※この作品はR-18です。

ハイスクールD∞D   作:ぷうち☆りん

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作者、無法の3連続非エロ話。


第56話

 イッセーSide

 

 何とルイーナちゃんは自分の

 掌をナイフで刺した! 

 忽ち血がナイフに滴り、

 墳墓の大地に染み込んでいく。

 

「……死んで下さい。

 そうしたらもう二度と苦しまずに

 すむでしょ?」

 

 ルイーナちゃんはさながら燐火の

 様に瞳を輝かせて言った。

 こ、これは……! 

「い、いかん! 皆避けてくれえぇ!!」

 俺は大声で叫んだ! 

 しかし次の瞬間、地面から

 蔦で編まれた大蛇の様なものが

 数匹俺に襲いかかった! 

 

「うおっ……!?」

 

 俺は黄金の剣を

 引き抜き襲ってくる蛇を切り払う! 

 な、なんつー力だ……! そ

 れにこの魔力! これがルイーナちゃんの力なのか!? 

 

「フフフ……。凄いでしょ?」

 

 た、確かに……! 

 切った側から蔦が復元し、更に増えていく……! 

 しかもそのスピードは

 どんどん速くなっていく! だが……! 

「こんなものぉっ!」

 俺は迫り来る蔦の群れを切り払い、

 切り裂いて、ひたすら前進していく! 

 前進して! 前進して……! 

 どうする? 

 また、ルイーナちゃんを

 傷つけるのか? 

 俺の一方的な都合で……!? 

 

 ……俺はルイーナちゃんを

 切れない……! 

 俺はどうしても……! 

 でもこのままじゃあ……!! 

 

「切らないんですね、私を」

 

 ルイーナちゃんが寂しげに呟いた。

 そして彼女は自らの身体から血を流す。

 それはまるで彼女の涙の様に見えた。

「私の事なんて

 どうでもいいんでしょうね……。

 どうでもいいから気まぐれに

 傷つけたり、守ろうとする」

「違う! そんなんじゃない!」

「だったら何故攻撃しないんですか?」

 

 チクショウ……

 自分の都合ばかり言いやがって……

 

「!? ち、違う! 俺はそんな事は

 考えていない!」

「ならどうして攻撃して来ないんですか? 

 貴方が本気になれば私なんて

 簡単に倒せるはずですよね? 

 答えられないじゃないですか。

 私を弄んで、バカにして……。

 つまりそういう事でしょ?」

 

 ヘッ、俺は最強の赤龍帝で

 選ばれた存在なんだ! 

 俺は強いから何をしたって

 ユルサレルノサ! 

 

「そんな事、俺は……!!」

 

 誰だよ! 俺を惑わそうとする

 この声は!! 

 

「やっぱりそうなんですね……。

 最初から分かってましたよ……。

 貴方にとって私は……」

「黙れぇぇぇ!!!」

 

 俺は黄金剣を振りかぶる! その時だった。

 

「ッ!?」

 

 ドゴオッ!! 

 スコグルさんの

 強烈なボディブローが

 俺の腹部を打ち抜いた! 

 俺は吹き飛ばされて地面に叩きつけられる! 

 

「グハアッ!」

 

 そして顔を上げた瞬間に

 トーキックが顔面に迫る……! 

 

「ガハッ!」

 

 血飛沫が舞い、

 視界が歪む……! 

 俺は何とか立ち上がり、

 スコグルさんの方を見た。

 まるで豚を見る様な残酷で

 冷酷な目だった。

 

 クソ……何だ、その目は……! 

 恩知らずめ、恩知らずめ、

 オンシラズメエェェ!! 

 

 違う! 違う! 違う!! 

 そんな事俺は……! 俺は!! 

 

(考えてないなんて本心から

 言えるのか?)

(どいつもこいつも表では

 善人面して汚い事ばかり考えて

 やがるからなァ)

(そうだろ? お前もそう思うだろ? 

 だからほら見ろよ、あんなにも

 沢山の人が死んでしまったじゃないか! 

