※この作品はR-18です。

ハイスクールD∞D   作:ぷうち☆りん

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オリジナル展開はーい、よーいスタート。
夏休みまだ終わってないからね。


第74話

安里side

 

所変わってここは俺のバイト先、

喫茶店ラヴ・クラフトだ。

 

「成程、そいつは大変だったな」

 

辰郎叔父さんはヴァーリの話を信じているのかいないのか微妙な感じで聞いていた。まあ、ルシファーだとか白龍皇だとかいきなり言い出したら救急車呼ばれるよなフツー。

何でヴァーリが堂々とここにいるかというと、ロキ討伐の功績によって禍の団とは決別した、という事になったのだそうだ。アザゼルのおっさんが大分駆けずり回ったらしい。

 

「ま、とにかく食えよ。ラーメンは専門外だがな」

 

コトン、と置かれたどんぶりの中には澄んだスープに海鮮系の具がたっぷり入っている。美味しそうだ。

 

「いただきます!」

「頂こう」

 

俺達は箸を割って麺を口に運ぶ。……うん、うまい!なんというか上品な味で洗練されているって言うのかな?

しかしヴァーリはどこか不満そうにしている。どうしたんだろうか。

 

「……何というか野趣味がないな。

ラーメンというには上品すぎる」

「ふーむ」

 

叔父さんは思い当たる節があった様に腕を組みながら唸る。

いや、ヴァーリ。叔父さんラーメン屋じゃないからな?喫茶店のマスターだから!

しかし叔父さんはやはりアザゼルのおっさんと長い間友達やっていられるだけある。

ヴァーリの言葉をガハハと笑い飛ばした。

 

「いいんだよそれで。

ここはあくまでオレの店だからな。

喫茶店の雰囲気の中で気取って食うなんてラーメンじゃねえわな!はっきり物をいう奴は好きだぜ」

「確かにな」

ヴァーリも納得した様だ。

それから俺達はしばらく無言でラーメンを食べていた。

すると、カランと鈴が鳴る。

お客さんだろうか。

 

「ああ、すまねえな。

今の時間は休憩中でね」

「休憩中の看板は出ていなかった様ですが?」

 

何だ、イヤに粘るヤローだなと

目を向けてみればそこには見知った顔がいた。というか、さっき叔父さんに話したばかりの曹操じゃねえか!

 

「ゲホ!ゲホッ…!テメッ……!どの面下げて来やがった!?」

 

俺は思わず咳き込んでしまう。

しかし曹操はそんな事全く気にせず俺達を見据えた。隣にはチャイナドレス姿の七符までいる。

 

「あら?随分と懐かしい顔を見かけたものね。……あの時は世話になったわね」

 

とは言うが七符の顔は明らかに俺に対しての敵意が剥き出しになっていた。

 

「おっと。今はキミ達とやり合うつもりはない。寧ろキミ達と話がしたいと思って来たんだ」

 

宥めるような仕草で曹操はほざく。

相変わらずキザったらしさが鼻につくヤローだぜ……。

 

「話し合いだと?ふざけんじゃねぇぞ。こっちはお前のせいで散々な目にあったんだからな!」

「だがロキ、トール、バルドルといった反主流派を退けて多神連合が結成できたのは怪我の功名と言えなくもないんじゃないかな?」

 

……チョットナニイッテルノカワカリマセンネ。

あまりの厚かましさに俺は絶句するしかなかった。

しかし曹操の隣にいる七符は俺に粘着く視線を送る。何だババア、俺にはルイーナっていう彼女がいるんだからな!

