レリエルからの影の刃の
正体が掴めぬまま奴からの攻撃が
続く。
このままじゃあジリ貧も
良いところだ……何か手立ては
ないものか……!)
そう考えていた時だった。
『諦めるな!』
「!?」
突然俺の頭に誰かの声が響いたのだ。
(これは……念話?)
声の主を探そうと辺りを見渡すと、
目の前に赤い光を放つ魔法陣が現れ
その中からセルベリアさん、
そしてナイアが姿を現した!
ゲイトさんが何とかして
増援を送ってくれたのだろうか?
「セルベリアさん!」
「挨拶はいい、状況は?」
俺は大凡の
現状を報告しつつ指示を仰ぐ。
「成る程、奴らに打撃の類は
効かないというのか」
「うむ、そうなのだ」
セルベリアさんにキュクロは
レリエルの特性を伝えた。
「俺の炎もコートでかき消して
しまう有様で……すいません」
俺は謝罪の言葉を口にした。
だがそんな俺の言葉とは裏腹に
彼女は不敵に微笑んだ。
そして俺に向かってこう言ったのだ。
「何を謝ることがある?
奴は炎をそのままにせず
『コートで掻き消した』の
だろう?
何らかのアクションを起こしたと
いう事は奴にとって貴様の
炎は捨て置くには
何か不都合があるということだ」
その言葉を聞いてハッとする。
そうだ、何で気が付かなかった。
奴は光から生まれたと言っていたが
何で影を武器にしているんだ?
そもそも影って言うくらいだから
光が無ければ
存在出来ないんじゃないのか?
俺は頭の中でパズルのピースが
はまるような感覚を覚え、
そして同時に
ある一つの可能性に気が付く。
しかし確証を得るには
『顕色』を使う必要がある……。
何とか時間を稼いで貰わねば……。
イリナとゼノヴィアはアーシアちゃんを
レリエルの攻撃から
庇うので手一杯だから……。
「いくぞ、しょうわるおんな。
きゅうどーがなにかひらめくための
じかんかせぎをする」
「誰が性悪女ですか」
そう言ってキュクロは肩に
不殺の聖剣を担ぎ
四股でも踏むように腰を落とした。
答えるナイアもスリット腰から
一丁のライフル銃を取り出した。
「それは……!?」
セルベリアさんの表情が
ナイアが取り出した一丁の
ライフルを見るなり
驚愕に染まった。
彼女の世界にも銃器はあるらしいが、
あの銃は珍しい物なんだろうか?
そんな事を考えていると
ナイアはぽい、とセルベリアへ
そのライフル銃を渡した。
「Ruhm(名声)でしたか?
複製は難しいものでは
ありませんでしたよ」
それを聞いたセルベリアさんは
再び驚いた様子を見せた後、
少し悲しそうな顔をした後で
それをキャッチする。
俺はセルベリアさんの様子を見て 不思議に思った。
彼女の反応を見るに
あまりいい思い出のある武器じゃ
なさそうだが……。
そんな事を考えていたら
セルベリアさんは
こちらを振り向いて言った。
「……気にするな、私は大丈夫だ」
俺は一瞬迷ったが、
彼女がそう言っている以上
詮索するのは野暮だと思い 深く聞くのをやめた。
「それより、あれを倒す
算段が付ける手段を見つけてくれ。
援護は任せろ」
俺とキュクロは力強く答えた。
「はい!」
「りょうかいした! いくぞ、しょうわるおんな」
「ですから性悪女呼ばわりは止めなさいっての」
そう言って二人は レリエルへと向かって行った。
「てりゃあー!」
自身の身体をバネにするように跳躍すると
そのまま空中で回転しながら斬撃を放つ。
しかし、やはり攻撃は
レリエルは自身の形を水面の様に歪ませて
受け流されてしまう。
しかしキュクロは着地と同時に聖剣を構え直し
今度は高速で踏み込みながら 連撃を繰り出す。
「おぉおお!!」
だが、それも先程と同じく
奴の肉体をすり抜けてしまう。
「すり抜け、すり抜けと
ガチャやってるんじゃねえんですよ!
うっとしいアマですねぇ!」
ナイアは忌々しげに呟くと
スカートから1ダース程の
ピンが外れた手榴弾
のような物をばら撒き、
そして起爆させた。
ババババババッ!!
凄まじい爆音こそするが
レリエルの影から伸びた数多の手が
手榴弾を握り込み、炸裂を防いだ。
「ホホホ、憐れだこと」
「ぬう……」
いかにも余裕そうに高笑いをする
レリエルにキュクロは苦虫を
噛み潰した様な顔で睨みつける。
その直後、セルベリアさんの
Ruhmとかいうライフルから
轟音と共にマシンガンばりの
勢いで弾丸が撃ち出された。
ドガガガッ!!!
