※この作品はR-18です。

MAR-ナイトランカーズ   作:るしふぇる

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ACT.27「ドロシーとブレア」

午後13:58

GRA 決勝大会ファイナルステージ

開始2分前

 

キサラ控室

 

「遅いですね...シキさん..」

 

「まったく、何処ほっつき歩いてんのよバカワンコ!」

 

10分前からドロシーからの着信が数件来ていたが俺は出れなかった。

 

午後13:59

 

「シキさん...」

 

今にも泣き出しそうなキサラの震えた声...

自分の晴れ舞台を見てもらいたかったのだろう。

 

「大丈夫だよキサラちゃん!

シキは必ず戻ってくる。

キサラちゃんのここ一番の時、必ず声援を送ってくれる。

あいつは、そんなやつだから。」

 

ドロシーに抱きしめられ、涙を堪えるキサラ

無情に鳴る14:00のブザー

 

「シキさんをがっかりさせるわけには行きません。

私も本気で闘ってきます。」

 

キサラの本気

手にする得物は午前の部とは違う

 

アサルトライフルをベースに改良

この大会の為に用意したキサラのオリジナルカスタム

 

精度を重視しフルオートによる連射を廃止

セミオート、3点バースト切り替えのトリガーは命中率の特化構造

18インチに延長されたヘヴィバレルに消音効果の高いサプレッサー

取り回し重視で軽量化されたショートマガジン

スコープとバイポッドを備えた、キサラの最終戦スナイパーライフルの名は...

 

Lvateinn Special Purpose Rifle

通称 レーヴァテインSPR

 

「行ってきます、ドロシーさん」

(必ず戻ってきてください、シキさん!)

 

ゲートを潜るキサラの背中は、何処か寂しげだった。

 

少し遅れて、俺が控室に駆け込む!

 

「ドロシー、キサラッ!」

 

待っていたのは、遅刻にご立腹のドロシーだ。

 

「遅いよシキッ!

キサラちゃんが負けたら、アンタのせいだから...」

 

言い終わる前にドロシーの言葉を遮る!

 

「逃げるぞドロシー!

キサラも大会を棄権させる!」

 

遅れてきた上、俺のトンデモない発言にドロシーも理解が追い付かず...

 

「はぁ!?

シキ何言ってんのよッ!?」

 

何と説明したら良いのやら。

 

ブレア姉さんが生き返ってた事

キサラが優勝したら殺される事

ゼピュロスブルームを狙ってる事

竜の鍵で世界征服まで企んでる事

 

ブレア姉さん...俺にとってかけがえのない家族だ。

だから解る、一度自分を死に追いやったこの世界を、どれだけ恨んでいるか!

 

そして、目的の為なら、手段を選ばない事も!

 

「落ち着けってのッ!」

 

ドロシーの怒声に合わせ...

 

バチィン!

 

と強烈な平手が俺の頬に炸裂する。

 

「痛ぇッ!」

 

「キサラちゃんなら、もうゲートの中よ。

連れ戻そうにも、ARMを持ってる私達じゃ通過できない。

ARM全部置いて丸腰で飛び込むって手もあるけど...」

 

ドロシーはゼピュロスブルームを始め、複数のARMを使う魔女

そして、俺の月読も元はダークネスARMらしい。

 

その刹那だった

 

「ウェポンARMなら通過できますよ。

レイズガンも元はウェポンARMの技術を応用しているので。

月読もゼピュロスブルームも置いて行ってくれるなら歓迎ですが。」

 

追って来たアイリス先輩の声だ。

ドロシーが続ける。

 

「状況がまだ呑み込めないんだけどシキ

私があげたカーボンブレード(ウェポンARM)があるよね?

月読は預かってあげるから、連れ戻しておいで。」

 

「いいのか?」

 

「事情は後で聞くけど、その慌てよう

ただ事じゃないんでしょ?

キサラちゃんには気の毒だけど、私はシキを信じてるよ。」

 

ありがたいが、この状況でドロシーを一人に出来ない!

どうするか悩んでる間にアイリス先輩が手にした村雨を抜く

形状はサムライソードだが、その刀身は冷気が迸る氷の刃...

