※この作品はR-18です。

MAR-ナイトランカーズ   作:るしふぇる

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ACT.18「シスター・キサラ」(新章開始)

星と月が彩る夜空

立ち並ぶ摩天楼、飛行船の広告、街のネオンが夜の闇を忘れさせる。

電車と車の騒音、道行く人の喧騒

ここは眠らない街 カルデアシティ

 

世界で最も明るく、賑やかで、血が流れる街

 

MAR-ナイトランカーズ 第二章

あるシスターの成長と、二人の魔女の闘いを描いた物語

 

オリエントタウン

繁華街

午後 6時15分

 

印象を持つなら中華街

アジアの伝統的な門、牌楼(パイロウ)を潜ると

料理の香ばしい匂い

東洋の高級料理店、小籠包や中華まんの露天、雑貨店に人々が賑わう。

 

「募金お願いしまーす!」

 

そんなオリエントタウンに似合わない金髪の少女が元気な声で呼びかける。

彼女は教会のシスターだ。

 

青いベールの下は細長く繊細な金髪

サファイアブルーの大きな瞳に白い肌

丸みのある童顔に、147センチの低い身長がコンプレックスだが

これもで18歳

 

小さな青の修道服を着こなし募金を呼び掛ける彼女の名前は

シスター・キサラ

 

孤児であり両親は居ない。

自分を拾ってくれた教会の恩に報いる為に募金を募り

 

「ありがとうございます。

これ、つまらないものですが...」

 

募金してくれた人には

趣味の裁縫で作った犬や猫の可愛らしいマスコットを返礼で手渡す。

これは彼女の気持ちであり努力

 

「ありがとう」

 

受け取ったサラリーマン風の男が照れ臭そうに礼を言う。

こんなに小さくて可愛いシスターが優しく微笑んでくれれば

世のロリコン...失礼

世の紳士達も喜ばずには居られない。

 

シスターキサラの作るマスコットはウケが良いのか

通りすがる子供達もこぞって欲しがる。

ありがたい事に、キサラの善意で作られたものなので1円でも10円でも募金をすれば貰える。

 

「ありがとう、お姉ちゃん!」

 

キサラからマスコットを貰い元気にお礼を言う男の子

 

「大切にしてくださいね♪」

 

笑顔を返すキサラ、募金をしてくれた両親には会釈

このほのぼのとした空気に暗雲が忍び寄っていた。

 

「おいおい、シスターさんよッ!?

誰に断って商売してんだッ!?」

 

「ここが誰のシマか分かってんのか?」

 

暗雲の正体はスキンヘッドにサングラスの大男と

スカジャンに角刈りの二人組

絵に描いたようなチンピラで、後の説明は不要だろう。

 

キサラが面と向かって返す

 

「商売じゃありませんよ!?

それに、自治体や向かいのお店(料理店)の人にも許可は取りました!」

 

だがスキンヘッドが圧を掛ける

 

「そんなの関係ねーよッ!

俺達がこの街の治安を守ってんだからなッ!」

 

続けて角刈りスカジャン

 

「今回は場所代として、その募金箱で許してやる!」

 

コレこそザ・チンピラ!

クズの中のベスト・オブ・ベスト!

屋台なら珍しくもないのに、抵抗できない小さな女の子を狙う

 

屋台ではなく彼女の慈善活動なのだが...

 

「だ、ダメですッ!

これだけは渡せませんッ!」

 

しかし、キサラも小さな外見に見合わず根性を見せる!

募金箱を大事に抱え必死に抵抗!

 

「調子くれてんじゃねーぞッ

このガキ!」

とスキンヘッド

 

「ちょっと、ここじゃ人目に付くから裏に来よか?」

と角刈りスカジャン

 

手慣れたようにスキンヘッドがキサラの後ろに回り

声を上げられないよう口を塞ぐ!

