※この作品はR-18です。

MAR-ナイトランカーズ   作:るしふぇる

26 / 40
ACT.26「不死鳥の歌姫」

「お昼、お願いねシキワンコ。」

 

ドロシーの命令には逆らえず、忠実にワンコとして昼食を買いに出る。

せっかくのイベントだしドロシー、キサラ、俺の3人で会場を周りたかったが午前のキサラは大活躍

 

こんなGRAファンの集まる人込みにキサラを放り込んだら、どうなることやら...

現に物販コーナーではキサラのクリアファイル、タペストリー、マグカップ、アクリルスタンド、キーホルダーが午前中に完売する程の人気ぶり

 

ドロシーのアクリルスタンド、ヨハンに頼んでグッズ化してもらおうか。

物販コーナーを抜け、野外に出る。

ずらりと並んだキッチンカー

 

どこ壱のカレー、とつぜんステーキ!、焼肉の牛丸、ラーメンの失楽園と見慣れたチェーン店から

お祭りの定番たこ焼き、お好み焼き、焼きそば、クレープ、ケバブ...お寿司まであるのか。

 

しかし、イベントの午後だけあり、どこも長蛇の列

戻ったころには

 

午後12時40分

 

「遅ぉーーーいッ!

餓死したらどうしてくれんのワンコッ!」

 

ドロシー番長からお叱りを受ける。

昼休みにパシリにされる子分の気持ちが、今ならよく分かるぞ?

 

「朝おでん食ってたじゃねーか!?

ドロシーのは牛丸の焼肉弁当だったな。」

 

こう見えてドロシー番長は肉料理が大好物。

あの大きく育った胸の膨らみ、程よい肉付きの太ももを構成する貴重な要素なのだろう。

 

「キサラのは...ほんとに稲荷寿司で良かったのか?」

 

「ありがとうございます!

お稲荷さん、大好きです。

ごめんなさい、シキさん...

応援に来てくれたのに、お昼まで買いに行かせてしまって。」

 

「いいよ、会場も散歩がてら見て周りたかったし。

ドロシーもキサラも、弁当1個と稲荷寿司だけじゃ足りないと思って、茶碗蒸しも3つ買って来た。

丁度、出来立てが店に並んでたからな。」

 

キサラの目が光る。

 

「茶碗蒸し!?」

 

何だ、この反応?

 

「キサラ、茶碗蒸し嫌いか?」

 

「いえいえ、この世界で一番美味しい食べ物じゃないですかッ!?

一皿100円のお寿司屋さんでも、200円はする特別な物で...

あ、ごめんなさい!

私ったら、はしたない...」

 

ここまで、食い付くキサラも珍しいな。

むしろ、隣のドロシーがご所望した牛丸の特上焼肉弁当(1800円)の方が特別感があるのだが。

 

「そんなに好きなら、俺のも食っていいぞ。

俺は見たいブースがあったから、もっかい外出てくるし。」

 

「そ、そんな悪いですよシキさん!」

 

ドロシーも続けて

 

「シキ、自分のお昼買わなかったの?」

 

「朝のおでんでお腹一杯だよ。

ドロシーはキサラとここに居てくれ。」

 

そう...ここに来たのはキサラの応援だけじゃない。

スレイプニル社が何を企んでいるのか

そして、この会場にスタークが来ているのであれば、その情報も探っておきたい。

 

スターク・アルバーン

俺の姉貴を黒焦げにして殺した現1位の最強ナイトランカー

 

仲間のランク2位、ヨハンでさえその素性は掴めていない。

魔弾のスタークという異名以外、全てが謎に包まれた存在。

 

こいつを殺すために、俺はナイトになった。

 

「わかったよシキ。

午後の部までには戻ってきなさいよ。」

 

「必ず戻ってくるよ。

どんなことがあっても。」

 

「それと、Dアリーナ限定のレインボーアイスね。

観戦しながら食べたい。」

 

「まだ食うのかよッ!?」

 

ドロシーに送り出してもらい、向かった先は...

 

 

Dアリーナ ゲスト控室

 

「こんな所に呼び出して、どういうつもりですかアイリス先輩?」

 

俺がドロシーとキサラの楽しいランチタイムを我慢したのは、このツンツンした先輩に呼び出されたからだ。

俺にだけしておきたい大事な話があるそうで。

アイリス先輩が続ける。

 

「蘇生から1年、デビューから4か月...

シキエルくんにしては辿り着くのが遅かったですね。」

 

何言ってんだこの人...