 

「シキエルくん、交渉は決裂...と言うことでしょうか?

なら、ドロシーさんは死ぬことになりますが?

極秘情報を握ったキミも、帰すわけにはいきません。」

 

ドロシーも答える

 

「あぁ、察したわ何となく。

もう、大会どころじゃないんだね、私もキサラちゃんも。

シキ、早くキサラちゃんの所に行きな。

ここは私が何とかするから。」

 

「ドロシーさん、貴女さえ良ければゼピュロスブルームを譲って...」

 

アイリス先輩が言い終わる前にドロシー

 

「うっせーよ!

すっこんでろメガネブスッ!

私はシキと話してんだよッ!」

 

もう既にドロシーの気持ちは戦闘モード!

ここはもう、ドロシーを信じるしかない。

 

ドロシーから貰ったリングの一つ。

月読が封印されているスイッチハンダーをドロシーに投げ渡し、ゲートへ全力疾走!

 

「ドロシー頼む、勝たなくていい!

月読を持って逃げてくれッ!」

 

ドロシーも受け取り

 

「帰ってきたら、焼肉食べ放題だからねッ!」

 

ゲートに向かう俺の背中を敵となったアイリスが斬り掛かる!

 

キィンッ!

 

その氷刃をドロシーのゼピュロスブルームが受け止める!

 

オリュンポスレコード社 所属

ナイトランク6位

アイリス・コールクライン

 

「メガネブスなんて、言ってくれますね。

では、力尽くでゼピュロスブルームを回収します!

私はシキエルくんの上を行くナイトランカー、勝てるとお思いで?」

 

バーガーショップ Trick Or Treat!

ウェイトレス

ナイトランク推定6位

ドロシー

 

「やってみろよ!

先輩風吹かせて、最初からアンタは気に入らなかった!」

 

開戦!

 

その刹那

 

「あれれれ、シキは?

もしかして、ゲートの中入っちゃった?

もう、話の途中でいきない飛び出しちゃうんだもん、ヤンチャな弟だよ。」

 

遅れてきたのは、俺の姉であり

現時点で最悪の存在...

 

元 ムラマサ社 所属

過去最強のナイトランカー1位

ブレア・ヴァレンタイン

 

「やっぱりあのステージで歌ってたの、シキの姉さんだったんだね。」

 

ドロシーもキサラも、控室のモニターでライブステージは観戦していた。

その時から、ドロシーも何かを察していたのだろう!

 

ブレアが続ける

 

「貴女がドロシーさん?

確かにシキが言うように美人で、強そうな子ね。

イジメたくなっちゃう♪」

 

一瞬の踏み込みでドロシーとアイリスの合間に入り...

 

「早いッ!」

(こいつ、魔法も使わないで!?)

 

ドロシーも驚愕する電光石火の踏み込み

瞬時にアイリスと入れ替わる。

 

「近くで見ると、もっと可愛いわね。

ドロシーちゃん♪」

 

舌なめずりをし、ドロシーを品定めするブレア

経験から察したのだろう。

この女は危険だと、本能的にドロシーが後ずさるが...

 

「もう、逃げちゃダ~メ。」

 

ブレアがドロシーの右乳房を左手で鷲掴みにする

 

「いぃッ!」

 

痛みでドロシーが顔を引きつらせる。

 

「大きいおっぱいねぇ。

これでシキを誘惑したのかしら?

大人しくしなさい、場所を変えるだけよ。」

 

「痛ッ!このッ!」

 

ブレアに胸を揉まれながらも、抵抗するドロシーだが...

 

ギュウゥゥッ!

 

「んああああぁぁぁッ!」

(い、痛い、ちぎれるッ!)

 

ブレアに右胸を捩じり上げられ、痛みに耐えきれず悲鳴を上げるドロシー

恥ずかしさと経験したこともない胸の痛みに涙が溢れる。

 

「場所を変えるだけって言ってるでしょ?

ジタバタすると今ココでぶっ殺すぞガキ。」

 

ブレアも笑顔でサラッと言い放つ。

口調は俺と話していた時とは別人...

