俺は幸福になりたかった。
「……今日は散々な一日だったわ。悪魔祓いや眷属の類なら兎も角、ただの人間が私に勝てると思っていたのかしら?」
天野とかいう一誠のガールフレンドだった女が何か言ってやがる。背中の烏みたいな羽根は何だ……? しかし頭がくらくらするし、月も何もかもが赤く染まっている。それにひどく寒いし、ひゅうひゅうと風が鳴っている。焼け付く様に痛い胸に手をやろうとしたが肩から下の感覚がない。
ああ、そうか……。俺は天野に腕ごと胸を貫かれたんだ……。ぐるぐると世界が万華鏡の様に回る。吐き気が止まらない。視界の端で俺の身体から流れた血溜まりが広がっていく。
……あぁ、俺はここで死ぬのか。何も出来ず、何も守れず、一人ぼっちで虫のように死ぬのか。
「畜生……」
赤いカーテンが降ろされる様に血まみれの瞼がストン、と落ち、そして……。
ー
死んだはずの俺は泥濘を抜けて螺旋階段を降り、廃墟の街へ。その中央には廃墟にまるで似つかわしくない
虹色の大樹と樹液を啜る甲虫。気流に流される様に俺は
大樹の下のテーブルへとまるで流される木っ端の様に
辿り着いた。そこにいたのは3人の男女。山羊角が印象的な妙に色気のある女の人、黒ずくめのシスター、そして紫陽花の様な髪の物静かそうな兄さんという取り合わせ。
ここは何だ。一体どこだ。更に言えば胸の穴も失ったはずの片腕も何事もなかったかの様に戻っている。
たじろぐ俺に一番早く気がついたのは物静かそうな兄さんだった。位置取りからして多分この兄さんがリーダー格なのだろう。
「あら、てっきりあっちの子が来ると思っていたけど……」
「いや、向こうは赤龍帝ですからこっちには来ないでしょう」
「そうだね」
「すいませんが……ここは?」
状況を確認しようとすると黒ずくめのシスターが口を挟んできた。
「まあ、よくある話ですよ。
九頭竜安里(くとうりゅうあざと)君。貴方は死んだんですよ。それが何の因果かこんな所に流れ着いたんですね。しかしまあ……」
黒ずくめのシスターは俺をジロジロと品定めする様に
視線を送ってきた。
「な、何スか……?」
「いやあ、吃驚する程華がありませんね貴方。
本当に人間ですか?実は徳を積んだアリなんてことは
ないですか?まあいいですけど。
えっとですね、ここがどこかと言うと貴方達で言う
冥界に近い場所ですね。この世界には本来存在しない筈の異物が紛れ込んだ時に生じる歪みによって出来た空間なのです」
「頭大丈夫ですか?」
しまった、シスターの姉ちゃんがまくしたてるモンだから思わず口に出してしまった。この性格、何とかならんものか……。
「あら、私はいいと思うわよ?正直なコって可愛いじゃない」
「そ、そうスか……」
山羊角の女の人がこっちに
笑いかけてきたが顔が
赤くなっているのが
自分でも解る。
どうもこういう雰囲気は苦手だ……。
と、言うか俺の心を読んだかの
用なタイミングだったような……。
すると黒ずくめのシスターが
あからさまに嘲笑する様な笑みで
言葉を続けた。
「何言っているんでしょう。
貴方アリ語が解るんですか?」
「もう。
まるで話が進まないじゃない。
そうやってすぐに
マウントを取ろうとして
人を口汚く罵るのが
貴方のダメな所よ、反省なさい」
「はー? 息をするように
股を開く淫売を越えた淫売に
言われたくはないんですけどー?
鍵で門は開くにしても
限度があるでしょー?
盗賊の鍵で開くとか
そのまんますぎて笑えてくるわ」
う、うわあ……。
なんて品の無い言い争いだ……。
二人とも美人なのに台無しだ……。
「所で君、無花果のタルト
食べるかい?」
俺が呆気に取られていると
漸く男の人の方が話しかけてきた。
「い、いえ……別にいいです」
「そうか、残念だ」
「それより、あの二人に代わって
俺に説明してくれませんか?」
「そうだね。
まずは自己紹介を。
僕の名はゲイト・オールドワン。
としておこう」
しておこうって……
何かあからさまに怪しいが
大丈夫なんだろうか?
