※この作品はR-18です。

二人だけの新時代   作:若杉優太(テト/teto)

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永久に続く新時代

 雨が降りしきるステージの上で、私は一人膝を抱え込んで座っていた。

 周りには海賊や海軍、一般人の人達が私の世界へと導かれて穏やかな顔で眠っている。

 そんな光景を見つめて、思わず笑みを漏らしてしまう。

 

「もうすぐだから……もうすぐ、だよ……?新時代は……」

 

 そう、もうすぐなのだ……私が目指した世界は近い。

 争いや飢餓もなく、悲しい顔をする人が誰一人として居ない理想郷(ユートピア)は私によって作られる。

 みんなの夢は私の願い……だから、私が何としてでもやり遂げなければならないのだ。

 映像を通じて見てしまった世界の歪みをなくすため、命を懸けても私が……私、が……

 

「あ――」

 

 一瞬だけ身体に力が入らなくなったかと思うと、気付けば私の身体は倒れてしまっていた。

 ――ああ……そろそろ、新時代の幕開けだ……

 身体全体へ寒気や喪失感が襲い掛かり、確実に死が近づいていることがはっきりと分かったが、それでも私は寂しさなんて感じていない。

 だって、あっちへ行っても彼が居るんだから。

 

「みんな、一緒だもんね?ルフィ……」

 

 倒れてしまった私から少し離れたところで、他のみんなと同様に眠っているルフィとルフィの友達。

 彼らは今、私の世界で何をしているんだろうか?ルフィの友達は予想がつかないが、少なくともルフィだけは幸せに暮らしている……直接見たわけではないけれど、彼の穏やかな寝顔を見て、何となくそう思ってしまった。

 

「かっこいいなぁ……かっこよくなったなぁ……」

 

 今日、久々にルフィと会った時からずっと思っていたが、彼の顔は随分男前になったと思う。

 幼い頃は子供っぽい顔で、意地っ張りなルフィを異性というよりか競争相手としてしか認識しておらず、”かっこいい”なんて微塵も思わなかった。

 でも、こうしてじっくり顔を見つめてみると、変わらぬ無邪気さと逞しさを備えた私好みの男へと成長していたことがよく分かる。

 そんな彼と、これからは一緒に楽しく笑い合って暮らしていける。私が唯一心を許せるルフィと、永遠に……永遠に一緒だ、幸せでないはずがない。

 

 なのに――どうして私の瞳からは涙が落ちるんだろう?

 

「本当にこれで、良かったんだよね……?ルフィ」

 

 罪悪感なんて微塵もなく、ただみんなを新時代に導こうとしていただけ……映像を通して知った醜い世界からみんなを救い出すためなら、現実の肉体なんて蔑ろにしても構わないと思っていたはず。

 だけど、私の弱い心は、どこかこの世界を憎み切れていないところがある。

 特にルフィの顔を見つめていると、幼い頃の楽しかった記憶が蘇り、ふと私は思ってしまう――ああ……もう一回この世界でルフィと一緒に居たい、と。

 

「あはは……わたし、何考えてるんだろ……あの頃になんて戻れるわけないのにさ……」

 

 もう今更あいつと、ルフィ、あいつの海賊団の奴らと仲良くやっていた夢のような時間は戻ってこない。

 いや、戻りたくなんかない。私を裏切って置いてった、あいつらなんて……嫌いに決まってる。

 そう……思ってるはずなのに、やっぱり私はあの時のことが忘れられない。

 

「ルフィ、ルフィ……」

 

 力の上手く入らない身体で這いつくばり、私はルフィの近くへと寄る。

 視界もぼやけてきた中で走馬灯のように思い浮かぶのは、やっぱりルフィと私で言い争いをしていた時の記憶や、あいつの娘だった時の記憶。

 懐かしい感じもするが、昨日あった出来事のような気もする。

 ルフィやみんなと歌って踊って騒いだ日々……新時代では、そんな楽しい毎日が送れるように私は願うばかりだ。

 

「(だって、私の居場所はこの世界にないんだからさ……)」

 

 ふと心を蝕んだ寂しさを紛らわすようにして、私は咄嗟にルフィの手を握り締める。

 すると、今まで私を苦しめていた寒気や葛藤は嘘みたいに消え去り、私の心は太陽に照らされたような温かさで包み込まれた。

 ――ああ、やっぱり……私に向き合ってくれるのはルフィだけだったんだね……

 眠るルフィへ微笑みかけ、私は彼の手をぎゅっと握り締める。

 きっとルフィ私を見捨てずに、あっちの世界でも私へ寄り添い、一人ぼっちになんかさせないだろう。

 根拠はないけど、私はそう確信できた。

 

「(寂しくなんかないや、ルフィが居てくれれば……寂しくなんか……ないさ……)」

 

 身体から力が抜けていき、確実に熱も失われていっているのに、私の身体はとてもポカポカとしている。

 徐々に瞳も閉じていくけれど怖くはない、不安はない。

 それだけルフィの手から伝わる熱は絶対的なもので、素晴らしいものだった。

 でも、少し欲を言うならば……

 

「もっと早く、この熱を分けてほしかったな……」

 

 そんな自分の声が耳へと届いた後、最後に目にしたのは徐々に止んでいく雨と、どこか笑っているように思えたルフィの顔。

 私のココロは晴れ切っていた。




 閲覧ありがとうございます!一応、これでこの話は終わりにしますが、作者の気が乗ればウタの小説を書くと思いますので、その時はよろしくお願いします!

 pixivにも投稿しているので、良ければ……
 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18641302
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