 ああ、哀れだ! 実に哀れだねぇ!!)

(だから、アイツら殺っちまおうぜ? 

 俺達の力を使えば簡単だぜ?)

 

 俺は……俺は……

 

「しゃらァ!」

 

 スコグルさんの回し蹴りが迫る……! 

 俺は咄嵯に左腕でガードしたが

 衝撃に耐えきれず吹っ飛んだ! 

 

「ぐあっ!」

 

 恐らく左腕が折れた……! 

 だがアーシアの『聖母の抱擁』が

 あれば回復はできる……。

 だから……! 

 ルイーナちゃんの放った

 魔力弾の雨が降り注ぐ! 

「うおおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 俺は叫びながら黄金の剣で

 攻撃を防ぎ、更にスコグルさんの

 拳を全て受ける! 

 

 ドカッ! ベキッ! グシャァ!! 

 ボコッ! バキィ! 

 何度も、何度も、何度も……! 

 骨は折れ、肉は弾け、内臓は

 破裂する中俺は痛みに悲鳴を上げそうになる……。

 だがアーシアに回復して

 もらうことで己の心を叱咤し、

 奮い立たせた! ここで倒れたら、

 それこそルイーナちゃんを傷つけてしまう……! 

 俺はただ、守りたいだけだ……! 

 破壊じゃない……! 

 守るための力があるはずだ……! 

 その為の力を

 俺は手に入れるんだ……! 

 

 ー

 

 アーシアSide

 

 イッセーさんの痛み……。

 ルイーナさんの悲しみ。

 そしてスコグルさんの怒り。

 様々な感情が陵墓内に渦巻きます。

 私は祈る事でイッセーさんの傷を

 癒やしていました。

 本当は辛いです……。

 ルイーナさんやスコグルさんが

 イッセーさんに

 酷いことをするのは嫌です。

 でも、私には祈る事しかできません。

 ですが目を逸らしてはいけません。

 私が信じなくてどうするんですか? 

 きっと、大丈夫……。

 私は自分に言い聞かせました。

 その時でした。

「……?」

 私は不思議な感覚に襲われました。

 これは一体なんでしょう……? 

 温かい何かに包まれている様な……。

 まるでお母様の様な……。

 そして、私の背中を誰かが

 そっと撫でてくれました。

 

「……」

 

 振り返るとそこには

 ゲイトさんがいました。

「……頑張っているね。

 少しいいかな? 

 時間は止めているから

 安心してほしい」

 

 そして彼は優しく微笑み、

 私に語りかけてきました。

 

「はい」

 

 私も笑顔で返します。

 ……不思議ですね。

 イッセーさんと

 この人の前だと自然と笑える。

 

「君が望むなら、

 時を巻き戻す事ができるかもしれない」

「!? どういう事ですか?」

「……どうやら禍津星が

 彼女達の『愛憎』の念を

 観測し始めている。

 今、彼等が具現化してしまえば

『滅びの未来』は

 回避できないものになり得る。

 それならばいっそ、スコグルが

 兇弾に撃たれる前までに

 時を巻き戻せばいい」

「そんな事が本当に可能なんですか!?」

「可能性はある。

『滅びの未来』を回避できるかどうかは、

 君達次第だ。さぁ、準備は良いかい? 

 もう時間がないよ……」

 

 ゲイトさんの言葉は

 抽象的ですが真実味がありました。

 うう、私がもう少し頭が良ければ

 もっと具体的に理解できたのですが……。

 でも、私にだってわかります。

 大切なのは気持ち。

 なら……! 

 

「それは、待って下さい……」

「何故だい? 『滅びの未来』が

 回避できなくなってもいいのかい?」

 

 ゲイトさんは私に尋ねます。

 その口調は優しく静かで、

 私に怒っていたり、批判している訳ではありません。

 むしろ、私の身を案じて下さっている

 様に感じられました。

 だからこそ、私は伝えなければ

 ならないと思いました。

 

「はい、構いません!」

「どうして? このままでは

 君の大切な人が死ぬ事になるんだよ? 