 

すると、七符はフンと鼻を鳴らす。

 

「全く……主様の力があればルイーナとやらを元に戻せるやもしれぬのにのう……」

 

瞬間、俺の心がざわついた。

 

「何だ? するとテメェは俺が女のために親友や仲間を売る男だって思ってやがるのか……」

「安里、ここは人間界だ。少し落ち着け」

 

ヴァーリが肩を叩いてくる。た、確かにここで暴れたら叔父さんに迷惑をかける所の話じゃない。

多分、それを見越して

曹操はこの場にやって来たのだ。

 

「ああ、思っていたとも。と言ってもキミを卑劣漢だと考えていたのではない。寧ろその逆だよ」

 

曹操はそう言って笑う。

 

「私はね、自分の欲望を満たすために他者を犠牲にするような存在は例外なく嫌いなんだ。私達が戦うべき相手は他にある筈だろう?」

「それで? テメーが王様になって好き放題やりたいってハラか?」

 

俺は冷静さを心がけつつ、しかし怒りを隠しきれない声で言った。

 

「私はそんな俗物に見えるかい?

私は王様になりたいわけじゃない。

とはいえ自分の才覚がどこまでこの世界に通じるのか試してみたいというくらいの気概は持っていたい。

その結果皆から王になるべきだと請われたのならば従おう。それが英雄のあるべき姿というものさ」

 

曹操は余裕たっぷりに言い放つ。

やはり乱世の奸雄だけあって演説が上手い。

 

「英雄のあるべき姿というのは我儘を通す力を振るうということか?」

 

ヴァーリは挑発的な口調で問う。

しかし曹操は挑発には乗らず、ただ笑みを浮かべるだけだ。

まあ、流石にそんな安い挑発に乗るほどバカじゃないよな……。

すると、曹操はふっと笑いを漏らす。

まるでヴァーリの態度が予想通りだったと言わんばかりに。

 

「勿論、それもあり……。

といってもその手の輩は英雄に叛くもの……叛英雄というべきかな。

彼らは正直俺の手にも余る」

 

叛英雄……。物凄くありがたくない響きだ。

 

『余るからなんだというのだ。お前達の内ゲバにヴァーリや兵藤一誠を巻き込むつもりか?』

 

突然、どこからともなく声が聞こえてきた。恐らくアルビオンの声だろう。案外面倒見がいいのか?それともロキの一件でヴァーリと共闘したせいだろうか。

 

「巻き込まれる、か。それはどうかな?」

 

曹操は意味深に呟く。

 

「そもそもこの世界で起きていることは全て世界の理の中に組み込まれている。誰かが干渉しない限りね」

「持って回った仄めかしで人を煙に巻くのが好きなようだな。お前、モテねぇだろ」

 

俺は曹操の言葉にイラつきながら言う。軽口を叩いたつもりだったが曹操の表情が僅かに険しくなった。

 

「話にならぬ。主様、やはり此奴らとは話しても無駄じゃ」

「初めて話があったな若作りババア。

老い先短い身の上なんだから時間は大切になあ?」

 

俺と七符のいがみ合いを聞いていられないとばかりに叔父さんが深いため息をつく。

 

「お客さん。ここは喫茶店だ。

何か注文してくれよ」

「ああ、申し訳ない。俺は紅茶派でね、名残惜しいが予定も詰まっていてね……」

 

いや、何しに来たんだコイツ!

曹操は踵を返して店を去ろうとするが振り返って何かを思い出したように口を開く。

「そうだ。シュタークという悪魔祓い師には気をつけた方がいい」

「ああ、そうかい」

「では失礼するよ」

 

曹操は今度こそ本当に店を出て行った。ケチがついてしまったが、取り敢えずラーメンを食べてしまおう。

するとまたしても来客があったのだが……その人物はあまりにも予想外すぎる人物、もとい悪魔だった。

 

 

「レイヴェル!レイヴェルを知らないか!」

 

……ライザー?そこには焦燥感に満ちた顔のフェニックス家の三男坊がいた。確か、まあ色々あってリアスさんとの婚約が破談になった筈だ。

その男がどうしてこんな所にいるのかという疑問はさておき、俺達は唖然とする他なかった。

 

「お客さん、ここは喫茶店ですぜ。いなくなった身内を探すなら警察に行きなさい」

 

叔父さんの言う事は尤もだ。だが、今のライザーは明らかに冷静さを欠いている。

 

「貴様などには聞いていない!九頭竜安里!俺の最愛の妹をどこに隠した!隠すとタメにならんぞ!」

 

いきなり俺の襟を掴んで締め上げてきた。力強えなコイツ!?

