オリエントタウン 埠頭倉庫
PM11:40
アイリーンとの戦闘が終わり荒れた倉庫
大樹に突き破られた倉庫の屋根から月明かりが照らす。
砕けたコンクリートの床、無造作に転がされた鉄のコンテナが壮絶な戦いを物語る。
そして、新たな乱入者
ナイトランク4位
雷雲の妖刀 建御雷神(タケミカヅチ)を手にした暴君
カルデア東都電力 所属
雷帝スクリーチ・アーバイン
「くそアマがぁ...」
鼻血を垂らし、ランク4位の雷帝が怒りで声を震わせる。
慢心していたスクリーチへまさかの顔面膝蹴り
そんな恐れ多い暴挙に出た魔女ドロシーがボロボロのシキに駆け寄る。
「シキ、大丈夫!?」
「だ、大丈夫です、堪忍してください、スクリーチより恐いです!」
何とか、シキが身体を起こすも手で押さえた口と鼻からは血がドクドクと流れている。
「顔見せて!」
「俺は大丈夫だから...」
ドロシーにこんな顔見られたくない。
相手が格上だとしても、シキにとって女の子の前でボコボコにされたショックは大きいのだが...
「顔を見せて、引っ叩くよ?」
「はい」
恥ずかしさよりドロシーへの恐怖が勝った。
まじまじと、シキの顔を観察する。
ドロシーの傷は完全に完治したようだ。
流石、マフィアが裏取引する程のレアARM、慈愛の天使
心配だったイバラに締め付けられていた太ももや胸の傷も綺麗になくなっている。
「よかったぁ~、鼻と歯は折れてないみたいだね。」
完全回復しドロシーの顔色も戻った。
シキの顔を覗き込み、安堵の溜息を漏らす。
間近で見るドロシーの顔。
透き通ったルビーの様な赤い瞳、長いまつ毛、整った鼻筋に、潤った小さな唇...
怒ると恐いが、意識して間近で見ると、こんなに綺麗な人だったんだなと感心する。
「...?!」
シキの顔をドロシーが抱きしめる。
「やめろ、子供扱いするんじゃねぇ。」と言いかけたが...
思い留まる。
温かい胸の感触...
間近で感じる彼女の体温、香り
不思議とスケベ心は湧かなかった。
痛みを忘れるほど、彼女の胸の中は安心できた。
シキの頭を撫でながら、聖母の様な優しい声で続ける。
「痛かったね...すぐに助けられなくてゴメンネ。
もう、大丈夫だから。」
もう、子供扱いされたって良い。
相手はナイトランク4、正直もう絶望的な状況だと半ば諦めていた。
だが、ドロシーなら何とかしてくれる。
今日くらいは頼りたい、甘えたい...
そう思えたのは初めてだった。
不意打ち、騙し討ち、裏切りが横行するナイトランカーの世界。
そんな中で、ここまで他人に心を許したのも初めてかもしれない...
刹那
「見せつけてんじゃねぇよガキ共ッ!」
スクリーチがシキを抱くドロシーの背中に斬り掛かる。
だが...
「うるせぇんだよクソが...」
ドスの利いたドロシーの囁き
聖母の声が魔女の声に変わる。
クソ野郎が後ろから斬り掛かってくる事なんてドロシーは知っている。
だから発動させた。
ガーディアンARM ブリキン
ドロシーの横から魔法陣が出現し
驚愕するスクリーチ
「何だとッ!アーマーゴーレム!?」
魔法陣から放たれる強烈な一撃!
銅の鎧で覆われた巨人の手がスクリーチを殴りつける。
アーマーゴーレム・ブリキン ドロシーのガーディアンARMから呼び出された使い魔だ。
間一髪、刀で防ぎ遠く離れた所で着地する。
「シキ、ちょっと待っててね。
あいつ、ぶっ飛ばしてくるから。」
ドロシーが立ち上がり、パーカーのファスナーを胸元まで閉める。
空中に描かれた魔法陣から半身を覗かせるアーマーゴーレム・ブリキンと共にスクリーチと睨み合う。
「ねぇ、モップ頭、ひとつ聞いていい?