 

「んんッんんんーーーッ!」

 

必死に抵抗するキサラ

だが、華奢な少女の力ではビクともしない。

 

そして、スマホで通話する角刈りスカジャン

 

「おい、車回してきてくれ!」

 

「んんんーーーッ!」

(さ、攫われる!?

誰か助けて...)

 

キサラが恐怖に涙を流しながら、声にならない声で助けを求める

だが、ここカルデアシティは治安が悪い。

それは、このオリエントタウンも変わらない。

 

行き交う人々は無用なトラブルに皆、関わろうとしない。

 

どうせ、誰かが警察に通報するだろう。

誰かが、その内助けてくれるだろう。

と自分に言い聞かせ...

 

しかし、このチンピラ二人は気付いていない。

自分達の非道がたまたま通りかかった、一人の女の逆鱗に触れてしまった事に。

 

女がチンピラに近付く。

容姿はキサラと相対的、長身でスタイルもよく大人びた印象

透き通った赤いルビーの様な瞳と、目鼻立ちの整ったモデル顔負けの美貌は

誰もが美人と絶賛するだろうが、彼女は怒っていた。

 

腰まで伸びた鮮やかな桜色の長髪を2つのお下げで結び

服装は肩と豊満な胸元を黒いレースから覗かせる妖艶な漆黒のドレス

大きく入ったスリットから大胆に覗かせる白い脚線美と黒のブーツ

 

その身に纏った指輪やブレスレッド、腰から下げたチェーンとシルバーアクセサリーの数々。

 

桜色の髪、白い脚線美、黒のドレス、銀のアクセ

この芸術的なグラデーションを纏った彼女の印象は魔女

 

彼女の名は、魔女ドロシー

 

ドロシーが、修道女を連れ去ろうとする悪漢2人に駆け寄り...

助走し、加速...

 

バキィッ!

 

容赦ないドロシーの右フック!

キサラを押さえ付けていたスキンヘッドの左頬に炸裂させる。

 

「ぐッ!」

 

突然の襲撃に呻き、スキンヘッドのサングラスが飛びよろける。

修道女のシスターキサラは解放され呆気にとられる...

 

「魔女の...お姉さん?!」

 

魔女のお姉さんこと、ドロシーがキサラを守るように前に立つ。

レースで透けた背中が妖艶で美しく、それでいて力強く...

 

カッコイイ...

 

キサラにとってファンタジーの世界から飛び出してきたヒーローに思えた。

正義感の強い魔女は、チンピラの蛮行を許さない。

 

「何だてめぇ!」

 

角刈りスカジャンがナイフを抜く

 

「痛い目にあいてぇみたいだな。」

 

殴られた左唇から血を流すスキンヘッドが指をポキポキと鳴らす。

ドロシーはキサラの方へ振り返り

 

「もう、大丈夫だよ♪

私が守ってあげる!」

 

初恋のようにドクンッ!と跳ねる脈動をキサラは感じた。

この治安の悪いカルデアシティで初めて感じた正義

 

だが、その隙を卑劣なナイフが見逃さない。

「危ないッ!」とキサラが叫ぶより先に

 

ナイフよりリーチのあるドロシーの脚線美。

ドガッ!と大きな音を立て、回し蹴りを炸裂させる。

遠心力の乗ったブーツの踵が、ナイフを持つ角刈りスカジャンの顔面を歪ませる。

その光景がスローモーションに見えた。

 

「ぐげッ!」と短い悲鳴を上げ吹き飛ばされる角刈りスカジャン

ナイフが音を立て転がる、1発KOされた持ち主は完全に失神。

 

「このアマッ!」

 

とスキンヘッドの大男が剛腕を広げ!

 

「くぅッ!」

 

後ろから抱きしめられる形で拘束されドロシーが声を漏らす。

剛腕がギリギリと音を立て、彼女の華奢な細い身体を締め付ける。

ドロシーのピンチにキサラも慌てるが、彼女は戦闘のプロ!

