※この作品はR-18です。

東方蟲蔵録   作:玉蹴り男

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第三十一話

「祭りを開こう」

 

もうそれが1番手取り手早い。

悩みに悩んだ一日後、俺はその結論に逃げた。

 

恐らく今回のダンジョン襲撃の犯人は古明地こいしだ。

改めて考えて、やはりその可能性が最も確からしく感じる。

目の前にいても気が付けない等の要素に加えーーあんな哲学的ゾンビのようなものでないと、俺を目にした上でフラフラ出来る筈がない。

俺は種族が『ダンジョンマスター』であり、これは他種族に対して根源的な敵意を与えるものらしい。マニュアルにそう書いてあったし、それならきっとそうなのだろう。

なら、俺の近くで俺の様子を目にした上で、こんな風に非計画的にダンジョンへ侵入してくるのは、それだけでこの世界では異常な事なのだ。

まあ、確実に逃げ帰れると踏んだ上で偵察に来たのかもしれないがーーそこまで考えると、俺は「俺の知らない原作キャラ」まで考えなくてはならなくなる。

俺の脳みそは一つで、考えられる範囲も有限だ。

それなら、手を伸ばせる範囲での結論に命を預けるしかない。

 

とにかく、仮に本当に別の犯人がいたところで、古明地こいしの対策は確実にやっておかないといけない。

その障害となるのは、事の発端である『無意識』だ。

まず、古明地こいしは彼女自身ですら自分の行動を制御出来ない。当然だ、明確な自意識が彼女には存在していないのだから。つまりそれは俺にとって、彼女の居場所の予測が極めて困難な要素となる。

そして仮に彼女の居場所を捕捉したところで、他者には彼女が何処にいるかを認識する事が出来ない。話しかけられたら話は別だが、それまでは無意識に潜む背景の一部だ。これでは意味が無い。

これら二つの問題を解決した上で、古明地こいしへの対策に着手する必要があるのだ。

 

一応、どちらも行いはした。

まず古明地こいしの居場所だが、彼女が訪れる可能性の高い場所はある。それは、彼女の家である地霊殿とーー『ここ』だ。

そもそも再びこのダンジョンへ来るかもしれないから危険なのであり、放っておいてくれるなら問題無い。つまりこいしが現れ得る場所として、当然このダンジョンは真っ先に挙げるべき候補であり、つまり入り口である魔理沙の家に「対策」を設置した。

それは、研究部屋の「存在感を上げる結界」だ。

効果があるのか分からないが、俺は原作知識から恐らく無くはないんじゃないかと踏んでいる。

つまりこれで、居場所と認識という二つの問題を局所的に解決出来た事になる。

 

だが、当然それでは足りない。

もし古明地こいしが、当然普通の人間ならやっているように他者へ助けを求めた場合、待ちの姿勢というのは斬首台の下で居眠りをしているのと同じだ。

だから、彼女を炙り出す他の手がいる。

そしてその最もコスパが良い方法が、「祭りを開く」ことなのだ。

 

俺には原作知識がある。

つまり、「古明地こいしが現れて、他のキャラや群集に認識されていた」場面を再現すれば、上記の問題が解決というわけだ。

そしてそんな非常に好都合なシーンは、あつらえたかのように存在する。

 

「東方心綺楼を起こそう」

 

 

◇

 

 

「取ってきました、これで良いんですか?」

「うん、いいね」

 

よし、これで東方心綺楼の開始だ。

 

俺は受け取った「真っ白な子どもの顔のお面」を見ながら、射命丸に頷いた。

そしてそれを、背後にいた催眠済のヤマメへ渡す。彼女はそれを受け取り、懐に仕舞い込んだ。

 

今受け取ったお面は「希望の面」だ。

射命丸に命じて、秦こころという妖怪から盗ませた。

それによって起こるのは、彼女の感情のバランスの崩壊だ。そしてそれは能力の暴走を引き起こし、人里全体が「希望」という感情を失い、刹那的な快楽を求めて祭りごとを始めるーーというのが、東方心綺楼というお話。

ここで重要なのが、原作ではそこに古明地こいしも現れるという事。そしてそこでは、勝負に勝って彼女が人々から「希望」を集める度、注目されるようになるという描写がされている。

それは即ち、彼女の「存在感」が上がっているという事だ。

つまり、古明地こいしの居場所と認識という問題を同時に解決出来るということに他ならない。

成功すればそれで良いし、失敗したならそれはそれで、適当なタイミングで希望の面を秦こころに返せばそれで済む話だ。

 

とはいえ、これで万事解決というわけではない。

一つの異変が起こる訳だし、そこにリスクは付き物だ。異変自体は大したものではないが、それを人為的に起こすとなると当然「どうして起こったのか」という疑問が付き纏う。

原作では、誤って地割れに希望の面を落とした事から始まった。ただ秦こころ本人はそれに気が付いておらず、誰かが奪ったと勘違いしていた筈だ。つまりこの問題もまた、ある程度どうにでも誤魔化せるだろう。

残る問題は、どうやって自然にお面を返すかという点だがーー人里周辺の適当な妖怪に渡しておこうと思う。

希望の面を持つ者は感情のバランスが崩れるらしいし、適当に暴れ始めて見つかってくれるに違いない。

 

結論として、今回俺がこれ以上何かやることはない。

あとは祭りに参加する魔理沙と射命丸の様子を見て、古明地こいしが現れるのを座して待つだけだ。

網に掛かるのを待ちながら、俺は俺でやる事をやっておこう。

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