※この作品はR-18です。

MAR-ナイトランカーズ   作:るしふぇる

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ACT.22「シキのARM」

トウキョウエリア

某アパート4階

午後 10時30分

 

バーガーショップ Trick or treat!から徒歩10分の住宅街

そこにドロシーのアパートがある。

 

「いらっしゃい、ワンコ。」

 

ドロシーがシキを迎え入れてくれた。

いつもの部屋着、デニムのホットパンツに赤のタンクトップ

下ろした桜色の髪をポニーテールで結び、これがオフのドロシーのスタイルで定着している。

 

部屋は1DKで玄関のすぐ近くにトイレとお風呂場、その先に続くダイニングキッチン、8畳の洋室と贅沢ではないが一人暮らしの女の子にとっては充分なのだろう。

 

冷蔵庫、ベッド、電子レンジ、洗濯機、24インチの小さなテレビなど必要な家電は揃っている。

この世界に来て2週間、必要最低限の家具しか揃えてないのもあるが...

 

「なに、かしこまってるのワンコ?

適当に座っててよ、お茶出してあげるから。」

 

ドロシーの部屋に来るのは荷物運びの手伝い以来か...

それをカウントしなければ、初めての女の子の部屋

可愛らしい小物までは揃ってないが、ドロシーのしっかり者の性格からか散らかっている様子も無駄な物を買い込んでる様子もない。

 

本当だったらもっと、興奮して良いのかも知れないがキサラの事が頭から離れない。

今回、自分の復讐の為にキサラを利用する。

キサラは知らないが、勘の鋭いドロシーなら間違いなく気付いているだろう。

 

ドロシーと出会ったばかりの時

弟の様に可愛がってくれて面倒見が良い性格に惹かれていた。

 

恋をし、その思いを伝えたが、結局は面倒見の良いお姉さんという位置で収まっている。

キサラもきっと、妹の様に可愛がってもらったのだろう。

 

しかし、キサラは俺の姉、ブレアの仇であるスレイプニル社とプロ契約を結んでいる。

キサラに恨みはないが、この大会、スレイプニル社に近付くチャンス。

 

スターク・アルバーン

スレイプニル社のナイトにして1位の称号を持つ最強のナイトランカー

素性は明らかではないが、もしGRAに姿を現せば...」

 

「何あんたブツブツ言ってんの?」

 

と...シキは気が付いたら自分の考えをブツブツと言葉にしていた。

 

「あ、いや悪い...」

 

これはかなり恥ずかしい!

 

「紅茶でいいよね?

あと、ワンコ今日はラッキーだよ?

面倒見の良いドロシーお姉さんの試作ティラミス、食べさせてあげる♪」

 

何処から聞かれていたのかメチャクチャ気不味いが、ドロシーの試作料理が食べれるのは確かに幸運

そういえば、お店にデザートがないとかでヨハンと色々話してたっけ?

 

小さな折り畳みテーブルに温かい紅茶と、ドロシーが試作したティラミスを並べお互い向き合う形で座る。

タンクトップの上から強調される豊満なバストのシルエットと谷間...

 

目のやり場に困りながらもドロシーの手料理...

緊張して一口目

 

「美味い!」

 

ほろ苦さの後に来る甘さと風味が良い具合に引き立っている!

ティラミスは大人の味のイメージが強かったが、これなら子供でも美味しく食べられるし

甘さもしつこくなく、脂っこいバーガーの食後にピッタリだ。

 

「ほんと?嬉しいなぁ!

どの辺が良かったか詳しく聞かせてよ、大事なことだから!」

 

「ドロシーが言ってた大事な話って...」

 

「え?ティラミスの事だけど?」

 

「スレイプニル社とキサラの事とか...?」

 

「それ、シキの問題でしょ?

キサラちゃんの事は心配だけど、私から首突っ込む事はないよ。

相談なら乗るけど。」

 

ドロシーこういう性格だった...

此方の悩みに気付いても詮索せず

気を遣わせないよう、自分から話しやすい場を作ってくれるのも彼女の優しさなのだろう。

 

ティラミスを食べながら現状の意思を伝える。

 

「今回、キサラの友人としてGRAの大会に潜入する。

賞金総額1億5000万の大会だ、恐らくスレイプニル社もキサラに護衛を付けるだろう。

そいつが、スタークの可能性が高い。」

 

「ナイトランク1位、シキが追ってるナイトね。」

 

「その場でスタークを殺してやりたいが...

