ガンレイズアリーナ
廃都
教会礼拝堂
午後16時40分
ドロシーVSブレア
ドロシーの敗北、そこからの尋問に割り込んだ男...
ヨハン・ハーミットこと...
ナイトランク2位
ヨハン・ロックベル
「ドロシー、立てるかい?」
ヨハンに差し伸べられた手を掴み、立ち上がるドロシー。
ヨハンの黒いコートを羽織っているが
その下は全裸に剥かれ刀傷、擦り傷、打撲痕、火傷、また治りきってない凍傷が痛々しく刻まれている。
「泣き言なんて言ってる場合じゃないでしょ。
ありがとう、マスター...
助けに来てくれて。」
アイリス戦までの経緯はヨハンにメールで伝えてある。
「あのナイトランク6位のアイリスを倒すとはね。
ブレアの天照の能力も大体は理解できた。
不死鳥とは厄介だな...」
不死鳥の妖刀 天照
ムラマサ社が禁忌とした魔剣。
恐らく、この世界...カルデアシティに置いて最強の能力だろう。
しかし、ドロシーにとってヨハンも味方ながら未知の存在だ。
吸血鬼...その事実をまだ信じられないでいる。
指に付いた血を少し舐めただけで、空気を震わせる程魔力が上がるのを感じた。
エメラルドグリーンの瞳は満月の様な黄金に変わり
彼の存在が人ならざる物だと理解はしている。
そのヨハンが続ける。
「私の事...いいや、今更本性を隠すこともないか...
オレの事は黙っていて、すまなかった。
シキと3人で組んだ時、お互い嘘や隠し事はしない約束だったのにね。」
「いいよ、例えマスターがヴァンパイアやゾンビ、半魚人だったとしても...
私にとっては、この世界で掛け替えのない恩人。
話したくない事は無理に話さなくていいし、気が向いた時に話してくれてもよかったんだよ。
逆の立場なら、きっとマスターも私に言ってくれたはずだよね?」
ドロシーに戻る万遍の笑み
刹那
ブレアが歩み寄る
「ヨハン、ドロシーちゃんとお別れは済んだ?」
「あぁ、もしもの時はベットの下のコスプレ雑誌を捨てて貰うよう頼んでおいたさ。」
「おめー、まさか"ドロシーちゃんにまでコスプレさせてる"んじゃないだろうねぇ?」
「オレが無事に生還したら、キミのメイド姿の写真を...」
ヨハンが言い終わる前にブレアが加速!
ブレアの双薙刀 天照とヨハンの大鎌デスサイズが激しくぶつかる!
ブレアが続ける。
「おま...まだ持ってやがるのかアレ...」
(捨てておいてって言ったでしょ)と小声
少し赤ら顔だ...
「懐かしいだろブレア...
あの時の写真、キミは誰よりも美しく笑っていた。
何がキミをそうさせたんだ?
何故、ナイトランカーでもないドロシーを甚振る必要がある?」
「うるさいッ!」
ヨハンとブレアの繋がり...
そして、ブレアの動揺も過去の気恥ずかしさとは違う何かを感じられた。
「マスター、一体ブレアと何があったの!?」
ドロシーも気になるようだが...
「ドロシーちゃん、アナタは知らなくて良いの。
ただ、一つ言わせて。
そのヨハンっていうコスプレ好き変態ドMロリコンジジイは
いつかアナタを裏切るわ。
私の時と同じように...」
困惑するドロシーがヨハンへ返す
「ブレアと...何かあったんだね。」
ヨハンの答え
「ブレアの言うことは事実だ。
オレは...」
「コスプレ好き変態ドMロリコンジジイ?」
「違うッ!
ブレアを...彼女を裏切ったことだ!
でも、今は信じて欲しい...
虫のいい話なのは自分でも分かっている。
それでも、同じ過ちは繰り返さない!」
ドロシーも感じていた...
