今回はバトル回なのだ。
そんな訳で
「聖剣使いの流儀」
とやらに則り、
俺、九頭竜安里とイリナ。
木場とゼノヴィア。
イッセーとボールクの大将。
その戦いの結果で
同盟するかしないかを
決めるとなった。
「って何で俺が戦うんスか?」
「理由は幾つかあるわ」
初戦は俺とイリナが
戦うことになったワケだが……。
一応幼なじみでもあるから
戦う理由を知りたい。
というか幾つもあるんだな……。
「まず客分のボールクが
イッセーと戦うワケだから
こちらも客分の貴方を出すのは
当然でしょう?」
いやまあ……。
確かにそうかもしれないけれど
さぁ……。
朱乃さんを当てた方が
勝率が高いような……。
「あと貴方は悪魔ではないから
聖剣のダメージを緩和できる。
それが第2の理由」
第2? まだ何かあんのかよ。
「そして最後に……。
彼女からの指名なのよ。
どういう幼馴染みなの……貴方達」
理解不能だと言いたげに
リアスさんは頭をかいて
纏めた。
……俺が聞きたいよ!
そんな血生臭い幼馴染み
なんてアリかあ!?
「あぁ……!
数年ぶりに出逢った私と
貴方が敵同士になるなんて……!
何という残酷な運命なの……!?」
「いや避けようは幾らでも
あったよな!? なあ!」
涙目になってるイリナを見て
俺は思わずツッコむが
まるで聞いちゃいなかった。
「うぅっ……!
これも神の与え給うた試練なのね!
けれど私はめげない!
挫けない! 諦めない!
この試練を越えて私は
神の御使いとして聖剣使いとして
成長してみせる!
貴方の屍を越えて!」
バカヤロー! 二度も
殺されてたまるか!!
しかも今回はこっちが
圧倒的に
不利な状況じゃねえか!
……まあいいか。
勝てばいいだけの話だし。
それにイリナは
本気じゃないだろうし。
本気ではないと思うけど。
思いたいんだけど。
なんかすんごい殺気が
ヒシヒシ
伝わってくるんですが……。
「悪魔の使いよ!
神の名の下に滅ぶがいいわ!!」
「幼馴染みを滅ぼすんじゃ……
ねえっー!」
俺は『燃える三眼』を起動させ
右腕を触手へと変化させる。
「うわっ……」
いや、ドン引きするなよ。
傷つくわ……。
いや、集中だ……集中……!
煉獄さんの言葉を思い出せ……!
───素振りと乱取りしか
覚えてない! ───
とにかくイメージしろ!
腕を変化させるんだ……!
「喰らえッ!!」
右腕から生えた触手が
俺の意思に従って武器へと変化する。
「何よ、その凸凹した剣は?」
「…………」
イリナは鼻で笑うが
人は外見より中身っていうだろ。
これは凸凹である事が真価なんだ。
「フン……!
どうせ大したこと無いんでしょ?
さあ来なさい!
私の擬態の聖剣の前に
ひれ伏すがいいわ!」
自分から武器の名前を
バラしていくのか……。
いや、思えばコイツは
昔からポンコツ属性だったっけ……。
「貰ったわ!」
まず仕掛けてきたのはイリナ。
聖剣を振りかぶって突撃してくる。
……。
アレ? コイツ煉獄さんより
遅くないか?
しかし油断は禁物だ。
なんといっても相手は伝説の聖剣。
どんな力を持っているのか
分からないから
俺のソードブレイカーで
刀身を引っ掛けて圧し折る!
そしてそのまま触手で首を締め上げる!
それで終わりだ!!
「……ぐうっ!?」
しかしイリナの聖剣は
飴細工の様に軌道を変えて、
俺の肩を刺し貫いた!
痛えぇぇっ!?
なんだよコレェ!?
「聖剣で切られて
傷つくという事は貴方も
罪深い存在なのね……!
貴方の罪を裁いてあげるわ!