アンタをぶちのめしたら、私もナイトランカーになれるの?」
スクリーチも返す
「小娘が、不意打ちかました程度でナイトランク4位の俺に勝てると思ってるのか?」
「私もランカーになれるの?って聞いてるんだけど理解できない?
頭がモップなら中に洗剤でも詰まってるのかしら。
4位がこんな馬鹿なら私が1位になるのも時間の問題かな?」
ドロシーの毒舌
スクリーチの眉根が寄り、額に血管が浮かび上がる
「誰に言ってるのか理解してるのか小娘...?」
「不意打ちかました程度ねぇ
闘いに横槍入れたり、後ろから斬り掛かったり...
不意打ちすらまともに出来ないダサいヤツが何言ってるのかなぁ?
まだ、シキの方がナイトの闘いってやつを理解してるよ。」
「頭突き一発で膝を付くような小僧に俺が劣ってると?」
「よっぽど頭が臭かったんだろう。
どうせ、そのモップ頭で便所の床でも磨いてきたんだろ。
今度は、ここの床でも舐めさせてやろうか?」
不敵に笑うドロシー
可憐な声で囁く一言が妖艶にも感じられるが言葉がえげつない。
「言葉の暴力ってこういうのを言うんだろうなぁ」とシキが感心する刹那
「殺すッ!」
スクリーチが妖刀 建御雷神を抜刀
舌戦に勝利した束の間、今度は実戦にドロシーも頭を切り替える。
雷雲の妖刀 建御雷神
(マジックストーンの気配は4つ、つまり能力は4つある。
シキの月読と違い、ダークネスARMの気配はない。
常備、抜刀してくると見て間違いは無さそうだ。)
スクリーチが床に刀を突き刺すと赤い稲妻が迸る!
立ち上がるシキ
「自分で避ける、ドロシーは闘いに集中してくれッ!」
地面を走る稲妻をシキが回避
同時に魔法陣から姿を現した5メートル程の鎧の巨人
ガーディアン、アーマーゴーレム・ブリキンが主のドロシーを左肩に乗せる。
「行きな!ブリキンッ!」
ドロシーの指示に従い、鈍足ながらも前進するブリキン!
シキが再び感心する。
ガーディアンの使い方が上手い!
本来、ガーディアンARMを使用する際は魔力を集中させるため、その場から動けず、他のARMの使用も出来ない制約があるのだが...
こうして、肩に乗って指示を出すことで"その場から動けない制約を無視"した攻守を両立させることができる。
スクリーチを踏み付けるべく、ブリキンが飛び掛かる。
ドスン!という衝撃音がコンクリートの床を抉る。
難を逃れ反撃するスクリーチ。
刹那の赤い閃光
雷を纏いドロシーの乗るブリキンの左肩に回る。
そのスピードは雷そのもの。
ガーディアンARM発動中は、他のARMは使用できない。
巨人よりも俊敏な雷の刃がドロシーに襲い掛かる。
「死ねや小娘!」
「お断りよ!」
だが、ドロシーもそれを読んでいた。
ブリキンを"兜をあしらった腕輪"の形状に戻す。
マジックストーンを埋め込み彫金したアクセサリーARM
その種類は多彩で、魔女ドロシーはその扱いに長ける。
魔力が全力のドロシーの前では、ナイトランク9位のイバラのネイチャーARM使い アイリーンですら足元にも及ばない。
指輪のARMから、銀の箒を出現させる。
「な、早ッ!?」
シキも思わず声を上げるほど。
ブリキンが消滅し、空中で銀の箒を構えるドロシー
ガーディアンからネイチャーのARM切り替えなど、一瞬もあればドロシーにとって造作もない。
思わずシキの言葉が漏れる。
「何あれ...チートだろ!?」
そんな事が出来る人間、今まで見たこともない。
そして、彼女の手にある物
1000年前の大戦で使われた伝説級のレジェンダリーARM
売れば何億もの値が付く、風属性最強と謳われた"西風の箒"
「ネイチャーARM ゼピュロスブルーム!」
ドロシーがメインARMの名を叫ぶと同時にパァン!という炸裂音
風の衝撃波がスクリーチを引き離し、ドロシーを斬撃の間合いから引き離す。
「このガキがぁッ!」
スクリーチが剣を振り上げると、赤雷の柱が無数に床から突き放たれる!