 それでも構わないと言うのかい?」

 

「その……」

 

 その可能性はあります。

 寧ろ、巻き戻した方が正解なのかもしれません。

 それでも……、それでも私は! 

 

「自分達のしたことが例え

 過ちでも、なかった事にはしたくないんです……。

 私も、きっとイッセーさんも」

 

 私は助けを求めてきた悪魔さんを

 助けた事で、追放されました。

 けどその事でイッセーさんや

 安里さんに出会えて、

 友人になり結ばれる事ができました。

 私は自分の意思で行動しました。

 後悔や未練もあります。

 ああすればよかった、

 こうするべきだった、

 そんな事はしょっちゅうです。

 でも、それでも……。

 

「自分に都合の良いものしか

 残さない世界はきっと

 歪んだものになってしまいますから。

 それは神の御心に最も反することです」

 

 私はそう言ってゲイトさんに笑いかけました。

 

「……ふぅ」

 

 するとゲイトさんは

 小さくため息を吐きました。

 あうぅ……、呆れられてしまったのでしょうか? 

 でもゲイトさんはにこりと微笑みかけてくれます。

 

「君は、強いね。

 僕にはそれが眩しく見えるよ」

 

 そして、少しだけ寂しげに笑うと言いました。

 

「……わかった。

 君がそうしたいと言うなら

 そうしよう。

 何故彼や彼女が

 君達から知性を得ようとしたのか

 解った気がするよ」

 

 ? 

 ゲイトさんのお知り合いの方々が

 私達に何かをしたんでしょうか……? 

 私の疑問は解消されないまま時は進みます……。

 

 ー

 

 安里Side

 

「流石だね安里君! 

 僕の『福音呼びし勝鬨の剣』に

 ここまで対応できたのは

 君が初めてだ!」

 

 祐斗が興奮した様子で叫ぶ。

 斬撃の瞬間に炎の壁を展開し、

 斬撃を受け止めさせつつ

 壁と空間ごと破壊したのだ。

 だが、祐斗の指の皮もズル剥けに

 なる程斬撃には負担がかかっている。

 アーシアちゃんの回復も

 さっきから中断されているから

 向こうは魔力切れなのか? 

 ならもう少しで決着がつくだろう。

 ルイーナのためにもう一踏ん張りだ! 

 

『気合が入っている所

 悪いんだけどね安里』

 

 っていきなり時間を止めて

 出てくるなよゲイトさん! 

 ビックリするだろうが!! 

 

『ああ、ごめんごめん。

 それよりもキミの想い人の

 ルイーナが魔道に堕ちようと

 している。どうするつもりだい?』

 

 はぁ!? 

 いや、ちょっと待ってくれ。

 ルイーナが? 

 あの子に限ってそんな……! 

 

『残念だけど、事実だよ』

 

 ならこうしちゃいられん! 

 そしてゲイトさんが時間停止を

 解除した瞬間、俺は走り出した! 

 

「あ、安里君!?」

「こら、きゅうどー! 

 どこへいく! 

 キュクロをおいていくな!」

 

(……本当に面白い子達だ。

 さぁ、見せてくれ。

 この世界を生きる者達の可能性を……)

 

「これ以上は危険だ……! 

 グレイフィア、リアス。

 すぐにレーティング・ゲームを

 中断する!」

「いいえ、お兄様。

 それではイッセーの覚悟を

 軽んずることになります……!」

「そうです。

 それに彼は貴方は

 私の義弟でもありますから」

 

 

 

 ー

 

 イッセーSide

 

「な、何で……? 

 何で反撃して来ないのさ!?」

 

 スコグルさんは反撃せずに

 攻撃を受け続ける俺に

 戸惑っている様だ。

 

「……」

 

 攻撃を繰り出すスコグルさんの表情は

 焦りと怒りが混ざり合っている様に見えた。

 ……そう、まるで昔の自分を見ているようだ。

 かつて、自分の悪行のせいで

 父さんや母さんたち、

 クラスメイトに

 迷惑をかけたり、

 傷つけてしまったり時の……。

 だから、わかる。

 今、目の前にいる

 彼女は迷っているんだ。

 自分達が間違っているかも

 しれない。と。

 或いはただの八つ当たりかも

 しれない……。

 だけど誰かが彼女達の

 怒りや悲しみを引き受けなきゃ

 反省して、前に進み出せないだろ! 