いや、ここでそんな話をしても
仕方がない。
俺は覚悟を決めた。
「俺は、九頭竜安里です」
「では安里くん、君は今何処にいるかは解るかな?」
「さっきの話だと冥界に近い場所だって事ですけど」
「そう。ここは門の中間点。
君は鍵を抱くものなんだ。
だからここに来ることが出来た」
「よく意味がわからないんスけど」
「うん、だろうね。
でも何れ解るよ」
ニコリと笑って
ゲイトさんは言った。
なんというか、
虹色にキラキラ光るような
笑みだった。
いかん、その気はないのに
ドギマギしてしまった。
すると罵り合いを終えたらしい
シスターが矛先をこちらに向けた。
「解んなくていいんですよォ。
所詮アリはアリらしく巣穴に
水流されて溺れる様を
私達にゲラゲラ笑ってもらえば
いいじゃないですかァ?
どんなカスでも死ぬことと笑われる事だけは
出来るもんなァ」
「なっ……」
何だこのシスター……。
明らかにこっちを
人間扱いしてねえ……!
それに何て
イヤな笑い顔をしやがる。
人の悪意を煮凝りにしたような
醜悪な表情だ。
「ああ、ごめんなさいねェ。
私ったらつい口が悪くて。
貴方みたいなフナ虫にも
優しくしてくれる方がいるから
調子こかない様につい標本釘を
ぶっ刺しましたわホホホ」
「ぐ、ぐうぅ……!」
「はいはい、そこまで」
さんざん愚弄される
俺を見かねたのか
山羊角の女の人が仲裁に入る。
「全くもう、
ごめんなさいね……。
大丈夫? おっぱい揉む?」
無花果どころか椰子の実が2つ……。
って一誠みたいなセクハラかまして
どうするんだ!!
俺は火照った頭を冷ますべく
ぶんぶんと左右に首をふる。
「い、いえ……結構ッス……」
「あら、遠慮しなくてもいいのに」
ふぁさり、と黒いロングヘアを
かき分けると甘い香りが鼻を
くすぐった。
すると次に黒ずくめのシスターが
いかにもかったるそうに
俺へと話しかけてきた。
「で、クソ虫くん」
「九頭竜だ」
「ああはい、クソ虫くん。
とにかく貴方はこれから
チート能力貰ってやりたい放題の
人生が送れるワケですよ。
良かったですねー?
良かった良かった、
良かったって言えよ三下。
お前らには丁度いいご褒美だろ?」
「…………」
この女、完全に
俺の事バカにしてやがる……。
どこをどう拗らせたら
こんな女が生まれるんだ。
だが、こんな女の
挑発に乗るのはアホらしい。
冷静になれ……。
すると山羊角の女の人の
機嫌が良くなった。
「偉いわ安里ちゃん。
よく我慢したわね。
カッとなったらきっとこの子に
潰されていたわよ貴方」
と、目を細めて
俺の頭を撫でてきた。
何だ、何だコレは。
恥ずかしくて死にそうだ。
「所で九頭竜君。
君には兵藤一誠という友人が
いる筈だよね」
「え? あ、はい。
あいつとは小、中、高で
同じクラスになって
ずっとつるんでますけど」
「うん、そうか。
なら彼もまた大きな運命の鍵を
握る者だ。
彼の助けになってあげてほしい」
言われるまでもない。
あいつは親友だからな。
「解りました。
俺にできることなら」
「ありがとう。
君がいれば心強いよ」
「はい!」
思わず笑顔が溢れてしまった。
「あ、でも一つだけ言っておくよ。
無花果のタルトは食べておくべきだった」
「はい?」
「自信作だったんだけどな……
さあ、そろそろ門が開く頃だよ」
なんというか、ゲイトさんは
スケールのデカい人だ。
俺とは感覚が違うというか……。
そうこうしている内に
門が開き始めた。
ー
「と、いう夢だったのさ……。
ってオチか……はぁ……」
一人暮らしのボロアパートで
俺は目を覚ました。
駒王学園の生徒ではあるのだが
諸事情あって、というか
両親は
「学費は出すがある程度生活費は
自分で何とかせんかい」
という教育方針のせいで俺は
絶賛勉学とバイトに
大忙しの苦学生という訳だ。
だからといって、だからと言って!