アーメン!」
「捌くならアジやサンマ位に
してほしいもんだな!」
俺は痛みに耐えながらなんとか
距離を取ろうとするが
イリナは執拗に俺を追いかける。
そしてまた攻撃のフェイントを
織り交ぜて斬りつけてきた。
今度は触手を盾の形に変えて
防御を試みたがまたしても
剣の軌道が曲った。
「ぐあぁっ……!」
今度は太股に突き刺さり
激痛が走る!
動脈が貫かれていないから
まだ致命傷じゃあないが……!
応急処置ではあるが
俺は触手をより細め、
融合するイメージを投影する。
触手はさながらパテや縫合糸の
様に俺がダメージを
受けた場所を
塞いでいく。
これでとりあえず
出血だけは止まったが……。
「貴方再生者!?」
イリナは驚きの声を上げるが
そんな都合のいいものじゃねえよ。
今も無理矢理痛覚を遮断しないと
泣き叫びそうだぜ。
しかし、
イリナの聖剣……。
一体どういう能力を持ってるんだ?
「このぉ!」
俺はイリナに向かって
触手の矢を放つ。
だがこれも聖剣によって
逸らされた。
しかも今度は
刃ではなく柄の部分でだ!
「……ッ!?」
「チャンス!」
そこにイリナはすかさず
追撃を仕掛けてくる。
だが、背中に隙が出来たぜ!
「戻れッ!」
俺のイメージするままに
公園の大樹に刺さった矢は
苦無に形を変えてイリナの
背後から急襲する。
これなら……!
「甘いわね!」
だがイリナは振り向きすらせず
新体操のリボンの
様に聖剣の刀身を自分の
全周囲に回しあっさりと弾く。
なっ……!
聖剣ってこんな事も出来んのかよ!
じゃあコイツの能力は……!
俺の持つ触手と同じで
形状を自在に変えられるのか!?
そういやアイツ……
擬態とか言ってたよな……。
つまりそれは……!
俺は聖剣の能力の正体に気付いた瞬間。
イリナの剣は俺の触手を絡めとり、
鞭の様にしなって俺を縛り上げた。
「ふふっ!
どうやらここまでね安里君!
このまま輪切りのバナナに
なりたくなければ
大人しく降参しなさい!」
イリナは勝利を確信した
笑みを浮かべ俺に勧告する。
確かに状況は圧倒的に不利だ。
だが……!
「お前は一つだけ忘れている事があるぞイリナ……」
「なんですって?」
俺の言葉にイリナは
不機嫌そうに聞き返す。
「俺は触手使いだ……!
この程度のピンチ、何度も経験してんだよ!」
俺は左腕からを伸ばしイリナの
両足の自由を奪う。
「なっ……!」
イリナは驚いた顔をしたが
すぐに冷静さを取り戻し
聖剣の形状を刀身から三日月型に変える。
「フフン♪ 無駄よ?
私の聖剣はあらゆるものを切り裂くわ!」
イリナの言う通り
触手は簡単に切断される。
「どうやら終わりみたいね?」
「いや、ここからだぜ?
ほんの少し用心深ければ
お前の勝ちだったろうにな!」
俺は『燃える三眼』のもう一つの
特性の発火能力を発動させる。
すると触手の切り飛ばされた
先端から炎が吹き出した。
「きゃあああっ!?」
イリナは悲鳴を上げて慌てて
回避したが触手の切れ端やら
液はアイツの擬態の聖剣にも
ベットリと付着した。
そして……!
擬態の聖剣は黒煙をあげながら
燃え上がっていく。
流石に融解まではしなかったが
形状変化もできねえ
上に刃が焦げついた聖剣は
ナマクラ刀と一緒だぜ!
「くっ……!
貴方まさか最初から
コレを狙って……!」
悔しげに口元を歪めるイリナへ
俺はニヤリと笑う。
「言ったろ? 用心深くなれば良かったんだってな。
まあ、今回は相手が悪かったけどな」
まあ、ホントは
怪我の功名なんだけど
これでイリナが焦るなら
そう言い切ってやるぜ!