これが、ナイトランカー時代、俺の知らなかったブレアの顔なのだろう。

 

ドロシーの胸を掴みながらゲートの前でブレア

 

「ゲートはメルテク製ね。

ARMの感知センサーはスタンさせて場所は...朝の荒野で良いかな?」

 

ブレアがゲートに触れるとバチバチとスパーク

 

「改造完了!

そんじゃ入るぞ、アイリス付いてきな!」

 

「了解です、ブレア様!」

 

このゲートもARMなのだろう。

この世界の魔法を知り尽くしているブレアにとって、ゲートの仕組みを外部から操作するのは容易な事。

 

ドロシーを引きずったままゲートを潜るブレアとアイリス

そこは、キサラが午前の部で死闘を繰り広げた晴天の荒野だ。

 

ようやくドロシーも解放されるが、乱暴に引っ張られた胸の痛みで蹲る。

 

「くぅッ...痛い..」

 

ブレアが続ける。

 

「諦めたら、そこで試合終了だよ?

さぁ、試合再開だ。」

 

「はぁ...はぁ..」

 

右手でゼピュロスブルームを持ち、左手で痛む右胸を庇いながら立ち上がるドロシー

 

今日のドロシーの服装は黒い魔女のドレスを思わせる、肩と胸元を大胆に広げたオフショルダーのワンピース

大きく開いたスリットから太ももを覗かせるロングスカート

 

桜色の髪を三つ編みで2つに下げ

口紅を差しバッチリとメイクを決めて楽しいデートのはずだったが...

まさか、こんな事態になるとは想像も出来なかった。

 

対するアイリス

紺のスーツに白のブラウスとはギャップのある氷のサムライソード

村雨を構える。

 

「2対1か...

元ナイトランク1位って聞いてたけど、こんな人気のない所で、やることは姑息ね。」

(言葉遣いといい、あのステージでは想像も出来ないわコイツ...

こんな悪魔みたいな女が、本当にシキの姉さんなの?)

 

ブレアも返す

 

「はぁ?勘違いしないでね?

ドロシーちゃんみたいなデカ乳だけが取り柄の田舎臭ぇガキを殺すのに、2秒も要らないんだよ私は。

ただ、それじゃ面白くないし、せっかくだから見てやろうと思ってんの。

ドロシーちゃんが、この世界で何位の実力なのかってね。

 

そうね、アイリスに勝ったらスターク...キサラちゃんって言った方が分かりやすいかな?

あの子は見逃してあげる。」

 

「どういう事よ、キサラちゃんが...スターク?」

 

ブレアが衝撃の真実を告げる。

これが、このガンレイズアリーナの目的

 

「元々、スターク・アルバーンなんて人間は存在しない。

ウェポンARM"魔銃ダインスレイヴ"に乗っ取られた人間...

つまり魔銃のリーパーが、スターク・アルバーンの正体よ!」

 

「シキが追っていたスタークが...リーパー!?」

 

そのまま続けるブレア

 

「現実は小説より奇なりってこと。

私が天照を開放した時、スタークの肉体は破片も残らない程に吹き飛んだ。

残ったのは私の焼死体と、壊れた2つの妖刀と魔銃

天照とダインスレイヴ...

 

ナイトランカーは人間のクズばかりだけど、魔弾スタークと死神ヨハンを私は認めていた。

まぁ、どっちも"人間じゃない"から皮肉に聞こえるかもしれないけどね。

 

スタークには敬意を表して7年前は相打ちという結果なら私も受け入れてやってたけど...

スレイプニル社は当時ランク2位のナイトの損失を恐れたのでしょう。

 

この魔法社会で銃の立場は強くない。

スタークの功績がスレイプニル社をカルデアシティ3大企業まで成長させた。

 

その地位を守る為に、でっちあげた。

現ナイトランカー1位、スターク・アルバーンという存在しない最強のナイトを!

 

私の顔に泥まで塗りやがって!

死人にクチ無しとは、都合のいい言葉よね?