「あんな夢を見るなんて
どうかしてるぞ……。
一誠に彼女が出来たもんで
嫉妬したのか……?」
だとしたら情けない話だ。
「いやー吃驚する程ダサいですね。
俺が守ってみせるッ! (迫真)
いやーサイコーサイコー。
あの弱さで何を守るんですかね。
というか何ですこの汚ねー部屋は。
蟻の巣でももうちょっと
マシなんじゃねーですか?」
煩いな。
これはこれで整頓されてるんだよ。
少なくとも溝底以下の人間性の
お前の中身よりはキレイだよ
馬鹿野郎。
「って……!?」
何であの性格最低最悪のシスターが
俺の部屋にいるんだ!!
すると奴はニマアッと
邪悪な笑みを浮かべた。
「どうも何も、ここは私と
クソ虫くんの家なんですよ。
つまり同棲ですね。
偶には女王蟻もいいでしょう。
おい働きアリ。パン買ってこい。
黄色いヤツな」
「誰がアリだ!!
黄色いヤツって何だ!
ヒントが少なすぎるんだよ!」
「おや、ご不満ですか?
じゃあ『ゴキブリ』の方がよかったでしょうか?
それと、私の事は敬意を込めて
唯一無二にして輝く
シスターナイアと呼びなさい。
略して神でもいい」
顎をくいと上げて
見下しきった傲岸不遜なこの態度。
俺が神なら間髪入れず
往復ビンタだわ。
「ふざけんな!
長えよ! 長えんだよ! 二つ名が!
てめえみてえな性格最悪女を
どうして敬えってんだ!
大体何だってんだこの展開は!」
怒りの余り、涙が出てきた。
「まあまあ、
そんなに怒らないで下さい。
ほら、おっぱい揉みます?」
わざとらしくしなを作るや
俺の目線の先には
禁断の果実の林檎が二つ……。
ってイカンイカン!
こんな性格最低最悪の女の罠に
掛かったら最後。
血の一滴まで搾り取られる。
「搾り取るのは精子でしょう。
エロ的に考えて」
「喧しい!」
「ああ、そんな事より
学校が始まりますよ。
ほら貴方も着替えて着替えて」
「ってうわっ!?」
な、何でコイツいきなり
服を脱ぎだしたんだ!?
見た感じは俺と同年代っぽいのに
体つきはその……なんだ……。
大人びているというか……。
や、やばい。
目線が釘付けになってしまう。
すると彼女は俺の顔を見て
ニヤリとした。
そして自分の胸を持ち上げ、
谷間を強調してきた。
その仕草がまた妙に色っぽくて
心臓の鼓動が早くなる。
「堪んねえこの女。
俺の股間のマグナムで
ひいひい言わせてえ〜。
おいそのデリンジャーしまえよ」
「人の心の声を捏造するな!」
朝から何でこんなコントを
するハメに……。
俺も一応駒王学園の学生服に
着替えたがナイアの奴は
さっきと同じ
黒のシスター服だった。
じゃあ何で着替えたんだよ!!
「いやサービスシーンは
必要かなと思って」
まるでシスター服とは思えない
尋常じゃねえスリットから
足を覗かせてナイアは宣う。
マジでなんなのコイツ……。
ー
そして今は駒王学園の昼休み。
俺は屋上にてナイアと
二人きりだった。
しかしまるで、ちっとも、
これっぽっちも嬉しくない。
「まあそう言わず
お弁当でもどうぞ。
愛憎たっぷりですよ?」
そういってナイアはバスケットを
取り出した。
クソ……こういう時の雰囲気と顔、
あと声だけは
美少女だなコイツ……。
あと憎しみは込めるなよ。
と内心ツッコミを入れながら
バスケットの中身を見ると……。
小倉トーストが入っていた。
「……何だこれは」
「小倉トースト知らないとか
どこの地底の生まれですか貴方?」
「知ってるわ!