「そ、それに……何……?
身体が……♡
ああ、熱い……♡熱いよぅ……♡」
っておい!?
なんでイリナの瞳が潤んで
戦闘服を脱ごうとしてるんだよ!?
まさか色仕掛けか!?
俺が呆気に取られてると
イリナは遂に下着姿に
なってしまう。
し、しまった!
俺の触手の体液は
ミッテルトやレイナーレを
散々快楽堕ちさせた影響か
媚薬や媚毒ガスの
効果もあるんだった!!
「ちょっ!?
待てよイリナ!
今すぐ脱ぐのを止めないと
俺もお前も大変な事に……!」
俺は慌ててイリナに駆け寄るが
イリナの両手が俺の胸ぐらを掴む。
ぐおっ……!?
コイツ、意外と力が強い……!?
「もうダメぇ!
私に乱暴する気でしょう!?
エロ同人みたいに!
エロ同人みたいに!!」
「バカッ! するかっ!!」
俺はイリナの延髄にトン、と
当て身の手刀を当てて気絶させる。
ふう……。危なかったぜ……。
俺は一息ついてから改めてイリナの全身を見る。
うーむ……。やっぱりコイツの
戦闘服はスケベだな……。
俺は思わずイリナの艶やかな肢体に見とれてしまう。
「……早く離れて下さい」
小猫ちゃんの鋭く
冷たい声ではっと俺は気づく。
何だか皆の視線が冷たい……。
な、なんか誤解されてないか!?
これは勝利を得るための
犠牲という奴で
コラテラルダメージと言う奴!
そうそれ! よく知らないけどネ!
俺は必死になってそう弁明するが
「あらあらまあまあ……」
「そうね。安里君はいつもこうよ」
「安里さん、
これはどうかと思いますぅ」
女子部員達は
ジトーッとした目で俺を見つめてくる。
「お、おい!? 頼むから話を聞いてくれ!」
……結局、
俺が勝利のためにイリナに
媚薬を使った挙げ句、
その身体に興奮した
外道のド変態だと
思われてしまった。
な……何故……?
俺はイリナを介抱した後、
何とか事なきを得た。
いや、ホントに……
危うく俺の社会的地位が
ヤバイところだった……。
一勝したのにこの疎外感……!
な、泣きたい……!
「まずは一勝!
ここで木場がゼノヴィアに勝てば
俺達の勝ちだな!」
イッセーは木場の肩を叩いて
笑顔を見せる。
だが木場の表情は妙に険しい。
イッセーの言葉が敗北フラグ
じみていたからとかか?
いや、そんなゲンを担ぐ
タイプでもないよなあ木場は……。
「ああ、勿論さ……。
僕にとって忌まわしく
破壊したくて堪らなかった
聖剣が眼の前にあるんだ……。
ウズウズしてくるよ……!」
木場は妙に好戦的な、闘犬じみた
歯を剥く様な笑みを浮かべている。
アイツ、ああいうキャラだったか?
イッセーもそんな木場の不審な
様子に気づいたのか
「おい……祐斗? どうした?」
と問う。
すると木場はフッと微笑んだ。
しかしその笑みはどうも寒気を感じるものだった。
「すまない。少し昔の事を
思い出してしまってね」
「お、おう……」
イッセーは多分
「今はゼノヴィアに集中しろ」って
言いたいんだろうが
逆効果になるとみなしたのか
敢えてそれ以上は言わなかった。
始めの合図もない内から
仕掛けたのは木場だ!
木場が踏み込むと同時に魔剣のオーラが
剣身から溢れ出し、
一気に間合いを詰めるなり
ゼノヴィアへ斬りかかる!
しかしゼノヴィアは冷静だ。
噂の聖剣で
木場の斬撃を受け止める。
ガキィイイン……!!