 ……なんて、偉そうな事言っちゃってるけどさ。

 俺だって間違える事もあるし、

 悩む時もある。でもだからこそ、

「あなた達が抱えているものを

 全部吐き出してくれれば、

 力になれるかもしれないんだ!」

「ッ!!」

 

 スコグルさんが

 ハッとした顔をした。

 

「……アンタがそれで

 良くたってさあ!!」

 

 涙を流しながらルイーナちゃんの

 生み出した蔦を拳に纏わせて

 スコグルさんはドリルの様に

 回転させて殴りかかってくる。

 あれを喰らえば流石に

 死ぬかもしれない……! 

 だけど、それでも! 

 俺は避けずに、その一撃を正面から受けようとした。

 

「「「イッセー(先輩)!」」」

 

 本陣のリアスさんや近くの小猫ちゃん

 たちの声を聞きながらも、

 俺は目を閉じず、真っ直ぐに見据えた。

 そして……。

 あれ、痛みがないな……? 

 それに誰かが、俺を庇って

 盾でドリルを防いでいる……!? 

 すごく綺麗な髪だ……。

 

「天使様かな……?」

 思わず呟くと、

「少し違います」

 とその女の人は笑顔を返した。

「ロスヴァイゼ! どうして!?」

 

 スコグルさんは

 同期のヴァルキリーが助けに入った事に驚いていた。

 そりゃ俺だってビックリだよ! 

「これはもう

 レーティング・ゲームではなく私闘ですから」

 

 シュバッ! 

 

 同時に縄か網の様なものが

 スコグルさんを捕縛した。

 

「これは……!? 

 グレイプニル!?」

 スコグルさんは拘束された事に驚き、

 更にそれを為したのが

 自分の上司だと知ると目を見開いた。

 

「そうじゃ、狼……

 いやさ、暴れ牛、いやバカ牛を

 捉えるには誂え向きじゃろう」

 

 オーディン様はスコグルさんを

 ジロリと見つめると、言葉を

 続けた。

「のう、スコグルよ。

 ワシはお前に期待しておった。

 例えワシがロキ達に敗れる

 未来が訪れようともアスガルドを

 ロスヴァイゼ達と取りまとめ、

 国を導いていけるのは

 お主らしか居らぬと思っておったんだがのぅ……。

 しかしお前には、他者への分別、

 そして何より思いやりが

 欠けておる……。

 独断で進むのはバカ牛じゃ。

 牛とは本来地道に荷を運び、

 田畑を耕し稔らせるものじゃ」

「ぐっ……」

 

 スコグルさんは悔しげに俯き、

 唇を噛んでいる。

 

「確かに、この世界は厳しい。

 理不尽なことだらけだし、

 不条理なことも多々あろう。

 じゃが……転嫁し、誰かを

 憎んでは待つのは『滅びの未来』だけじゃ。

 だから、もし、まだチャンスがあるなら

 もう一度考え直して欲しい。

 そして、この少年のように

 他者に手を差し伸べて欲しいのじゃ。

 お主なら出来る筈だと信じておるぞ。

 すまなかったの。

 赤龍帝……いや、兵藤一誠。

 何れはお主もエインヘルヤルと

 して我が国に招きたいものじゃな。

 では、さらばじゃ!」

 

 オーディン様はそう言うと、

 転移魔法陣を展開してどこかへ去っていった。

 

「……アタシは、

 アタシはどうすれば……!」

 

 スコグルさんは頭を抱えながら苦しんでいた。

 そんな彼女にロスヴァイセさんが近づき、

 優しく微笑む。

 

「スコグル……貴方にももう、

 解っているのでしょう? 

