涼月さんの話が終わった。今まで彼女が僕に対して取ってきた不可解な行動の意味がようやく分かった。
「明石さんの言う通り何もかも自業自得なんですよ。軽蔑したしましたよね? 私は自分勝手で自分の都合のいいように事が運べばいいと思ってる人間です。本当に汚い女……アハハ……」
軽蔑の気持ちなんて湧くはずがない。代わりに沸いたのは、この人が可哀そうだと思う気持ちだった。
もっと早く気づくべきだった。僕がもっと早く気づ入れいれば涼月さんとの関係を歪なものではなく、合意があった上でのことにできたかもしれない。秋月さんの死を防げたかもしれない。
考えてみれば彼女の本音に気づくチャンスは、何度もあったはずだ。彼女に言われるまで気づかなかった自分の観察力の無さと鈍感さを呪う。
「だけど君だけは巻き込みたく無かった。巻き込みたく無かったから言ったんですよ。私に関わるなって……まぁ結果はご覧の通りですけどね。アハハ……馬鹿だみたいな話ですよね?」
無言で彼女を抱きしめた。
「どうしたんですか? 離してください。こんな汚い女を抱きしめてたら君まで汚れちゃいますよ」
泣くのを辞めてほしかった。涼月さんは何も悪くない。ただ自分の平穏を願っていただけだ。そこに何の罪があるのだろうか?
たしかに、一般的に見て僕の好意を利用しようとしていたことは、悪にあたるだろう。
だけど、結果的にその事が直接的な原因で不幸になった人は、誰もいないし、提督からの虐待が始まった後は、僕たちを必死になって守ろうとしてくれた。
それなのに僕は……自分の背中をナイフでめった刺しにしたくなった。
「罪を犯した事が汚れているという意味なのであれば僕も同じ……いや、それ以下です。僕は……」
本当に言うか迷った。だけど彼女を止めるにはこれしかないと言い聞かせ、覚悟を決めた。
「涼月さんが虐待される姿を見て興奮してたんです……助けれたのかもしれないのに黙って見ていたんです。隠し撮りしていて帰ってからその光景を見てオナニーしてたんです」
「アハハ……何言ってるんですか? 冗談を言わないで下さいよ。真琴君がそんなことするわけないじゃないですか」
僕の言ったことを嘘か冗談かと思ったのか涼月さんが笑いながら言った。
「本当の事……です」
涼月さんが笑うのを辞めた。
「振りほどいて頂いても構いません。引っぱたいて貰っても構いません。ですが……これ以上、涼月さん自身を責めるのは辞めてください!」
「手を……離してください」
涼月さんが落ちついた声で呟いた。彼女から手を離して少し距離を取る。
涼月さんが薄色の瞳で僕を見つめている。耐えきれなくなりそっぽを向く。
彼女は何を考え、何をするのだろうか? 多分僕を蔑むに違いない。もしかすると殴られるかもしれない。
だけど、全部覚悟の上だ。彼女が自分を責めるのだけは辞めてくれさえすればそれで良かった。
「真琴君……」
突然、涼月さんにキスをされた。
突然の事に理解が追い付かず目を白黒させることしかできない。
しばらくして、涼月さんが顔を離した。ディープキスではなかったけどそれでも長時間だったと思う。
「嫌……でしたか?」
「いえ……驚いていただけです。でも、なんで……?」
「傷の舐め合いです。みっともないかもしれませんけどやりませんか?」
涼月さんがニッコリとして言った。
「傷の舐め合いって……?」
「一晩だけの関係でもいいですから……これ以上は言わせないで下さい!」
キスをされたという事実と一晩だけの関係という言葉と涼月さんが顔を真っ赤にしているのを見て意味にようやく気付いた。これは涼月さんからの誘いだ。それも性行為をしないかという……
こんな状況でとは思うけど聞き違えじゃないのかと思えるの提案だった。
「えっ……本当に……」
「いいって言ってるじゃないですか!」
それ以上の問いかけは不要だ。僕は覚悟を決めて涼月さんの唇を奪った。
舌を絡ませあい口内で唾液を交換するディープキス。初めてだったから正しいやり方は、分からなかったけど無我夢中だった。
口を離すと二人の間に半透明の液体が名残惜しげに糸を引いた。
「すみません」
「どうしました?」
「こういうのは初めてで……ここからどうすれば……」
本当なら、僕がリードしないといけないのに……口にして我ながらみっともないと思った。
僕の反応を見て涼月さんがクスリと笑った。
「私がリードしてあげないとだめですね」
「うっ……」
下半身に電気が走る。
見ると涼月さんの手が僕の股間に伸びていた。
「あれ? 始まったばかりなのにもう準備万端みたいですね。もしかして傷だらけの私を見て興奮しちゃいましたか?」
耳元で囁かれた。
たしかに物凄く興奮している。男性器はこれまでに無いほどに勃起しているし、ズボンの上から軽く触られているだけなのに直ぐに射精してしまいそうな気がした。
