※この作品はR-18です。

MAR-ナイトランカーズ   作:るしふぇる

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ACT.17「本気で愛した証」

トウキョウエリア

バーガーショップ「Trick or treat!」

PM.21:50

 

「すまない、今戻った。

シキ、ドロシー、夕食にしようか。」

 

ヨハン帰宅。

カウンター席には浮かない顔のドロシーとシキ。

ドロシーが静かに口を開く。

 

「ヨハン...バレットを倒したんだね。」

 

ヨハンは俯き...

 

「彼は人間を憎んでいた...

だが、彼がキミのかつての仲間だったと聞いている。

闘いの中、武闘派の彼を何とか此方に引き入れられないか...

いつか、分かり合うことが出来ないか説得してみた。」

 

ヨハンの嘘だ

彼は平然と嘘という仮面をかぶり、続ける

 

「バレットくん、彼は...残念だけどキミではなくオズを選んだよ。

私の言葉では、彼の心を動かすことは出来なかった、すまない...」

 

心のない謝罪

彼は平然とドロシーを騙す

 

「いいよ、きっとそうなると思ってたから。

ヨハン、血だらけだよ?

大丈夫なの?」

 

「正直、苦戦したよ。

流石は誇り高きワーウルフ族の武闘派。

ドロシー、ホーリーARMを貸して貰えないか?

シャワーを浴びる前に傷を塞いでおきたい。」

 

これも嘘

全てバレットの返り血、一方的に嬲ったのだ。

 

「うん...」

 

俯きながら小さく返事をするドロシーからホーリーARM 癒しの天使を受け取る。

 

「ドロシー...うちで、働いてみないか?」

 

思いもよらない提案にドロシーが顔を上げる。

ヨハンが続ける。

 

「私のような殺し屋が経営しているバーガー屋だ。

あのような脅しなんて日常茶飯事だよ、キミが気にすることはない。

シキも守ってくれるかな、私の店を。」

 

「メルテク経営のこの店が、どうなろうと知ったことじゃないが

ドロシーが居る時間帯は俺も通うから安心しとけ。」

 

メルテクと、本来ヨハンと敵対関係にあるシキなりの気遣い。

ドロシーが働いてる以上は、守ってくれると...

 

「私の店も正直、そこまで儲かっているわけじゃない。

評判はスポンサーの居るチェーン店には敵わない。

 

しかし、ドロシー...

キミの様な美しく高貴な女性がフロアに立ってくれるのなら

きっと、私の夢の実現に近付ける気がするんだ。

天国のブレアに、名前が届くくらいに大きな店にしたい。」

 

ヨハンの夢に、シキも割って入る!

 

「ヨハン、キモイこと言ってドロシーをナンパすんじゃねぇよッ!

姉貴までダシにしやがって...

何が高貴な女性だよ、キメェ鳥肌立ったわッ!

まぁ、何だドロシー...あの犬っころ(バレット)の言ってたことなんて気にすんなよ。」

 

浮かない表情でドロシーが返す。

 

「私が居たら...

今度はオズ達が来て、きっとお店をメチャクチャにしちゃうと思う。

だからシキ、ヨハン...お店には迷惑が掛からない所で協力するよ。」

 

精一杯の作り笑いを見せるドロシー

 

「なーに?皆で暗い顔して。

大丈夫だよ、ちゃんとシキともヨハンとも連絡取るし。

私は元々一人が好きだから平気平気!

スマホだっけ?後で買わないとね。」

 

ヨハンの答え

 

「あぁ、それと、もう一つ。

バレットが約束してくれた。

ドロシー達とは敵対関係にあるが、私の店は襲わないとね。

やはり誇り高き武闘派、矜持は持ち合わせているようだ。

それでも、ここで働くのは難しいかな?」

 

真実は一方的にバレットを死ぬ手前までボコボコに甚振り脅した。

相手は片腕を失い、失明までしている。

全戦復帰は絶望的だ、襲いに来れるはずがない。

 

「ヨハンの気持ちは嬉しいよ...

こんな素敵なお店で、働かせてくれるなんて。

でも...怖いよ..

 

私が居るせいで、あんなに美味しいハンバーガーを食べに来てくれた人達が..

楽しくご飯を食べたいだけなのに...狙われるなんて...

ごめんね、シキ..ヨハン...ごめん..本当にごめんね...」

 

声を震わせ、ポロポロと涙を流すドロシー

シキも間に入る。

 

「昼にさ、ドロシー俺に聞いてきたよね?

私のどこが美人?って。

あの時は照れ臭くって、上手く言えなかったけど...」

 

「がんばれシキ!

キミがドロシーの騎士(ナイト)になるんだ!」

 

言葉が詰まるシキへ、エールを送るヨハン

 

「うっせぇなッ、ヨハン!

おめぇは店の都合だろッ!?

 

俺は...まぁ、ドロシーの面倒見の良い所とか...

