第9話
ここは冥界の一角にして
フェニックス家の屋敷。
その次期当主にして
リアス・グレモリーの婚約者である
ライザー・フェニックスは
とある美女と睦み合っていた。
相手は彼の眷属のユーベルーナで
あった。
「ふ、ん……」
「あぁっ!」
ライザーがユーベルーナに
覆い被さりながら腰を動かすと、
彼女は艶かしい声を上げる。
ライザーはこの女を
心底愛していた。
彼女も自分に惚れているし、
何より身体の相性が良い。
フェニックス家は名門貴族ではあるが、
代々政略結婚が多くて
恋愛結婚は殆どない。
その為、このユーベルーナとは
運命的な出会いだったと言えるだろう。
そして、二人はお互いを求め合い、
絶頂へと昇っていく。
「出すぞ! ユーベルーナ!!」
「来て……私の中を満たして!!」
ライザーはユーベルーナの中に
大量の精液を流し込んだ。
それと同時にユーベルーナも
また達したようで
ビクビクッと痙攣している。
そして暫くしてライザーは一息つくと
ユーベルーナから自分のモノを引き抜いた。
するとそこから
白濁とした液体が流れ出る。
「ふぅ……。気持ち良かったぜ」
「私もです……ライザー様♡」
そう言って二人はキスをする。
出来うることならば
このまま時が止まれば良い。
だがそんな願いは叶わない。
炎はいつか燻り、陰る。
風はいつか澱み、止まる。
時はいつだって無情だ。
「お悩み事ですか……ライザー様」
ベッドにねそべるユーベルーナは
身体をむくりと起こし、
彼女に背を向けてベッドに座る
ライザーの背に
しなだれかかりながら言う。
その表情は夫の重荷を
少しでも担ぐ様な良妻のそれ。
「ああ……まあ、な」
ライザーはその問いには答えず
ただ一言だけ返した。
しかしそれで充分であった。
ユーベルーナはそれを察する。
「あの男のことですね?」
ライザーは何も言わない。
だがそれが肯定の意を示していた。
ユーベルーナはそれを見て微笑む。
「ご安心ください。
私はどんなことがあっても
貴方のお側にいますわ」
「……すまないな。
いつもお前には損な役目ばかり
押し付けてしまう」
ユーベルーナの言葉に
ライザーは感謝しながら
再び窓の外を見る。
そこには月があった。
その光はとても優しく見えた。
(俺はまだ迷っているのか?
俺は一体どうすればいいんだ?)
ライザーは自分の心の迷いを
振り払うように目を閉じた。
ー
「……」
「……」
「……」
どうも、九頭竜安里です。
はぐれ悪魔討伐の件で
話に来たんですが
オカルト研究部の雰囲気が妙です。
というか最悪だ!
なんだこの氷結地獄みたいな空気!
誰かなんとかしてくれよ!
「えっと……今日は何用で?」
とりあえず、
部長さんに聞いてみることにする。
ちなみに朱乃さんの話では
アーシアとイッセーは遅刻らしい。
「珍しいッスねあの二人が
遅刻なんて。何かあったんスか?」
「そんな事貴方に関係ないわ」
こ、コワイ!
リアス先輩マジで怖い!
紅髪の殲滅姫モードで
こっちを睨まないでくれよ!
俺ははぐれ悪魔じゃなくて
貴方の同盟相手である
ゲイトの旦那の部下なの!
いわば出向社員だから!
「いや、でも……」
「関係ないと言っているでしょう!?」
……ダメだこれ。
完全に聞く耳を持ってくれない。
「木場、どういう事なの?」
「それより安里君。
君は堕天使たちと付き合いが
ある様だけど……あまり
関わらない方が君のためだよ」
「おい、祐斗!
お前何を言っているんだ!」
「…………」
木場の奴、
何を言いたいんだよ。
珍しく冷たい残酷な目だった。
それにしても、
なんだろうこの感じ。
何か嫌な予感がする。
「ふふ、アーシアちゃんと
イッセー君が深い関係なのは
公然ですもの。
この間は部室のシャワールームで
あんなことやこんなことを
していた様ですわ。
仲良き事は美しきかな。
うふふふふ」
「……」
朱乃さんは妖艶に笑いながら
そう言った。
彼奴等そんな事してたの!?
時と場所を考えろよ!