 

「蘇生...?

どうしたんですか先輩?

昼にか何かやべぇものでも食ったんですか?」

 

俺の問いをスルーしてアイリス先輩

 

「シキエルくん、午後のステージ私と見ましょう。

GRAの最新アプデ、コラボ商品の紹介、更に主題歌のミニライブもあります。」

 

「興味ねぇです!

大体、俺は歌を聴くのが嫌いなんで。」

 

「亡くなったブレアの影響ですか?

歌が聴けなくなったのは。」

 

「まぁ、そういうことですよ。

ずっと一緒だよ...姉貴が俺としてくれた約束です。

けど、姉貴が死んで以来、愛だ、願いだ、諦めないだ...

歌詞の全てが胡散臭く感じる体質になったんですよ。」

 

そこで、アイリス先輩が提案

 

「では、こうしましょう。

ライブを見てくれたら、シキエルくんが追うスターク・アルバーンの秘密を提供します。

我がオリュンポスレコード社が持つ極秘情報です。」

 

「随分、安売りしてくれる極秘情報ですね。」

 

「例えば...

スターク・アルバーンの正体が現在"18歳の少女の可能性が高い"という情報、興味ありませんか?」

 

「はぁ!?

何言ってんだアンタ、ふざけてるのか?

スタークが1位のナイトになったのは7年前だぞ?

11のガキに、俺の姉貴が負けたって言うのか?

それも...女だと!?」

 

「年齢や性別なんて関係あるでしょうか?

あのブレア・ヴァレンタインを殺せる存在ですよ?

人の域を超えた怪物に決まっているでしょう。」

 

面白い話だ。

ライブには興味ないが、アイリス先輩が冗談を言うタイプには思えない。

 

言うのは癪だが水色のショートヘアに知性的なフレームレス眼鏡

紺のスーツに白のブラウスを着こなし出来る女を醸し出す。

そして、ミニスカートから伸びた細長い脚も、ドロシーのムッチリとした太ももとは違った魅力

 

これだけスレンダーな美人なのに、24で未だに彼氏も出来ない堅物だからな...

おっと、聞こえたら殺されかねない。

 

午後13時00分

ここ、2階のゲスト控室からは、アリーナのステージを見下ろせる。

今から歌うアーティストのファンなら、喉から手が出るほど欲しい特等席だろう。

 

 

アリーナの照明が落とされ静寂

すると、ステージに光が当たり、大音量のイントロ

 

今注目のアーティストが姿を現す!

 

 

「みんなーーーー!

ガンレイズアリーナ、決勝大会!

盛り上がってるーーー!?」

 

彼女の登場に観客が一斉にペンライトを振り歓声!

 

彼女の身長は170センチとモデル体型

炎の様に赤い、腰まで伸びた赤のロングヘア

 

ベージュのロングカーディガン

その下は胸元を大胆に開けた白のカットシャツ

 

シャツの間から見せる豊満なバスト、谷間を強調させた黒のブラトップ

お尻のラインを強調し脚を大胆に見せる黒革のタイトスカート

 

黒のストッキングはデニールが薄く、彼女の脚線美を強調させる。

マイクを手にブラウンのショートブーツでリズムを刻み...

 

何だ、この女...

 

俺の表情にアイリス先輩も気付いた。

 

「そうです、彼女はブレア・ガーネット。

かつて死んだ、ブレア・ヴァレンタインをオリュンポス財団が総力をあげて蘇生させた...

新時代の歌姫!」

 

「蘇生させたって...」

 

「貴方の姉を生き返らせた。」

 

「そんなこと出来るわけ...」

 

動揺する俺を他所にアイリス先輩が続けた。

 

「シキエルくん、キミの持つ月読と対をなすムラマサの妖刀、天照の存在はご存じでしょうか?」

 

「不死鳥の妖刀...実在したのか!?

それこそ、とんでもない話になるぞ!」

 

ムラマサのナイトの俺が知らないわけないだろ...

そんなヤバイ代物の存在を...

 

「そうです、天照は禁忌と言われる最強の妖刀ですが所有者となるには条件があります。

この妖刀を手にした者は一度死ぬんですよ。

月読を手にした者49人が死んだ呪いの逸話ではなく、死者のみが振るうことが出来る正真正銘の魔剣。

 

スタークの力は圧倒的でした。

そして、ブレアは自らの命を捨て天照を開放した。

これが7年前、ブレアの死の真実です。

 

その天照もスタークとの闘いで、かなり損傷しました。

修復まで7年掛かりましたが無事に、ブレアをこの世に呼び戻すことが出来ました。」

 

 

ステージではGRAの主題歌の歌唱を終えたブレア姉さん

 

「ブレア・ガーネットでしたぁ!