もう一つ、気掛かりな事がある。

キサラがプロ契約を結んでる理由、孤児だったキサラが育ったローズマリー教会が、メルテクとスレイプニルのDアリーナ建設事業で取り壊しになる。」

 

意外なシキの回答にドロシーも驚く。

 

「キサラちゃんの教会なくなっちゃうの?」

 

「恐らくな...

キサラが優勝すれば、この計画を見直す事を約束したらしいが

アリーナ建設は優勝賞金どころじゃない金が動く

キサラの尽力で白紙にするなんて考えられない。」

 

「ワンコ...意外に頭がキレるんだね。」

 

「失礼な事言うなッ!

ただ、スレイプニル社がキサラを騙してでも、この大会で利用する魂胆が見えねぇ。」

 

復讐者としてなら、ここまで悩むことはなかった。

スタークの情報を収集、隙あらば暗殺で事は終わるからだ。

大会がどうなろうと"本来は"知った事ではないはずだった。

 

だが...キサラの心情を考えると

何か良からぬ企みに利用されていると考えると他人事には思えない。

それは、ドロシーも察しているだろう。

 

「つまり、キサラちゃんが気になって復讐どころじゃなくなったんだねワンコ。

わかるよ~キサラちゃんもおっぱいが大きかったもんなぁ~

フワフワしてたよ。」

 

「ちょッ!違ッ...俺は..

復讐にキサラを利用するのが正しい事か俺には分からねぇ。

俺の私情にキサラを巻き込むのも、内心どうなのかと思ってさ。

こんな事で、本当にスタークに勝てるのか考えちまって...」

 

顔を真っ赤にながらも、真剣な悩みを打ち明けるシキにドロシーが答える。

 

「誰かを利用してでも復讐を成し遂げる、そういう冷酷さだけが強さじゃないよ?

冷酷になれない事を弱さって言うやつも居るかもしれない。

でも、誰かを想うからこそ悩んだり、考えたりして、その結果で手に入る強さもあるんじゃないかな?

それが今のシキの強さだと思う。」

 

「俺の強さ?」

 

「結局、強くなかったら復讐なんて出来ないし、恐らく今のシキがスタークって奴に挑んでも犬死だよ?

ワンコだけにね。」

 

「ストレートに言うなぁ。」

 

「だから、今回はシキの出来る事をやりなよ。

次に繋がる事がきっとあるはずだから。

助けたいんでしょ?

キサラちゃんのこと。」

 

「うん...

ゲームの大会と言っても、キサラが本気で全てを懸けてきた戦場。

キサラの厚意を利用しようとしてた俺が言うのも図々しいかもしれないけど

もし、大会の後でキサラを泣かすような事があれば俺は、そいつをスタークより先にぶっ飛ばしたい。」

 

「らしくなってきたじゃん、シキワンコ♪」

 

シキの不安を忘れさせるドロシーの満面の笑み。

どっちにしろ、大会当日まで悩んでも仕方ない。

 

とりあえず、キサラからドロシーと一緒に来て欲しいと誘いはあったので当日は問題なく二人で入場できる。

 

「ドロシー、頼みがあるんだけど...

次に繋がる為にも、一緒に来て貰えないか?

キサラもきっと心強いと思うし。」

 

「うわ、シキからデート誘われちった。」

 

相変わらずシキをからかうドロシーだが、こんな話を聞いて彼女も行かないわけにはいかない。

 

「これはデート...なのか?」

 

「でも、こないだのデートみたいにタコのリーパーに襲われるのは嫌だよ?

シキ、あの時は何の役にも立たなかったし。」

 

「反省してます...」

 

タコのリーパーの時は...大変な触手プレイを見てしまった記憶が...

 

「シキに良い物あげるよ、ちょっと外に出ようか?」

 

「いいもの?」

 

ドロシーも夜は寒いのか、薄手の白いカーディガンを羽織り表に出る。

カーディガンの丈が長いためワンピースの様になり、自慢の太ももがより引き立つ。

正直、下履いてない人みたいでエロい!