激しい火花が散り、
両者は鍔迫り合う形になる。
木場は更に一歩前に出て
聖剣を押し込む。
「うおおおおっ!!」
咆哮と共に全力で押し込む
態勢だった。
対するゼノヴィアは
「ふん」と鼻で笑いやがると
片手で軽々と受け止める。
「この程度の力で
私を倒せると思っているのか?
嘗められたものだ」
嘯くだけあって余裕の表情だ。
敢えて片手で受ける事で
力の差までアピールするとはな……。
「ならばこれで!」
木場が叫ぶなり左手に握っていた
もう一本の魔剣を創造し、
二刀流となる。
更に逆十字の構えにすることで
魔の力を増幅させる構えだ!
これなら幾らなんだって
ゼノヴィアといえども……!
「ほう。双剣使いとは珍しい。
だが珍しいだけだな」
ゼノヴィアは
木場の二刀流の攻撃を
華麗に捌いてみせる。
まるで相手にしていない感じだ。
「クッ……」
それでも木場は果敢に攻め立てるが
その悉くがゼノヴィアには届かない。
何て奴だよ……。
あのゼノヴィアの動き……。
明らかに只者じゃない。
「祐斗! 落ち着きなさい!
いつもの貴方ならもっと
冷静に戦える筈でしょう!?」
部長が木場に激を飛ばす。
そうだぜ! 木場!
いつものお前はクールな
剣士じゃねえかよ!?
剣の腕なら負けてねえんだ。
お前の剣術を活かせばきっと……!
「黙れ! 僕はこの日の為に
悪魔に魂を売り、
聖剣への復讐を誓ったんだ!」
木場は部長の声に耳を傾けず、
攻撃の手を止めない。
何か変だぞ!?
ちっとも木場らしくないぜ。
それに今の言い方は……。
「私は貴様の様な
半端者にやられる程弱くはないんだよ、先輩」
木場の攻撃をかわしながら
ゼノヴィアは挑発的に言う。
その瞬間、木場の表情が変わる。
「……ッ。
……今、僕の事なんて呼んだ?
『先輩』だと? ふざけるなッ!
僕達をあんな所に閉じ込め、
何年も何年も苦しめ、辱め、
殺し合いをさせたお前達が……!
僕をそんな風に呼ぶなァアアッ!」
木場の怒声が響き渡る。
同時に木場の身体から凄まじい
魔力が放出され、
双剣が融合した。
これは木場の
『魔剣創造』の暴走か!?
「怨恨を固めた所で
醜いだけだな」
「黙れェエエッ!!」
木場の怒りに呼応して
更に膨れ上がった魔力が
魔剣へと流れ込み
多重の刃を作った!
「はぁああああっ!」
ゼノヴィアは木場の豪剣の一閃を
両手持ちにした破壊の聖剣で
受け止める。
「成る程、はぐれの雑魚共よりは
少しマシな程度の力はあるようだ。
だがまだ足りないな」
「くっ……」
木場は悔しげに歯噛みする。
「祐斗! 止めなさい!
貴方の『騎士』の性質は
そういう風には出来ていないわ!
怒りに任せてはダメ!」
部長は木場に呼びかけるが
木場は聞く耳を持たない。
「僕はもう止まらない!
僕らを救ってくれた人達の想いを
踏み躙ろうとする者は許さない!
この魔剣で全て斬り裂いてやる!
この学園で得たもの全てを
無に帰そうとする者も斬り伏せる!
そして……、そして……」
木場は一瞬、言葉を止めると
悲痛そうな顔で言う。
「そして、あの時、
僕を助けてくれなかった
者達にも同じ苦しみを与えてやるッ!!
どいつもこいつも『有罪』だッ!!」
「祐斗ッ!!」
木場の言葉を聞いた途端、
部長が嘆くように叫ぶ。
その叫びが合図になったかのように
木場は一気に攻め込んだ!
「おおおおおっ!!
僕の魔剣の破壊力と
君の聖剣の破壊力!
