「ならない」
フツーはしのぶさんや甘露寺さんを出すのだろうが
例えクロスオーバーでもNTRは許されない。
ウッス、俺、九頭竜安里!
今日は土曜なモンで
昼から辰郎叔父さんの
店にバイトに向かう道すがらに
俺は妙な光景に出くわした。
「恵まれない神の信徒に
愛の手をー」
「愛の手をー」
「募金のコインがチャリンと
鳴れば天国の門が開くでしょー」
「開くでしょー」
「今日一日の食事代、
たった10円を寄付すればいいだけー」
「いいだけよー」
「どうか、この私めを愛の手で救ってくれませんか?」
「くれませんか?」
何だあれは? 托鉢って奴か?
だが件の2人の身なり、
服装は尼さんじゃなくて
白いフード付きのローブ姿。
怪しいってレベルじゃねえ。
誰か通報しろよ。
思わずスマホを起動させて
緊急通報をタップしようと
したその時だ。
「あー、君達ちょっといいかな?
ここは一応宗教じみた事は
禁止なんだよねー」
駐在さんがチャリンコを
キィっと急にブレーキをかけ、
キビキビとした
動作でやって来た。
真面目そうな駐在さんだし
これで一件落着だな。
「貴方、異教徒ね」
「さては悪魔の使いか」
「我等が神の御心に
従わぬ異端者め」
なんと怯む所か怪しい2人は
駐在さんを弾劾し始めた。
フードで顔は見えないものの
声のトーンは相手を威圧する
ものだった。
……なんか雲行きが
怪しくなってきた。
「いや、君達ねぇ……」
「さぁ、我らが神の御心に
従わない愚か者へ天罰を与えるわよ!」
って何だあのアブねー女!
いきなり剣抜きやがった!
しかもあの剣、
普通の剣じゃなさそうだぞ!
と、その時俺と
アブねー女の目があってしまった!
するとどうだ、目が輝き出した。
「貴方、安里君よね!」
って、俺の名前を知ってるだと!?
俺の知り合いにお巡りさんへ
光り物抜くアブねー女は
いない……かな?
二人くらいいる……。
「私よ私! ほら、紫藤イリナ!
幼馴染のイリナよ!
思い出して頂戴!」
自称幼馴染は俺につかつかと
歩み寄り、フードを外して
自分の顔を指さしながら
訴えかけている。
そう言われてもな……。
顔は確かに美人なんだけど、
昔の面影が全然無いし。
と、俺がつれない様子でいる事に
焦りだしたのだろうか。
顔を覆い声を震わせ、
情に訴えかけ始めた。
「ううっ……!
やっぱり私の事なんて
忘れちゃったのね……。
あんなに一緒に遊んであげたのに!
私は今でも覚えているわ!
幼稚園の時、
私と一緒に洗礼ごっこした
じゃない!」
そ、そう言えばガキの頃に
そんな事をしたような……。
ああ、捨てられた子犬の様な目で
俺を見るな……!
ー
ハムッ! ハフハフ! ハムッ!
ぐぁつぐぁつムシャムシャ!
「う、美味い……!
このホットサンド美味すぎる……!」
「このクラムチャウダーも
故郷の味がするわっ!」
そんなワケで、ここは
喫茶ラヴ・クラフト。
辰郎叔父さんの料理を
二人は貪り食っていた。
もう3日も食べていないというから
ここでメシを食わせる事にした。
ツケも効くしな……。
クソ……この性格ホント
治らねーかなァ。
「二人とももう少しゆっくり
食ったらどうだい?」
アイスコーヒーを
コップに注ぎながら
辰郎叔父さんははにかみながらも
二人に呼びかけた。
「すまない。
必ずこの恩は返す」
蒼い髪にメッシュの入った
女が生真面目な顔で言うが
辰郎叔父さんはその硬さを
解すべく豪快に笑い飛ばした。
「ハッハァ! 構わねェよ。
どうせ安里が払うからな」
そして
肩を軽く竦めて親指を俺に向け、
ちらりと
アイコンタクトを取ってきた。
「た、辰郎叔父さん!
勘弁してくれよ!」
「冗談だ。
余り物でひもじい子供から
金毟る程落ちぶれちゃいねえさ。
飲みなよ嬢ちゃん達。
淹れたてだが、俺の奢りだ。
気分が落ち着くぜ」
「あ、ありがとうございます」
「ありがたくいただくぞ」
二人は同時にコーヒーを
一口啜ると揃って
深いため息を吐き、
イリナは瞳をキラキラさせ、
メッシュの女の緊張は
若干緩んだ。
「ふぅ、本当に美味しい。
コーヒーには自信があったけど、
これ程のコーヒーは初めて」
「ああ、この店はこの辺りでも
指折りの喫茶店だったのだな」
声の調子も明るい。
どうやら気に入ってくれたようだ。
それにしても、メッシュの方は
素の表情だと大分可愛いよな……。
「名前は?」
あ、思わず口に出ちまった……。
まるでナンパだな、これじゃあ。
顔が火照るのが自分でも
解るほどだ。
「ゼノヴィアだ。
宜しくね♪ 安里君♪」
「答えてくれたのはいいけど、
なんで後半の声のトーンは妙に
明るいんだよ! イリナかよ!」
「いや、こうした方が
受けが良いと昔聞いたことが
あってな」
またしても生真面目な
声のトーンに戻ってやがった。
わからんヤツだな……。
乙女ゲーの主人公なら
「おもしれー女」とか
不敵な笑みで言うんだろうが、
俺は所詮モブみたいなモンだし。
「おい、安里。
俺は少し外すから、
店番しておけよ」
辰郎叔父さんはそう言うと、
エプロンを外して店を後にした。
「あの人、マスターさん?
