並べて腰を落として構え、敵を一瞥する。これで五人を殺し、後16人。

 

「ビビってんじゃねえ、やれ!!」

「う、ぉぉおおおりゃァァァァァッ!!」

 

 愚直に向かってくる山賊達。残った人数全員が襲いかかってくれば、さしもの私とこの盗賊とて、防戦一方がやっとだった。私は盾があるから反撃も可能だったが、一撃が致命的である盗賊の彼は紙一重の回避が精一杯で余裕がなさそうだった。

 一人斬ったとて、次が湧いてくる。

 

 ──そこに、凄まじい熱が襲い来るまでは。

 

「カーネイジフレイムッ!」

 

 灼熱が周囲を包むと、後方を囲んでいた盗賊の半数、つまり7人前後が倒れており、馬車から魔法使いとその護衛である戦士が飛び出してくる。

 

「済まない、気取られるわけにいかず、護衛に徹していた!」

「お待たせしました、もう一度やれます!」

 

 戦士と魔法使いのコンビが増援に現れたのもあって、山賊達は完全に戦意を喪失しているようだ。明らかに動揺に支配され、狼狽えている。頭領が指示を下した。

 

「ひ、退け、退けッ!!」

「うわぁぁ! お助けぇぇぇっ!!」

 

 逃げていく。終わった。

 

 

「………フー。生きた心地がしなかったぜ、ったく。キャラメイクが終わって早々死ぬのはゴメンだね」

「私もだ」

 

 盗賊の呟きに私は答えた。

 

「いや、魔法の援護があって助かった。流石はヴィオレッタの系譜を継ぐだけある」

「いやいや、あなたも見事な剣さばきだった。アンタレスの系譜なんでしょう?」

 

 魔法使いの言葉に頷く。そしてステータス画面を表示して自分の名前を確認した。間違いではなかった。そこにはしっかりとこう書かれていた。微笑みつつ、彼らを見て話す。

 

「───そうだ。改めて自己紹介しておこう。私はグリム。ヴィルヘルム=アンタレス=グリムだ」

 

 ミドルネームの存在が、私の全てを物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

339:名も無き冒険者

第1深度、まだ終わりそうにないな

 

340:名も無き冒険者

>>339 まあ大陸一個分の大きさだししゃーない

 

341:名も無き冒険者

だとしても広いよなあって ゲームとは思えん

 

342:名も無き冒険者

最近発売の人気シリーズ全部差し置いてENCROACHが売上トップに立ってるからな マジで頭おかしい(褒め言葉)

 

343:名も無き冒険者

見つけた

 

344:名も無き冒険者

>>342 マジで狂ってると思う

 

345:名も無き冒険者

>>342 トップってマ? エグすぎるだろ……

 

346:名も無き冒険者

ん?

 

347:名も無き冒険者

見つけた兄貴は何を見つけたのか教えて

 

348:名も無き冒険者

アンタレスを見つけた

 

349:名も無き冒険者

>>348 ファッ!?

 

350:名も無き冒険者

>>348 またこの手の釣りか アンタレスとグレンコルはもう海で行方不明になったんじゃなかったのか

 

351:名も無き冒険者

>>350 偽物だったって事かもしれない

 

352:名も無き冒険者

間違いない。アンタレスだ。名前はヴィルヘルム。騎士だ。あいつ、アンタレスの系譜の筈なのにハーシュのスキルツリーを持ってたんだよ

 

353:名も無き冒険者

釣りじゃなかったのか……

 

354:名も無き冒険者

>>352 知ってるかもしれないが念の為に教えてやろう ヴィオレッタとハーシュの後継者は死んだ。アンタレスも近いうちに死ぬ。このゲームに必要なのは四騎士の後継者じゃなくてゾンビ戦法なんだよ

 

355:名も無き冒険者

間違ってないけど言い方で草

 

356:名も無き冒険者

>>354 嫉妬かな?

 

357:名も無き冒険者

後継者が死ぬほど強いのは間違いないんだよなぁ……明らかに嫉妬だってはっきりわかんだね

 

358:名も無き冒険者

とにかく俺はあいつとパーティを組む。逐一報告していくから、なにか読み取れるヒントがあれば教えるよ

 

359:名も無き冒険者

有能兄貴有能すぎて他人が霞む

 

360:名も無き冒険者

コテハン付けて有能兄貴

 

361:盗賊剣士

名前はアルティア=ヴィオールな。アルティアで調べれば一発で出るはず

 

362:名も無き冒険者

めっちゃ貴族っぽい名前なのになんで盗賊剣士なんてやってるんだよ

 

363:盗賊剣士

>>362 領地経営が上手くいかなくて没落して、盗賊に身をやつした挙句一攫千金を夢見てギルドに登録した没落貴族の嫡子っていう設定

 

364:名も無き冒険者

>>363 細かくて草 でもすき

 

365:名も無き冒険者

こういう細かい設定とか自分で組めるのホントいいゲームだわ

 

366:名も無き冒険者

知ってるか? 本体込み6万円でもうひとつの人生を楽しめるゲームがあるらしい

 

367:名も無き冒険者

>>366 もうひとつ(やり直し利かず死ぬ度別キャラ)

 

368:名も無き冒険者

>>358 とにかくパーティ組むんだったら俺も行きたい グレンコル系譜だから前衛物理盾と回復やれるよ

 

 

 

 

 

 

 






 ヴィルヘルム

 アンタレスの系譜を継ぐ。ヴィルヘルム=アンタレス=グリムとしてメイクされ直したため、能力が他の冒険者と比しても格段に高い。
 使用武器はブロードソードとカイトシールド。高名な騎士だったが、立場や名誉とともに槍と馬を捨て、冒険者の道を歩む。目的は女王殺しによる腐蝕の海の完全浄化。



 アルティア

 ヴィルヘルムと共闘してパーティを組んだ、ハーシュの系譜に連なる人物。本名はアルティア=ヴィオール。クラスは盗賊と剣士の性質を併せ持つ盗賊剣士という職業であり、ステータスも盗賊剣士らしく回避能力に特化し、同時に技術面に秀でている。



 368

 スレッドの最後に同行を申し出た、グレンコルの系譜に連なる人物。本名はグレイル=エスペランザ。クラスは聖職者と騎士の役割を併せ持つ聖騎士。ステータスも最低限の火力と高い耐久力を確保した、物理タンクタイプに調節されている。
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