「いや、
ヤリたい盛りの蜜蜂イッセー君の
眼の前に箱入り娘がいたら
そりゃそうなりますよって話。
高嶺の花より近くの蓮華草。
男のサガですなぁ」
ナイアの奴がなんか煽ってるし。
っていうかお前性別上は女だろ。
「それにですよォ。
昔のローマじゃ奴隷同士の
結婚は合法だったし。
眷属同士の子供なら
当然生まれついての眷属。
英才教育を叩き込んで
尖兵にするか、
あるいは冥界版
光源氏計画なんてのも
いいじゃないですかあ?」
「……下衆な女ね。
ゲイトさんがどうして貴方を
側近にしているのか
理解に苦しむわ」
「人手不足が深刻なんですよウチ」
リアス先輩は嫌悪感丸出しで
ナイアへと吐き捨てる様に言う。
まあ確かに俺もそう思わんでは
ないけどなあ……。
レイナーレとミッテルトの
ふたりはある意味頼れるけど
木場と朱乃さんは堕天使嫌いだし
イッセーとアーシアちゃんに
レイナーレを会わせるのも
気まずいし……。
と、その辺りでイッセーと
アーシアちゃんの二人が
部室に入ってきた。
「すいません、遅れました!」
「イッセー……最近部室への遅刻が
多いようだけれど……
どういうつもりかしら?」
「す、すみません部長……」
「言い訳は聞きたくないわ。
貴方は私の大切な眷属の一人なの。
それなのに……一体どういうことなの?」
何だかパワハラの現場に
居合わせている気分だ……精神的に辛い。
下級の眷属は解体するとか言い出したらどうしよう。
「これでは貴方の処遇について
少し考えなければならないわね……
場合によっては……」
「す、すんませんでした!!」
イッセーは深々と
頭を下げて謝った。
「まあまあ、いいじゃないか。
許してやれよリアス」
すると炎が巻き起こり、
何かチャラいホストみてーな
奴が現れた。誰だろう?
身なりからして金持ちっぽいが。
「フェニックス家の三男坊……。
ライザー・フェニックス……。
部長の婚約者……です」
小猫ちゃんが
そっと俺に解説してくれた。
しかし小猫ちゃん、
リアスさんの婚約者を三男坊って。
しかも呼び捨てって。
「久しぶりだな、リアス。
会いたかったぜ」
「私は会いたくなかったけどね、
ライザー」
「おいおい、つれないことを言うんじゃないよ。
俺たちは婚約者同士なんだ。
もっと再会の喜びを分かち合おうぜ?」
そう言ってライザーは
リアス先輩の肩に手を回して
髪を撫でる。
「ちょっと、離してちょうだい」
「いいじゃないか。
別に減るもんでなし」
「……」
「おお怖い怖い。
相変わらずお転婆なお姫様だな。
だが、そこがまた可愛いんだがな」
何か一々所作が
芝居くさいんだけど
金持ちって皆こうなの?
それとも三男坊だけ?
「おい、そこの下民」
ライザーは俺の方を向き、
指差した。
「お前が九頭竜安里とかいう
はぐれ悪魔のなり損ないか?」
「いや、悪魔じゃないし」
俺は手を振って即座に否定するが
三男坊は鼻で笑った。
「ハッ! どうせ堕天使と
つるんでいる様な連中は
ろくでもない屑ばかりさ。
そんなのと一緒にいるんだ。
お前も同類だろ? 違うか?」
「……」
「黙るなよ。
図星だから何も言えないのか?
情けない奴め。
大方お前みたいな奴は
『はぐれ悪魔狩り』すら
満足に出来ないんだろ?
全く……お前ら無能共は
本当に使えないクズどもだ。
俺達上級貴族がいるからこそ
この学園や人間界を
支配できているというのに……。
その事実すら認識できないとはな」
「安里君は部長の……
ひいてはグレモリー家の食客です。
先の堕天使との一件でも
功績をあげた彼を侮辱するのは
やめてくださいますか」
話してもムダだなと思って
黙っていれば
木場が冷たい視線を向けながら
口を開いた。
お前、本当にいい奴だな。
「ふん、下級の成り上がり風情が
調子に乗るなって話だ。
お前らのご主人サマがどれだけ偉いか知らんが、
いずれはこのフェニックス家の
次期当主である
このライザー・フェニックスが直々に討滅してやる」
え、なに言ってるのこの人。
コワ〜……。
そんな無茶苦茶通るとか
冥界の法律どうなっているの?
つーかゲイトさんが負ける
ビジョンが
何となく想像できねえけど。
「おーおー、好き勝手言いなさる。
次期当主の器量が伺えますなぁ」
そこでソファに座っていた
ナイアが漸く口を開いた。
よし、今回に限っては
お前の煽りスキル発揮ヨシ!
言ったれ言ったれ!
「と、言うかフェニックス家自体
元々秘薬フェニックスの涙の原料である
ルルドの泉を掘り当てた
俄成金の家でしょうに。
確か、
初代のライザー・フェニックスが
フェニックスの涙を体制型に
ばら撒いた功績で爵位を貰えたと
聞いた覚えがありますけど?
いやーフェニックス家って
自分が肥えるために先祖の頃から
他人には死と滅びを齎す
ウィルスみたいな
家なんですねー」
「……ッ!! 貴様ァ!!