どちらが上か勝負だ!!」
木場はオーラを纏わせた
魔剣を振りかざし、
叩きつける様にゼノヴィアに振るう
オーラの力は凄まじく、
魔剣から焔が噴き出す。
対するゼノヴィアは
破壊の聖剣を横薙ぎに一振り。
たったそれだけで木場が
放った一撃が跡形もなく消し飛ぶ。
「な……!」
今の一撃で魔剣が粉々に
砕け散ってしまったためだろうか。
木場は完全に硬直してしまっていた。
マズい!
「それが『魔剣創造』か。
思ったよりも
大したことはなかったな……。
いや、使い手が自滅しただけか」
ゼノヴィアは
失望を隠そうともせず
冷たい笑みと共に鼻で笑う。
そして剣の束で木場の腹部を
打ちのめした。
「ガハッ……!」
木場は苦悶の声を上げながら
ずるり、と地滑りを起こす様に
ゼノヴィアの横に倒れてしまった。
「祐斗! 大丈夫!?」
「祐斗さん!
しっかりして下さい!」
部長達は慌てて駆け寄る。
ゼノヴィアはそんな
俺達を一顧だにしない。
「過剰な焔で剣を焼けば
付け焼き刃どころか、
切れ味を失う……。
そこの変態男の戦法から
学ぶ所か自ら台無しにするとは……」
吐き捨てるように言い放つと
勝負はついたと言わんばかりに
破壊の聖剣を包んだ。
「……僕の剣は……、
僕は……まだ……!」
木場はまだ意識があるのか、
ゼノヴィアを睨む。
そのガッツは買うが
今はそれ以上にゼノヴィアへの怒りが勝っている。
「いい加減にしろ、先輩。
君では私に届かない。
騎士の特性による俊足と
多彩な攻撃が真価だろうに……。
その真価を自ら投げ捨てて
よくもまあ聖剣を破壊しようなどと考えたものだ」
ゼノヴィアは侮蔑を露にする。
「く……クソッ……!」
木場は無念に顔を歪め、
握り潰した草を引きちぎる。
俺も解るが、自分の弱さを
見せつけられた感覚は辛い。
まるで内蔵が焼かれ、
肺の空気が押し出される様な苦痛。
俺はかつて、それを味わった。
そしてそれは、木場も同じ筈だ。
「祐斗、もう良いのよ。
これ以上戦っても貴方が傷つくだけよ」
部長が優しく語りかけると
木場は俯き、むせび泣いていた。
けど一勝一敗、
後はイッセーがボールクの大将に
勝てば何の問題も無い!
無い……のだが
ボールクは一応俺の師匠みたいな
モンなんだよな……。
どっちを応援すればいいのか……。
複雑な気分だぜ。
「俺がアンタに勝ったら、
ちゃんとアーシアに謝れよ!
すいませんでしたってよ!!」
「解った。
お前の持つ力、見せてもらおう」
イッセーはボールクを
指差し、睨みつけながら
ダンッと地面を踏みしめた。
対するボールクは
まるで『身の程知らずめ』と
言いたげに腕組みをするだけだ。
「構えないのか!?」
「必要がないからな……。
それよりも貴様……、
ここはグレモリーの陣地で
プロモーションは出来んぞ?
そんなザマで本当に俺を
倒せるのか?」
「うるさい!
やってみないとわからないさ!
行くぞ!!」
『Boost!』
音声が鳴り響くと同時に
イッセーの全身が
赤いオーラに包まれた。
『赤龍帝の籠手』を予め発動させ
ある程度倍化させていたのか!?
「ほぅ……」
「おおおおおっ!!」
イッセーは雄叫びを上げて
拳を繰り出し、
大将を殴りつけた。
少し卑怯かもしれないが
勝つためだし、この位なら
戦略の一端だよな!
パキイィィィン!!
ヨシッ!
少なくともイッセーの実力は
マグレじゃねえ!
大将の氷の結界を砕けるレベルに
まで成長している!