 

力自慢が取り柄のチンピラ風情が相手になるはずもない。

 

ドロシーはスキンヘッドの右足、脛の部分をブーツの踵で蹴り

弁慶の泣き所を蹴られ、一瞬緩んだ隙にミゾオチへ肘打ち

重い痛みと吐き気に耐えかね「うぐぅッ!」と呻きながら、ついにドロシーを開放する。

 

まるで手慣れたようにスキンヘッドの大男を振りほどき

ドロシーは声を上げ

 

「汗臭ぇ身体で触んじゃねーよッ!」

 

そのまま、蹲ろうとするスキンヘッドの顎を天高く蹴り上げる。

スキンヘッドの大男が宙を仰ぐ。

 

チンピラ二人掛かりと、この魔女ドロシー一人との戦力差は歴然。

仰向けに倒れるスキンヘッドにドロシーが殺意マシマシの冷たい声で

 

「おい、アンタが言ってた痛い目ってこれか?

もっとあってみる?」

 

鋭い目から放たれる殺気にスキンヘッドが青ざめる。

 

「はい...これです、すみません、もう結構です。」

 

更にドロシーが追い込む

 

「今すぐ、あの子に謝って5秒以内に消えな。

そしたら、命までは取らないであげる。

ご~、よ~ん、さ~ん...」

 

ドロシーの秒読みにスキンヘッドが慌てて立ち上がり

泡を吹き失神する相方のスカジャンを抱え...

 

「す、すみませんでしたーーーーッ!」

 

謝罪を叫びながら駆け足で退散する。

一難去りキサラがドロシーへ一礼

 

「あ、あの、ありがとうございますッ!

お姉さんは...もしかして、ナイトランカーですか!?」

 

ナイトランカーズ!

カルデアシティの上位企業が雇用する傭兵、通称ナイトの相称。

 

魔法都市カルデアシティは階級社会。

市民はポーン、警察や公務員はルーク、軍や政治家はビショップと戦力や権力にランクがあり

ナイトは上位に位置する魔力を持つ存在。

 

その魔力を用いて物資の護送、要人警護、警察や軍が手に負えない"リーパーの駆除"と表立って活動するが

裏で暗殺、強奪、裏取引も行うアウトローな一面も持つ。

 

リーパーについては、後に記すことになるだろう。

この世界で魔力を持つ者は稀

 

魔法都市と言っても、魔力が封じ込められた赤い球、マジックストーンで電力や火力のエネルギーを運用している。

電池やガスボンベのように魔法は流通し、魔力を持たない一般人でも簡単な魔法は使えるのだ。

 

だが、稀に魔力その物を持つ人間が存在する。

魔力を持つ者はナイトクラスの階級が与えられる。

それぞれ、順位を持つナイト達、それがナイトランカーだ!

 

そのナイトランカーなのかの問いにドロシーが返す。

 

「ドロシーよ。

私はナイトじゃないわ

トウキョウのハンバーガー屋さんでウェイトレスをしてる...

まぁ...おせっかいな正義の味方かな?」

(魔力は持ってるんだけどね...)

 

「キサラです。

トウキョウのローズマリー教会でシスターをやってます!

助けてくれて、ありがとうございましたッ!」

 

深々とお辞儀をするキサラにドロシーが続ける。

 

「怪我はない?

トウキョウなら送っていくわ。」

 

「でも、ご迷惑じゃ...」

 

「こんな怖い目にあったばかりなのに放っておけないでしょ?

おいで、キサラちゃん。」

 

手を広げキサラを受け入れるドロシー

さっきまでの恐怖が今になって涙となり込み上げてくる。

 

ドロシーに抱き着き、嗚咽を漏らすキサラ

 

「怖かったです...ドロシーさんが来てくれなかったら..

うえぇぇん...」

 

「怖かったね、もう、大丈夫...

大丈夫だからね。」

 

優しくキサラを抱きしめ、慰めるように頭を撫でる。

ドロシーにとっても、キサラみたいな女の子は可愛いのだ。

 

人に抱いて貰ったのは何年ぶりだろう...

