身体の違和感で目を覚ました。
いや……そもそも、寝ていたのだろうか。気が付けば、何か身体に違和感があったというのが近いのかもしれない。
とにかく私は意識を取り戻してーー下半身から脊髄を貫くような強烈な快感に、思わず背中を仰け反らせた。
「ーーカ、お"ぅ!?」
喉から出したことのないような低い呻き声が漏れるが、それを恥ずかしいと思う余裕もない。ただただ、「大量の何か」が私の下半身を内側からまさぐり、そして外へと出て行こうと蠢く刺激から、必死に身体を逃そうとよじるので精一杯だった。
「お"、お"ォ、ぅ、ふぅぅゔ?!?」
何かが私の中にいる。
それは、それらは内側からお腹の中を広げようとして、それに伴って迸る異常な快楽に、脳と視界がチカチカと白く明滅する。
意識が再び曖昧になりーー膣に込めていた力が抜け、何か液体が濁音と共に漏れた事で、冷水を浴びせられたように意識を取り戻した。
ーーブピュ、ビチチグチュ
そのあまりにも下品ではしたない音に、私は状況にも関わらず燃え上がったように顔が熱くなった。
よもやおしっこを漏らしたのか、と慌てて上体を起こして下半身を確認しーー初めて周囲を認識し、私は再度背筋が凍った。
私の下半身から、おしっこが出る場所とは違う穴から噴き出していたのは、白く濁る大量の液体であった。
そしてその液体の中で跳ね回る、醜悪な蟲達であった。
「は、へ?ひっ……」
何か疑問を口にしようとして、掠れたように言葉にならない声が漏れる。
だって、さっき何かを私は漏らしてしまって。そこにあったのは白い液体と、得体の知れない蟲。それじゃあまるで、今私が出したのはーーいや、私から、出てきたのは、
ーーキィ
同じ蟲が、私の股から顔だけ出した。
それは鳴き声か、それとも空洞のような身体の構造に対し、外的圧力がそれを潰したことで押し出された空気の音か。そしてその場合の外的圧力は、私が反射的に力を込めてしまった「膣部」の括約筋であり、
「ぅぶ、ぉォっえ」
吐いた。
喉からせりあがるような嘔吐感に任せ、口からボトボトと唾液と胃液を垂れ流す。なぜか私の身体には力が入らず、ただ口を開けて流れ出るものと嘔吐感が収まるのを待つしかなかった。
ごぽごぽと、黄色く濁った液体が歯と舌を伝って流れていく。涙で霞む視界でそれを眺めているとーー急に強烈な悪臭が鼻を刺激した。
それを吐き出そうと喉が膨らんで、どこか冷静な頭が疑問を覚える。なぜ、その匂いに対して身体は「吐き出そう」としているのか。それはつまり、匂いの元凶は、
ゴポっ、と水疱音を響かせて、粘稠度の高い唾液の塊が口から吹き出した。それは先ほどと同様に黄色く濁り、そして異なる点として何かつるんとした透明な球体をいくつか含んでいる。
私はそれを見て、何かを理解した。
卵だ。
おそらくは、蟲の。
「は、はは」
なんだか笑えてきた。
理解が追いつかない。しかし魔法使いとして日々探求を続ける私の脳みそは、こんな時であっても、それがタチの悪い悪夢と処理はしてくれなかった。ただただ地獄のような、地続きの現実である。
お腹に、再び堪え難い快感が押し寄せた。
「ゥッ、ふゔぅ」
叫びそうになり、気力で抑える。
そしてこの快感が何によるものなのかを直ぐに悟り、泣き喚きたくなった。
何か出来ることはないのか。私は考えることを止められず、破れかぶれに手で股を抑える。手の平に下半身の細かい振動が伝わって、それが蟲達が暴れ回る衝撃だと気付き、また吐きそうになった。
しかし必死に堪え、ただがむしゃらに股を抑える。ほとんど力が入らない足を必死に閉じ、身体をくの字に曲げて耐える。
このまま抑えてどうするのか、蟲は外に出したほうがいいんじゃないのか。そのような考えも浮かんできたが、それが蟲の自然な動きであるなら好きにさせたくはなく、そして何よりあの醜悪な姿をこれ以上目にしたくなかった。自分のまだ誰にも許したことのない身体を、あんな醜い蟲が好き勝手しているという現実を、これ以上見ると何かおかしくなりそうだった。
外に出られないことで、お腹を内側から押し上げる蟲の動きは活発になる。それは込み上げる異常な快感がより強くなっていくということであり、私は何度も意識が飛びそうになった。