シキも間一髪で回避するが、一方ドロシーは...
3つの衝撃波による炸裂音
着地することなく、衝撃波を利用した空中での回避
ゼピュロスブルームは風を操る最上級のネイチャーARM
突風、竜巻、衝撃波、かまいたち、また風に乗って空を飛ぶなど多彩な戦術が可能。
空高く飛び、黄金の満月が宙返りをするドロシーのシルエットを優美に映す。
まるで、月夜を舞う蝶のような美しさ
空中でゼピュロスブルームを指輪に戻し
「行けぇ、フライングレオ!」
ガーディアンARM フライングレオ
ドロシーの持つ"ライオンの顔に翼を付けた装飾のブレスレット"から放たれる翼を持った白銀のライオンがスクリーチに襲い掛かる。
思えば回復後のドロシーは腕輪、指輪とかなりの数のARMで武装していた。
そして、2種類目のガーディアンARM
それも空中で十分な距離を取ってから一瞬で切り替え。
「ドロシー、俺より強いんじゃね...?」
シキにとって彼女は憧れなのか、嫉妬の対象なのか複雑な心境
出会った時から何者なのかとは思っていた。
魔力の消費の激しいガーディアンを2体も従え、おまけに伝説級のレアARMを手足のように使いこなす。
闘いに目を移す。
フライングレオの爪と、スクリーチの刀がぶつかり合い、激しい金属音と同時に火花を散らす。
しかしスクリーチが狙うのは、空中で無防備となったドロシー
再び雷を纏い強引にフライングレオを突破しドロシーと距離を詰める。
相手は雷、電光石火でドロシーより高く飛ぶ。
頭から自由落下するドロシーの股下から頭部にかけての振り下ろし
「ゼピュロスブルーム!」
「!?」
だが、このバケモノじみたARM切り替えの速度
これは既に人間や並のナイトの域を超えている。
彼女はこの世界に存在する"4人のクイーン"の称号を持つ者なのか...
クイーン
ナイトランカーより上位の存在
ルークが警察、ビショップが軍隊、ナイトが特異体質を持つヒーローの様な存在であるなら
クイーンは例えるなら核爆弾、国が持てば戦争の抑止力にもなりえる"生きた兵器"だ。
天変地異さえ起こしえる魔力は歴史上、何故か女性のみが持って産まれてくる。
カルデアシティではクイーンの事をこう呼ぶ。
"魔女"
フライングレオがブレスレッドに戻り、即座にゼピュロスブルーム、銀の箒へARMを切り替えタケミカヅチの一撃を受け止める!
「ドロシー、お前、魔女だったのか...
何で俺の前に現れたんだ?」
この物語は、いつか話すことになるだろう。
シキも魔女と因縁がある。
超えるべき存在の影がシキの脳裏に過る
まだ、幼い彼の頭を優しく撫でる赤髪の魔女
『シキ、愛してるよ』
-だったら、何で居なくなったんだよ、姉貴!-
空中で火花を散らす風と雷
「やあぁッ!」
ドロシーが掛け声と同時に空中で身体を捻らせ、蹴り足でスクリーチの側頭部を狙う。
「甘ぇよッ!」
ドロシーの蹴り足を掴みスクリーチが上へ放り投げる。
最初面食らったとはいえ、相手は4位のナイトランカー
戦闘センスは悔しいが現状のシキより上
ガンッ!