何か用事があるのかしら?」
「いや、
気を遣ってくれたんだろう……。
だってイリナ、ゼノヴィア。
お前ら悪魔祓い師だろ?」
腹の探り合いは無しだ。
野暮ではあるが単刀直入に訊く。
じゃあなきゃあんな剣なんざ
白昼堂々抜き出さねえ。
答えたのはゼノヴィアが
先立った。
「ああ、私達は聖剣の適合者だ」
「聖剣?」
何だか話がエライ方向に
ぶっ飛び始めたもんで
、つい聞き返してしまった。
「そう、エクソシストである
私達が信仰する神より
授けられた聖なる武器。
その力はあらゆる魔を
払うと言われているわ」
イリナは
俺の問いに対して、
何故か得意満面かつ誇らしげに、
腰に手を当てて説明した。
「それでその聖剣使いが
何のためにこの街に来たんだ?」
「ああ、実はな……」
俺の質問に対し、ゼノヴィアは
滔々と説明を始めた。
要は頭のイカれた司教が
聖剣を束ねてとんでもねえ事を
やらかそうとしている話だ。
極端なヤツはホント碌な事
しねえのなあ……。
「で、あんた等は
行くあてはあるのか?」
「勿論あるわ!
ここの教会に向かう所
だったんだけど知っている?」
出された教会の写真を見て
俺は思わず冷や汗が出た。
あ、そこは……!
「知っているのなら話は早い。
店主が戻り次第で構わないから
案内してもらえないか?
お願いよ安里君♪」
答える前に手を取り、
ゼノヴィアが頼んできた。
だから急に美少女ボイスに
なるなよ!
心臓に悪い!
「あ、ああ。解ったよ……
地図は書いておくから後は自分で頼む」
と、カランコロンとベルが鳴る。
一先ずは接客に撤しないとな……!
「いらっしゃいませー!」
「何だ、辰郎はいないのか?
ヤスが店番なら今日は
コーヒー位しか
期待できそうにねェなあ……」
頭を掻きながら浴衣姿でボヤくのは
家の常連さんの一人。
金髪に黒のメッシュが入った髪の
昔でいう『ちょいワルオヤジ』って
雰囲気を纏う
ナイスミドルの男性だ。
名前は確か、えっと……。
「何だ、また来たのか……」
そこで叔父さんが返ってくるなり
悪態をついた。
客商売ならあり得ないことが
もう十数年の付き合いらしいから
別に仲が悪いわけじゃない。
むしろ、お互い気心知れているからこそ
言えることなんだろう。
「へっ、相変わらずつれねぇなあ。
それより、いつものだ」
俺が案内する前に店の奥のテーブルに
足を組んで注文すると叔父さんが
早速調理に入る。
オリーブオイルとハーブが
混ざり、パン粉を軽く焦がした
芳醇な香りが店内に漂う中、
料理が完成した。
「安里、運んでくれ」
「あ、はい……。
お待たせしましたー」
運んだのは
ラム肉の香草と
オリーブオイルソースの
パン粉焼きとガーリックトースト、
オニオンスープのセット。
それに赤のホットワインだ
いや、イリナ。涎が出てるからな。
「ひょーっ……これこれ!」
と、おっさんは喜び顔で
料理を口に運ぶ。
おっさん年甲斐もなく
ひょーっ……これこれ! なんて
燥ぐなよ、とは思わんでもないが
客商売だから顔には出さない。
「全く日の沈まねえ内から
酒を喰らいやがって……
真面目に働けよ」
「勤労はお前ら小市民に任せる。
俺は大抵の部下が優秀なモンでね
昼から酒を喰らえる身分なワケよ」
叔父さんの皮肉にも
おっさんは意を介さず軽口を叩く。
一体何の仕事してるんだ?
「ハハッ、当ててみなヤス!
一発で当てたら
ハワイに招待してやるぞ?」
って言われても
ノーヒントじゃな……。
「少々タチの悪い自由業?」
「おいおい……人をヤクザか
マフィア扱いするなよ……」
違うのか? じゃあ何だ?