 本当は気づいているはずです。

 自分が何故こんなことをしていたのか。

 だから、私が止めに来たのです」

「ごめんなさい……。兵藤一誠。

 今更謝っても

 許してもらえないけど……。

 でも、それでも、本当に申し訳ありませんでした」

 

 スコグルさんは深々と

 頭を下げてきた。

 どうやらオーディン様と

 ロスヴァイゼさんの言葉で

 心が洗われた様だ……! 

 ……でもまぁ、

 正直スゲー怖かったけどさ! 

 スコグルさんが謝ってくれたなら

 許す! 超許す! 

 あとはルイーナちゃんだけど……

 安里が彼女を抱きしめていた。

 うん、アイツならきっと大丈夫だろう。

 

 ー

 安里Side

 

 俺が駆けつけた時、

 スコグルさんとルイーナが

 イッセーをメッタ打ちにしていた! 

 ど、どういうことだ!? 

 これじゃリンチじゃねえかよ! 

 俺は思わず怒りに任せて

 飛び出そうとした。

 だけど……それはできなかった。

 だってイッセーが殴られながらも

 真っ直ぐな瞳で彼女達を見据えていたから。

 それに気づいた瞬間、

 俺の怒りは何処かに吹き飛んでいた。

 ああ、イッセー。

 よくわからんがお前はあの二人の

 怒りや悲しみを引き受けてやるつもりなんだろ! 

 けどよ、友達ってのは喜びも

 苦しみも分かち合うモンだろ! 

 水臭いぜ! 俺だって力になるさ! 

 

「アンタがそれで良くたってさァ!!」

 

 スコグルさんがドリルで

 イッセーを貫こうとするのと

 同時にルイーナはナイフを

 握りしめたままイッセーの背中へと

 突っ込んでいった! 

 ……まずい! 

 

 俺は『轟』の歩法にて

 イッセーとルイーナの間に

 割って入り、そのナイフを防ぐ! 

 

「……!? 安里さん! 

 どうして!?」

 

 怒りよりも恐れの色を浮かべる

 ルイーナを見て、俺は何となく

 理解する。

 まるで自分の悪行を見咎められた

 子供の様に怯えているのだから。

 なら、俺のする事は一つだ。

 

「ルイーナ、言ったよな? 

『私が危なくなったら助けに

 来てくれ』ってさ」

「は、はい……」

「だからさ、

 約束通り助けに来たよ。

 憎しみのままに誰かを殺そうとするなんて

 危険どころじゃねえモンな」

「えっ……?」

「お前の気持ちを

 全部受け止めてやんよ。

 安心しろ。俺がついてる。

 ほれ、行くぞ!」

 

 俺はそう言って、

 ルイーナを抱きしめた。

 

「あ、あ……安里さん……」

「大丈夫、大丈夫だよ。

 心配しなくても良いんだ。

 今まで辛い思いをしてきたんだもんな。

 これからは幸せになろうな」

「う、あ……わあぁあぁん……!!」

 

 ルイーナはまるで生まれたての

 赤ん坊の様に泣きじゃくっていた。

 

 ー

 

 安里Side

 

 そんなワケで

 レーティング・ゲームは

 乱入によるノーコンテスト。

 ま、勝敗なんて大した問題じゃないし

 イッセー達のわだかまりが

 解消されたなら万々歳だ。

 

 何でか知らんかイッセーが

 神妙な顔で謝ってきたが

 俺は気にするなって言っておいた。

 どうせ、覗いたとかいつもの

 エロハプニングが原因なんだろうしさ。

 それより問題はこの後だった。

 

 サイラオーグさんは仏頂面で

 ルイーナに近づくと……。

 

 パシッ! 

 

 と平手で彼女を頬を叩いた。

 俺もイッセーも仰天したが

 リアスさんは「口出しするな」と

 言うように俺達へと目配せした。

 

「何故あんな事をしたのだ! 

