※この作品はR-18です。

東方蟲蔵録   作:玉蹴り男

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第二話

ほんとにどうしよう。

これはもうーー絶望だ。

 

俺は最終章の一護のような顔でマニュアルを眺めていた。

ダンジョンには最初から部屋が一つだけ用意されているため、きっとここにモンスターを設置して戦えという事なのだろう。だが、そこから躓いた。

まず、初期で使えるDPが少ないのだ。

数にして10DP。

参考としては、最底辺ゴブリンが5DPで召喚できる。いや、そいつらの強さは知らないけど……ねぇ?多分、普通の人間くらいしか殺せないでしょ。大きさ1mもないし。

因みにちょっと大きめの虫とかは1DPくらいで召喚出来る。気休めかよ。

 

「へ、へへへへ……」

 

そうこうしているうちに、残り時間10分だ。

これはまずいですよ本当に。

適当な場所に設置して、DP稼げずに発見されて、どこかの紫色の大賢者とかに殺される。そんな未来が目に浮かぶようだ。

死にたい。

いや、死にたくないから必死に方法探してるんだけど。

 

俺は藁にもすがる思いでマニュアルを見る。

DPで交換できそうなものをザッと流し読みする。細かい説明なんて見てられない。兎にも角にも、何か俺が生きていける術を探すのだ。なにかないのか、なにかーーー!

 

「ーーん?」

 

おや?

おやおや??

なにか、あった。

総じて必要DPの少ない虫のページ。その最低レアリティの欄で、何故かポイントが高い群がある。

その虫達の設定を見て、ポイントの高い理由に納得し、俺はある下劣な策を思いついた。

思いついて、しまった。

とても下劣で、醜悪でーー有効な策を。

 

「ーーいや、待て」

 

その策を実行するか否か、を悩む前に、俺はそれが実行できないことにも同時に気付いてしまう。

俺が今までの人生で学んだ倫理観を踏み越えるか否か、それを悩む以前に、DPの問題で不可能だったのだ。

DPがあれば、ややもすれば達成出来るかもしれないがーーそのためには、10DPでは足りる訳もない。虫だけでは駄目なのだ。人里にダンジョンを作るリスクを考えると、やはり外しか無くて、その場合は敵が強すぎる。

だから、成功率を上げるには、隙があるやつにこのアイテムを使うしかなくて、それには50DPというアホみたいなポイントが必要でーー。

 

「あ」

 

あるじゃん方法。

やべ、いけるかも。

 

タイムリミットはあと1分。

迷っている時間は無かった。

 

 

 

◇

 

 

 

今日も魔法の森は平和である。

私は日課のキノコ採集を終え、ホクホクした気持ちで箒に乗っていた。

自身であつらえた白黒の衣装に、ジメジメとした森。そして私の美しい金髪とくれば、世界中の画家達が放っておかない光景だろう。

うーん、今日も今日とて良い1日だ。

 

自分の家に着き、担いでいた荷物を下ろした。キノコは大事な魔法研究の材料であり、それらを材料部屋に運び込む必要がある。

毎日大量に消費するため、やはり採集してくる量もそれなりの量だ。

うんしょと荷物を持ち上げ、家の中に入った。

 

「ーーふぅ。まったく、乙女には重労働だ」

 

自分しかいない家で独り言を呟きながら、キノコを保存用の入れ物に仕分けていく。

これまで使ったことのある種類は、その用途別に。そうでないものは、まあ適当だ。

ポイポイと無造作に作業を進め、やがて全てのキノコを仕分け終える。毎日やっていることなので、手慣れたものだ。

 

さて、次は一先ずご飯の準備ーーの前に、汗を流すためにシャワーだ。

私は着ていた服を脱いで脱衣所の籠に投げ込むと、着替えとタオルを取りに自分の部屋に向かう。

とは言っても、本来の自室は研究部屋として使っているため、アリスなどから言わせると「とても汚い」部屋だ。これから向かうのは着替えなどが置いてある狭い部屋で、ベッドのある所謂寝室である。

魔理沙は欠伸混じりに寝室に入り、扉を閉める。そして暗闇の中で、電気を点けるためのスイッチを探した。

 

「…あれ?」

 

スイッチが無い。

魔理沙は暗闇の中目を凝らしてスイッチを探すが、全く見つからない。

参った、これでは着替えが取り出せないではないか。一体どうしたものかーー。

 

ーー暗い?

 

状況の異質さに気付いた魔理沙は、一瞬で頭が冷える。

廊下は普通に見えていたのに、寝室に入った途端全ての光源が無くなった?そんな訳がない。

それではまるで、ここだけ異空間のようなーー。

 

「え、えぇ……なんでもう下着……?」

 

キィ、と扉が開いた。

廊下からの光が入ってきて、魔理沙は直ぐに後ろへ振り向く。

そこに居たのはーー。

居たのは。

 

「……は?」

「めっちゃごめん。霧雨魔理沙」

 

人生で最も、悍ましい「なにか」だった。

 

ーーシュー、と。

 

恐怖で思わず動きを止めた魔理沙の顔に、何かスプレーのようなものが吹きかけられる。

それは彼女の意識を瞬時に奪い、そして、霧雨魔理沙という人間を地獄に叩き落とした。

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