 

「おい、焼き鳥ホスト野郎!離せ! つーかテメェの妹なんざ知らねえよ!」

「惚けるな!貴様らがレイヴェルを連れ去ったことはわかっているんだぞ!」

 

ダメだ、まるで話が通じねえ!しかしここで騒ぎを起こすわけにもいかない。すると、コトンとコーヒーカップを置く音が響いた。

 

「まあ、一杯飲んで気を静めな兄さん」

 

辰郎叔父さんは落ち着き払った声でそう言うとライザーは意外にも素直に従った。 だけど折角のコーヒーをグイッと一気に呷るなよ。不死鳥だから火傷はしねえんだろうけど。

 

「……ふぅ。それで俺の妹はどこにいる?」

「だから知らねえよ!警察行けって言ったろ!」

 

話が堂々巡りになりかけたその時、俺達にとって聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「すまない、辰郎殿!彼女に何か暖かいものを出してもらえないか!」

 

このはきはきとした容赦なくデカい声量は間違いなく煉獄さんだ。

まあ、それはそれとして……。

ヴァーリと煉獄さんとは思い切りやり合った仲だけど大丈夫かな?俺は心配になって二人の様子を窺う。

 

「ラーメン……食べるか?」

「頂こう! 辰郎殿! 俺と彼女にも同じものを頼む!」

「はいよっ」

「ありがとう、感謝する!」

 

……まあ、いいか。というか、

傍らにいるレインコートを纒った女の子って……アレ!?こ、このお嬢様の空気丸出しのドリルロールは……!!

 

「お兄様!?」

「レイヴェル!?」

 

俺達が驚いていると、ライザーは妹の元へ駆け寄っていく。

 

「無事だったかレイヴェル!」

「ええ……」

 

兄らしく妹の肩を抱くライザーに、レイナーレは伏し目がちになって答えた。何だか訳ありの様だが……。

 

「うむ! 実は彼女はネフレンとやらと政略結婚させられるのを良しとせず、家出したそうなのだ!」

 

相変わらず煉獄さんは直ぐに事情を火の玉ストレートに説明するよなぁ。話が早くなるから有難いけどさ!

 

「何と言うことを……。兄さんも父さんも母さんも、皆お前を心配しているというのに……」

 

ライザーが呆れた様子で嘆く。

あ、コラ!思い詰めた娘を追い詰める様な事を言うんじゃないよ!

案の定、レイヴェルの肩は震えていた。そして遂に耐えかねたかの様に涙を浮かべ、叫びを上げる。

 

「お兄様達はあの男と私が結ばれれば全てが丸く収まると思っているのでしょうけれど、私は絶対に嫌ですわ!あんな男となんて死んでもごめんです!それに私、もう決めましたの! お慕いしている方がいますのよ!」

「な、何だとぉおおおッ!?」

 

ライザーは驚きのあまり目を見開きながら絶叫した。

 

「そ、そんな相手がいるのか!?一体誰なんだ!?」

「……」

 

レイヴェルは顔を真っ赤にして黙り込む。恥じらっているのかあるいは別の理由なのか。

 

「ほほう、青春だねぇ。

ほいよ、特製ラーメン二丁」

「うむ、うまいっ!」

 

叔父さんは微笑ましそうに呟いてラーメンを出すと煉獄さんは美味そうに食べだした。

なんというか、マイペースというか我が道を行く人というか……。

 

「それで、その男はどこのどいつなんだ!?」

「…………」

「言えないような奴なのか!?」

「いえ、その……」

「まさかあの赤龍帝とか言わないだろうな!」

「……はい」

レイヴェルが恥ずかしそうに俯きながらもそう答えると、ライザーは雷でも打たれたかのように硬直する。

しかし、お嬢さんの好きな相手ってのも大変だな。ライザーはどう反応するんだろう?