 

ほんの少し歩き、来たのは街外れのスクラップ置き場。

まさか、変な妄想がバレて此処でヤキを入れられるのかと一瞬不安を感じたが...

 

「はいこれ、私が作ったシキのARMだよ。」

 

「俺に?」

 

ドロシーが取り出したのは2つのリング

一つはシルバーに三日月の装飾

二つ目は漆黒のリングに赤い石

ドロシーが自分の指に着けて説明を続ける。

 

「三日月のリングはディメンションARM、スイッチハンダー

シキ、月読を貸して?」

 

「危ないから抜かないでくれよ?」と念押してドロシーに愛刀、もとい妖刀月読を渡す。

すると

 

「月読が消えたッ!?」

 

ドロシーに手渡した瞬間、月読が消滅!?

月読のお陰でナイトにまでなれたシキにとってショッキングな出来事だが

 

「大丈夫だよ、ほら!」

 

また一瞬で月読がドロシーの手元へ!

まるで手品のように出たり、消えたりと

 

「これが、ディメンションARM、スイッチハンダー。

武器一つなら、このリングの中に収納出来て、使いたい時に一瞬で呼び出すことも出来るの。

これで、デート中に刀を預けなくても大丈夫でしょ?」

 

以前のドロシーとデート

その時、タコのリーパーに襲われた。

あの時は、月読をコインロッカーに預けていてドロシーが闘ってくれた。

触手に捕まって、とんでもない姿を晒してたけど...

 

今もスマホの鍵付きフォルダの中に、その時の動画や写真が厳重に封印されている。

時々、夜に気が高ぶった時、封印を解いているが...

ナニに使ってるかは詳しくは言えない。

 

「二つ目の、この黒いリングはカーボンブレード!

私が使ってるリングダガーの刀版って言ったところかしら?」

 

ドロシーがそれを発動させると、出現したのは真っ黒な刀。

刃渡り90cm、全長120cmはあろうか長刀の部類。

伝統的なサムライソードの装飾と違い、何処かSFチックな外見。

また、黒い刀身に赤く発光する刃紋と、近未来なデザインがカッコイイ!

 

「シキの闘い方、ずっと見てたよ?

シキにとってどんな力が必要か、私なりに考えた結果がこれ。」

 

アイリーン、スクリーチ、バレット、炎剣のリーパーとのシキの闘いをドロシーも観察していた。

シキの弱点を見抜き出した答えが、この長刀カーボンブレード

 

月読の欠点

ダークネスARMであり抜刀時間にも制約のある妖刀

変幻自在の液体金属の刃、時間停止の術式、ブラックホールとどれも必殺の威力だが魔力の消費が高く長期戦になればなるほど、攻め手に欠けていた。

 

シキ自身も焦って、強引に短期決戦に持ち込む癖が見られていた。

 

「肝心な切れ味だけど...」

 

ドロシーがゼピュロスブルームを発動させ周囲の鉄くずを風で巻き上げる。

そのまま、ドロシーに目掛けて落下する鉄くず。

 

「おい、危ねぇよ」とシキが間に入るより早く

ドロシーが降り注ぐ鉄くずに向かい跳躍

そのまま、カーボンブレードを構え

 

「...!?」

 

次々と鉄くずを両断する。

刀の切れ味にも驚かされるが、それを振るうドロシーの剣捌きは

まるで舞の如く美しかった。

何の能力もない斬る為だけの、本来の刀の目的に特化させたARM。

 

月を背にしたドロシーの剣舞。

その赤い剣閃は美しく鋭く、見る者を魅了させる。

 

剣術はシキの領域だ。

だが、殺傷能力を追求してきたシキの刀に、ここまで人を惹き付ける力はあっただろうか?

月読という妖刀で命を削りながら死線を潜り抜けてきた。

死に近付けば、より強くなれると信じてきた。

 

だが、剣舞を通してドロシーが伝えたかった事...