「……!?」
不意打ち気味の攻撃に
レリエルは思わず目を見開いたが
それも束の間。
やはり、というべきだろうか
煙の立ち上る銃創が塞がっていく。
「チッ……駄目か」
セルベリアさんは小さく舌打ちをすると
レリエルはそら見た事かと言わんばかりに
せせら笑った。
「ホホッ、憐れだこと。
この空間では私の肉体は
無敵なのだから。
諦めて裁かれよ」
言うが早いか俺達の数倍はあろうかという
影の巨人を繰り出してきた。
勝負を決めにかかるつもりなのだろう。
「ああ、お前の『肉体』はな?」
『顕色』を使い奴の
気の流れを観察、
更に奴が
ライフル攻撃に目を見開き、
ナイアの手榴弾を影の手により
炸裂を防いだこと……。
これで全てがはっきりした。
「タネが割れりゃ
どうということはねえ!
これでテメーの負けだぜ!」
俺は声を上げて叫んだ。
「貴様、何を言っている?」
怪しむように言うレリエルに
俺は敢えて
不敵な笑みを浮かべて
片腕を砲塔に変化させ
砲弾を上空へと放った。
「ホホホ、遂に錯乱したか。
どこを狙っている?」
レリエルは俺が
見当違いの方向を狙ったものと
みて嘲笑する。
だが、次の瞬間。
俺が放った照明弾によって
空間自体が照らされる!
「そうか! やつのからだは
かげだった!つまり、ひかりに
てらされているあいだは
キュクロたちのこうげきにたいして
たいおうできないのだな!」
キュクロは俺の方を向いて
顔を華やがせて笑って言った。
ナイアも同じように 口角を上げている。
セルベリアさんもライフルの
照準をレリエルに合わせつつ応じる。
「そういうことか。
奴の弱点が分かった以上 後は私達が倒すだけだ」
「その通りだな。
いくぞ、しょうわるおんな」
「だから性悪女呼ばわりは止めろ」
二人は再び
レリエルに向かって行った。
だがレリエルは硬直を解き、
高らかに笑った。
「ホホホ、
憐れ、憐れ、実に憐れ!
光が強くなれば
闇もまた強くなる!
私を照らせば影の力は
益々強くなると解らなかったか!
これこそが真の闇の力よ!」
そう言ってレリエルは 全身から黒いオーラを吹き出し
影の巨人達を更に出現させる。
そしてナイアと キュクロに向けて 攻撃を仕掛けた。
ドガアァァン!!
巨人達の拳が二人に迫るが
それぞれ辛うじて回避に成功する。
「ホホホ、そこな小僧などを
信じるからその様な目に合うのだ」
「おまえが……
きゅうどーをばかにするな!」
レリエルの幾度目と解らぬ
嘲笑に対してキュクロは
聖剣を構え直し、 叫ぶ。
それは怒りの声だった。
だが、それ以上に悲痛さを
感じさせる叫びでもあった。
レリエルはそれに構わず
今度は俺の方に視線を向ける。
そして、ニヤリと イヤらしく笑う。
が、俺が焦りも絶望もなく
ニヤついている事に対して
動揺を隠せない様子でいた。
まあ、無理もない。
何せ、今の俺は 既に勝利を
確信していたんだからな。
「な、何だその目は……!?」
「キュクロには悪いが
お前は光に照らされて
パワーアップするのは予想済みだ。
俺が確かめたかったのは
これだよ!」
「!?」
俺が親指を
下に向けるジェスチャーと共に
照明弾の残りが針へと変化し、
急速に落下する!
狙いは……奴の目だ!
「ギャアアアァァァァ!!」
レリエルは片目を押さえながら
今までの余裕が消え去った
表情で悶絶する。
そう、奴は『目だけが実体』
なんだ。
だから炎を過剰なまでに防ぎ、
予想外な照明弾に対して
目を瞑るしか
リアクションをしなかった。
「セルベリアさん!」
俺の言葉が終わる前に
セルベリアさんはライフルの引き金を引いた。
ドガガガガッ!!
「お、おのれ……おのれ……!!」
凄まじい弾丸の嵐が
レリエルの両眼を打ち砕くと
ブルカと喪服だけが残り、
奴は完全に消滅した。
「やったなきゅうどー!」
「ああ」
俺はキュクロの頭を撫でてやる。
「えへへ……」
「フッ……」
微笑むキュクロに セルベリアさんは
小さく 鼻を鳴らして笑った。
「……」
視線を向けるとセルベリアさんが 俺達の方を
振り向いたが 何も言わずに前を向いてしまった。
「どうしたんですか?」
「何でもない」
彼女は短く答えた。
何だかよく解らないけど、
機嫌が悪いって訳じゃなさそうだ。
「いい気分になっている所
悪いんですがね、
この氷の十字架はどうします?