俺のみでなく同じ名の始祖を
愚弄する気かあッ!!」
誰がそこまで煽れと言った……。
ナイアの服の襟首を掴み、
ライザーは癇筋を震わせる。
「御二方共そこまで。
ナイア様も声が高すぎます」
その時メイドさんが現れて
ライザーに告げる。
声が高いって……否定はしないのか。
「……見苦しい所をお見せした」
ライザーは舌打ちしながら
渋々とナイアから手を離す。
あれ? あのメイドさんの方が
立場が上なのかな?
「ライザー様、
ネフレン様がお待ちです。
これ以上待たせるのは失礼です」
「……ああ、そうだな。
今日のところはこれくらいにしておいてやる。
リアス、近いうちに迎えに行く。
それまで身辺を整えておけ」
「結構よ。私は貴方と結婚するつもりはないわ」
「まあ、そう言うなよ。
俺はお前を幸せにする自信がある」
「私は不幸になる自信しかないわ」
「ふっ、照れるなよ。
お前の気持ちはよく分かっている」
そう言ってライザーは再びリアス先輩の肩に手を回す。
そして顔を近づけ、
キスをしようとした。
「ちょ、ちょっとライザー!?」
リアス先輩も流石に慌てるが、
ライザーは構わず続ける。
だが次の瞬間、ライザーの顔面に強烈な右ストレートが……
当たらなかった。
「……これは何の真似かな下僕君」
「部長から離れろよクソ野郎!」
勿論拳を放ったのは
イッセーだった。
ライザーの顔スレスレで
拳は掌で止められていたのだ。
「おいおい、いきなり殴りかかるなんて
どういうつもりだ?
まさか、俺がお前のご主人様に手を出すと思ったのか?
だとしたら心外だな。
俺はお前のご主人サマにも惚れているんだぜ?」
「嘘つけ! お前はただ単にハーレム要員を増やしたいだけだろ! それにお前なんかが部長に触れるんじゃねぇ! 汚らわしいんだよ!」
イッセーは遥か格上のライザーに
堂々と吠え立てた。
同じ立場だったら果たして
俺に同じ事が出来るだろうか……!?
「ハッハッハ、元気のいい奴だ。
そういう奴は嫌いじゃない。
だがな、お前は少し身の程を知った方がいいぞ?
お前みたいな雑魚が
この俺に楯突いてタダで済むと思っているのか?
それとも俺が誰なのか知らないのか?
俺は泣く子も黙るフェニックス家の……」
「知ってるさ。さっき聞いたよ!
だけどな! 貴族とか平民だのの話じゃねえ!
部長はお前の様なクソ野郎には相応しくない。
だから絶対に渡すもんか!
部長はお前みたいに下衆な男に堕ちたりしない!
部長に相応しい男は
もっと強くて優しくてカッコいい奴なんだからな!!」
「……ほぅ?」
イッセーの言葉を聞いた
ライザーがニヤリと笑みを浮かべた。
「中々嬉しいことを言ってくれるじゃないの
この下僕クンは」
「ちげーよ!
人の話聞いてたのか!」
三男坊、
自分の家名への煽り以外には
強いのな……。
と遠巻きに見ていたのも束の間。
「止めなさいイッセー。
私に恥をかかせるつもり!」
ええ!?
まさかリアスさんがイッセーを
咎めた!?
基本ゲロ甘だったのに!?
「そ、そんな……!?
俺はただ……!」
イッセーは明らかにショックを
受けていた。
俺でさえ意外だったんだから
イッセーにすりゃショックは
めちゃ大きいよな……。
するとライザーはイッセーから
手を離し、同時にリアスさんからも
するりと離れた。
「お前達のような低俗な輩には
想像できないだろうが、
貴族の結婚とは
家と家を繋ぐものだ。
本人達の感情など関係ない。
ましてや俺は次期当主となる者。
その妻になる者は、
即ち一族の女帝となるべく教育される。
そこに愛や恋といったものは
必要とされない。
俺達は政略結婚し、
子を産んで育てる。
それが貴族の在り方であり、
駒としての役割なのだ」
「それのどこに幸せがあるんだよ!
そんなもん
サラブレッドと思い込んでる
家畜じゃねえか! ふざけんな!!」
「……お前は
本当に面白いやつだな下僕クン。
だが、フェニックス家を
侮辱してただとすむとは思うなよ?」
「……ライザー! 貴方、
まさかイッセーを殺す気!?」
リアスさんの顔色が変わった。
流石にそれは俺も看過できんぜ
三男坊よ。
「安心しろ。殺しはしない。
飽くまで決闘の形だ。
不幸な事故は起こる可能性までは
否定できんがな」
「望む所だ! お前みたいな
ゲス野郎に俺は負けない!」
「ふん、威勢だけは一人前だな」
……こりゃマジでヤバいかもな。
「止めろイッセー君!