優しいのに、強い所とか...

自分の事より、俺とか、ヨハンの事を考えてくれる所とか...

それで、今も悩んでくれてるんだろ?

 

そんなところが...

好きなんだよ、ドロシーのそういう所!

だから、ここに来ないとか...

一人が好きとか、言わないでくれよッ!」

 

いつもより、緊張するシキ

 

「シキ...ありがと

嬉しい、私も、シキのこと可愛いって思ってる。

ううん、シキのこと大好き。」

 

頬を涙で濡らしながらも、笑顔を見せてくれるドロシーと向き合う。

 

まっすぐ見つめるドロシーの顔

白い肌に、ルビーの様に赤く透き通った大きな瞳、長いまつ毛...

高い鼻筋に、潤ったピンクの小さな唇

 

美人過ぎて緊張する!

向かい合うだけで心臓が裂けそうになる!

 

言葉が出ない...だから、シンプルな気持ちで良い!

今伝えないで、いつ伝える?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドロシーのことが大好きです!

付き合って下さい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シキの告白を受け、驚いた表情で目を大きくするドロシー。

 

1秒が永遠にさえ感じた。

 

自分の心臓の音が、ドクドクと聞こえるのは初めてだ。

 

顔が熱くないり眩暈がする。

 

ドロシーの目からこぼれた大粒の涙が頬を伝い...

 

刹那...

 

ドロシーが椅子から立ち上がりシキを抱きしめる!

 

「シキのくせに...ひぃんッ!

ワンコのくせにッ!

 

バカ、バカバカ、バカワンコ!

こんな私の、何処が良いのよッ!

私のせいで、死んじゃうかもしれないんだよッ!?」

 

「何処が良いかなんて、上手く言えないんだよ。

沢山、ありすぎて...

優しいし、かっこいいし、脚綺麗だし、おっぱいデカいし、美人だし..

これ言うのだって、死ぬの覚悟だよ、怒るとこえぇしッ!」

 

こんな面と向かった告白、初めてだった。

お互いに...

 

「二度も私の事...泣かせて..

このエロワンコッ!

殺してやるッ!」

 

「エロッ!?

俺、やっぱ死ぬのッ!?」

 

ドロシーがシキの顔を胸で押し潰す!

苦しくはない...ただ、いい匂いがして柔らかい..

 

「わかったわよ、もう二度と悩んだりしないッ!

シキから、離れたりしないッ!

その代わり、シキが死んじゃったり、裏切ったりなんかしたら

許さないんだからッ!

 

私の事、二度も泣かせた責任、ちゃんと取りなさいよッ!

バカ犬、バカワンコッ!」

 

「約束する...俺は死なないし

ドロシーも守れるくらい強くなる。」

 

「また生意気言う、そんなだから...

可愛いんだよ、シキワンコは!

だから、私のせいで...傷付けたくなかった!

バレットに...私と関わった人を..殺すって言われた時..怖かった..

怖かったよぅ...うわああぁぁぁん!」

 

ドロシーの嘘偽りのない本音

シキを抱いたまま、子供のように泣きじゃくる

彼女の心の暗雲が晴れ満足な表情を浮かべるヨハン

 

「では、私は傷を癒してシャワーを浴びてくる。

夕食は落ち着いてからで良いかな?

シキワンコ...童貞を捨てるなら2階を使うと良い。」

 

「てめぇのワンコになった覚えはねぇよ

コスプレ好きの変態ジジイ!」

 

「ふん、私は28だ...ジジイではない。

妄想狂め(ボソッ」

 

「聞こえたぞ今のッ!?

ついに本性を現しやがったなッ!?

こいつ、やっぱりドロシーのこと人間ホットドッグにする気だぞッ!?」

 

「ワンコうるさい、お座り!」

 

「わんッ!」

 

シャワーへ向かうヨハン

お座りしたシキワンコの頭を、取り戻した満遍の笑顔で撫でるドロシー

 

「ドロシー、この店で働くの?」

 

「えぇ、私もこの世界で、お金を稼がないと生活できないし。

もう元気になったし、もう泣かないって決めた!

シキが守ってくれるんでしょ?

私、頑張るよッ!」

 

「コスプレとか...平気?

あいつ、相当マニアだぞ?」

 

「う~んメイドさんとか?

シキが喜ぶなら何でもやってあげるよ。

このドロシーちゃんがメイドやったら、お客さんが殺到するかもね♪

焼きもち焼かないでよ、シキワンコ。」

 

マジか、やったぞヨハン!

明日から毎日通うぞ!

 

「なぁ、今夜...一緒に寝ないか?

ドロシーと俺、告白した記念に同じベットで...」

 

ドロシーの視線が鋭くなる...

 

「ねぇ...シキ?

アンタ何、さっきから調子乗ってんの?

そういえば、私と"突き合って"欲しいんだっけ?