嘔吐感と気持ち良さと身体の倦怠感。全てが異様で、どんどん私の理性が削られていく。それでも必死に股を抑え、私はそれだけは守ろうと歯を食いしばってーー
「おいおい、それじゃ蟲潰れちゃうだろ」
男の声とともに、股を抑える私の手が無理矢理引き剥がされた。
「ーーあ」
ブビュ、と。
溜め込んでいた全てが、一気に解放される。
「あ"、あ"、お"お"ゥんふぅゔゔゥお"お"ォ」
ーーブピュブヂヂュピュビュ
決壊した。
必死で留めていたそれらが、我先にと私の股から噴き出していく。
それは醜い芋虫のような見た目の蟲であり、ドロドロと濁る白い液体であり、私自身から出る液体であった。
「お"お"お"ォゔ、ふ、ひっ、ま、まって、ゔゔゔゔゔ」
蟲が動くたび、ゾリゾリと膣内が擦り上げられて、それは異常な快感として私の脊髄を貫く。堪えていた蟲が一気に外へ出たことで、押し寄せてくる快感も想像を絶するものとなっていた。
最後の1匹が外に出た後でも、私の身体の快感は抜けきらず、背中を仰け反らせたまま息が吸えずにいた。快楽に頭が灼かれながら、僅かに残る理性で息を吸おうと口をパクパクさせる。
そしてようやく一息が吸えた時、私の耳から男の声が入ってきた。
「痛覚が麻痺してるだけかと思ってたけど、その様子だと気持ち良くなってるのか。苦しんではいなさそうで何よりだな」
息も絶え絶えの中、ぼんやりと疑問が浮かんだ。
こいつ、誰だ。
「あー、やっぱ結構潰れてるな。まあ仕方ないか。次だ次だ」
この声は聞き覚えがある。
……いや、そもそも私はなんでこんな目にあっているんだ。
私は確か、いつも通り森に出てキノコを集めて、家に帰って……。
「話…はまだ厳しそうだな。先に次詰めとくか…」
にゅぐ、と股に何かが押し当てられる感触がした。
身体の疲労感と息の苦しさから、わざわざ上体を起こして何が当たっているのかを確認するのも億劫に感じる。しかし、何かが股を割って穴の中に入ってくるのを感じ、私は慌てて確認した。
蟲が、人の手によって、私の中に押し込まれていた。
「ーーなっ……!?」
反射的に下半身に力を込めて、股を勢いよく閉じた。
その圧力で蟲はひしゃげ、気色の悪い体液を吐き出しながら潰れる。それに嫌悪感を抱きつつも、私は一先ず胸を撫で下ろした。
そして次に、その蟲を持っていた腕を目で追って、先程から声が聞こえていた男の顔を見た。
私は耐えきれず、再び吐いた。
◇
魔理沙が俺の顔を見た瞬間吐いたんだけど。
え、えええ……。嫌悪感を覚えるとかあったけど、ええー…。
そうですか、吐くほど俺はやばいんですね。
「意外と元気そうだな。話とか出来そう?」
気を取り直して魔理沙に話しかけるも、彼女は俺の方を見ようとしない。
というか、ちょっとずつ身体を俺から離していっている始末だ。これからさっき潰されたぶんの蟲を挿れ直さないといけないし、それは困る。
俺が魔理沙の太ももを掴むと、彼女は大きく身を震わせた。
「これから蟲挿れるぞ。今度は潰すなよ」
そう話しかけた途端、魔理沙は慌てたように俺に向き直る。
俺が手に持つ蟲に目をとめ、それを防ごうと手を伸ばしてーー俺の顔を再び見て、顔を真っ青にした。
浮かんでいるのは、殆どが恐怖によるものか。ただ顔を歪めているところを見ると、しっかり嫌悪感のような悪感情は感じていそうだ。マニュアルには嫌悪や敵意を抱くとあったが、あまり敵意のようなものは感じられないな。まあ、そこは個人差ということか。
魔理沙は顔は真っ青にしつつも、手だけは必死に蟲を押し留めている。
それだけ自分を苗床にされるのが嫌なのだろう。これはさっきと同じただの種付けワーム君でしかないのだが、それでも相当の忌避感を抱くのか。
それならば、これからの交渉も割とスムーズに進むかもしれないな。
俺は一旦蟲を入れるのを諦め、魔理沙に話しかけた。
「えー、お前には二つの選択肢がある」
いや、本当にそうかな?
言いながら三つ目四つ目の選択肢も頭に浮かんできた。俺、もしかして交渉事下手くそか?