だが砕けたのは
イッセーが殴った箇所のみ。
砕け散った氷の破片は
そのまま宙を舞い、
大将の片腕に薄刃になって
集まる。
そしてあっという間に
鋭い鉤爪へと変わった。
「どうした?
かき氷造りはやめたのか?」
「くそ……!」
イッセーは悔しそうに
歯噛みするがビビる事はない。
「まだまだぁ!」
イッセーは更に力を込め、
パンチを繰り出す。
「フム……。
先ほどよりパワーは増したが
スピードが落ちたようだな」
「ぐああっ!?」
戻り際のイッセーの龍の腕を
カウンターの様に引っ掻くと
イッセーの引っ掻かれた傷が
凍りついていた。
「痛ぇ! なんだこれ!?」
「今のはほんの小手調べだ。
次は俺も攻撃する」
イッセーが持つのは
『赤龍帝の籠手』
もとい小手だけにってか……?
「……」
「兵藤一誠、
お前の弱点は甘さだ。
戦いとは
力だけで決まるものではない。
敵を倒すためには多角的に
思考を練る必要もある。
例えば、そうだな……。
こんな風にな!」
「ガハァッ!」
大将はいつの間にやら漂っていた
破片を素にして左手に
氷のガラスの様な薄刃を破片から造り、
イッセーの腹に突き刺していた。
「イッセー!」
「部長! 俺は大丈夫です!」
部長が心配して声をかけるが
イッセーは目で静止する。
「多角的に思考を練るって
忠告はありがとうよ!
けどな、計算しているのは
お前だけじゃあないんだよ!!」
イッセーが吠えた途端、
赤龍帝の籠手が反応した。
『Transfer!』
譲渡の能力で大将の氷の武器や
結界が益々厚みを増す。
ど、どういうつもりだ……?
大将を強くしてどうする?
「イッセー君、まさか
勝てないと踏んで
勝負を捨てたの?」
「バカヤロー! お前それでも
イッセーの幼馴染みかよ!」
呆れ気味のイリナに
遂怒鳴ってしまった……。
……だけどイッセーの目は
まだ諦めていない!
きっと考えがあるんだろう……。
「過ぎた力は身を滅ぼすって
よく言うよな! アンタは
氷を扱うが、氷そのものって
ワケじゃない!
アンタの足元に砕いた氷の破片を見てみろよ!
五芒星になっているだろ!」
「ぬ……うぅ……!!」
五芒星の捕縛効果で自慢の歩法による
高速機動も今の大将は使えない!
イッセーの言葉と共に
大将の身体が冷気を帯びる
爪も剣も巨大化し
ズシン、と大音を立てて
地面に落ちる。
「なるほど、そういう事ね」
部長が何となく
理解した様に呟いた。
「リアスさん、イッセーの
言っているのは
どういう意味ですか!?」
「イッセーの譲渡の力で
ボールクの力を増したのは
彼を氷漬けにするためだったの。
それがまず一つ目。
そして彼の氷の力が過剰に
なった今、
この場は彼の陣地になった……!」
それはつまり……!
「イッセー!
全力で叩き潰しなさい!」
「了解です! プロモーション!!」
『女王』の駒の力を宿す
イッセーがその力を発動させる。
『Explosion!』
音声が鳴ると同時に
イッセーは拳を突き出しながら
跳躍する。
「これで決めるぜ!!」
イッセーの拳もまた
ボールクの氷の重装により強化され、
籠手にカイザーナックルの要領で
追加されるに留まらず更に巨大化していく。
「……っ!! その力は……!」
「はああぁぁぁぁぁ!!」
イッセーは大将に向けて拳を放つ。
あれなら結界もクソもねえ!
轟音と共にイッセーの一撃は
見事に大将に命中したが
だがイッセーの攻撃は
それでは終わらなかった。
「まだまだぁ!
ドライグゥウウッ!!
『迫撃のドラゴンショット』!!
おおおおおおおおぉっ!!」
イッセーの籠手から放たれるのは龍のオーラ。
しかもただの龍ではなく、
神滅具である
赤龍帝の篭手の龍のオーラだ!