えっと、少し告知の時間があります。

私、ブレアの初のライブツアーが決定しましたー!」

 

ステージからは歓声

更に続ける

 

「初のワンマンライブツアー、公式ホームページの方でチケットの抽選販売を行っていますので

是非、申し込んで頂けると嬉しいです!

それじゃ皆、午後の大会も私と一緒に盛り上がって行こうねーーッ!」

 

更なる歓声に手を振り、ステージを後にするブレア姉さん

 

「思わぬ形で、姉貴の夢も実現したものだな。

よくスレイプニル社も、ここで歌わせたよ。」

 

「彼女はブレア・ヴァレンタインではなく、ブレア・ガーネットですから。

ガーネット家は架空の家庭ですが最強のナイト、ブレアに心酔する熱狂的なファンが整形手術でブレアと瓜二つの顔となった...という設定です。

 

ガーネット家の戸籍と経歴、カルデアシティ市民権も偽装済み。

7年たってますからね、闘いさえしなければ、かつてのブレア・ヴァレンタインだとバレる事はないでしょう。

シキエルくんが、この秘密を守ってくれれば...ですが。」

 

「それが、先輩の言う極秘情報ですか。」

 

その刹那

控室の扉が開く

 

そこには、二度と会えないと思っていたブレア姉さんの姿があった

 

「姉さん...」

 

もう、強がって"姉貴"と呼ぶ事さえ忘れていた

 

「大きくなったね、シキ...」

 

両手を広げるブレア姉さんに、子供の様に抱き着いた。

この温もり、香り...間違いなく姉さんのそれだった。

 

「ごめんね、7年も寂しい思いをさせて。

アイリスから聞いたよ、ナイトになったんだってね?」

 

「うん...」

 

恥もプライドも捨て涙と嗚咽が止まらなかった

 

「スタークとの闘いで、一度私も死んだ。

天照の能力...シキなら知ってるよね?」

 

「知ってる...」

 

死者を灰から蘇らせる

生と死の概念、自然の摂理を無視した禁忌の妖刀

 

「こんな姉ちゃんだけど...

また、シキは私の事をお姉ちゃんって呼んでくれる?」

 

「どんな姿になっても、姉さんは...姉さんだ。」

 

「姉ちゃんって呼んでよ、シキ。」

 

「俺...もう、17なんだけど。」

 

「私にとっては、ずっと可愛い弟だよシキは。」

 

13時40分

 

気持ちも落ち着き、ソファーでこれまでの事をブレア姉さんに話した。

ナイトになるまでの事、そして...

ドロシーとの出会い、此処に来た経緯

 

「えぇー学校辞めちゃったのシキ!」

 

「ごめん...ちょっとグレてた時期があって。

でも、いつかちゃんと大学に通いたいから勉強はしてる。」

 

「ドロシーさんかぁ、私が居ない間にガールフレンドまで作るなんてね。

しかも、異世界人とか小説の主人公みたいな子ね。」

 

「あぁ、アニメのヒロインみたいですっげぇ美人なんだぜ!

優しいし、強いし、カッコイイし、店でも大人気なんだ!」

 

「店?」

 

「ドロシーはハンバーガー屋で普段バイトしてるんだ。」

 

「セックスはした?

リンスでシコるのは卒業したの?」

 

こういう事をストレートに聞いてくるのも、ブレア姉さんらしい...

俺が回答に困ってる間に次の話題へ

 

「ねぇ、シキ...

私の夢...いつかアーティストになってライブステージをシキに見て貰いたい。

本当に"命懸け"の夢になっちゃったけど叶ったよ。」

 

「おめでとう姉さん。

大丈夫だよ、秘密は守るから。」

 

「スタークとは"引き分けた"けど、何処かで決着を付けないとなぁ。」

 

引き分けた...!?

スタークに殺された...って聞いたけど

どういうことだ?

 

さっきから、俺の知るブレア姉さんの死と、姉さん本人が語る死が食い違う

 

史実ではスタークがブレア姉さんを殺した事になっている。

だが、ブレア姉さんの話では、自らの死と引き換えにスタークを討った...