 

「うーむ、兵藤一誠か……。

少し妻が多過ぎるな!」

 

ライザーより先に煉獄さんが評を下した。いや、まあ……。親友ながら否定はできんわ。

 

「い、今何て仰いましたの!?」

「ん? だから、妻が多いとな」

「ほ、ほら見ろレイヴェル!奴は女をアクセサリーとしか捕らえていない貴族の風上にもおけない見下げ果てたゲス野郎だ!あんな男の何処が良いんだ!?」

 

レイヴェルは目を白黒させて驚く中、ライザーは必死の形相で捲し立てる。

まあ、親友だけど気持ちはわかるぜ。俺だって同じ状況になったら、やっぱりそう思うだろうな。

 

「お兄様がそれを言えまして!お兄様の眷属も全て女性ではありませんか!何より私を僧正の駒 にしたのも、妹萌えなどというマウンティング欲を満たす為だったのでしょう!?」

「違う!あれは、お前の将来を思ってだな!」

「私の将来は私が自分で決めます!お兄様達の指図を受けるつもりはありませんわ!」

 

兄妹喧嘩が勃発してしまった。まあ、仲の良い証拠なんだろうけど。

ヴァーリは我関せず、といった感じだし。

「まあまあ、二人とも落ち着きなって。まずはご両親に話を通してみようじゃないか。その上で決めるといいさね」

「……わかりました。それでは早速帰って父さん達に報告して参ります。行くぞ、レイヴェル!」

「ちょ、ちょっと待って下さいお兄様!まだ話は終わってません!」

「いいから帰るぞ!」

「いやっ! 離して! 人攫い!」

「な、何ぃっ!?人聞きの悪い事を……!」

 

い、いかんな。また暗雲が立ち込めてきたぞ……。しかしヴァーリがスマホにて誰かと連絡を取り出した。

まあ、この状況下でコイツが連絡する相手は一人しかいないと思うんだけど。案の定、数分もしない内にアザゼルのおっさんがやってきた。

 

「あのなあ、今の俺は多神連合の結成のあれやこれやで忙しいんだぞ?

ロスヴァイセの奴は俺のマンションが豪華すぎて住めねえとか言い出しやがるわ、男性恐怖症が治ってねえから俺の顔を見るたびに卒倒しそうになるわ、スコグルの奴は俺の酒のコレクションを勝手に……」

「お前の愚痴になど興味はない。そんな事よりフェニックス家の騒動をなんとかしろ」

ヴァーリの言葉にアザゼルは深いため息を吐いた。

 

「多神連合をそんな事呼ばわりかよ。相変わらず恐れ入るぜ。ま、いい。取り敢えずライザー、お前さんは一旦冥界に帰れ。親父さんとお袋さんにレイヴェル嬢ちゃんの件を相談し、許可を貰えたなら人間界に連れてくるんだ。そしてレイヴェル嬢ちゃんはその間、俺の家に居候するといい」

「う、うーむ……」

 

ライザーは考え込む様子を見せたが多分コイツも妹の政略結婚には乗り気ではない様だ。

 

「まあ、仕方ない。一度実家に戻ってみる事にしよう」

 

そう言うとライザーは転移魔法陣を展開して去っていった。

 

「じゃあ、レイヴェル嬢ちゃん。ついてきてくれ」

「はい」

 

そしてレイヴェルもアザゼルのおっさんの後に付いていった。

はあ、これで一安心だな!一安心ったら一安心だ!

 

「そう言えば煉獄さんはどうして彼女を保護できたんです?」

「うむ! 俺が見回りのために駅前に来た時、彼女が不良に絡まれているのを見つけてな! 見過ごす訳にもいかなかったので助けに入ったのだ!」

「へぇ……」

「しかし、近頃の不良は分身したり

影を分離して攻撃してきたり、実に多彩だ!侮れん!」

 

いや、そういう問題じゃない気が……。

絶対不良じゃねーよソイツら!!