君がどうあがいても
勝てる相手じゃない!
殺されるぞ本当に!」
木場が必死になって
イッセーを止めようとする。
と、そこでナイアが割って入る。
「そうだ。こうしましょう。
部下の責任は主の責任ですからね
ここはレーティングゲームで
決着をつけませんか?」
「気は確かか女?
俺のチームは8勝2敗の上に
その内の2敗は諸事情あっての
ものだ。だが、
リアスのところはまだ一度も公式戦を行っていない。
その時点で既に
チームの実力差は明白だ」
そう、リアスチームはまだ
公式試合に出たことがない。
ライザーの言う通りだ。
「まあそれもそうなので、
私達もリアスチームに
ゲストとして参加して
戦うという事でどうでしょう?
これなら戦力の差も
埋まると思いますが?
貴方たちが負けても
これなら言い訳が立つでしょ」
「ほざくなよこの売女が……」
「フェニックスというか72柱家がそれ言えます?」
確かにそれなら
多少はマシかも知れんが……。
でも、それでも圧倒的に
不利であることに変わりはない。
「お待ちなさいな!
こちらにとって何のメリットも
ありませんわ! そこの
なんちゃってシスター!
取引の言葉の意味を辞書で
調べてから出直してらっしゃい!」
いつの間にやらライザーの側に
金髪縦ロールのいかにもな
お嬢様が立っていた。
あ、これはあれか。
悪役令嬢の類か?
「誰が悪役令嬢ですの!
私はレイヴェル・フェニックス。
そちらの無礼者は
一体どなたでいらっしゃいまして?」
しまった、また無意識の内に
言葉が出た……。
件のお嬢様は俺をキツい目で
睨んでいた。
「ああ、こいつは九頭竜安里。
先祖代々由緒正しい昆虫ですハイ」
「平民にしとけよそこは!
お前も同姓なんだから
昆虫になるだろうが!」
「あ、そうでした。てへ☆ぺろ」
思わずツッコミを入れてしまった。
「ええい! 黙りなさい下郎姉弟!
貴方たちのような下賤な者に
高貴なる私が話し掛けているだけでも
ありがたく思いなさい!」
「そっちが何者だって
聞いたんじゃねえかよ……」
俺は呆れながら呟いた。
あと俺は弟って扱いなのか……。
「そう怒るなレイヴェル……。
では俺達が勝った場合は
リアスを俺の嫁として貰う。
そしてゆくゆくは
俺の子供を生んでもらう。
それでいいな?」
「ええ。構わないわ」
リアスさん即答!?
ちょっ……!
そういう人生の一大事は
周りと相談しないと……。
「ふふ、リアスがああなったら
梃子でも動きませんわ」
朱乃さんが微笑みながら言った。
「さて、これで決まりですね。
では、ごきげんよう皆さま方。
あとそこの下民、今度会った時は
必ず跪かせてさしあげますわ!」
そう言ってお嬢様は去っていった。
なんで俺だけ下民呼ばわりなんだ……。
「さあ、ゲームは一週間後だ。
せいぜいそれまでに強くなれよ。
特に下僕クン」
こうして、ライザーとの
一件は持ち越しとなった。
しかし。俺達レーティングゲームに
関しては完全に素人なんだけど。
どうすんのかね……。
「特訓……しかないわね!」
部長が力強く宣言した。
「……はい?」
「だから、私達は個人としては
ともかくチームとしては弱いの!
このままじゃとてもじゃないけど
ライザーには勝てない!
そこで、イッセーは悪魔しての
基礎能力の向上、祐斗と小猫は
戦闘技術の向上を目指して
修行するのよ!
あと安里君……貴方は神器の
使い方を本格的に覚えないといけないわね」
「分かりました部長!
この命に代えても強くなって
アイツをぶっ倒します!」
「俺も参加するの!?」
イッセーは燃えていた。
コイツ一旦やる気出すと
とことん突っ走るモンな。
「あの、俺はバイトが……」
「休みなさいな。辰郎さんには
私から話しておくから」
笑顔で言われた。
「いや、流石にそれはちょっと」
「ダメよ」
有無を言わさず却下された。
これだから上流階級は。
「まあ頑張って下さいよ」
「何言っているのナイアさん。
貴方も私達と
連携の訓練をするのよ?」
「えー……」
嫌そうな声を出すな。
「……よろしくお願いします」
結局、押し切られた。
こうして、
俺達の修行が始まった。
……俺も頑張らないとな。
どんな奴でも死ぬことは出来るが
弱いやつは死に方も選べない。
真面目な話短いけど投稿頻度は早い方がいい?
-
早い方がいい
-
遅いけど長いほうがいい