「変態」
背筋がぞくりとした。
「言葉責めが好きなんですか? そういえば真琴君は私がレイプされたり殴られたりしてるのを見て興奮しちゃう人でしたよね。録画された私を見ながらするオナニーは気持ちよかったですか?」
涼月さんがすごく妖麗に見えた。
いつの間にかベルトが外され下着の中に涼月さんの手が伸びていた。男性器が扱われる度に視界にフラッシュがかかる。手の動きはどんどんと早くなり、同時に自分の中の物がグラグラと煮詰まっていく。限界だった。
急に涼月さんの手が止まった。
出そうだった物も逆流し、消化不全な感触だけが残る。
「もう少しでいけそうだったのに残念でしたね。素直に答えない真琴君が悪いんですよ。もう一度聞きます。レイプされる私の映像を見てのオナニーは気持ちよかったですか?」
涼月さんが煽るように言った。
「それは……」
「素直に答えないのでお仕置です。ズボンが邪魔ですね」
抵抗する間もなく、あっさりとズボンと下着を脱がされた。
提督に仕込まれたのだろうか? 耳元での言葉責めも絡めながらの手淫は、腰が抜けそうなぐらいに気持ち良かった。頭の中がピンク色になって達しそうになる。
だけど射精しそうになると寸前で止められてしまう。そしてまた煽り口調で同じ事を聞かれる。まるで底の抜けた壺に水を注ごうとしているような感触だった。
どんなに大量に水を入れたとしても底から抜け落ちてしまい決して達する事は出来ない。本当にギリギリの所で止められる。
今や生殺与奪は彼女に握られている。
我慢の限界だった。
「気持ち……良かったです」
「どうしました? 聞こえませんよ。それに何が良かったのですか?」
「レイプされる涼月さんを見ながらするオナニー、気持ちよかったです!」
口から出た言葉は、敗北宣言。頭の中を敗北感で支配された。
「よく言えましたね。ご褒美です。んっ……」
楽しげに笑いながら涼月さんにキスされた。それも性行為の1つのディープキス。初めてされた時とは違い、僕の口内を舌が蹂躙する貪るようなキスだった。
口に出して快楽から逃げる事も出来ない。頭の中が真っ白になる。
そのまま為す術なく射精させられた。多分だけと、これまでに見たことが無い量が出たと思う。
「いっぱい出ましたね」
「はい……」
息切れを抑えながら言った。
「でも、まだここは元気そうですね……」
涼月さんが未だにそそり立っている男性器を軽くつついただけなのにそれは、ビクリと反応した。
「本番もやりたいですか?」
耳元で囁かれた誘いを断る理由は、無かった。
「お願い……します」
「上着を敷布団代わりにしちゃいますが大丈夫ですか?」
「はい……」
涼月さんが上着の上に仰向けになった。
弱い照明に照らされた一糸まとわぬ彼女の体は青痣や赤黒い傷だらけだったけどもそれがかえって美しく見える。まるで一枚絵の芸術作品のようだった。
僕を虐めながらも彼女自身も興奮していたらしく秘部は既に濡れている。
「いいですよ……来て……」
彼女の言葉にゴクリと唾を飲んだ。
何とかして蜜口らしき所を見つけるとそこに自分の鉄のように硬くなっている男性器をゆっくりと入れた。
男性器に走る生暖かい未知の感触に声が出そうになる。
「大丈夫ですか?」
涼月さんが少し、心配そうな顔をする。
「すみません。気持ちよすぎて……涼月さんは……大丈夫ですか?」
快楽に流され本能のままに動きたくなるのを抑えながら言った。
「私は、大丈夫です。好きに動いてもらっていいですよ」
涼月さんが笑顔で言った。
何度も経験がある分、余裕があるのだろうか? 僕には、そう見えた。
しばらくの間は、快楽に流されるままに腰を振っていたけど彼女の首元の傷口が目に付いた。化膿してヨーグルトみたいな白い膿が出ている。
何故かは分からない。僕は、それを舐めたいと思った。
「すみません」
「どうしました?」
「変かと思うかもしれませんが首元の傷を……舐めてもいいですか?」
涼月さんが一瞬、きょとんとした顔をしたけど直ぐに笑顔に戻った。
「いいですよ。噛むのも舐めるのも好きにして下さい。一晩だけの関係ですから……」
無言で覆いかぶさり彼女の首元の傷をペロリ舐めた。彼女の傷からした鉄のような味と塩気が混じった味がした。
涼月さんが ん…… と声を出す。
「すみません。痛かったですか?」
慌てて口を離した。
「いえ……大丈夫ですが……その……恥ずかしながら感じてしまって……」
恥じらいながら言う彼女に自分の中の何かがふっ切れた。
「真琴君……?」
何もしない僕を不思議に思ったのか涼月さんが呟いた。
「キャッ!」
彼女の首の傷を舐めまわした。
喉の乾いた動物がやっと見つけた水を飲むかのように夢中で舐めた。腰の動きもかなり早くなったと思う。
「ちょっと……がっつきすぎですよ」