 

「それにしても、ラーメンというのは素晴らしいものだな! 麺類の中でもトップクラスにうまい!」

「そうだろう」

 

いや、誇らしげに煉獄さんに握手を求めるのはいいけどよヴァーリ!

作ったのは辰郎叔父さんだよ!?

 

「いやぁ、嬉しいねぇ。こんなに褒めてくれるなんて」

 

叔父さんも満更でもないみたいだし……。もう、どうにでもなれ。

 

 

ヴァーリと別れ、もう少し見回りを

続けるという煉獄さんとも別れ、俺はニグラさんの家に戻った。

 

「お帰りなさい、安里」

 

ニトクリスさんが水着みたいな普段の格好ではなく今どきの学生風の私服姿で出迎えてくれた。なんと言うか新鮮だ。

 

「ああ、ただいま。何か変わった事はありました?」

「…………」

 

何だか機嫌が悪くなった様に見えた。……あ、そうか!

 

「何だか今日はいつもと違う雰囲気ですね。よく似合ってますよ」

「そうですか?……ありがとうございます!」

 

途端に上機嫌になった! やっぱり女の子って服装とかを誉められると喜ぶもんなんだな。

 

「ですが、私はファラオですからね。もっとこう私に対して言う事があるのではないのですか?」

「え? あ、はい。……えっと、その服も凄く可愛いですよ」

「ふふん、当然です! だって私が着ているのですから!……ではなくてですね!!」

 

ええっ!?違うのか!? じゃあ一体何を言えってんだ!?

 

「えーと……そうだ。いつも部屋を掃除してくれたり、家事をしてくれて本当に助かります。ありがとう」

 

感謝しているのは本当だ。俺一人だったら絶対にゴミ屋敷になってたと思う。

 

「うーん、ちょっと違いますけどまあいいで しょう。私に対して敬意を払う態度に免じて許してあげます」「はい、すいません」

 

許されたのなら良かった……。

すると俺達の様子を眺めていたセルベリアさんが口を開いた。

 

「お前達を見ているとある3人を思い出すな……」

 

何やら過去を懐かしんでいるようなそうでもない様な微妙な表情でそう呟いた。そういや、俺はニトクリスさんやセルベリアさんの過去ってあんまり知らないな。しかしランサーさん曰く『興味本位でやたらと聞く事じゃあねえぜ。増して女の過去なんてものはな』と釘を刺されているんだよな。確かに……。けどな……。最初に会った頃より大分打ち解けたし、セルベリアさんは表情や態度も柔らかくなってきた。だから少し踏み込んでみようと思う。

「あの、良ければ二人の昔の話を聞かせてもらえないでしょうか?」

「ほう、私の話を聞きたいとな」

「はい。興味があるんです」

俺の言葉にセルベリアさんは顎に手を当てて考える素振りを見せる。

「私は貴様の武器としてこの世界に降り立った。それでは駄目か?」

「「ダメです」」

 

俺だけでなくニトクリスさんもキッパリと言い切った。

「少なくとも私や安里は貴方を駒や兵器などとは思っていません。家族だと思っています」

 

家族か……。いい響きだな。

と、ボケーッとしていてどうする。俺からも言わないと。

 

「俺も同じ気持ちです。俺達は皆仲間であり、大切な家族だと思っているんですよ」

「そう、なのか……」

 

セルベリアさんは戸惑っている様に見える。やはりいきなり過ぎたかな。だが、流石というべきか。落ち着きを取り戻した彼女は普段通りの凛とした顔つきに戻っていた。

「分かった。そこまで言うなら語ろう。とはいえ、玄関で立ちながら話す内容でもないだろう。リビングに移動して茶でも飲みながら語るとするか」

「あ、はい。そうしましょう」

 

俺達はリビングに移動し、

ソファに向かい合って座った。

 

「まずは私の出自についてだな。と言っても大した事ではない。よくある話だが……」

 