 あれではただの八つ当たりだ!」

「あ……あう……ご、ごめんなさい……!」

「お前の境遇には同情はしよう。

 だが、だからといって他人を

 傷つけていい理由にはならない。

 そんな事はお前自身が一番よく解っている筈だ! 

『蒼色の虜囚姫』と嘲られ、

 卑しい血の生まれと謗られた

 踏まれ続ける痛みと苦しみを味わったお前ならば……!!」

「!?」

 サイラオーグさんの言葉に

 ルイーナはハッとした表情をする。

 

「それでもなお、自分を傷付けた者と同じ道を歩み、

 復讐と怨恨の刃を振るおうと言うのか? 

 それは、本当に救われるという事なのか!?」

「…………」

 

 サイラオーグさんは次期当主に

 相応しい堂々たる獅子王

 の様なオーラを纏いながら

 厳しくも優しい口調でルイーナに語りかける。

 

「……もう二度としないと、

 兵藤一誠とお前の騎士である

 九頭竜安里に誓えるか?」

「はい……誓います……ごめんなさい……!」

 

 ……何というか、

 スゲー男前な人だな。

 こういう人にこそ

 皆ついていきたがるんだろうな。

 俺はそのカリスマに

 感心しきりだった。

 

「すまなかったな、

 兵藤一誠、九頭竜安里。

 ルイーナはバアル家の

 懐刀であるムールムール家の

 跡取りであり、俺にとっても

 妹の様なもの。

 妹の無礼は兄の無礼。

 この通りだ、不満はあろうが

 水に流してやってほしい」

 

 バアル家の次期当主が

 他人のために、

 転生下級悪魔のイッセーと

 どっかの馬の骨に等しい俺に頭を下げた。

 ……こりゃ完敗だな。

 カブトを脱ぐしかねえ。

 

「いやいや、

 こっちも色々と助かったんで。

 全然構わないッすよ!」

「ええ、俺としても文句なんてありませんから」

「そう言ってくれると有り難い。

 しかし、その若さで随分と

 修羅場を潜って来たようだな。

 お前たちの様な気概と

 誇りあるものを一族に

 迎えたいものだ! 

 いや、いかんな! これではオーディン殿と

 取り合いになってしまう」

 

 サイラオーグさんは豪快に笑う。

 よし、これでめでたしめでたし……。

 とは、ならなかった。

 

「まあ、サイラオーグ様。

 ソレを次期当主などと誤解を招く

 発言をされては困りますわ。

 そこの卑しい女は悪魔の駒一つも

 持ち合わせぬ身、我らが一族の

 末席にすら加えられぬ有様」

 

 ……何だこの辛気臭い銀髪ババア? 

 すっげー線香臭いけど葬式帰り? 

 身なりはいいし、

 見た目はルイーナの

 姉と言っても通用しそうだけど

 それはそれとして

 いきなり現れて何言ってんの? 

 

「あら、メスブタ、

 まだいたの? お兄さまが用があるのは

 貴方ではなく私のほうですわ。

 ねえ、サイラオーグ様?」

「俺の方には別にない」

 

 なんだこのクソガキ!? 

 いきなり現れて何抜かしてやがる? 

 これにはサイラオーグさんも塩対応。

 というかな! 何がメスブタだよ、

 テメーはメスカマキリみてーな

 痩せぎす女だろうが? 

 コルセットみたいにドレスを

 ギチギチに締めやがって。

 それに何だよ

 そのスケートブーツみてーな

 ダッセー靴は? 

 俺は怒りの余り、

 思わずルイーナの前に立って

 庇う様に両手を広げた。

 

「ちょっと待てよ! 

 あんたらさっきまで

 知らんぷりだったくせに何だ? 

 ルイーナが優しいのを

 良いことに自分の都合ばっか押し付けんじゃねぇ!!」

「……!! き、貴様!! 

 この私を誰と心得ている!!? 

 私は大王派を纏める長にして

 死霊術を極めし

 ハマーマ・ムールムールなるぞ!」

「知るかババア! 

 ゾンビ以下の腐れ肉の塊が! 