「一つは、このまま身体の自由を奪って、蟲の苗床にされる選択肢」
魔理沙は必死に首を横に振っている。
ふむ、非常に都合がいい。
「もう一つは、お前の魔法技術を持ちうる限り役立ててもらう選択肢だ」
そう、これがDPとダンジョン機能に頼らない、ダンジョン強化案だ。
魔理沙は幻想郷の中でも、決して上位を争うような魔法の実力ではない。パチュリーやアリスなど、魔法の幅も深みもより優れたものがいるからだ。
しかし、俺が求めるのは蟲の強化や陣地作成。そもそもの彼女達の専門分野とは異なるし、キノコから独学でド派手な火力魔法とか研究してた魔理沙は、充分適任なのではないかと思う。
あれだけ蟲を嫌がっていたのだ、しっかりと協力してくれるだろうと、俺は期待を込めて魔理沙の反応を伺った。
そして、俺は自身の失策を悟った。
「……それは、お前が私の『魔法』を奪おうとしているってことか」
「ん?」
ブチギレていた。
床を這いずっていた蟲を握り潰し、魔理沙は怒りを込めて俺を睨みつけている。
どうやら、恐怖や嫌悪を超えさせる地雷を踏んでしまったらしい。
「……魔法使いにとっての『魔法』が、どんなものか知らないんだな」
「うーん、そう言われると、確かに知らない」
「ッ!わ、私にこんなことしておいて、お前はまだ足りないって言うのか!?何がしたいんだよ!こんな、蟲を、なんで」
「うーん」
混乱しているな。
目が覚めたら蟲に巣食われていて、何か地雷を踏まれて、頭がこんがらがっているのだろう。言葉にしたら酷いな、そりゃそうなるよ。
というか、俺も何が地雷だったのかよく分かっていない。互いに混乱しているし、ここは状況をシンプルにするか。
尚も俺に罵声を浴びせてくる魔理沙を無視し、マニュアルを開いてとあるモンスターを探す。
それは費用が200DPと非常に高価なモンスターであり、即座にこの場に召喚した。
現れたのは、俺の身長に匹敵する大きさの、大量の触手の塊。
イソギンチャクのように、本体部分からウネウネとした触手が大量に生えている。一応分類上は虫らしいが、見た目は水生生物だ。本体部分は触手で見えづらいが、蜘蛛のように節だった足が生えている。いや実際、天井などに潜伏して獲物を捕らえる生態だから、糸でなく触手を使う蜘蛛のようなものか。
こいつを見て再び恐怖と嫌悪に顔を歪ませている魔理沙へ向けて、説明を開始した。
「こいつも、人間を苗床とする」
彼女の顔色が変わった。
「しかも、ただ子供を産みつけるだけじゃない。身体を作り変えるんだ」
「……は?」
「母体として最適化する。カマキリの脳に寄生して、鳥に食べられやすいよう草の上に移動させる虫とか知ってるか?そういう感じで、お前の脳みそを狂わせて、産卵の母体となることに喜びを覚えるようにするんだ」
「………」
「こいつの分泌する毒素で身体を中毒にするだけだけどな。ただそうなるとまともな思考とかも出来なくなるし、嫌だ嫌だと思ってても、虫に卵産み付けてもらわないと気が狂うらしい。人間としては死ぬようなもんだな」
言葉を発してはいないが、魔理沙がこいつに恐怖を抱いているのは間違いなさそうだ。
「お前をこいつに与えると脳が犯されるから、魔法が使えなくなる。それは俺も嫌だ。お前もそうだろ?」
「……あ、当たり前だろ」
「今協力してくれないなら、こいつに卵を産ませる」
恐怖一色で、魔理沙は俺を見た。
先程までの怒りは鎮まりかえり、身体も震え出している。
魔法を奪うというのがどう地雷になったか分からないが、頭を駄目にするというのは、ただ殺すとかよりも脅しになるのかもしれない。魔法使いとか知能があってなんぼだし、色々想像つくのも大きいかもしれないな。
「ちょっと俺が知りたいこととかやって欲しいことを、調べたり試してくれるだけでいいんだ」
「……ぅ」
「どうだ、協力してくれないか」
魔理沙はそれでも凄く悩む素振りを見せた。しかし不意に伸ばしてきた触手が魔理沙の頬に触れて、彼女は慌てて身体ごと逃げようとする。しかし度重なる産卵や昏睡スプレーの効果、蜘蛛の卵による生命力の吸収から身体に力が入らず、ころんと横に転がるだけとなった。
触手はそんな魔理沙の身体を撫で回し、逃げようにも身体を捩らせることしか出来ずーー。
「よし、ありがとな。これから宜しく」
魔理沙の魔法を手に入れた。