セルベリアさんの前置きに反して全然よくある話じゃなかった。

なんでもとある国の被検体として生まれたらしい。その国の名前は伏せておくが、そこの上層部はかなり腐敗していたらしく、自分達の欲を満たすために様々な実験を行っていた。そして生まれたのが彼女だった。

 

「生まれながらにして私は強大な力を有していた。こちらの世界でいう神器、ないし宝具と呼ばれる物に近いかもしれない」

 

更にセルベリアさんは軍の指揮官としてのカリスマ性や戦闘センスも兼ね備えており、その強さはまさに一騎当千。ヴァルキュリアと呼ばれる特殊な存在の中でも別格の強さを持っていた。ヴァルキリーっていうとロスヴァイセさんやスコグルさんを

思い出すな。

「そんな仲で閣下……、いやマクシミリアンは私を被検体から救ってくれて部下にした。彼のために戦える事は誇りだった」

「……」

 

過去を語るセルベリアさんの口調や視線はなんというか、悲しみを孕んでいた。

だが真相はそれもマクシミリアンとかいうヤツが

セルベリアさんを手駒にするために仕組んだ事だ。

 

「それは……、つまり……」

「ああ、恐らくお前の考え通りだろう。マクシミリアンは所詮私、いや私達を人間ではなく有効な道具だとしか思っていなかったのだろう。

無様だろう? 私は私を人ではなく道具に貶めた者に敬意を払い、忠誠を誓っていたのだから」

 

自嘲気味に笑うセルベリアさんに俺はかける言葉が見つからなかった。

セルベリアさんの話を聞いて俺は怒りを覚えた。

 

「……許せませんね。その男も、その男の言いなりになっていた貴方も」

 

ニトクリスさんはセルベリアさんを批判するような調子で言う。

 

「生まれ変わっても尚心を閉ざし、

自らを兵器だと嘯き、己の意思すらも捨ててただ武を振るう。恵みを齎さぬ激流など災厄でしかありません」

「……」

 

セルベリアさんはニトクリスさんの言葉を受けて何も答えない。ただ黙って俯いている。セルベリアさんにだって解っているんだ。自分のやってきた事がどれだけ愚かしい行為だったのかを。

 

「私は、どうすればよかったんだ? 教えてくれ、ニトクリス。私は、一体……何なんだ……?」

「簡単な事です。貴方は貴方のままでいいのです。貴方はもう兵器ではありません。貴方は貴方のやりたい事をやりなさい。私達と共に」

 

セルベリアさんにそう告げるとニトクリスさんは立ち上がり、キッチンに向かった。

 

「ニトクリスさん?」

「お茶のお代わりを用意します。貴方も何か飲みますか?」

「あ、じゃあ俺もお願いします」

「分かりました」

ニトクリスさんがお湯を沸かし、ティーポットを温める間にセルベリアさんが口を開いた。

「なあ、安里。一つ頼みがあるのだが」「なんです?」

「私の過去を、私の罪を知ってくれてありがとう。だが、 それだけじゃない。まだ聞いていない事があるだろう?」

「えっと、なんでしょう?」

俺が聞き返すとセルベリアさんが真剣な眼差しで見つめてきた。

「貴様の過去だ。貴様の過去を教えてほしい」

 

俺の過去か……。正直あまり語りたくないんだけどな……。けど、セルベリアさんは俺の事を知りたいと思っていてくれる。だったら俺も彼女の気持ちに応えよう。

 

「はい。俺の昔話になりますけどいいですか?」

「構わない。聞かせてくれ」

「わかりました」

俺もセルベリアさんもお互いの過去をまだまだ知らない。ならば、俺達の過去を語り合おう。それが俺達にできる精一杯だ。

 

 

「で、まんまと心の闇……っていうと厨ニ臭いんスけど、イッセーへの嫉妬を利用されちゃって取り込まれる所だったんですよ」

「イッセーへの嫉妬……?