しかもビームにするんじゃなく
バーナーの要領で零距離の敵を焼き尽くす応用版だ!
「ぐあぁああっ!!」
イッセーの放った必殺技
とも言える攻撃は大将に直撃。
これなら幾ら何だって……!
水蒸気が晴れると、
そこには大将の姿があった。
マジかよ……。
あのイッセーの猛攻を受けて
まだ立ってられるのか!?
大将はゆっくりと
イッセーの方へ振り向く。
表情こそ無だが、
口元は笑っている様に見える。
だが次の瞬間には、
ビリリと大気が震える。
これは殺気なのか……!?
「……見事だ。
まさかこれ程とはな。
しかし俺を倒したいならば
俺を殺すつもりで来い。
でなければ俺を倒す事は出来んぞ。
もっと非情になれ。
その甘さは何れ
取り返しのつかない惨事を招くことになる」
「な、何を言ってるんだよ……?」
イッセーが困惑した顔で
そう呟いた。
確かにそうだ。
イッセーはこの間まで
松田や元浜、そして俺と
バカやってた学生なんだぜ?
それが今はもう悪魔に転生して、
赤龍帝なんてモンに祭り上げられて
命懸けの戦いをしてるんだ。
だけど俺は知っている。
イッセーが優しい奴で、
皆に好かれる存在で、
だからこそ今のイッセーは
誰よりも強いって事をな……。
『Reset!』
「あ……」
「どうしたのイッセー君!?」
「おい、大丈夫か!?」
籠手が鳴り響くと共に膝をつくイッセー。
慌ててアーシアと共に
俺は駆け寄っていった。
「……魔力の枯渇か」
大将はいつの間にやら
閉じ目に戻ると静かに呟き、
殺気を収めた。
「な、なんのつもりだよ!」
「興が醒めた。
お前達との勝負は預けておく。
次に相見える時を
楽しみにしているぞ。
お前……お前達は
この世界の希望となるやもしれん。
精進しろ」
どういう事だ?
悪魔も堕天使も等しく
裁きを与えるべきって
言っていただろアンタ?
いや、待てよ……。
裁きを与えるということと
皆殺しにするということは
違うって事なのか!?
「なに勝手に纏めてるんだ……!!
俺はまだ……まだ……やれ……」
イッセーが力尽き倒れ、
部長達が介抱している中
大将は静かに立ち去った。
結局、大将の目的も
分からずじまいか……!
部長の話によると
イッセーは暫く動けないらしいし、
とりあえず今日は解散となった。
結局一勝一敗一棄権だから
決着つかずか。
イッセーの奴、本当に大丈夫かな。
まぁ明日には回復してまた学校にくるだろうけど。
それにしても……
大将は一体何者だったんだろう。
そして最後に言った言葉の意味は……?
しかし疲れた……。
早く帰って寝たい……。
ー
くたくたで帰宅すると
何やら妙なモノが
玄関にやってきた。
背丈は俺の脛位の
ミイラが入る様な棺っぽい
人形たちだ。
な、何だ!? と慌てる暇もなく
人形たちは俺の鞄やら制服やらを
勝手に持っていく!
自分の家だからいいけど
玄関でパンイチとか
変質者だろ……!
俺は慌てて人形を追いかけたが
その時だ。
「全く……。杏寿郎は
見回りに行くと言って勝手に
出歩くし、彼は釣りに行くし。
彼女はナイアと射撃訓練に
明け暮れたままだし……。
皆、身勝手が過ぎます……」
奥で見たことがない女の人が
愚痴りながら頭に三角巾をつけて
埃を払っていた。
ほぼパンイチで。
向こうもこちらに気づくと
俺達は同時に叫んだ。
「「へ、変態だぁ!?」」
次回、まさかの深夜訪問。
そして明かされる衝撃の事実
親友、告白します!
真面目な話短いけど投稿頻度は早い方がいい?
-
早い方がいい
-
遅いけど長いほうがいい