ブレアの憎悪と、ヨハンの後悔...
過去にヨハンがどんな仕打ちをブレアにしたのかは知らない。
そのせいで、俺の話に出てくる姉さんとは違う、悪魔の様なブレアになってしまったのかも知れない。
その真実は、ドロシーを落胆させるほど酷い物なのかもしれない...
しかし、ドロシーも決意する。
「例え...どんな過去を背負っていても、私はマスターを信じるよ。
でも、もし私をガッカリさせる話だったら...
私はアナタを引っ叩く!
有休も10日貰うわ。」
例えヨハンがどんな過去を持っていたとしても
受け入れる決意
「ここから生還したら、全て話すよ。
有給は...5日じゃダメかな?」
「マスター次第ね。」
ドロシーの笑顔を見てブレア
「まったく...本当に優しい子だねドロシーちゃん!
ここで"バーベキュー"にしちゃうのは惜しいわ。」
ブレアが天照を翳す。
しかし、この魔力の波長...
過去に闘ったヨハンは瞬時に見抜く
「妖刀...火之加具土命!?」
「気を付けてマスター!
ブレアの能力は不死鳥の力だけじゃないッ!
妖刀の力をコピーできるの!」
天照の能力
反魂の神器 八尺瓊勾玉
炎、氷、雷、あらゆる属性をコピーし使用できる。
「7年前よりバケモノか...
既に"クイーンクラス"だな。
ドロシー、オレのそばに!」
ヨハンの後ろに隠れるドロシー
同時にブレアが長年使った愛刀、加具土命の力を発動!
「虚空の術式...焦熱地獄!」
熱波が周囲の空間を赤く染める
「熱いッ!」
ドロシーが声を上げる。
まるで、オーブンに閉じ込められたかのように皮膚を焼く熱波
「でも、このくらいなら、私のゼピュロスブルームで...」
刹那
「使うな!」
ヨハンが制止する。
「焦熱地獄...あの術式は周囲のARMの能力を書き換える初見殺しの術式だ!
熱波は能力の一部に過ぎない!」
「書き換えるって...」
「発動の瞬間、術者を爆殺する...
それが、この結界内のゼピュロスブルームの能力だ。
今、持っているARM全てが爆弾なんだ。」
「そんな、ARMが使えない!?」
(嘘でしょ...ブレア!
殺そうと思えば、いつでも私を殺せたってこと?)
しかし、このままでは焦熱地獄で蒸し焼きにされるのがオチ
何とか結界の外に出なければ...
「ドロシー、約束する。
例えキミを失望させることがあっても、キミを絶対に死なせない!
必ず元の世界に帰してみせる!」
ヨハンの決意ある一言に心奪われ、ドロシーが乙女らしく目をキョトンとさせ頬を紅潮させる。
正直悔しい...
お姫様抱っこの要領でドロシーを抱え
「ちょ、マスター!?」
礼拝堂の大扉へ走る。
その隙をブレアは見逃さない!
「背中がガラ空きだぞクソジジイ!」
グサッ、グサッ!
ヨハンの背中に燃える刀が2本突き刺さる音
肉を焦がす臭い
「マスターーーー!」
叫ぶドロシー
だが、ヨハンは呻き声一つ漏らさず
苦悶の表情さえも出さず
「オレは平気だ。
もうすぐ、ここから出られる!」
追撃するブレア
「操刃の術式 烽火連天」
ヨハンの背中に突き刺さる炎刀が爆発する。
続いて白い閃光が教会を包み...