「そうだなあ……。
まあ、強ち間違いでもねえが。
実際俺のシマじゃあ
去るものは追わねえが
ケジメはきっちりつけさせる。
それが俺の流儀だ」
と、おっさんはドスを効かせた。
明らかにカタギの人間が出せる
威圧感と眼光じゃなかった。
「それってつまり……」
「バーカ、冗談だよ。
そういう機微が判らん内は
まだまだ小僧だな、ヤス」
そう言っておっさんは
上品にホットワインを
くいっと一口飲んだ。
「ねえ、あの人何者なの?」
「さあ、知らないけど……。
昔一緒に叔父さんとあちこち放浪したとか……。
少なくとも悪い人間ではないさ」
俺はそう答えた。
俺の知る限り、この人は
叔父さんにとって一番親しい友人だ。
それは叔父さんも解っている筈だし、
だからこそ俺の前で
こんな風に振る舞えるのだと思う。
「しかし、どこかで
見たような……」
ゼノヴィアが腕組みしながら
思案顔になりおっさんを見る。
そりゃああんだけ目立つ格好だと
一度見れば忘れないと思うが。
「世間には同じ顔が3人いるって
言うからなァ。
嬢ちゃんの勘違いじゃないか?」
叔父さんが珍しく口を挟んだ。
あれ、『お客さんには挨拶と
注文の確認以外は
聞かれた事だけ答えりゃいいんだ』
って考えだったんじゃ……。
ま、いいか……。
「ふむ……。
確かにそうかもしれないな。
世の中似た人間はいるものだしな」
納得したのか、
ゼノヴィアは
それ以上は追及しなかった。
そして食うだけ食ったイリナと
ゼノヴィアは教会に向かい、
おっさんも一時間位新聞を
読むと帰っていった。
何でも夜釣の約束があるんだとか。
なら、昼から酒飲むなよなあ……。
ー
「はあー、疲れた……」
時間は既に夜の8時になっていた。
取り敢えず帰ったら風呂に入って
寝よう。明日はオカルト研究部の
会合もあるしな……。
「ただいまー……」
「遅かったな少年!」
……? 家を間違えたかな?
いや、だったらカギが
開くのはおかしいよな……。
もう一度ドアを開けると、
黒い服を来たエラい眼力の強い
人が腕組みして立っていた。
なんとなく焔と獅子のイメージが
浮かぶ人だった。
しかしどこを
見ているんだろう……。
「遅くなる時はニグラ女史に
連絡をすべきだ!
皆が心配するからな!」
と、その男は言った。
はい、すいません……じゃなくて!
何で俺の家の玄関先に居るのだろう?
いや、それ以前に……。
「えっと、どちら様ですか?」
「うむ! 俺の名は
煉獄杏寿郎!
故あって君を鍛える事になった!
ゲイト氏とナイア嬢に聞く所によれば、
弱きを助け、強気を挫く
鍛え甲斐のある若者達と聞いたが
俺も同感だ!」
チョットナニイッテルノカワカリマセンネ……。
「……ええと、
まずどうやって
ウチに入ったんですか……?」
「無論! 玄関からドアを開けて入った!
何か問題でもあるだろうか!?」
声がデカい。
もうちょっと声量を抑えて欲しい。
「ええ……いえ……ありませんが」
「そうか! ならば良いな!
では早速稽古を始めよう!」
「も、もう夜ですが……?
それに、何で俺が貴方に
教えを請わねばならないのでしょうか?
失礼ながら見ず知らずの方とは
余り関わりたくないのですが……」
この手のタイプは怒らせると怖そうだから
穏便に済ませよう……。
「それは違うな!
君は先程
『関わるべきではない』
と言っていたが、それは違う!
自ら関わらぬ限り
人は変われないし
変わらないのだ!」
何だかよくわからないが、
凄く熱い人だな……。
ちょっとだけ……やってみようかも。
「……あの、一つだけ質問があります」
「なんだ!?」
「何故、俺は強くならなければ
ならないのでしょう?」
「強くなれる理由か……。
その答えは自らで
見つけねば意味が無いぞ!」
笑顔なのに一喝されてしまった。
「だが、敢えて言うとすれば
大切なモノを守りたいのであれば
強くなるしかないからだ!
そして、守りたいという想いがあれば、
人は何処までも強くなれる!
俺がそうであったようにな!」
「そう、ですか……。
ありがとうございます」
「うむ、それでこそ俺の継子だ!
さて、では行くとするか!!」
「えっ、ちょ、まだ心の準備が……。
待って下さいよー!」
……結局俺はこの人に
振り回される羽目になった。
でも不思議と嫌じゃなかった。
誰かから本気で相手をされるのは
辛くても、嬉しいよな……。
一方その頃。
「な、ないわ……! 教会が影も形も……!」
「な、何という事だ……!」
教会は更地になっていた事実に
イリナとゼノヴィアは打ちのめされていた。
が、捨てる神あれば拾う神ありというべきか。
「……遅かったな聖剣使『われ』共。
それにしてもミカエルの奴も
よりにもよってこんな小娘二人をよこすとは……。
聖剣を取り戻すつもりがないのか。
いや、或いは『それどころではない』のか……?」
呆れた様子で二人を出迎えたのは
あのボールクその人だった。
オリキャラが原作キャラをsageるのは
拙かったかもしれない。
真面目な話短いけど投稿頻度は早い方がいい?
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早い方がいい
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遅いけど長いほうがいい