※この作品はR-18です。

東方蟲蔵録   作:玉蹴り男

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第三十三話

2日が経過した頃、魔理沙が祭りへと参加し始めた。

となるとそろそろ霊夢も気が付き、東方心綺楼が本格的に始まる事になるだろう。

俺も明日くらいから人攫いを始められるかもしれない。

 

どのように行うか、はさしたる問題ではない。

射命丸に適当にボコさせ、その速度を活かして連れて帰ってもらうだけだ。

当然目立つし一度に運べるのも多くて二人程度だから、あまり何度も何度も行う訳にはいかない。そうなると問題となるのは誰を攫うかという点だ。

 

妖怪と妖精は、その捕獲のしやすさから確実に確保出来るだろう。

しかし簡単に確保出来るからといって、仲良し何人組の1人を攫ってしまえば問題となる。その為各コミュニティの中で孤立した者を探さないといけない訳だが、そんな事が簡単に外部の俺たちに分かるわけがない。

これはーー非常に厄介な問題だ。

 

『いや、別に妖精は互いの事なんてそこまで覚えてないと思うぞ』

「そうなのか?」

 

と、思っていたのだが、案外そうでもないらしい。

なんとなく妖精と仲良くしていそうなイメージの魔理沙へと相談したところ、とても気楽な返答が返ってきた。

だが東方には特有の微妙にドライな感覚がある。それをもとに言っているだけで、鵜呑みにするのは良くないだろう。

 

「チルノと大妖精とか、プリズムリバー三姉妹みたいなのは仲良くしてそうだけど」

『あいつらは力を持ってる方だからな。生まれたばかりのちっさいのとか、もっと能天気で馬鹿だぜ』

「なるほど、ありがとう」

 

確かにそういうものなのかもしれない。

魔理沙や霊夢も妖精達を気軽にぷちぷち潰していると聞くし、「一回休み」になるだけの妖精達にとって死生観は思考の根底に根付いてはいないのだろう。更に殆どの個体はお馬鹿とくれば、昨日会ったやつが居なくなっても気に留めなくなるのかもしれない。

全部推測でしかないがーー考えてみれば、最悪騒ぎ始めたら魔理沙にも情報は伝わる筈だ。アンテナを張った上でそれが聞こえてこないなら、霊夢達にもその情報は伝わらない可能性が充分に高い。

それならやってみる価値の方が高いだろう。

 

では次に、妖怪だ。

だがこれは、魔理沙達の知識からも俺の原作知識からも、攫えそうなものは色々と挙げつらうことが出来た。

要は普段から一人で暮らしているものであればよい。それなら人里の周辺の野良妖怪は大体そうだし、強くていいなら妖怪の山に棲む山姥も当て嵌まる。逆に徒党を組んでいるものを覚えておいて、そうでないものを拾ってくるだけで事足りるのだ。

という訳で、妖怪については射命丸に一任する事にした。

 

「じゃ、頼むぞ」

『はいはーい、お任せください!』

 

射命丸にスマホから指示を出す。

どうやら彼女は人里の祭りの雰囲気に当てられているらしく、普段よりも更にテンションが高い。

固定のファン等が付かないように祭りへは参加させていない筈だが、おそらく新聞の売れ行きが快調で喜んでいるのだろう。

是非人攫いのお仕事も快調に行って欲しいものだ。

俺はスマホを机の上に置き、コーヒーを片手に深く椅子へ腰を落ち着けた。今から忙しくなる、疲れの無いダンジョンマスターとはいえ少しくらい休憩しておこう。

 

 

◇

 

 

「また良い感じの連れてきましたよ!文ちゃん優秀!」

「来たか、そこ置いておいてくれ」

 

あれから僅か一日後。

我がダンジョンへは続々と新顔が送り込まれていた。

 

妖精、ミニマム妖精、妖精、知らん妖怪、ミニミニ妖精ーー。

小さい妖精なら射命丸は2、3人纏めて運んでこれる為、このままではあまり意味の無い人攫いになると危惧した俺は、彼女の二度目の帰還のタイミングで妖精は締切にせざるを得なかった。

その時点で妖精は5体となっており、当初の目標の「最低2体」はとっくにクリアしている。

だが、何というか、小さい。

小さい個体なら知能レベルも低いからそれを狙え、と俺が指示していた為身から出た錆なのだがーーティンカーベル程度のやつもいるのだ。まさかそんなに小さいとは。

これを、どう金策に使えと。

このままだと妖精は全て研究室送りとなってしまう。俺はマニュアルを目を皿にして読み込み、どうにか使い道がないか悩みに悩むこととなった。

それが昨日の話。

 

現在、俺は本日二体目となる妖怪を研究室に運び込んでいた。

一体目は既に増設した牢屋へ運び込み、泥デーモンに孵化作業を行わせている。妖精が金策に使えなかった為新たな苗床の確保が急務であり、本来なら先程射命丸が連れてきたこいつも送り込みたかったのだがーー少し気になる事があり、研究材料とする事にした。

 

それと言うのも、外見に見覚えがあるのだ。

肩にかかる程度の黒髪に、白と赤のメッシュ。服は白を基調としたワンピースとセーラー服の合体のような構造で、スカートの裾は黒と赤の意匠となっている。

原作ではイラストの為、確証は無いがーー鬼人正邪だろうか。

かなり色々と悪さをして、一つの作品の主役にもなった主要キャラだが、打出の小槌や便利アイテムが無い今はただの雑魚妖怪だ。射命丸も特に何か感じる事はなく、孤立した攫いやすい妖怪として攫ってきたのだろう。

 

まあ思うところはあるが、実際こいつが居なくなったところで気が付くものは殆どいないだろう。かなり良い人選である事に疑いはない。

とにかくこれで妖怪2体目だ。

妖精と妖怪の最低欲しかったラインは越えた。あとは様子を見つつ、可能な限り金策を進めていこう。

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