興奮がどんどんと高まっていき、それに同調するかのように腰の動きも早くなる。 粘着質の音が独房の中に響き渡った。
「あっ……」
興奮が収まりきらなくなり、彼女の首にかみつき、出血させその血を啜る。
普通の人なら涼月さんの発育のいい胸に興奮したのかもしれない。だけど僕は彼女の傷が好きだった。
「本当に……傷が……好きなんですね……」
涼月さんからも喘ぎ声が漏れた。肯定なのか否定なのかは分からない。
いずれにしてもそれを気にしている余裕は僕にはなかった。
獣のような行為だったのかもしれない。とにかく無我夢中で本能のままに腰を打ち付け傷を舐め続ける。
打ち付ける度に涼月さんの歓声が上がった。抱き締めるように、彼女の背中に手を回す。
それに応えるように涼月さんも僕の後ろに手と足を回した。
1分程耐えたけど限界は、すぐに訪れた。
フィニッシュの瞬間に彼女の首元の膿んだ傷に噛み付く。同時に涼月さんも同時に達したらしくかん高い声を上げた。
自分の中のドロドロとした精液が彼女の膣奥に流れて行く。涼月さんの膣も締まり、一滴も精子を逃がすまいとキツくなった。
男性器を引き抜くと自重を支えきれなくなり彼女の横に倒れた。しばらくの間、お互いの息が切れる音だけがした。
彼女の中から引き抜くと、結合部から白い物が溢れる。そのまま射精の余韻に浸っていたけど急に我に返った。
「すみません。やりすぎでしたか?」
「いえ……大丈夫です……」
「むぐっ!?」
突然、キスされた。不意打ちだった。
なすすべもなく口内を蹂躙される。男性器に血液がどんどんと集まっていくのを感じた。
キスだけはこの人に勝てないと思った。
「涼月さん……?」
「今度は私の番です。やられた分は、しっかりとやり返しますね」
涼月さんが、ニヤリとしながら妖麗な表情を見せる。なんだか自分が涼月さんという蛇に睨まれた蛙になったような気がした。
彼女の手が男性器に伸びる。
「真琴君ってマゾなんです?」
涼月さんが男性器をゆっくりと扱いながら耳元で囁いた。
「いえ……」
否定しようとしたら耳を舐められた。ゾクリとした物が背中を走る。
射精の余韻と不意打ちのキスで半立ちだった物が一気に硬くなるのを感じた。
「嘘ついちゃダメですよ。マゾで相手の傷を舐めたり噛んだりして興奮する異状性癖持ち……本当に救いようがないですね」
「傷を舐めた時は涼月さんだって……」
涼月さんがムッとした顔をした。
「私の番なのに歯向かうなんて生意気ですね。そういう子にはこうです。はむ……」
耳をしゃぶられた。同時に涼月さんの手淫が急に早くなる。
自分の中の物は、どんどんと高まっていき、すぐにその時は訪れた。
「ー---ー!」
絶頂の瞬間、声にならない悲鳴を上げた。
「懲りましたか? 私の番の時は黙って私に従っていればいいんですよ」
「は……はい……」
情けない声が出た。
射精の余韻に浸る間すらは置いてくれずに涼月さんの口淫が始まった。
あまりもの気持ちよさに衰えていたはずの物は見る見るうちに硬さを取り戻す。
急に涼月さんの行為が止まった。
「涼月さん……?」
「じっとしててください」
涼月さんが僕の上に馬乗りになった。いわゆる騎乗位と呼ばれる体位だ。
光っている涼月さんの傷口が艶っぽく見えた。覚悟を決める間もなく膣の中に入れられる。
声を抑えるので精一杯だった。
そんな僕にお構いなしに涼月さんが腰を振る。彼女が腰を振るたびに目の前にフラッシュがかかった。
涼月さんが息を切らしながら僕の上に覆いかぶさってきた。
同時に首元に痛みが走り、くすぐったいような感触が走る。首元を嚙まれ、舐められたのだと理解した。
「あっ……ぐっ……」
「お返しです」
涼月さんが少し意地悪そうに言った。
痛かったけど僕にとっては興奮を煽る材料でしかない。自分が彼女にしたようにそのまま首元の傷を舐め回される。噛まれるのも悪くないと思った。
一方的な蹂躙だ。快楽が脳を支配する。あっという間に絶頂の時は訪れた。
僕が絶頂するのと同時に涼月さんも声を上げて僕の上に倒れこんできた。一方的な物と感じていたけれど彼女も達していたらしい。
そのまま二人で長いキスをした。
「好きでした」
行為の直後、僕の横で涼月さんが呟いた。
「本当にごめんなさい。見られた時に気づいた時に酷いことを言って……こんな事に巻き込んで……」
涼月さんが泣きながら言った。そこにいたのはいつもの優しくて凛としてる涼月さんではなく弱い少女だった。
「僕は何があっても大丈夫ですよ。涼月さんが生きていたそれだけで十分なんです。だから……泣いたりしないで下さい」
彼女を抱きしめる。
一晩だけの関係。明日からは地獄が始まるだろう。どちらかが先に死ぬかもしれない。だけど、少なくとも涼月さんと繋がれた今、この時は、幸せだった。