正直ピンと来ないな。貴様が奴に負けている点など殆ど無いと思うのだが……」

 

セルベリアさんの意見はごもっともだ。確かに一誠はスケベで変態でおっぱい星人で女たらしでハーレム願望丸出しだ。だが、いいヤツだ。

他人のために怒る事ができるし、誰かの為に戦う事も出来る。

そして誰よりも優しい。

 

「でも一誠は強いですよ。あいつは自分が傷つく事を恐れずに前に進む事が出来ます。そういう強さはきっとこれから先も必要になると思います」

 

ニトクリスさんの淹れてくれたコーヒーを飲みながら話す。

 

「そうか。羨望する友も、嫉妬できる仲間も持てなかった私からすると酷く羨ましい」

「大丈夫です。セルベリアさんには仲間がいるじゃないですか。ニトクリスさんやランサーさん達がいます。それに俺達も」

「ふっ、そうだな」

「はい!」

 

少しだけ笑顔を見せたセルベリアさんにニトクリスさんも笑みを浮かべた。

 

「ふふ、安里の事を羨ましいというのならば、彼は貴方にとって羨望に値する友、ということになりますね」

「そ、それは……、その……」

 

セルベリアさんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。どうやら照れたようだ。クールビューティー系美人だけど意外と可愛いところがあるんだな。マクシミリアンって奴はクズな上にバカだな。

こんなに魅力的な人を弄び、悲しませてよ。

と、その時チャイムが鳴った。

もう夕方になってきたし、誰か来たのかな?

 

「はい、どちら様……」

 

玄関を開けるとそこには金髪ドリルロールお嬢様、もといレイヴェル・フェニックスがいた。

のみならず、ロスヴァイセさんもスコグルさんまで……!?

 

「オイッス、安里!」

 

言葉を喪う俺に構わずスコグルさんが上がり込んでいった。え、何?

コレはどういうことなんだ!?

誰か説明してくれよぉ!!

 

「うむ!何でもレイヴェル嬢とロスヴァイセ嬢はアザゼル殿の乱行三昧にうんざりしたというのだ!

何でもシュタークのみならず

見知らぬ男や女を連れ込んでくるらしい!」

 

送ってきた煉獄さんの解説が入る。

あ……はい。何となく解る。

あのおっさん、飲む、打つ、買う。

三拍子揃っているもんなぁ。

堕落しきっていると文句を言ったが

 

『バカヤロー。俺は堕天使総督だぞ? お上品にヒンコーホーセーに振る舞うなんざ堕天使として恥ずかしくて出来ねぇんだよ』

とか言ってた。どうしようもねえな全く!

 

「うぅ……やっぱ都会は恐ろしい所だべ、ばっちゃ。都会モンだば信用できねぇべ。故郷さ帰りてぇだ」

 

田舎訛りの方言で嘆いているのはロスヴァイセさんだ。すっかり地元モードになっている。こっちのロスヴァイセさんの方が親しみやすくていいな。って、そんな俺の意見なんざ求められてはいないんだけどな!

 

「兎に角!暫くはこちらで生活させていただきますわ。よろしいですわよね?」

「はあ、まあ……」

「よろしくお願えしますだ」

 

有無を言わせない調子で詰め寄ってくるレイヴェル。

少しはロスヴァイセさんを見習ってほしいものだよ全く。

 

「えーっ!? このクッキー、セっちゃんが作ってくれたの!?マジプロ級でしょ!控えめに言って!アタシ、料理なんてできないからスゴイなー!憧れちゃうなー!」

 

スコグルさんはすっかり馴染んでいた……順応性高え……。

 

「そ、そうか……」

 

セルベリアさんは褒められるのに

然程慣れていないのか嬉しそうだ。

まあ、セルベリアさんが満更でもないならそれでいいんだけど……。

 

 

 




暫く日常、エロ短編かな。
異世界転移も書いてはいるんだけどさ。

(ロスヴァイセやレイヴェルのNTRは)ないです。
ひとのものを とったら どろぼう!(ポケモン)

真面目な話短いけど投稿頻度は早い方がいい?

  • 早い方がいい
  • 遅いけど長いほうがいい
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