それより何で小倉トーストなんだ」
するとナイアは肩をすくめて
こっちを憐れむ視線を送る。
「わかりませんか?
これは暗黒とあんこ食うを
かけた高度なギャグですよ。
どうせ暗黒空間が出てくるとか
思ってやがったんだろこのトンチキが。
残念! 激ウマ
ご当地スイーツちゃんでした!」
何でいきなりキレてんだ。
情緒が不安定すぎるだろ……。
しかしナイアは
そんなドン引きする
俺には構わずてきぱきと
準備をする。
「あとはアイスコーヒーを
水筒に入れておきましたので
宜しければどうぞ」
「お、おう……」
これは冷やしコーヒー、レイコと
冷酷無比をかけたとかって奴か。
「いや、面白くも何とも
ありやがりませんが何か? あと
今どき冷コなんて言いませんよ」
冷ややかな目線で俺を見つめる
ナイアに俺は泣きたくなる。
こんな理不尽が許されていいのか?
「何を抜かしますか。
女が男にヒドイ目に合わされるのは
アダムとイヴの失楽園の頃から
決まっているんです。
まあ、それとそれとして
はい、あーん」
そして何故か俺の口元に
小倉トーストを持ってくる。
「な、何だよコレは」
「見ての通り
食べさせてあげようってんですよ。
ほら口を開けやがれトンチキ」
仕方がない。
とりあえず一口だけ貰うか……。
俺は恐る恐る一口食べる。
「どうです? 美味しいでしょう」
「……」
う、美味い……。悔しいが……。
「黙っているという事は
認めたみたいですね。悔しいでしょうねぇ」
「くっ!」
くそっ! コイツのペースに乗せられてしまった!
このままではまずい!
何とかしなければ……!
「あ〜、腹減ったな〜」
そのとき少年漫画の主人公が
最初に言う台詞と共に
誰かがドアを開いた。
俺はこの声に覚えがあった。
親友の兵藤一誠だ。
「よお安里……!
ってその子は?」
「はじめまして。
私、唯一無二にして輝く
シスター、
九頭竜ナイアと言います」
何さらっと俺の名字名乗ってんだ!
少なくとも三親等以内に
お前みたいな性格最悪の親戚なんて
うちにはいねえ!
「九頭竜って事は……。
安里の従兄妹かー。
俺は兵藤一誠。
イッセーって呼んでくれよな」
「まあご丁寧にこのギンバエ野郎」
丁寧にお辞儀しながら
この罵倒だった。
コイツマジでぶっ飛ばしてえ……。
だがそんな俺の気持ちを知らずか、
ナイアは俺の背中越しにイッセーに話しかけていた。
「ところで貴方は何者ですか?
私はこの男を
私のモノにしようと思っておりますので是非協力を」
「そ、そうなんだ……。
まあ従兄妹は結婚できるもんな。
親友の未来のためだ。
喜んで協力するよ」
いや、イッセー。
ナイアの与田を本気で
受け取るんじゃあない。
お前がいい奴なのは解っているが
コイツが嫁になるなんて……。
なる、なんて……。
(貴方、ご飯にします?
お風呂にします?
それとも……)
く、クソ……。
朝の下着姿のせいで
妙な想像をしちまう……。
具体的にはナイアの新妻スタイル。
落ち着け、素数を数えるんだ。
「今スケベな想像しましたね?
因みに私は裸エプロンではなく
水着メイド派ですので宜しく。
因みに宗教上の理由で黒のビキニ」
「知らねえよ!
何だ宗教上の理由って!」
「ええと、
二人は仲がいいんだなあ……」
ほら見ろ流石のイッセーも
引いてるじゃねえか!!
「そうですよぉ。
貴方と天野さんと同じ位ねぇ。
ハハッ」
また、あの粘ついた笑顔をしてナイアは言う。
見るだけで胸焼けしそうな
嫌な笑いだ……。
そしてイッセーの顔つきが
途端に変わった。
ドンッと壁に手を突いて
ナイアを凝視している。
いかん、ナイアの奴が
どうなろうと構わんが
暴力沙汰でイッセーが処分される
わけにはいかん!
