そこまでしてダンジョン内に籠らないといけないの?と、そういう疑問が湧いてくる。
敵が来ても雑魚なら催眠した魔理沙で片付けられるし、そもそも蜘蛛と魔法で簡易的な要塞と化している。実際目先の危険があるわけでもなし、粘れるだけここで粘ればいいじゃんと。
まあ、それはそうだ。
だが、俺は種族が『ダンジョンマスター』らしく。
この種族は、兎にも角にもダンジョン内にいる事が前提の生き物のようだ。
大抵のゲームには、HPという概念がある。
健康で元気いっぱいの状況がHPフルとして、0になると戦闘不能ないし死亡という概念だ。
幻想郷における一般人間のHPを、仮に100としよう。
大きな石が頭にあたれば死ぬし、その辺の毒キノコ食えば死の危険があるし、熊とかと出会えばほぼ確実にワンパンで死ぬ。そういう普通の人間で、前世の俺の種族である。
今の俺のHPは、10だ。
小さな石を投げつけられても、当たりどころが悪ければ気絶する。相当体力を奪っているとはいえ、今の魔理沙に対して蟲で押さえつけずに産卵作業を行えば、仮に暴れて蹴り飛ばされると多分死ぬ。
耐久力なんて一概に説明できるものでもないが、そんなこんなで紙装甲なのである。
それもひとえに、俺がダンジョンの中に居ないからだ。
ダンジョンマスターがダンジョン外に出ると、各種ステータスが1/10となり、様々な権能が使用不可となる。
つまり今俺がダンジョン内にいても普通の人間でしかないという訳だが、それは今だけのこと。
ここからは、ダンジョンマスターがダンジョン内にいることのメリットのお話だ。
マニュアルによれば、DPの使い方はダンジョン拡充とモンスター強化に留まらない。非常に重要な使い道として、俺自身の強化という項目が存在している。
ダンジョンマスターの強化は、大体三つに分類される。純粋なステータスの強化に始まり、魔法とかのスキルの獲得と、ダンジョン内での権能獲得だ。
特に権能については、結構凄そうなものや必須となるだろうものも色々あった。その中で特に優先して欲しいと感じたのは、10000DP消費による「各部屋へ自由に行き来できる権能」。これがあれば、ダンジョンに篭りながらも最高効率で産卵作業が行える。
アホみたいに高いが、侵入者がモンスターと戦っている最中に後ろからひょっこり現れて昏睡スプレーをする、などと極めて強力な使い道も考えられる。というか流石にそっちが本来の用途だと思う。
ダンジョン内にいるメリットはそれに留まらない。
というか大前提となる、ダンジョンが非常に強力なのだ。
ダンジョン作成の要素は、ざっくりと『環境』と『罠』、そしてそもそもの『部屋の種類』に分けられる。
『環境』はやりようによって何でも設定できるが、分かりやすい完成形を挙げると、地面を全てマグマにしたり、毒沼で埋め尽くすことも出来る。湿度や温度、風の有無などから細かくDPを消費して調整出来るため、本当に何でも作れそうだ。
『罠』は、まあ想像しやすい。落とし穴とか、センサーに反応して撃つボウガンとか。全体的にモンスターよりも殺傷力に対してのDP消費が高い気がするが、その分効果は見込めると信じたい。
『種類』は、そもそも戦闘するための部屋なのか、その他の特殊な施設なのかという理解で良さそうだ。侵入者を捕らえる牢屋や、その調教部屋などもあり、今の俺でも使えそうな施設が多々ある。また罠専用の部屋とかもあって、まだまだマニュアルを読み込む必要はありそうだ。
諸々を組み合わせると、「ぼくのかんがえたさいきょうのダンジョン」が作れそうなことは、分かってきただろうか。
そしてそれら強化を行う為には、俺はダンジョン内に居ないといけない。今俺に出来る機能は、召喚用に一つだけ設置した部屋へのモンスターの召喚と、アイテムの購入だけなのだ。『侵略』システムがあるためか、モンスターの強化等の調整は出来ても、ダンジョン自体や俺自身の強化は行えない。
そして強力なモンスターを召喚しておこうにも、部屋の外に出すと魔理沙ハウスを内側から破壊して自由行動しだすかもしれないので、大変厳しい。
部屋に設置すればいいが、モンスターの部屋への設置可能数は強力なほど減る為、触手ワーム以上のものは出来てもあと数匹だ。まあ部屋を拡張するなり、より良い種類の部屋を設置すればいいのだが、ボス部屋に入る為に結局一旦全て撤去するので非常にDPの損失が激しい。
結局は「来るかもしれない外敵への対策」であり、今後の事を考えると魔理沙ハウスはそのまま綺麗に残しておきたいため、そもそも強力なモンスターを設置していても使い勝手が悪すぎるのもある。
以上のことを踏まえて、俺は可能な限り早くダンジョンに入ってしまいたいのだ。
そのための目安として、俺は以下の方針を打ち立てた。
「アリス・マーガトロイドが来ても撃退出来る戦力分のDPを確保して、ダンジョン内に戻る」
うーん、厳しい。
でもやらないとね。死なないために。