※この作品はR-18です。

東方蟲蔵録   作:玉蹴り男

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第十八話

アリス撃退から4日目。

色々と事あるごとに用立てたとはいえ、そろそろDPは10000に達そうとしていた。

そうなると考えたいことーーそう、ダンジョン入りだ。

 

ただ、実を言うとダンジョン入り自体はとっくに行なっている。というか牢屋がダンジョン部屋なので、そこに入って生活している時点でダンジョン入りは達成だ。

射命丸に与えられた身体の損傷を治すにはダンジョン入りするのが一番効果的ということで、急いだというのもある。

だから今回はそんな話ではなく、本格的にダンジョンに籠るためにどうすればいいかを考える。

 

戦力の確保だ。

というより、本来のダンジョンマスターの在り方にはこれ以外の要素が必要無いと言ってもいい。

適当な侵入者を撃退→ダンジョンの評判が上がってより強い侵入者がやって来る→それを倒す為にDPを戦力の拡充に注ぎ込む。

これが通常のファンタジー世界におけるダンジョン運営の基本サイクルであり、まともに運営するなら他の事に回す余裕が無いとも言える。

そしてそれに集中するためか、ダンジョンマスターは様々な人間を超越した機能が備わっていた。代表例をあげると、睡眠不要、飲食不要、ダンジョン内での身体治癒促進などだ。生物であるなら当然ついて回る肉体としての問題が、かなり一刀のもとに切り伏せられている。非常に有難いが、ますますこのダンジョンシステムとは何なのだと気味が悪くなってくる。

 

また話が脱線したが、戦力の話だ。

まずは今あるものを整理する。

 

最大戦力はアリスだ。あとは、ここに居ないが射命丸も同等かそれ以上だろう。このあたりは原作知識でもよく分からないが、射命丸なんかは明確に強者として扱われている。ただ彼女は外で生活してもらっているので、常在戦力としては数えられない。

 

次は魔理沙。彼女も当然かなりの実力者だが、幻想郷での強さはやはり年功序列の印象が拭えない。旧作の事を考えたら案外アリスは捨虫の術を習得せず魔理沙と同年代なのかもしれないが、少なくともこの世界のアリスは実力がかなり高い事は証明済み。

ただ、こと弾幕ごっこという点では、魔理沙は最も強い可能性が高い。なんせ主人公である。負けていては始まらない職業だ。

魔理沙は原作内でも様々な強者から腕っ節を認められているし、殺し合いという場で無くある程度のルールに則った場であれば、抜きん出たセンスにものを言わせる事が出来るのだろう。このダンジョン内であっても、もしかすると俺の姿が見られず過剰な敵意が無いうちは、弾幕ごっこも戦闘の手段に加えられるかもしれない。彼女自身のキャラもあるし、魔理沙は今後も様々な場での活躍が期待出来る筈だ。

 

そして次は俺の自前の戦力。

これはーー恥ずかしいことに今は殆ど無に等しい。まともなものは触手ワームのみであり、これを今から整えていくつもりだ。

だが思い出してほしい。もともと20000DP程用いて魔理沙を打倒できる戦力を用意するつもりだった。アリスと魔理沙が手駒となっている今、慌ててモンスター等を準備する必要性は果たしてあるのだろうか。

 

そう考えた俺は、足止めを基本としたトラップダンジョンを軸に考えることにした。

牢屋を入手した事でダンジョン内に篭っていても最高効率で金策を進められるし、将来的にどんどん拡張することを前提に、今ある10000DPで作れるものを作ろうと思う。

魔理沙への催眠費用が必要になるとはいえ、明日くらいからアリスに投入した蜘蛛の卵からもDPが回収出来る様になるし、おそらく日当たり4600DP程の効率になると予想される。多少駆け足で拡張を始めても問題はないだろう。

ただ一度ダンジョンを作ってボス部屋に篭ってしまうと、それ用の権能なり施設を買わなければ俺は気軽に魔理沙の家に入れなくなる。そうすると急な訪問者などの情報が俺に伝わらず、催眠下の魔理沙に全てを委ねなくてはならなくなる。そこだけがネックでこの3日悩んでいたがーーあまり高額なDPを必要としない解決策を発見し、こうしてダンジョン入りに踏み切る事にした。

 

「まさか幻想郷でこんなものを使う時が来るとはな…」

 

俺は手元の物体を見つめ、思わずボヤいた。

そこにあるのは黒い手のひらサイズの機械。見ただけで現代人の誰もが用途を察するものーースマホである。

 

これをアイテム欄で見つけた時は、何かの見間違えかと思った。

それはスマホというものとダンジョンのそぐわなさでもあったが、流石にダンジョンの何でもありな仕様に慣れてきた為、そこに驚いた訳ではない。

俺が驚いたのは、これの安さだ。

 

スマホ一台、なんと驚きの10DPである。

これは現在愛用中のワーム君に等しい金額だ。

その安さから衝動的に購入してしまい、恐る恐る起動してみた俺は、直ぐにその理由を知ることになる。

なんとこのスマホ、時計しか機能がない。

 

ゴミやんとマニュアルを見てみると、どうやら俺が思い違いをしていたことが発覚した。このスマホは、逐次DPを消費して機能を追加していく事が可能なようだ。

追加可能な機能ーーアプリ?を色々見ていくと、本当に呆れる程多彩なものが次々と現れる。その中にはそういう薄い本にありそうな催眠アプリなるものも存在しており、現実のスマホで出来る事を越えて、ファンタジーなものも実装可能な事が分かった。というかこの催眠アプリは10万DPと目ん玉飛び出る程高いが、何がそんなに高性能なんだ。持続時間永続の催眠アイテムですら1万DPという事を踏まえると、何か理由があるはずだがーーまあそんな事は置いておいて。

 

俺はスマホを3台購入し、それぞれ1010DPを消費して通話機能とバイブレーション機能を実装した。

そして一つは射命丸へ、もう一つは魔理沙へ渡すことにした。

全て常にグループ通話を開いておき、俺のもの以外は無音に設定した。これで2人の周囲の音は全て俺に聞こえてくるため、ダンジョン内に篭っていても殆ど情報伝達の課題が解決される。俺が2人に指示を与えたい時はバイブレーションを送り、俺からの声が聞こえるようにして貰えれば問題ない。

計約3000DPとそれなりに高い買い物とはなったが、補って余りあるアドバンテージを手に入れた事は疑いようが無いだろう。

 

こうして俺は意気揚々とダンジョン開発に乗り出した。

俺のアナグラ生活の幕開けだ。

これからは安全地帯から誰にも怪しまれない完璧な情報統制を行いつつ、幻想郷でのスローライフを送っていけるのだ。

輝かしい未来を思い描き、俺はにやりと気持ち悪い笑みを浮かべた。

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