※この作品はR-18です。

東方蟲蔵録   作:玉蹴り男

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第十七話

で、当初の目的のマングローブ君だ。

 

朦朧としているアリスを脇から抱え、マングローブ君の根本に移動させる。

そしてマングローブ君の反応を待つとーーうにょうにょと触手のような無数の根っこが動き出し、アリスの身体を背中から這い始めた。

 

「……んぅ…?」

 

そこでアリスは緩慢な動きで顔を上げ、不思議そうに声を漏らす。目隠しによって視界は絶たれているが、身体をなぞる根の感触に身体を見下ろした。

根はアリスの腕や太腿、腰などにグルグルと絡みついていく。それはそれなりの拘束力を持つようで、アリスが腕を動かそうとしても、根に引っ張られて直ぐ元の場所へ戻された。

その辺りで見えないながらも危機を察したのか、アリスは意識をはっきりとさせた。

全身に力を込め、急いで立ち上がろうとしーー強い力で根に引っ張られて、元の位置へ尻餅をつく。両腕は持ち上げられて拘束され、脚は膝を立てて開かされる。非常に無防備な、ザ・拘束といった状態になった。

 

「……こんな風に拘束しなくても、抵抗する力なんて無いわ」

 

微かに震えの残る声で、アリスが俺に話しかけてきた。

視覚と聴覚を遮断されているにも関わらず、臆せずコンタクトを取ろうとしてくる。それだけで彼女の芯の強さが分かろうものだ。

……いや、もしかして声だけでも何かやれる事があるのだろうか。例えば、彼女自身には何も出来なくとも、予め設定したキーワードを言えば人形に指示を出せるとか。それなら俺に向けて話しかけてくる理由にもなるし……流石に考えすぎかな。けど心配になってきたから、上海と蓬莱等の壊されていない人形は回収して蜘蛛の巣にグルグル巻きにしてあるけど、後でより厳重に拘束しておこう。

 

「私だけじゃなくて、魔理沙もいるんでしょう?だから抵抗はしないわ、お願いだから話をさせてーーづっ!?」

「お、来たな」

 

アリスが言葉を中断したのは、マングローブ君のせいだ。

彼女は顔を顰めており、再び拘束から抜け出そうともがきだした。それを根っこが強引に押さえこみーーその根に変化が起きているのがよく見えた。

 

触手のような根はアリスの裸体に隈なく絡みついている。先程まではただそれだけだったが、今はその根と皮膚が触れている場所に変化が起きていた。

根と触れている場所から、血管のような線が皮膚に浮き出ている。

それは皮膚を走る静脈のようにも見えるが、そうではない。むしろマングローブ君からアリスの肌に突き刺さされた、紛れもない「根毛」である。

もともとのアリスの肌が磁器のように白くて分かりづらいが、その根毛は白く発光していた。それはマングローブ君がアリスから吸い上げる魔力が可視化されたものである。

この魔力が根を伝ってマングローブ君本体へと流れ込み、そこで魔石が形成されて実が出来るという寸法だ。

 

「なに、これ……?変なっ……んっ」

 

アリスが気持ち悪そうに悶えている。

マニュアルの説明欄によれば魔力を吸うだけで危険は無いらしいが、その感触についての記載は無かった。根毛を突き刺した時は痛そうだったが、今は痛みで呻いているのでもなさそうだ。

ふむ。折角だし試してみようか。

 

ダンジョンマスターの支配下にあるモンスターは、マスターに危害を加える事が出来ない。

ただそれは絶対に不可能という話ではなく、俺が許可すれば可能である。

マングローブ君の機能を限定的に解除し、俺は左手で一本の根を掴んだ。

根はうにょうにょと動き、動ける部分だけで俺の腕に絡みつく。大体前腕までグルグルと巻き付くと、根毛を俺の皮膚に突き刺した。

 

「いで」

 

チクッとした。

ただその痛みもすぐに引き、次に魔力の吸収が始まる。

 

「うおおおお……!?」

 

なんだろう。気持ち悪い。

肌が内側からくすぐられているような感覚に、魔力を吸われることでの疲労感。それが絶え間なく襲ってくるこの感触は、何ともむず痒く心地が悪い。

俺は左手の前腕部だけだからこの程度だが、アリスは水に浸かった首より下の身体全体にこの感覚が侵されているのだ。想像しただけでも怖気が走る。

 

「だんだん慣れてくるのか、これ…?」

 

暫く我慢してみるが、5分ほど経過しても慣れそうにない。俺は諦めてマングローブ君の俺への敵対行為を再度禁止し、腕から根を引き剥がした。

まだ皮膚に変な感覚が残っている気がする。蟻走感とかむずむず脚症候群とかこんな感じなのかなと思いつつ、右手で肌をさすりながら異常な感覚が引くのを待った。

 

「ぃぃい、んん…!」

 

アリスが声を漏らしながら異様な感覚を堪えている。

彼女はこれからは、仕事を与えられた時以外常にこの状態で過ごしてもらうことになる。

上手いことやれば、簡単な仕事なら催眠アイテムを節約してもやって貰えるようになるかもしれない。

俺はまだ見ぬ輝かしいダンジョンの姿を想像しーーワーム孵化の徴候が見られたリグルのもとに駆けつけた。

何はともあれ金策である。俺のダンジョンライフはまだ先だ。

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