「がはぁッ!」
投げ飛ばされたドロシーが、倉庫天井の鉄骨に背中を叩き付けられる。
身体を仰け反らせ苦痛に顔を歪ませる。
更に、雷を纏った追撃。
「くぅッ!」
背中の痛みを堪え、真上にゼピュロスブルームを放ち下に逃れる。
着地をするドロシー
だが相手は雷
「しまッ...!」
着地で体勢を整える前にドロシーの正面に回り込み、強烈な前蹴りを炸裂させる。
「うッ!」
(やばい...モロに!)
凄まじい勢いでミゾオチを蹴られ、ドロシーの身体が一直線に吹き飛ばされ
ガシャン!
「あんッ!」
鉄のコンテナが凹む程の衝撃音とドロシーの短い悲鳴が木霊する。
大の字に叩き付けられ衝撃で胸が大きく揺れる。
「あがッ...うあぁ..あッ!」
叩き付けられた背中の激痛に悶えながら、ずり落ちる形でM字に足を開き尻持ちを付くドロシー
常人であれば気が遠くなるほど痛いはずだ。
目をギュッと閉じ歯を食いしばっている表情が、その苦痛を物語る。
シキの葛藤...
今すぐ助けたい、だが...
ドロシー、お前が魔女なら...
ナイトに勝てるよな?
スクリーチの放つ赤い雷がドロシーを狙う。
闘いの中、ドロシーに痛がっている余裕なんてない。
ウェポンARM リングダガー
ゼピュロスブルームとは別の指輪がダガーナイフとなり
ドロシーが闘志の宿った目を開き、そのダガーを迫る雷撃に投げつける。
ナイフの先端に引き付けられた雷がアース放電を起こし、意図しない方向へ電撃を反らせる。
安価なダガーさえも、抜群の戦闘センスで多彩な使い方を魅せてくれる。
背中を凹んだコンテナに持たれたまま立ち上がるドロシー
だが、その表情からは、まだ闘志は消えていない。
「どうした、俺に床を舐めさすんじゃなかったのか?!」
隙を見せれば雷の速さでスクリーチの刃が降り注ぐ。
間一髪でゼピュロスブルームで弾き返す。
すかさず足を狙ったスクリーチの切り払い。
飛んで避けるドロシー
「足は狙わないでくれる?
シキに膝枕してやるって約束してるからさぁッ!」
気合の入ったドロシー
空中で羽根のように舞い、身体を捻らせての回し蹴り!
スクリーチの側頭部に命中するも!
「効かねぇよッ!」
「うぐッ!」
返礼と言わんばかりに、着地したドロシーの右頬に強烈なストレート
しかしドロシーも意地を見せる。
「おらあぁッ!」
可憐な声とはギャップのある掛け声でスクリーチの、男の一番大事な所を蹴り上げる。
「ぐあぁ...ッ」
まさかの金的、流石のナイトランク4位も苦痛に顔を歪ませるが...
殺意を目に宿し
「俺を怒らせたな...小娘ッ!」
返礼と言わんばかりにドロシーの股間に雷の妖刀 建御雷神を押し当て
バチィッ!
ドロシーの股間で赤い稲妻が閃光を放つ!
「キャアアアァァァーッ!」
ドロシーが聞いたこともない絶叫を上げ
「ああぁぁッ、あああああぁぁーッ!」
両手で股間を抑えながら狂ったように泣き叫び床を転がる。
シキが後悔する。
まだ、動けるのに何で助けなかった。
-相手が魔女だったら何だ?-
『痛かったね...すぐに助けられなくてゴメンネ。
もう、大丈夫だから。』
そう言って優しく抱きしめてくれた。
ドロシーと"姉貴"を重ねて、気が付いたら葛藤していた。
ドロシーも超えるべき存在なのか...
例え自分が好意を持っても、姉貴のように居なくなってしまうのか...
「いやぁッ!」
ドロシーの悲鳴
おさげを掴まれ、強引にスクリーチに引き起こされる。
「なっさけねぇなぁ~!
あれだけ啖呵切って、この様かよ。」
ドロシーの首筋に突き付けられる刃
「んぅッ...あぁ..」
(股間が痛くて...力が入らない..)