 アンタが何者かなんて

 どうでもいいんだよ!」

「お母様に何という口を……! 

 これだから私達名家に纏わりつく

 蛆虫は嫌いなのよ!」

 

 俺の罵倒を聞いて、

 カマキリ女は額に青筋を浮かべて

 ヒステリック気味に叫ぶ。

 

「はあ〜? 蛆虫は腐った肉か

 生ゴミに湧くから間違ってはいねえだろ?」

「な、なな……!? 無礼者……! 

 この私が直々に処分してくれるわ!!」

「やってみろよ! 

 そしたら俺も遠慮なくテメェを

 ぶちのめせるってもんだ!!」

「……二人ともそこまでだ」

「「ッ!?」」

 

 サイラオーグさんの声に俺達はビクッとなる。

 

「ベラナディア。

 お前はもう少し美しい言葉を

 覚えろ。安里もだ。

 決してお前達がわかり合えぬ事は解ったが

 こんなところで言い争うな。

 見苦しい」

「申し訳ございません……」

「……すんませんでした」

 

 ……いかん、つい熱くなった。

 

「それで、サイラオーグ様。

 何故その様な下賤な生まれの女を?」

「……繰り返しになるがルイーナは

 俺の妹の様なものだ。

 そして先ほども言ったように

 兵藤一誠も九頭竜安里も俺の友人であり、

 今回の件では恩人でもある。

 そんな奴らを侮辱され、黙っているわけにもいくまい。

 それに、ルイーナも自分の過ちを認め、謝れる子だ。

 俺はそれを評価している」

「……」

「……」

 

 やばい、この人は

 マジモンの大物だ。

 俺達の事なんか放っておいて

 無視すればいいものを、

 わざわざ自分から仲裁を買って出るとか……。

 この人の器の大きさには感服するばかりだぜ。

 

「ま、まあいいでしょう……。

 今日のところはこれくらいにしておきましょう。

 しかし、忘れないでくださいませ? 

 ムールムール家あっての

 バアル家であり、貴方を擁立し

 貴方と父君の政敵を排除してきたのは

 我が家であるという事実を」

「……魔術を教わり

 養育された立場としては

 非才の俺が貴方の面子を

 潰したのは事実だ。

 それは認めよう。

 だが、俺とて男として

 譲れないものがある。

 それに今後、俺に挑んでくるものがあれば

 陰惨な暗殺ではなく

 堂々と容赦なく叩き伏せるだけだ!」

「そうですか……。

 ならば結構ですわ。

 せいぜい今のうちに強がっておくことです。

 近い将来、貴方は

 私に頭を下げねばならなくなるのですから」

 

 そう言うと、銀髪ババアと

 カマキリ女は取り巻きを引き連れて

 その場から去っていった。

 クソッ! ムカムカするなあ!! 

 おい、ギャスパー! 塩持って来い! 

 何!? 直接触れると

 アレルギーみたいにかぶれる!? 

 仕方ねえな……! 

 俺は自分で持ってきてパッパッと振り撒いた! 

 あのカマキリ女と銀髪ババアは

 俺が絶対泣かして

 ルイーナに対して

「私達が間違ってました、許して下さい」って

 土下座させてやるからな! 

 覚悟しやがれ!! 

 かくして後は会談を残すのみだ。

 夏休みもまだまだあるし、

 あんな葬式一族なんて忘れて、

 楽しい思い出を一杯作ろうぜ、ルイーナ! 

 




ここで冥界コソコソナイショ話!
ルイーナ→ルイス・ハレヴィ+ネーナ・トリニティ
ハマーマ→ハマーン・カーン+シーマ・ガラハウ
ベラナディア→ベラ・ロナ+ナディア・ロナ
カロックス→カロッゾ・ロナ+クラックス・ドゥガチ

ハマーマとベラナディアの元ネタ、あの二人でしょ?
ゆるされよ、ゆるされよ……。

最後のは次に出ます。

真面目な話短いけど投稿頻度は早い方がいい?

  • 早い方がいい
  • 遅いけど長いほうがいい
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