爆音
炎上する巨大な火柱が空を赤く染める。
教会を跡形もなく消し飛ばす。
かつて、教会のあった黒焦げに焼けたクレーターの中心に立つブレア
「まぁ、吸血鬼だし、あれくらいじゃ死なねーか。
女の前で強がっては居るけど、失神寸前なくらい痛いだろうけどねぇ。
さぁて、狩りの時間だよ。」
ガンレイズアリーナ
廃都 市街地
午後17時00分
上半身を覆う衣類は爆炎に剥ぎ取られ、筋肉で引き締まった白い身体を露わにするヨハン
爆炎で焼きただれた背中には2つの刺し傷
「マスター...酷い怪我...」
「心配いらないよ。
この程度で死ねないんだオレは。」
「バカな事言わないで。
すぐ、ホーリーARMで...」
「無駄だよ、魔族のオレの身体は神聖なホーリーARMでは治療できない。
それと...キミに嘘を2つ付いていた。
許してくれ...とは言えないか...」
「こんな時に...何の話よ。」
苦しそうに呼吸を整えながら壁にもたれ掛かり腰を下ろしたヨハンが続ける。
「こんな時だからだよ。
キミと話せるのは、今日で最後になるかも知れない...
まず、キミの友人...人狼のバレットくんだったかな?
オレが殺した。」
「...」
驚愕の事実に言葉を失いかける...
ドロシーが続ける
「バレット...確かに今は敵だったかもしれない...
でも、元の世界には奥さんや息子さんだって居たんだよ!?」
「オレにとっては、お店に来てくれるお客さんが掛け替えのない存在だった。」
脳裏に蘇るバレットの声
『明日から、貴様の店に訪れる客を一人ずつ殺してやろう。
死体が並んだ店の飯を誰が食うだろうなぁ。
ふはははははッ!』
「彼の言葉が、キミを動揺させるための虚言だったのか確かめる術はない。
だが、キミとお客さんの安全を守る...それが、オレの責務だった。
いや、詭弁だね。
オレの居場所がなくなるのが恐かった、だから殺した。
もう一つ、オレは夜にしか闘えない呪いをブレアに掛けられたと言ったよね?
あれも嘘だ。
血さえあれば、いつでも闘える。
ただ...ブレアに恋心を持った時に約束したんだ。
もう、吸血鬼としてじゃなく、人として生きていくと。
その時に、血を吸わない約束をした。
オレ自身が掛けた戒め、恋心...それが呪いの正体だ。」
「バレットの件はショックだけど...アレ(ブレア)に恋をしてたとはねぇ。
まぁ、確かに顔は良いけど、昔からああだったの?」
「シキにとっては理想の姉を演じていたのだろう。
だが...オレ達ナイトランカーにとっては悪魔そのものだったよ。」
「マスター...今のアナタはどうしたいの?」
「キミを逃がしたい...
ここにはオレ一人で残る。
キミに付いた嘘、ブレアを裏切った過去、死をもって清算できるなら...」
刹那...
「バカね...」
ドロシーがヨハンの頭を優しく抱きしめる
「ドロシー?」
動揺するヨハンを他所に続ける
「死ぬことは償いじゃない...そんなの、ただの逃げだよ。
昔のマスターはどうだったか知らないけどさ...
今はシキだって居る、私だって居る。」
「オレはキミとの約束を破り...嘘を付いた。
本当は人間ですらなかったことを、隠していた。」
「勿論、怒ってるよ?
だからと言って、もう知らないって訳にもいかないでしょ?
マスター...アナタは確かにヴァンパイアかも知れない。
でも少し皆と違う、特別な身体を持っているだけよ。
どう生きていくか決めるのは、呪いや制約なんかじゃない
アナタの意思で決められるはずだよ。
アナタはどんな時も、お客さんや私の心に寄り添ってくれた。
この世界に居場所がなかった私にも仕事を教えてくれた。
アナタの背中を見て、仕事が出来た事...
憧れた事を誇りに思う。
私が知っているヨハンはそんな人だよ。
例え、過去がどうだったにせよ、私の気持ちは変わらない。
大好きだよ...マスター。
だからさ、もっと私のこと頼ってよ...」
ドロシーの告白?