「お、おい……落ち着けよ。
昨日の今日だぜ!
あんな事があった後に
そんな嫌味を言うんじゃねえよ」
「!? どうして二人は
天野さんの事覚えてるんだ!?
松田も元浜も……。
他のクラスメイトは皆忘れているのに!」
どういう事だ?
一誠と俺を一度殺したあの女の事を
皆忘れているって……?
「それについては
私が話すわ。兵藤一誠君。
九頭竜安里君。それに……
唯一無二にして輝くシスター
九頭竜ナイアさん」
その言葉と共に屋上の扉から一人の女が入ってきた。
赤い長髪に超然とした
雰囲気を醸し出す才媛を
絵に描いたようなそんな人だ。
でも、ナイアの奴を二つ名まで
含めて呼ぶことはないだろう。
天然の気があるのか
それともスケールがデカいのか。
しかも間が悪いことに
昼休み終了のチャイムが鳴った。
「あら、もう時間? 仕方ないわね……。
続きは放課後に部室で話しましょう」
そう言って彼女は嵐のように去って行った。
しかし……。
「あの人何部なんだ?」
ズルッとナイアとイッセーが
俺の側でコケていた。
何なんだ一体……。
「アンタ本当に馬鹿ですね。
脳細胞がハエと同数なんですか?
彼女はリアス「リアス・グレモリー先輩。
高等部の三年生で
オカルト研究部の部長さ」
「ふーん、偉いんだな」
「貴方より下の存在は
関東方面に3人位なのを自覚
してくださいよ」
コイツ、ホントにぶっ飛ばしたい!
「安里、俺達も行こうぜ。
授業が始まるぞ」
「そうだな……。
じゃあな、ナイア」
「ええ、また放課後に」
え? まさかコイツ
オカルト研究部に同行するつもりなのか!?
何とかゲイトさんの所に
返品できねーものかな……。
ー
そんな訳でイッセーと俺は
オカルト研究部に招かれた。
堂々と部長の席に座り
リアスさんは
俺達を待っていた様だ。
イッセーは緊張しているのか
ソワソワしていた。
俺も悪さして職員室に連れてこられた様な
気分で落ち着かない。
で、ナイアはと言うと……。
「お茶位出してくださいよ。
気が利かないなあ」
ソファーのど真ん中に陣取って
エラっそうに言いやがった。
しかしシスター服なのに
そのスリットのデカさは何だよ。
目のやり場に困るだろ……。
あと、足を投げ出すな。
行儀が悪い。
「うふふ、ごめんなさい
気が利かなくて……」
いかにも大和撫子な雰囲気の
黒髪ポニーテールの女の人が
コーヒーを持ってきてくれた。
「あ、どうも……。
安里、
この人は二年生の姫島朱乃先輩だ。
学園の三大お姉さまの一人だぜ」
イッセーが興奮気味に言う。
確かにこの人の色っぽさと来たら
グラビアアイドル顔負けだ……。
「あらあら、私なんてそんな
大層なものじゃありませんわ。
ただの一学生ですもの」
「いえ! 俺にとっては憧れです!」
イッセーは鼻息荒くそう言った。
まあ気持ちは解らんでもない。
「まあ嬉しい。
ありがとうございます」
そう言って微笑む姿は
まさに天使だった。
「それで、早速だけど……。
一誠君、安里君。
昨日の事を覚えてる?」
その辺りで
リアス部長が早速尋ねてきた。
忘れようがない。
天野とかいう女が
イカれた格好になったと思ったら
イッセーの胸を貫き、
その有様にキレて
向かっていった俺も
返り討ちになったという……。
情けねえ話だ。
「そう、覚えているのね。
では単刀直入に言うけど
一誠君、いえイッセー。
貴方は悪魔になったの」
……は?
「い、今何と……」
イッセーは口をパクパクさせて
驚いていた。
俺もたぶん昨日までなら
同じ顔をしていたんだろうな……。
「あら、安里君は
あまり驚かないのね?」
「正直実感がわかないんです。
だって俺達は人間でしょう?