このパターンだとこの空間は
このまま消滅しますよ?」
ナイアの言う通り、 この空間はレリエルが
作り出したもの、 つまりこの空間は奴が消えると
同時に消滅してしまうのか……?
しかも、ボールクの大将と
サリエルは共に氷の十字架の中だ。
アーシアちゃんとゼノヴィア、
あとイリナもいるというのに……!
何とかしないと! だが、その時。
突然、背後から声がした。
「ふう、
何とか繋げる事が出来たヨ」
現れたのは術符を持つ
シュタークさんだった。
「シュタークさん!」
「やあ、皆、無事かイ?
いやぁ、危なかったネ。
これで皆を
こちらの世界に召喚できそうダ。
とはいえ一度に全員は無理だけド」
そう言って彼女は
苦笑いを浮かべた。
だが、今はそんな事は
気にしてられない。
「まずはアーシアちゃんと
怪我人の皆さんをお願いします!
それから他の人達も!
俺とナイアは最後で構いません!」
それを聞いて シュタークは
満足そうに頷いた。
そしてアーシアちゃん、
ゼノヴィア、イリナが最初に
転送され、キュクロとセルベリアさんが転送された。
「所で何で貴方はともかく
私が最後なんです?」
「レディファーストだからな」
すると、ナイアは ジト目になり、ため息をつく。
「相変わらずクソ虫君は
どこに目をつけてやがるんです?」
「ほざきやがれ、お前は
人でなしだろ。
女性扱いされると思うなよ」
「いや、アンタの童貞を喰ったのは私ですが?」
何だかこの陰険漫談も
久し振りな気がする。
「ま、 大凡この後の展開を
読んで殿を務めたんでしょうが。
その程度の考えも私が読めないと 思っているとは……。
実に嘆かわしい。
これではもう救い様がないですね」
ナイアが呆れた様に首を横に振る。
……何だこいつ、何で俺が
庇う前提で話を進めてるんだ……!?
まあいいか、今更だしな。
ピシッ!とその時、
氷が罅割れる音がする。
見れば氷の十字架が
崩れ始めていた。
「氷が砕けるヨ君達!」
シュタークさんが叫びつつ
転送の術符を投げ渡すと
俺達は即座にそれを
ひび割れた氷の中の
ボールクの大将に投げつけた。
「何をしているんだ君達!
時間がないと言ったろう!」
「あ、普通のイントネーションで
話す事もできるんですね
シュタークさんって」
俺より先にナイアが代弁した。
「まあ、あのサリエルとかいう
殺人狂を
野放しにはできんでしょう。
ここでキッチリ仕留めておかないと
また厄介な事になるのは目に見えていますから。
それに、俺の勘が正しければ
奴はまだ何か企んでいる筈です。
そうでなければ、
こんなに早く復活できないと思います」
「ふむ、確かにそうかもしれないが……」
「大丈夫ですよ、シュタークさん。
奴は俺が絶対に倒しますから」
俺は彼女の肩に手を置く。
「……そうか、なら任せるヨ」
そう言って彼女は 少し寂しげに
微笑みながら 俺に背を向けて、
ボールクの大将と共に転移していった。
さて、これで後顧の憂いはない。
後は奴を倒すだけだ。
「悪いな、巻き込んだ」
「イヤ本当ですよ全く」
「悪かったって」
「まあ、良いですけどね、
貴方が いない世界なんて
つまらないですから」
ナイアが珍しく愛想のいい事を言った。
本当に珍しい。
普段もこれくらい可愛げがあれば
もっと楽なのになぁ。
そんな事を考えつつも
俺はサリエルへと向き合う。
「敗れたか、レリエルよ。
悲しきかな。悲しきかな。
だが、安心するがいい。
お前の無念は我等が晴らす。
お前の恨みは我等が晴らしてやる。
それが、我等の誓いなれば……」
そう言い終えると、 奴の大鎌が
斧槍へと変化してゆく。
「随分仲間思いな事で……」
皮肉を込めて 嫌味を言うと、
奴はフンと鼻を鳴らした。
どうやら自覚はあるらしい。
そして、 サリエルは構えを取る。
それを見て俺も戦闘態勢を取った。
こうして俺達の第2の決戦が始まった。
そういやこいつら一話からの
付き合いなのにコンビで戦ったことは無いな。
真面目な話短いけど投稿頻度は早い方がいい?
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早い方がいい
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遅いけど長いほうがいい