この大会が終わったら役員全員、一人残らず殺して晒し首にしてやるわ。」

 

ドロシーもガンレイズアリーナの目的を察した。

 

「成程...天照が修復された事でブレア、貴女は蘇った。

でも、ダインスレイヴ修復後に問題となるのは、誰がそこ銃を手にして次のスタークになるか。

 

スタークはスレイプニル社に従順なリーパーでなければならない。

そこで開かれたのが、このガンレイズアリーナ。

魔力を持たない一般人が銃で競い合い

頂点に立った最強のガンナーが、最強の銃に浸食され、最強のリーパーとなる。

シキとキサラちゃんが聞いたら卒倒しそうな話ね。」

 

「呑み込みが早くて助かるわ。

私は次のスタークをぶっ殺して、竜の鍵を手に入れて、誰も私から何も奪わない平和な世界を作らなきゃならないの。

でも、特別にアイリスに勝てたら、キサラちゃんは見逃してあげる。

シキは連れて帰るけど。」

 

この一言が、ドロシーの闘志に火を付ける。

 

「そんなことさせない...

ブレア、今のアンタにシキもキサラちゃんも渡さない!」

 

「シキは私の弟よ?

どう扱おうと私の勝手でしょ?」

 

ドロシーも負けずと反論

その表情は、悲しみで曇っていた。

 

「ブレア...シキは貴女を尊敬して誇りに思っていた。

最強のナイトだった貴女が何故、追われる立場にあったのか私には分からない。

でも、どうしてシキを裏切るようなことをするの?」

 

「シキを裏切る?」

 

ドロシーが堰を切るように叫ぶ!

 

「だってそうじゃないッ!

貴女が求めてる世界は、平和なんかじゃない!

ただ、この世界を支配して壊そうとしているだけだよッ!

 

そんなの、シキが認めるはずがないッ!

だから、私の所に戻ってきたんだッ!

あの時、シキがどんな気持ちだったか、何で分からないのッ!?」

 

俺は...ブレア姉さんが恐くなって飛び出したんだ。

死んだ人間が生き返る...

 

これだけでも思うことはあったが、ブレア姉さんが生き返ってくれて嬉しかった。

でも、そのブレアは...この世界を亡ぼす力を欲した。

 

俺にキサラを殺せと命じた。

ドロシーを殺すと告げた。

 

死を超越した、この人にとって...命とはここまで軽いものになったのだろう。

もう、俺の知る姉さんではなくなっていた。

 

だから、恐くなって助けを求めたんだ。

 

ドロシーのお姉さんも、ブレアと同じだったのかな?

ドロシーの世界、メルヘヴンを侵略したクイーン・ディアナ

 

ドロシーは、どんな思いで闘ったのだろう。

俺は...ブレアと向き合えなかった。

また、ドロシーの優しさに甘えてしまった...

 

 

俺は臆病者だ...

 

 

「ドロシーちゃんと世界について議論する気はないわね。

わかった、アイリスに勝ったら相手したげる。

シキの事は心配しなくていいよ、もしシキが私の世界を気に入らないのであれば

記憶を消して一から私を崇拝するよう再教育してあげる。

これで、皆が幸せになれる。

何だろ、優しい子に育てたのが失敗だったのかなぁ?」

 

「許せないッ!」

 

ドロシーの怒りがついに爆発!

 

「貴女の相手は私です!」

 

アイリスが間に入る!

再び激突するゼピュロスブルームと村雨の刃

 

「ドロシーさん、貴女では私には勝てません!

私は、シキエルくんより強い!」

そして、この村雨も、月読を改良した殺人剣

今見せてあげましょう、その力を。

 

操刃の術式、鏡花水月!」

 

村雨の刀身が砕け、8枚の氷の刃となりドロシーに襲い掛かる!

 

「シキと同じ!?」

 

「同じじゃありません、改良型です!」

 

アイリスは俺より強い...

何故なら、妖刀村雨

 

これは俺の月読のデータを元に作り出されたムラマサ社の最新型

今まで斬り殺した人の血を刃とする月読に対し

村雨は空気中の水分さえも刃とする改良型と言っても良い

 

この世界の氷属性の頂点に君臨する魔剣

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