俺がかつてドロシーにした告白
『好きです、付き合って下さい』
結局うやむやに終わった
未だに返事も貰えてない、そんなドロシーの気持ち
ヨハンへの思いを知る由もなかった。
「そうか...すまなかった。
キミの気持ちに気付かず、此処までの事を言わせてしまって。
ドロシー...虫のいい話かもしれないが...
オレはもう一度、ブレアと話がしたい。
彼女はきっと、この世界を憎んでいる。
きっとオレが勝たなければ、話も聞いてはくれないだろう。
だが...オレ一人では、とうてい勝ち目はない...」
掠れるようなヨハンの声にドロシー
「わかってるよ、マスターの気持ち。
私も子供じゃないからワガママは言わないよ。
私の血を飲めば、互角に闘える?」
吸血鬼ヨハンの口元に首筋を近付かせるドロシー
「いいのか...ドロシー」
「血を呑んだからって"人の強い信念"は変わらない。
呪いに負けないで、ブレアとの決着を付けて帰りましょ。
」
ヨハンにとって、この300と6年生きて初めての事だった。
自ら血を差し出す人間に出会えたこと...
嘘や隠し事の全てを打ち明けて、人として受け入れてくれたこと...
「ドロシー...どうやらオレも、シキと同じでキミに世話を掛けてばかりのようだ。」
「本当だよまったくッ!
早く吸いな。」
ヨハンがドロシーの首筋に牙を立てる
「あんッ!」
痛みに喘ぎながらも、ヨハンの頭を後ろから摩るドロシー
幸い、ヨハンの傷は僅かな血で回復できたのでドロシーも貧血にはならないだろう。
「オレは...いいや、私はもう迷わない!
一緒にトウキョウへ帰ろう!
シキと3人で!」
「キサラちゃんも一緒よ。」
ホーリーARM、癒しの天使で止血するドロシー
ヨハンが続ける
「そうだね...出来ればキサラさんにもウチの店で働いて貰いたい。
金髪ならメイド服や学生服も映えるはずだ。」
「ブレアが言ってたコスプレ好き変態ドMロリコンジジイってマジなの?」
「もう、嘘は付けないからね、否定はしないかな。」
「してよッ!」
「それと...裸で闘ってもらうわけにはいかないからね。
いつかキミに頼まれたドレス、完成したから持ってきたよ。」
ヨハンの指輪型収納ARMから取り出したソレに、ドロシーも懐かしさを感じられずにはいられなかった。
漆黒の生地、大胆に脚線美を露出させたスリット、ウィッチフード...
かつて、メルヘヴンで愛用していた魔女ドロシーのドレスだ!
「ありがとう、マスター!
ああ、そうだ...マスターにも私からお礼があるんだ。
私のは物じゃないんだけどさ...」
「温かい言葉なら、もう充分頂いたよ。」
「いいえ、妖刀 天照...アレの攻略法がある。」
「...!?
まったく...恐ろしい看板娘だ。」
不敵に笑って見せるドロシーと、まさかの言葉に驚愕するヨハン
彼女はハッタリを言わない。
そして、その強さは魔力やARMの賜物だけじゃない。
洞察力...それが、ドロシーの最も信頼できるスキル
ドロシー&ヨハン 復活
反撃開始!
収納用ARM
通称、異空間リング
ヨハンも愛用のカルデアシティ住人が携帯している指輪型のARM
指輪の他、ネックレス、ブレスレッド型も販売中
異空間トランクで言うなれば四次元ポケットの指輪版のような物
しかし市販品故、防犯上の都合から魔力を持つ物(ARMや魔剣)、金属類、ガスやオイル、電池等の引火物は収納できず、容量も30L~80Lまでなので大型家電なども収納できない。
ドロシーの持つディメンションARM ジッパー(異空間にARMを保管できる)、シキの持つスイッチハンダー(ドロシーが作ったジッパーの最小版)はカルデアシティの世界では製造、販売、流通が禁止されている。
ドロシーやっちまったなぁ