孤児であり、存在しない母親の愛...

その温かさをドロシーから感じた。

 

この人のように強くなれたら...

"ゲームの世界"ではなく、リアルの世界で戦えたら...

 

この日、キサラは憧れに出会うことができた。

この出会いが、彼女の成長への物語の始まりだった。

 

それは、この世界の命運を懸けた闘いの始まりだと

キサラはまだ気付いていない。

 

トウキョウエリア

商店街

午後 7時5分

 

キサラを落ち着かせ、地下鉄で移動し帰路の商店街を歩く。

ドロシーの左手には買い物袋、右手はキサラと繋ぎ

 

どうやら、すっかり意気投合してしまったみたいだ。

まるで姉妹のように

 

「ドロシーさん今日はお買い物だったんですか?」

 

「うん、お給料も貰ったし。

うちのワンコにプレゼントでも買ってあげようと思ってお昼からお休み貰ったの。

これ、オリエントタウンでしか売ってなかったからさ。」

 

ドロシーさんのワンコ...

どんなの子だろう、モフモフさせてくれるかな~

と想像するキサラに、ドロシーが続ける。

 

「キサラちゃんはシスターだっけ?

いつも、募金活動してるの?」

 

「いえ...実は..!?」

 

キサラから聞かされる衝撃の事実にドロシーの声のトーンが上がる!

 

「プロゲーマーッ!?」

(って、何だ?)

 

「はい、お恥ずかしながら...

ガン・レイズ・アリーナの登録選手です!

ちゃんと企業とも契約しているんですよ?」

 

ガン・レイズ・アリーナ、通称GRAがどんなゲームなのかは知らないが...

後でシキワンコに聞いてみるか、あいつオタクだし。

と心で思いながら、キサラの話を聞く。

 

「勝てば賞金も出るんですけど、もうすぐクリスマスじゃないですか。

私の賞金は、貴女が稼いだお金だから貴女が使いなさい!って

受け取ってくれないんです。

でも、募金なら受け取ってくれるかなって思って。」

 

「へぇ~、偉いんだねキサラちゃん。」

(やばい、めっちゃ可愛い...お持ち帰りできないかな!)

 

ドロシーの中でも、健気なキサラの好感度は爆上がり!

 

もうすぐクリスマス。

現在は11月5日...

冬で肌寒いはずの季節だが、気温さえも心地よくコントロールされたこの街に

ドロシーが来て2週間が経とうとしていた。

 

ドロシーの目的は、自分の故郷を裏切った魔導士オズ、レイヴンの討伐

そして、この世界を滅ぼさんとする8つの竜の鍵を回収すること。

オズと共に故郷を襲った黒幕、クイーンリリスより先に。

 

その為にドロシーは異世界、1000年前のカルデアから来た魔女だ。

最初の2日間は慌ただしい闘いの連続だったが、ここ数日は何事もなく過ごせている。

時々"リーパー"が出たりするが、それは"ワンコ"の仕事だ。

 

縁あって、元殺し屋で今はハンバーガー屋を営んでいるヨハン・ハーミットの店でアルバイトをしながら

アパートの都合も付けて貰った。

段々と、この世界の生活にも馴染んできた。

 

こうして、街を歩いていると闘いさえも忘れてしまいそうだ。

だが、期待を裏切らないのが、この街の治安の悪さだろう。

 

「"リーパー"が出たぞぉッ!」

 

街人の叫びに、ドロシーが纏う空気を一変させる。

優しいお姉さんから、悪名高い魔女の空気に。

 

この街の社会問題であるリーパーを知るキサラも恐怖を覚える。

 

ARMとリーパー

この世界には、ARM(アーム)と呼ばれるアクセサリーが存在する。

指輪やブレスレッド、中にはアクセサリーと呼ぶには大きすぎる物も存在するが

マジックストーンが埋め込まれたそのアクセサリーは様々な力を持つ。

 