包丁どこ?」

 

「ち、違う、ごめんなさい...やめて!」

 

いつもの恐気も取り戻してしまったみたいだ。

シキの恋路は、まだ始まったばかり。

男として認めてもらうための物語。

 

 

 

一方...これは、ある人狼の残酷な運命...

 

ヨハンとの死闘、もとい一方的な暴力から逃げ帰ったバレット

命からがら辿り着いた街外れの廃屋

 

「アカンなぁ、バレット...

もう、お前を迎え入れるわけにはいかへん...」

 

関西弁に2つに縛ったボサボサの茶髪

場違いなグルグル瓶底メガネをかけた魔導士の様なローブの少女

彼女こそシキ、ヨハン、ドロシーの宿敵にして

 

この人狼バレットのボス、クイーンリリス

 

「ネメシス言うたんやろ?

そのヨハンが出した黒猫...」

 

リリスの口から語られる絶望

 

 

ガーディアンARM

バエルγ: ネメシス(神罰)

死神 ヨハン・ハーミットの切り札にして黒猫の姿をした歴史上最悪のARM

【能力】

その正体はウイルス

黒猫の姿はあくまで媒体、黒猫の血液に触れた相手の体内に入り込み感染

感染者の身体の中で発動する細菌サイズのガーディアンARM

身体の中で魔力と生命力を食らい増殖、感染者の肉体を腐敗させ死に至らしめる。

その致死率は100%

 

 

「ホーリーARMで、解毒できないのか?」

 

「無理やで、毒やないウイルスや。

ガーディアンARMと言えど、術者から独立し、感染者の生命力を媒体にしとる。

二次感染を防ぐ為にも...お前を燃やす他ない。」

 

ヨハンの坊や、とんでもないARM使いおって...

バエルシリーズ、特にドライは非人道的な細菌兵器や。

アインもムラマサ社から盗んだ技術を流用しとる。

 

メルテクは兵器だけやない、日常ARMも作っとる会社...

えらいモン作って信用棄損にならんよう、バエルはお蔵入りしたはずやで

あの坊や...何処で仕入れたんや..ネメシスのマジックストーン

 

 

「世話になったな...リリス。

オズに伝えてくれ、お前の夢を見届けられなくて残念だと。

それと、シキ...といったか、ドロシーと一緒に居たナイトの小僧。

お前が正しかったと、会うことがあれば...ゴフッ!」

 

感染したネメシスが身体中に増殖し、血を吐くバレット

頭痛、発熱、寒気、吐き気、吐血、それだけじゃない。

全身の痛みと壊死、内臓や粘膜の出血とあらゆる症状が出始める。

 

血涙に濡れた両方の眼球はとっくに腐り見えていない。

全身の肉が腐敗し、異臭を放つ。

 

痛みは...

とっくに通り越したのが救いか...

顔や腹の肉が腐り落ち、裂けた腹から臓物がずり落ちても何も感じない。

 

歯も全て抜け落ちた...

鼻から滴る血の臭い...

口に広がる血の味...

 

もうすぐ、声も失うだろう...

 

自分の死期が近付くにつれ、シキの言葉が脳裏を過る

 

『迫害されて辛い時、何で嫁さんのそばに居てやれなかったんだ?

いつか、闘うことがある時、友達を守るために力を使いなさい。

それが、俺の姉貴の教えだった。』

 

「シキ...お前と、お前のお姉さんの言うことが...正しかったよ..

俺は...大馬鹿野郎だった..ようだ

ドロシーは...面倒見が良い..

上手く行くと、良いな..小僧」

 

リリスがバレットの最後を見届ける。

 

「バレット...すまんな..もう、ええか?」

 

「わかっている、やってくれ!」

 

リリスが手を翳す。

カルデアを包んだのと同じ灼熱の業火が、バレットを包んだ!

 

「ワオオオオオオォォォォッ!」

 

炎に包まれた人狼バレットが、誇り高き最後の遠吠えを上げる。

 

セイラ...妻の名前だ。

俺の様な、不器用で闘うことしかできない乱暴者を

愛してくれてありがとう。

 

初めて家庭の味を教えてくれて嬉しかった

キミが撫でてくれた毛並みは、俺の誇りだった。

俺が居なくても、幸せに過ごせているだろうか?

 

ジュウガ...我が息子よ..

お前を抱いてやれたのは、産まれた時以来か...

俺の様な、闘うことしか出来ないバカな大人に育ってないよな?

ママの言うことをちゃんと聞いているか?

 

友達は沢山居るか? 

 

沢山食べて大きくなってくれよ?

 

こんなパパで...ごめんな..

 

お前は、誇り高き、ワーウルフ族の子だ...

 

俺が生きて唯一、人を本気で愛した証だ...

 

ママを...守って..やって...くれ..

 

 

この夜、一人の人狼が生涯を終えた...

満月の元、炎に包まれ雄叫びを上げるその雄姿は誇り高く...

 

 

MAR-ナイトランカーズ

第一章 END

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