 

その様に感じられ、疑問を投げかけてみた。

 

「そのスタークが18歳の女の子だって話、さっきアイリス先輩から。」

 

「えぇ、恐らく...キサラ・アルスカー...

あの子が次のスターク・アルバーンね。」

 

「はぁ!?」

 

何言ってんだブレア姉さん!?

キサラが、スターク?

 

次のって?

ブレア姉さんが続ける。

 

「私はもう、シキも...

せっかく叶えた夢も失いたくない。

だから、お願いがあるの。」

 

「お願い?」

 

「まず、私の死の真実を知るスターク・アルバーンの抹殺。

これは、シキの手でやってほしい。

GRAの優勝者を...シキの手で殺して。

 

そいつが、スターク・アルバーンよ。

恐らく、今回優勝するのはキサラ・アルスカー。

ああ見えて、あの子の戦闘センス、身体能力はナイトクラスに匹敵するわ。」

 

ちょっと待ってくれッ!

俺が...キサラを殺す!?

 

言葉を詰まらせる俺を尻目にブレア姉さんが続ける。

 

「それと、竜の鍵...

この世界がメルヘヴンと呼ばれてた頃、世界人口を10分の1まで壊滅させた最悪のARMヤマタノオロチ...

私はそれを手に入れたい!

 

シキからお願いしてくれないかな?

ドロシーさんにゼピュロスブルームを譲って貰えないかって。

 

リリスの持つクシナダ、スクリーチの武御雷、スタークのダインスレイヴ

そこに私の火之加具土命と天照、シキの月読、アイリスの村雨が揃えば、竜の鍵は私が起動できる!

私が、この世界を手中に収める事が出来る!」

 

「ちょっと待ってくれよ姉さん!

俺達も、竜の鍵を集めているけど...それは..」

 

「集めた後、封印でもするつもりだったの?

私は竜の鍵には否定的じゃないんだ。

もし、世界を亡ぼす程の力があるなら、それを手に入れたい!

 

私が7年前、夢を叶えられなかったのも、死ななきゃならなかったのも、力がなかったから。

言ったでしょシキ、私はもう、失いたくないの。

 

だから、奪われる前に、私がこの世界を奪ってやりたい!

絶対的な破壊者の力で!

もう、ガーネットなんて偽りの名前で生きてかなくても良い世界を作りたい!」

 

「もし、ドロシーが拒否したら...」

 

ブレア姉さんは万遍の笑みで答えた。

 

「お姉ちゃん、殺して奪っちゃう♪」

 

 

午後14時01分

気が付けばキサラの"最後のステージ"も開始されていた。

そして、俺とドロシーを待ち受ける最悪な運命の時も刻み始めることになる。




キャラクター紹介

ブレア・ガーネット
(生前ブレア・ヴァレンタイン)

年齢:19歳(7年前に一度死亡)
誕生日:12月25日
身長:170cm 体重:58kg
血液型:O型
スリーサイズ:B88、W58、H86
趣味:歌うこと、映画鑑賞
特技:妖刀の開発、魔法学
好物:テリヤキバーガー
苦手:ナイトランカー、この世界
所属:オリュンポスレコード 歌手
   ムラマサ社(7年前)
ナイトランク:過去1位
イメージ国:日本

使用武器
爆炎の妖刀:火之加具土命(7年前)
黒炎の妖刀:八咫烏
不死鳥の妖刀:天照

惨劇のクリスマス(7年前)
「この世界に私以外のナイトは要らない!」
当時のナイトランカー3位、6位、7位、9位、10位、12位の6人を惨殺
スタークとの死闘の末に死亡と史実にはあるが、ブレアがナイトランカーと対立した理由と真実は...


長らく更新、お待たせしました!
ブレア参戦します。

現時点の生と死の概念を超越した最強キャラで後にドロシーと闘う事に!
ドロシーと対立を濃くするために、東洋の魔女をイメージしています。

自分を否定し、最愛の弟シキとの7年の時を奪った世界
そして、シキの心はドロシーに惹かれ、既に自分が"一番"ではなくなった虚無感

戦闘時のブレアは傲慢なサディスト!
自分の思い通りにいかない、自分に歯向かう存在を徹底的に痛めつけ、身も心も破壊します。

そして、そんな独り善がりなブレアにドロシーも毅然と立ち向かいますが力の差は歴然!
スタークの正体、ブレアの目的、そしてキサラのGRAはどうなるのか

GRAも決勝で大盛り上がり!
その裏でもシキとドロシー達の本格バトルも開始です!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。