人間がいきなり悪魔って言われても……。
何かの冗談にしか聞こえませんよ」
俺は至極真っ当な事を言った筈だ。
しかしリアスさんは少し悲しそうな表情をした。
「残念ながら現実なの。
貴方達が生きている世界とは違う
理屈が存在するの。
信じられないかもしれないけれど
事実として受け入れて欲しいの。
そしてイッセーには
その力が宿っているわ。
貴方は……よくわからないけど」
で、部長から聞かされた話は
神器とか魔界とか
天使や悪魔、そして堕天使。
まるでゲームの世界だな……。
「信じますよ。
だってリアスさんが
言うことですから!」
イッセーは単純だな。
そこが良いところではあるんだが。
「貴方はどう。安里君?
私としては貴方の背景が
気になる所だけれど」
そう言ってリアスさんがこちらを見つめてくる。
俺はどうするべきか……。
ナイアの方に視線を向けるが
しれっとコーヒー飲んでやがる。
助け舟を出す気は更々ないってか。
しょうがないので知っていることは話すことにした。
「ゲイト・オールドワンって
人……なのかな?
紫陽花みたいな色の髪で
何か天然っぽい菓子作りが
得意な男の人なんスけど、
知ってます?
俺はその妙な奴に
助けられたみたいで。
鍵を抱くものがどうとか
門がどうとか……」
するとリアスさんは
暫し考え込む様に視線を落とし
沈黙。
「残念だけれど、
悪魔でも天使でも堕天使でも
その名前は聞いたことがないわ。
もしかしたら外国の神の
偽名かもね。
それに鍵……?
私達でいう悪魔の駒かしら。
或いは神器かも……」
まあ、たしかにあの雰囲気は
神と言われても納得だが……。
「それでナイアさん。
貴方について尋ねたいのだけど」
「3サイズなら
上から88-59-84ですよ」
ナイアは真顔でそう答えやがった。
そういう話はしてないだろ。
アホか。
「というのは冗談で
ゲイト・オールドワンは
私の上司です。
リアス様の縄張りで
事を荒立てるつもりはないので
ご用命の際はなんなりと」
「じゃあ、その上司の
ゲイトさんに
連絡を取って貰えるかしら?」
「それは無理ですね。
彼は基本自由人なので
滅多に連絡には応じません。
LINEも既読スルーは当たり前。
そのくせワン切りはするし」
マジかよ……。
いやコイツの事だからテキトーに
タコ吹いてるだけだろう……。
「そう……。
敵対するつもりがないなら
別に構わないわ。
ただ、もしその人に会えたら
私に教えて頂戴」
「解りました。
ではそろそろお暇しましょうかね
クソ虫くん」
「さらっと俺を人前で
クソ虫呼ばわりするな!」
こいつ、初対面の時からずっとこんな調子だぞ!
ホントどういう神経だよ!
ー
何故、天野とかいう女は
あんな真似をしたのか。
それにあの男は何者だったのか。
そしてナイアの奴は何で
現実に現れたのか。
帰路の際も疑問は
ふつふつと湧いて止まらない。
「下手の考え休むに
似たりですよ」
そしてコイツは何故当然の様に
俺の隣を歩いているんだ。
「お前、本当に何なんだ?」
「だから言ったでしょう。
唯一無二にして輝くシスターにして
同棲相手かつ
貴方が仕えるべき
女王蟻ですってば」
「ああ、もういい……」
何か疲れた……。
いつの間にか俺の部屋の前まで
来ている位時間の感覚も
あやふやになっている。
「ほら、早くドアを
開けて下さいよ。
私はとにかく一眠りしたいんです
それはもう泥の様に」
俺は渋々、鍵を取り出し、
玄関を開ける。
というか布団は一枚しかねーぞ。
俺は布団、お前は床だ。
「お帰りなさい。
ご飯にしますか?
お風呂にしますか?
それとも……」
あの山羊角の女の人が
出迎えた。裸エプロンで。
何なのだこれは!
どうすればいいのだ!!
真面目な話短いけど投稿頻度は早い方がいい?
-
早い方がいい
-
遅いけど長いほうがいい