1.武器へと変化するウェポンARM

2.自然エネルギーを操るネイチャーARM

3.空間を支配するディメンションARM

4.召喚獣を従えるガーディアンARM

5.神聖な力で治癒や結界を用いるホーリーARM

6.代償を払い相手を呪うダークネスARM

7.術者と融合する禁忌のゴーストARM

 

これら、7つの属性を持ち、先に話したナイト達の武器となる。

 

カルデア3大企業の一つ“メルテクノロジー社”によって

魔力を持たない一般家庭向け、護身用、軍用にARM自身が魔力を持ち制御された物も流通しているが

 

中には強力でありながらも、魔力を持たない人間が制御できない危険なARMも裏で流通しているのだ。

まるで、ドラッグのような感覚で、その裏ARMを手にしてしまった者の末路

 

中には魔力が覚醒し、ARM使いになった者も居るらしい。

その希望が死のギャンブルに誘う。

 

貧困、差別、孤独、格差に絶望し裏ARMに手を出してしまった者

ギャンブルの勝者は晴れて魔法使い、ナイトとしての人生を手に入れることができるが

敗者はARMに精神と身体を乗っ取られ"リーパー"となる。

逃げ惑う人々を追いかける今回のリーパーは...

 

ザ・フレイムソード・リーパー

 

元は炎を操るファンタジー物あるあるの剣だった。

だが人と融合し、その姿は

 

剥き出しになった頭蓋骨、両腕は剣、下半身は馬の姿

そして、全身から吹き出た炎を纏う、体長3メートルの巨体へと変貌したケンタウロス...

 

ここまでARMに浸食されてしまった者が人間に戻る術はない。

衝動のまま、人々を狩る獣と化した存在、それがリーパー(狩る者)なのだから。

 

逃げ惑う混乱の中にキサラを紛れさせるのは危険だ!

ドロシーはナイトではないが異世界から魔女

リング状のARMを発動させる。

 

そのARMの真の姿は魔女の持つ銀色の箒

風属性 最強のネイチャーARM ゼピュロスブルーム(西風の箒)

 

「私が相手をする...

キサラちゃんは物陰に隠れて!」

 

ドロシーに従い商店街の物影に隠れるキサラ

 

ドロシーVSザ・フレイムソード・リーパー

 

ドロシーが西風の箒を手にリーパーへ突撃!

リーパーも迎え撃ち両腕の剣を振るう!

 

迫るリーパーの薙ぎ払い!

 

空気を弾くパァン!という炸裂音と同時に宙を舞い、ドロシーがそれを回避!

西風の箒はカマイタチ、衝撃波、突風、竜巻、あらゆる風の属性を操る。

 

リーパーより高く、頭上を取ったドロシー

 

「これでもくらいなッ!?」

 

掛け声と同時に放たれた風の刃!

リーパーの炎の鎧を貫通し肉を抉る!

商店街の壁や床に飛び散るリーパーの血液!

 

リーパーが雄叫びと同時に斬り上げ!

狙いは空中のドロシー!

 

「グオオオォォッ!」

 

再び空気を弾く炸裂音と共にドロシーが回避し...

着地と同時に新たなARMに切り替える。

これが、ドロシー得意の高速ARM切り替え

 

「ガーディアンARM ブリキン!」

 

魔法陣から出現したのは銅色のアーマーゴーレム、その巨大な右腕!

ドスンッ!と重い衝撃音と共に、そのままリーパーを広場へと吹き飛ばす。

 

だが、致命傷には至らない。

ガーディアンARM発動中は、術者はその場から身動きが取れない。

アーマーゴーレムのブリキンとリーパーが商店街で取っ組み合えば被害も甚大だろう。

 

上手く闘いやすいフィールドにリーパーを押し込み

ブリキンをARMに戻しドロシーが追撃!

 

リーパーも身体を起こし迎え撃つ!

 

「てやあああぁッ!」

 

ドロシーの力強い掛け声と同時に放たれる風の衝撃波!