抵抗しようにも雷で焼かれた股が痺れズキズキと痛む。
屈辱や羞恥心も忘れ、両手で股間を抑えた内股の無様な格好で立たされる。
雷が急所に直撃して無事であるはずがない。
気が遠くなる痛み、涙で濡れ青ざめた顔、例え闘志の炎が風前の灯だったとしても...
「くッ...!」
歯を食いしばり、スクリーチを睨むドロシー
ドロシーには根性がある、シキにもまだ魔力はある。
(この身体がツクヨミに食われたって良い。
一瞬でも、ドロシーに起死回生のチャンスを作る!
これは"俺達"の闘いだ!)
「虚空の術式 刻死界牢!」
スクリーチからの意識外の結界
色の反転したネガの世界が広がり時を止める。
だが、4位のナイトランカーを閉じ込められるのは一瞬
時が戻ると同時に、シキがスクリーチとドロシーの間に割って入る。
「俺のドロシーに触んじゃねーよッ!」
怒号と共に振り下ろされるツクヨミの剣閃
スクリーチがドロシーから手を放し
「この死にぞこないのガキがッ!」
雷を纏った斬撃で返す。
キィンッ!
武御雷神と月読、雷の神と夜の神の名を冠する刃が激突!
だが...
鉄の砕ける音
血の噴き出す音
限界を迎えたシキの刀が砕かれ、スクリーチの袈裟斬りが左上から右下に走る。
痛みと灼熱感がシキを襲う。
だが、充分だ!
最後の力を振り絞り、後方へ逃がしたドロシーに親指を立て...
-俺達の勝ちだ、カス野郎!-
「良いよ...今夜だけはシキのモノになってあげる。
ガーディアンARM レインドッグ・トト!」
ドロシーも切り札を発動!
右手にかざすのは犬の頭を模した飾りがついたチェーン
空間がガラスの様に砕ける。
解き放たれたのは巨大な灰色の猛犬。
竜の様な大きな口から唾液を滴らせ、3本の尻尾を靡かせながら唸り声を上げる。
「食っていいのか?ご主人!?」
どうやら、人語を話すことも出来るようだ。
鎧の巨人、翼を持つライオン、今までドロシーが使ってきたガーディアンとは違う。
レインドッグ・トト、規格外の魔力と凶暴性が全身からオーラとなって放たれる。
「倒れてる子は狙わないで、あのモップ頭は殺していいから。」
冷たくドロシーが言い放つと同時に、トトがスクリーチに飛び掛かる。
「犬っころが、黒焦げになりやがれッ!」
赤い雷
しかし、トトが鋭い爪でそれを払い除ける!
「マジかよ...」
スクリーチが顔を引きつらせる。
眼前に迫る巨犬、怪獣のアギト
「仕方ねぇなオイッ!」
だが、スクリーチも切り札を隠し持っていた。
「雷槍の術式 螺愚鳴神楽(らぐなかぐら)」
妖刀 武御雷神の刀身が黒い雷雲に包まれ、西洋騎兵が使う白銀のグレードランスに姿を変える。
ドリルの様な螺旋状の槍先、纏う赤い雷が一目で切り札を彷彿させる威圧感を放つ。
ぶつかり合わんとする牙と槍
その刹那だった
「そこまでだ!」
声と同時にスクリーチとトトが制止する。
ドロシー、シキ、スクリーチ、誰の声でもない第四者の男の声
声の主は革靴の足音と同時に、黄金の満月を背に姿を現した。
ミディアムショートの金髪にエメラルドグリーンの瞳
男は20代後半の青年の姿に見えた。
180センチはあるであろう身長に、黒のスーツ、中は紺のベストに赤のネクタイ、純白のシャツとエリートの風格...
この男が入ってきた瞬間、空気が一変した。
魔力、殺意、闘気、それとは違う、彼が風格と共に纏う不気味なオーラがスクリーチ、トト、ドロシーを硬直させたのだ。
スーツ姿の彼が、囁くような甘い声で言う
「この闘い、私に預からせて貰えないか?」