死んでも勝ちたいというシキの執念とは違う形の強さ。

 

シキの為に作ったARM

シキの為に作った刀

 

人を想う気持ち、守りたいと思う願い、それは、ただ斬る為だけの刀を此処まで美しく、力強く人を惹きつけるということ。

 

カーボンブレードの威力を剣舞で証明し着地するドロシー。

手に持った長刀と、汗で濡れた脚線美が月明かりで妖艶な光沢を帯びる。

 

「はい、シキのARMだよ。」

 

ドロシーからカーボンブレードを受け取る。

華奢な彼女でも扱えるほどに軽い。

しかし、シキ好みの外見の美しさ、扱いやすさ、切れ味、全てシキの為に考えられたドロシーの気持ちを考えると、確かな手応えを感じられた。

 

ディメンションARM スイッチハンダー

形状:リング

【能力】刀剣などを収納できる。

収納本数は1本と少ないが瞬時に呼び出すことが出来、容量より瞬間的な速度、武器切り替えを重視したARM

主に月読の携行に使用。

 

ウェポンARM カーボンブレード

形状:リング

【能力】斬る事に特化した120cmの長刀

シキの月読をイメージし刀身は黒く波紋は赤い。

 

「ありがとうドロシー

でも、指輪ってどの指に着ければ良いんだ?」

 

「う~ん、私ならスイッチハンダーは右の中指かな?

この指は集中力を高めたり、邪気を払い強い意志を持つ意味を込めてるの。

月読はハイリスク、ハイリターンな妖刀だから使う時は慎重にね。

カーボンブレードは右の薬指が良いんじゃないかな?

精神の安定、気休めではあるけど月読が使えない時、シキの剣の腕が切り札になるだろうからね。」

 

やはり、魔女であり女の子でもあるドロシー。

作ってくれたリングのセンスも良く、それについても詳しい。

 

左手薬指(愛を深める)にリングを付けるのも憧れてはいるが...

まだ早いのは自覚している。

 

いつか、薬指に指輪を着ける日が来たら...

俺もお金を貯めてドロシーにプレゼントしたい。

 

「シキ、一緒にキサラちゃん応援してあげようね。」

 

「おう!今日はありがとうな。」

 

「後、デートのご飯代はシキ持ちね。

私、パーカーと指輪プレゼントしてあげたんだから。

全部終わったら焼肉だよ♪」

 

「容赦ねぇな...」

 

そして、迎えるガン・レイズ・アリーナ決勝大会。

この時、まだドロシーもシキも想像すら出来なかっただろう。

 

シキの姉、ブレアの死の真実

スタークの正体とキサラとの繋がり。

 

そして、ドロシーもかつてない強敵との闘いが待ち受けている事を...




キャラクター紹介
ドロシー(原作:MAR メルヘヴン)

以下、シキが勝手に集めた今作でのプロフィール
年齢:19歳
身長:168cm
体重:聞いたらぶん殴られた
趣味:食べ歩き、あっちの世界になかった食べ物や家電に興味津々
好物:タマゴサンド
苦手:心霊番組見て絶叫してた
所属:バーガーショップ「Trick or treat!」ウェイトレス
ナイトランク:推定6位らしい、俺より高い!?

【バトルスタイル】
主力に風属性最強のARM ゼピュロスブルーム(西風の箒)
衝撃波で空気を弾き高速移動、緊急回避から、突風による防壁、カマイタチによる斬撃、周囲の瓦礫を巻き込んだ竜巻まで風属性の力を惜しみなく発揮
本来、風に乗って空を飛ぶ事も出来るが、カルデアシティの航空法では魔法アイテムも"航空機"と見なされるので許可なく市街を飛ぶのは違法。
私生活では電車やタクシーで移動してる様子。

切り札にレインドッグ・トト、フライングレオ、アーマーゴーレム・ブリキンを従え、得意の高速ARM切り替えでガーディアンと共闘もできる。
他にも口うるさい人形や、危ないカカシのガーディアンも居る様子。

【ライフスタイル】
仕事は基本的にウェイトレスだが、ドロシー人気殺到でランチやディナーの時間は大賑わい。
魔女のドレスからメイド服、ナース、バニーガール、体操着にブルマとコスプレも評判で近日トレーディングカードも売り出すとか。
ハンバーガー屋だよな?
休日は家電を眺めたり食べ歩きで、治安の悪いカルデアシティを満喫している。
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