既にARMはゼピュロスブルームに切り替えてある。

 

だが、リーパーは高く跳躍し、その衝撃波を回避!

そのまま、標的と定めたドロシーを踏み付けるように着地!

 

「くぅッ!」

 

ガシャンと音を立て石造りの地面が砕ける!

巨体に見合わない俊敏さに驚きながらもドロシーが緊急回避!

 

そのままリーパーの背後を取るも...

 

「...ッ!?」

 

迂闊だった...

リーパーの姿はケンタウロス、強烈な後ろ蹴りがドロシーに炸裂する!

想像以上の脚力がドロシーをゼピュロスブルームの防御ごと蹴り飛ばし

悲鳴を上げさせる間も与えず、レンガの壁の方へ一直線に吹き飛ばす!

 

ガシャンッ!という凄まじい衝突音

 

「きゃああぁッ!」

 

壁に激突し、大の字になったドロシーが悲鳴を上げる。

レンガの壁が砕ける程の衝撃

流石の魔女もダメージが大きかったのか苦痛に顔を歪ませ

自慢のバストを揺らしながら、そのままずり落ち

 

「あうぅ...うぅん..」

(こいつ、強い...)

 

背中の痛みに喘ぎ、壁に寄り掛かった格好で足をM字に開き尻餅を付く。

 

「ドロシーさんッ!」

 

ドロシーの危機に物陰から飛び出してしまうキサラ

 

「ダメッ...キサラちゃん逃げてッ..うぅッ!」

(背中が、痛い...でも、立たなきゃ!)

 

叩き付けられた背中がズキズキと痛む。

それでも壁に持たれかかり、たたらを踏みながら立ち上がるドロシー

 

私が相手だ、掛かって来い!と

リーパーへ念じるが...

 

その願いも虚しく、キサラへゆっくりと迫るリーパー

 

「あ...ああ..」

 

キサラが恐怖で身体を硬直させる。

目の前に居るのは大好きなゲームで今まで倒してきたモンスターではない。

本物の怪物

 

やられたらコンテニューなんてない。

確実な死...

 

『もう、大丈夫だよ』

 

チンピラに絡まれた時に見せてくれた

大好きなドロシーさんの笑顔が脳裏を過った。

 

どうせ死ぬなら、大好きな人と闘って死にたい。

その、小さな勇気がキサラを奮い立たせ...

 

「私が相手...です!

だから、もう...

ドロシーさんをイジメないでぇッ!」

 

敵わない相手と分かっていながらもキサラが叫ぶ!

涙で前がよく見えない!

あの両腕の剣が自分に迫ってくるのだけは分かる。

 

やっぱり...怖い..

 

誰か...助けて

 

キサラの願いが届いたのか

リーパーが叫んだ

 

「ぐぎゃああああぁぁッ!」

 

それは、咆哮というより、断末魔に聞こえる。

リーパーの両腕が切断され、剣の落ちる金属音が二つ響いた。

 

「キミが、ドロシーを守ってくれたんだね。

ありがとう、シスター。」

 

男の子の声...?

キサラの頭にポンと置かれた優しい手

 

ライトブラウンの茶髪に、血の様な鋭いダークレットの瞳

身長175センチで顔立ちは整っているが、何処か幼さも感じられる。

ボタンを胸元まで開けた白のワイシャツに、右手に持つ鞘に収まったサムライソード

 

「どうして...貴方が..」

 

振るえた声のキサラ

彼はトウキョウエリア界隈で有名なナイト

キサラも知っていた。

 

「遅いよ、ワンコ」

 

そう言い、安堵の表情を見せるドロシー

 

彼が手にするサムライソードは

過去の持ち主49人を呪い殺した伝説の妖刀月読

その妖刀に呪い殺されるどころか

それを従えナイトランカーにまで上り詰めたヤバイ奴!

 

彼こそカルデア3大企業、刀剣製造老舗

ムラマサ社 所属

ナイトランカー7位

 

シキエル・ヴァレンタイン

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